『母乳アレルギー』の症状は?血便が出る?母乳とアレルギーの最新情報【小児科医監修】

 専門家監修
公開日:2020/02/03
更新日:2020/02/21
『母乳アレルギー』の症状は?血便が出る?母乳とアレルギーの最新情報【小児科医監修】
監修
鳥海佳代子先生
とりうみこどもクリニック副院長

この記事は『母乳アレルギー』についてまとめたものです。
赤ちゃんの命をつなぐ母乳が、アレルギーの原因になるなんていうことがあるのでしょうか? 確かに、母乳が原因で不調が起きることはありますが、それは一般的なアレルギーとは別のもの。発生頻度もごくまれなので、いたずらに不安がらないでくださいね。母乳とアレルギーについて、最新の情報をおさらいです。

そもそも「食物アレルギー」はなぜ起こる?

特定のものを口にすると、湿疹、呼吸症状などのアレルギー反応が起きるのが、食物アレルギーです。食物アレルギーは、なぜ起こるのでしょうか。

人間には、有害なものから体を守る免疫というシステムがあります。体に異物が入って来ると「これは敵だ!」と細胞が反応して排除しようとする働きです。

しかしこの免疫システムは、無害なものに過剰に反応することがあります。それが食物アレルギーです。

赤ちゃんの消化・吸収能力はとても未熟なため、体に入った食物がうまく消化されずに異物とみなされてしまうことがあるのです。免疫OSでシステムエラーが起きているわけですね。

このシステムエラーは、消化吸収能力が高くなるにつれて起きにくくなってきます。ですから、0歳では食べられなかった卵が3歳では約50%、6才では約80%の子が食べられるようになるといわれています。

小学校入学のころには、多くの子供が食物アレルギーを克服しているのです。

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『母乳アレルギー』とは?

一般的な食物アレルギーとは別のもの

食物アレルギーは食品に含まれるタンパク質が原因です。人が口にするものでタンパク質をまったく含まないと言えるのは水だけなので、どんな食品でも食物アレルギーを引き起こす可能性があります。

それにしても、赤ちゃんの命をつなぐ母乳がアレルギーの原因になる、などいうことがあるのでしょうか?

母乳が赤ちゃんの消化管に炎症を引き起こすことは、ごくまれにですが確かにあります。

医学医療の分野では「新生児・乳児消化管アレルギー」と言われていますが、卵アレルギー、牛乳アレルギーといった、いわゆる食物アレルギーとは発症のメカニズムが違います。

この「新生児・乳児消化管アレルギー」が、『母乳アレルギー』と呼ばれるものです。

食物アレルギーの発症には、IgE抗体という物質がかかわっています。たとえば卵のIgE抗体が多くできると、卵アレルギーが発症します。

しかし、「新生児・乳児消化管アレルギー」には、IgE抗体がかかわっていません。すでに胎児期に素地ができているとも考えられていますが、なぜ発症するのか原因ははっきりわかっていません。

『母乳アレルギー』はごくまれな病気

『母乳アレルギー』の約70%は生後1ヶ月以内に発症します。

年間の患者数は2000人程度。1年間に生まれる赤ちゃんでこの病気が起こるのは約0.2%ですから、たいへん珍しくまれな病気です。

一般的なアレルギーは、血液検査でIgE抗体を調べればある程度の診断がつきますが、『母乳アレルギー』の場合、血液検査だけでは診断がつきません。

下痢や嘔吐が続いている、体重が増えないなどの症状があり、しばらく母乳をやめて治療用ミルクに変えてみて症状が落ち着けば、母乳が原因(『母乳アレルギー』)ではないかと疑われます。

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『母乳アレルギー』の症状

嘔吐、血便、体重が増えない

『母乳アレルギー』で起きる症状は、嘔吐や血便、下痢など消化器症状が中心です。一般的な食物アレルギーで見られるじんましんやアナフィラキシーショック、呼吸器症状などはありません。

2才までに約90%が治る

『母乳アレルギー』の多くは軽症で、1歳までに約半数が、2歳までには約90%が治ります

『母乳アレルギー』の治療法

必ず医師の指導に従って

『母乳アレルギー」』の診断はたいへん難しく、症状だけでそれと判断することはできません。血液検査や便検査、CT、超音波エコー、内視鏡検査などさまざまな検査を行います。

もし『母乳アレルギー』と診断されたら、医師の指導のもとで次のような治療を行います。

【症状が軽い場合】

ママが乳製品(牛乳、ヨーグルト、バター、チーズなど)を除去した食事をします。

【症状が重い場合・乳製品を除去しても症状が続く場合】

母乳をやめて治療用のミルクに切り替えます。

いずれも、ある程度の時間をおいてからママが再び乳製品を食べて母乳を飲ませ、症状に変化があるかどうかを確認します。

母乳は赤ちゃんの生命を維持し、成長を促すのに欠かせないものです。安易に「母乳アレルギーだ!」と決めつけて母乳をやめたり、逆に、「母乳が悪いはずはない」と症状を無視したりしないでください。

下痢、嘔吐、血便、体重が増えない、などの症状が見られるときは、まず受診しましょう。自己判断で赤ちゃんの大切な栄養源を奪ってはいけません。

授乳中のママの食事はアレルギーの原因になるの?

『母乳アレルギー』とは別に、「ママが食べたものが母乳を通じて赤ちゃんの体に入り、それが食物アレルギーを引き起こす」という考え方があります。母乳育児と食物アレルギーには、どんな関係があるのでしょうか。

ママが卵を控えても卵アレルギーは予防できない

たとえば、ママが卵を食べたあと授乳をしたら赤ちゃんに湿疹が出た、というケース。「卵アレルギーになったのかも!?」と心配になりますね。

でも最近の研究では、授乳中のママの食べ物と赤ちゃんのアレルギー発症との関連はまずないとされています。

確かに、卵を食べれば母乳中にアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が出てきますが、その量はアレルギー反応を起こせるほど多くないことがほとんどです。

母乳を通じていろいろな食品成分を与えることは、むしろアレルギーの発症を抑える可能性があると考えられています。

また、母乳に含まれるアレルゲンを口にする以前に、空中に浮遊しているアレルゲンを皮膚や目の粘膜などから吸収し、すでに抗体ができていることもあります。

知らないうちに抗体が作られているケースでは、ママがどんなに食事制限をしても、アレルギーの発症を抑えることはできません。

ただし、すでに食物アレルギーがあるとわかっている場合は、その程度によって授乳中のママの食事制限が指導されることもあります。

ママの食事制限にアレルギーの予防効果はないが、すでにアレルギーを発症している場合は食制限が必要なこともあるということです。

ただし、こうしたことも必ず医師の指導を受けながら進めていきます。

アレルギーについてはさまざまな情報があふれていますが、解明されていないこと、研究途中のことも多いのです。専門家でも判断が分かれる場合があり、安易な自己判断や思い込みは、赤ちゃんの成長に悪影響を及ぼすことがあります。

まずは、日ごろ赤ちゃんを診てもらっているかかりつけ医に相談しましょう。場合によっては、アレルギー専門医に紹介してもらう必要が出てくるかもしれません。

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母乳にアレルギー予防効果はない

「母乳を飲ませていると赤ちゃんのアレルギーが予防できる」という話を聞いたことがありませんか? これについてはいろいろな意見があり、はっきりとわかっていませんでした。

現在もさまざまな研究がされているようですが、近年、厚生労働省は国としての考え方の指針を出しました。

2019年3月に発表された『授乳・離乳の支援ガイド(改訂)』がそれで、そこには「生後半年間の母乳育児によるアレルギー疾患の予防効果はない」と明記されています。

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母乳はタンパク質や脂質、ビタミン・ミネラルなどの栄養だけでなく、赤ちゃんを病気から守る免疫物質も含む「完全栄養食品」です。赤ちゃんにとっては最良の栄養源ですが、それだけに母乳育児にとらわれすぎたり、不必要な心配をしたりということが起こることがままあります。

信頼できる医師と相談しながら、それぞれの赤ちゃんに最もよい方法を見つけていってくださいね。

文/小沢明子、中根佳律子

監修
鳥海佳代子先生
とりうみこどもクリニック副院長
島根大学医学部卒業。島根県や千葉県の小児科に勤務後、2010年に夫とともにとりうみこどもクリニックをオープンさせる。カラフルな診療着とおおらかでやさしい人柄が、患者さん親子に人気のママドクター。
とりうみこどもクリニック

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