妊婦の『貧血』の原因や症状は?予防法は?【産婦人科医監修】

 専門家監修
公開日:2020/01/30
更新日:2020/02/07
妊婦の『貧血』の原因や症状は?予防法は?【産婦人科医監修】
監修
粒来拓(つぶらいたく)先生
よしかた産婦人科分院 綱島女性クリニック院長

妊娠中に貧血になる妊婦さんがたくさんいます。そこで、貧血になる原因や症状、予防法について専門医に伺いました。貧血の予防には妊婦さんの食事の仕方も大切です。毎日の食事を見直してみませんか。

妊婦の貧血とは

貧血にはいくつかの種類がありますが、妊娠中に起こるトラブルとして多いのは、鉄分の不足によって起こる鉄欠乏性貧血です。

鉄分は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの成分となって酸素と結びつき、全身に酸素を運ぶ働きをしています。そのため貧血かどうかは、血液中のヘモグロビン濃度を調べて判定します。

妊娠していないときは、血液中のヘモグロビン濃度が12g/㎗未満を貧血と判断しますが、妊娠中は11g/㎗未満を貧血、9g/㎗未満を重症の貧血と診断します。

妊婦が貧血になる原因

妊娠すると体重が増え、それに伴って体を循環する血液の量も増えます。ところが実際に増えるのは、血液中の液体成分である血漿(けっしょう)がほとんど。そのため、妊婦さんの血液は薄まった状態になり、貧血になりがちです。

さらに、おなかの赤ちゃんの成長にも鉄分が必要なため、妊婦さんの鉄分は減りやすくなります。とくに妊娠中期以降になると、多くの妊婦さんに貧血がみられます。

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妊婦の貧血の症状

貧血になると、全身に酸素を運ぶ力が弱くなります。その結果、心臓はこれを補おうとして余計に働くため鼓動が速くなり、動悸や息切れ、めまいなどの症状が起こります。

さらに、鉄分と結びついて体のすみずみに運ばれる酸素には、疲労を回復させる働きがあるので、体がだるくなったり、疲れやすくなったりします。

なお、貧血がなくてもずっと立っていたり、急に動いたりしたときにフラフラする場合があります。これは、自律神経の乱れにより脳に行くべき血液が一時的に少なくなる(脳貧血)ために起こるもので、鉄欠乏性貧血とは違うものです。

妊娠中はホルモンの増加に伴い、自律神経を調節する力が弱くなりますので、脳貧血の症状も多くみられます。

妊婦が貧血になったときの出産への影響

妊婦さんの貧血が最も重要となるのは出産時です。

出産に出血はつきものですが、もし出血が多くなってしまった場合に、元々が重症の貧血だと輸血が必要になることがあります。そうなると産後の体の回復が遅れたり、母乳が出にくくなったりします。

また、赤ちゃんは胎盤を通して血液から栄養や酸素を取り入れますが、妊婦さんが貧血になると十分な酸素を赤ちゃんに届けることができず、低出生体重児(出生時の体重が2500g未満の赤ちゃん)になる可能性もあります。

妊婦が貧血を予防する方法

鉄分はカルシウムと並んで、日本人に不足がちな栄養素です。

妊婦さんが貧血を予防するには、普段から栄養バランスのよい食事をしながら、意識して鉄分をしっかりとることです。妊娠中の鉄推奨量は次のようになっています。

・18~29才の妊婦さん……妊娠初期8.5mg・妊娠中期~後期21.0mg

・30~49才の妊婦さん……妊娠初期9.0mg・妊娠中期~後期21.5mg

また、市販されている鉄分のサプリメントをとることも有効です。

ただし、血液検査を受けて貧血と診断された場合は、医師の指示にしたがって治療薬を服用しましょう。

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貧血予防のための食事の方法

鉄分を多く含む食品をとる

鉄分を多く含む食品には、次のようなものがあります。これらの食品を積極的に食事にとり入れましょう。

鉄分の多い食品(可食部100g当たりの鉄の含有量)

・ひじき(鉄釜・乾燥) 58.2mg

・あさり(佃煮)  18.8mg

・しじみ(水煮)  14.8mg

・豚肉(レバー)  13.0mg

・鶏肉(レバー)   9.0mg

・高野豆腐(乾燥)  7.5mg

・はまぐり(佃煮)  7.2mg

・ひじき(乾燥・ステンレス釜)6.2mg

・卵黄       6.0mg

・あゆ(焼き)        5.5mg

・鶏肉(はつ)        5.1mg

・まいわし(丸干し) 4.4mg

・ほっき貝 (生)     4.4mg

・納豆      3.3mg

・油揚げ(生)  3.2mg

・切り干し大根(乾燥) 3.1mg

・牛肉(輸入・ヒレ)     2.8mg

・小松菜(生)   2.8mg

・えだまめ(生)  2.7mg

・かつお(生)      1.9mg

*文部科学省「日本食品標準成分表(七訂)」より

鉄分の吸収をよくする食品と一緒にとる

たんぱく質やビタミンCと一緒にとる

鉄分だけでなく、ヘモグロビンなどの材料になるたんぱく質、鉄の吸収を高めるビタミンCをとることも大切です。あさり、レバー、牛肉、かつおなどの赤身の魚は、鉄分もたんぱく質も含んでいるので、妊婦さんにはおすすめの食品です。

ただし、レバーはビタミンA(レチノール)も多く含んでいます。ビタミンAは妊娠初期に過剰にとると、胎児の奇形のリスクが高まるといわれていますので、とり過ぎには注意しましょう。

ビタミンCの多い食品は、緑黄色野菜や果物などです。さらに赤血球が作られるときには、葉酸やビタミンB12なども必要です。葉酸の多い食品はブロッコリー、いちご、ほうれん草など、ビタミンB12の多い食品は魚介類、貝類などです。

肉や卵などで鉄を多くとろうとすると、エネルギーのとり過ぎになりがちです。大豆製品や野菜と組み合わせてとることで、低カロリーで鉄の吸収もよい食事にしましょう。

おすすめのメニューは、あさりとブロッコリーのパスタ、レバーと小松菜の炒めもの、ひじきと油揚げの煮物などです。ひじきや切り干し大根を使ったおかずを常備菜にして、こまめに食べるのもよいでしょう。

酸味の強い食品と一緒にとる

鉄は胃酸が分泌されると、吸収されやすくなります。よく噛んでゆっくり食べることを習慣にし、胃酸の分泌を活発にしましょう。

また、酸味の強い食品(レモン・酢・梅干し)と一緒にとると、胃の分泌が高まって吸収率が上がります。

貧血予防のために注意したい食品

コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶などタンニンを含む飲み物を食事中や食事の直後にとると、タンニンが鉄と結合して鉄の吸収を悪くしてしまいます。

また、ハムやソーセージ、練り製品、清涼飲料水、スナック菓子などの加工食品に使用されているリン酸塩(添加物の一種)は鉄の吸収を阻害します。

加工食品はとり過ぎないようにしましょう。

妊婦の貧血の薬

貧血と診断された妊婦さんには、改善するために鉄剤が処方されることがあります。鉄剤を飲むと便が黒くなりますが心配ありません。

鉄剤の副作用には、便秘や胃の不快感などがあります。副作用がつらい場合は、自己判断で服用を止めるのではなく、必ず医師に相談しましょう。鉄

剤にもいくつか種類があり、胃腸でゆっくりと溶ける徐放剤は比較的気持ち悪さが少ないといわれています。

副作用によって種類を代えたり、注射に変更したりする場合もあります。

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取材・文/小沢明子

監修
粒来拓(つぶらいたく)先生
よしかた産婦人科分院 綱島女性クリニック院長
2007年浜松医科大学医学部卒業。横浜市大産婦人科勤務後、2018年より現職。横浜市大センター病院女性ヘルスケア外来担当医兼任。妊娠中から産後まで、妊婦さんのさまざまな悩みに応えてくれるドクターです。

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