【FP監修】学資保険・生命保険どっち?メリットを比較し解説!2020年版


山田静江先生
子どもが生まれたら将来かかる教育費を貯めるために「学資保険に入ったほうがいい」と言われますが、保険ショップに行くと「学資保険代わりになる」と、生命保険をすすめられることも。学資保険と生命保険、どちらを選ぶべきなのでしょうか。そもそもこの2つは、何が違うのでしょうか。ファイナンシャル・プランナーの山田静江先生に聞きました。
目次
学資保険と生命保険の違いは何?
「学資保険は生命保険の一種です」と山田先生。
そもそも、生命保険のパターンは3つあります。
①死亡保険
被保険者(保険の対象になっている人)が死亡か高度障害状態になったら保険金が支払われる。
②生存保険
被保険者が保険期間中に死亡せず、満期まで生存していた場合に満期保険金が支払われる。
③生死混合保険
①と②を組み合わせ、被保険者が保険期間内に死亡したら死亡保険金、満期まで生存していたら満期保険金が支払われる。
「この3つを基本形として、さまざまな保険商品が発売されています。一般的に生命保険といわれるものは①死亡保険をさします。学資保険は②生存保険の一種ですが、ある程度の死亡保障がついているものもあるので、③生死混合保険の場合も。いずれも学資保険は、生命保険のひとつであると知っておきましょう」(山田先生)
まずは学資保険から、その特徴を解説します。
学資保険の特徴とは?
学資保険とは、被保険者が満期まで生存していたら満期保険金が支払われる生存保険。子どもが被保険者、親が契約者となって加入し、子どもが一定の年齢になると、まとまった金額の満期保険金が受け取れます。
「そもそも学資保険とは商品名なので、こども保険と言われることもあります。保険商品によっては、商品名に学資保険ともこども保険とも入っておらず、それが学資保険かどうかもわからない場合もあります。その場合は、保険会社のホームページなどで商品の詳細を見ると“5年ごと利差配当付きこども保険”など、正式な商品名の記載がありますので、そこで確認するといいですね」(山田先生)
学資保険のメリットは?
【1】「学費を貯める」という目的がはっきりしている
子どもに最もお金のかかる大学進学時に、満期保険金を確実に受け取れるのは大きなメリット。18歳満期で一括で受け取れるもの、22歳満期で分割で受け取れるもの、小学校、中学校、高校の入学時にお祝い金が出るタイプもあります。学資保険のお祝い金や満期保険金を受け取るタイミングは、大きくは3パターン。
●小学校・中学校・高校の入学時にお祝い金として受け取る
●18歳満期時に一括で満期保険金を受け取る
●22歳満期で大学在学中に分割して満期保険金を受け取る
「最近多いのが、22歳を満期に大学入学時に受け取り、その後、在学中に4回に分けて、トータル5回受け取るタイプ。18歳満期と22歳満期、どちらがよいとは言えず、好みの問題です。18歳満期にして一括で受け取ると、使ってしまいそうな人は22歳満期にしておくとよいでしょう。お祝い金が出るタイプは、大学進学前に使ってしまい、あとで困る可能性があるので、あまりおすすめできません」(山田先生)
【2】満期までおろせないので、使ってしまう危険がない
途中で解約すると“解約返戻金”が戻ってきますが、これまで支払った保険料の全額が戻ってくるわけではないので、元本割れしてしまいます。これは反対に言うと、途中で解約しにくいということ。簡単に解約して使う危険性がないのはメリットと言えるでしょう。また途中で解約せずにすむように、家計に負担なく払い続けられる保険料を設定しておくことも大切です。
■解約返戻金とは■
解約返戻金とは保険契約が解約されたときに、契約者に払い戻されるお金のこと。契約者が支払った保険料の一部は、保険会社が将来支払うために積み立てたり、契約を維持する費用にあてたりするため、解約返戻金の金額は、払い込んだ保険料よりも少なくなります。金額は保険期間、契約年齢、加入年数などで異なります。
【3】契約者が亡くなっても、満期保険金が受け取れる
たいていの学資保険は契約者である親が保険期間中に死亡したら、それ以降の保険料の払い込みは免除されますが、満期時には満期保険金が支払われる特則が付加されています。まれに付加されていない場合もあるので、加入するときによく確認しておきましょう。親の死亡時から満期時まで年金として受け取れる“育英年金(養育年金)”タイプの学資保険もあります。ただし保障を厚くすると、戻るお金が少なくなる可能性があります。
【4】支払った保険料より、受け取る金額が多い場合がある
支払った保険料に対して受け取れる金額の割合をあらわしたものが“返戻金”。
受取総額÷保険料払込総額×100で算出され、100%を切ると元本割れということ。かつては返戻金120%という商品もありましたが、最近はどんなに高くても110%以下、商品によっては100%以下のものも少なくありません。とはいえ、100%を超えるものもあります。支払い方や払込期間、受取時期によっても変わるので、より返戻率を上げる工夫も必要です。
■返戻率を上げる工夫とは?■
学資保険をさらにオトクに利用するなら、この返戻率を少しでもアップさせる工夫をしましょう。次の3つの方法で上げることができます。
①保険料の支払いを早く終わらせる
保険料の支払いをいつ終わらせるかで返戻率は変わります。早く終えれば、返戻率は高くなり、遅ければ低くなります。児童手当を支払いに回し、18歳満期の保険を15歳で支払いを終了させるのもおすすめ。
②満期保険金を遅く受け取る
満期保険金を受け取る時期によっても、返戻率は変わります。早く受け取れば低くなり、遅く受け取れば高くなるため、18歳満期よりも22歳満期のほうが高くなります。
また、お祝い金がついているものは低くなります。
③保障を減らす
保障がたくさんついていると、その分利回りが悪くなり、返戻率は下がるので、保障を見直して減らすのも手。ただし返戻率が低くても、必要な保障が付帯されていることもあるので、じっくりと吟味して。
「返戻率を高くするには、上記3つの要件をクリアすればOKですが、返戻率のためだけにくれぐれも無理をしないように。早く払い終えるためには、資金に余裕がないと無理ですし、受け取りを遅くすると、必要な時期にお金がもらえないかもしれません。また保障もメリットのひとつです。返戻率の高さだけにフォーカスしすぎず、トータルで見て、自分に合うものを選ぶことが大切ではないでしょうか」(山田先生)
【5】節税効果がある
学資保険は生命保険の一種なので、生命保険料控除の対象になります。生命保険料控除とは、支払った保険料に応じて所得金額が差し引かれる所得控除のこと。所得控除が多いほど、課税対象となる所得が減少し、所得税と住民税が軽減されます。つまり学資保険に加入していれば、税金が少し安くなるということ。学資保険は“一般生命保険料控除”の枠で最大4万円まで控除が受けられます。会社員は年末調整、自営業は確定申告で手続きすればOKです。“保険料控除証明書”を添えて申告しましょう。
「会社員でも年末調整で書類を出すのを忘れたら、住んでいる地域の税務署で確定申告すれば問題ありません。なお学資保険の加入時期が年末に近いと、保険料控除証明書が年末調整に間に合わず、翌年、自分で確定申告をしなければいけない場合もあります。また契約者は妻だが、実質的に支払っているのは夫という場合は、夫が税金を支払うことになります」(山田先生)
学資保険のデメリットは?
途中で解約しにくい
学資保険は途中解約すると、お金が戻ってきます。しかしメリット【2】で触れたように、支払った保険料から経費やそれまでの保障部分を差し引いて戻されるため、大きく損をする可能性があります。これが、いちばんのデメリットです。特に加入してからの時期が短いと、解約返戻金がかなり少なくなるので、よく考えてから加入しましょう
「途中で解約してお金を使ってしまう危険がないという意味ではメリットですが、長期間にわたってお金を自由に引き出せないと、何かの事情でまとまったお金が必要になったときに困るかもしれません。そういう意味ではデメリットですね」(山田先生)
■途中解約で多いパターンは?■
途中解約の理由に多いのは「家計が厳しくて保険料を支払えなくなった」「あとから契約内容がわが家に合わないことに気づいた」など。
学資保険は10年以上の長期間にわたり、続けていくものですので、加入前に以下の項目はしっかりとチェックしておきましょう。
・契約者は誰か
・子どもが何歳まで支払うのか
・月々の保険料はいくらか
・満期保険金はいくらなのか
・受取時期はいつか(一括か分割か)
・保障内容はどんなものか
「いちばん大切なのは、最後まで支払い続けられること。無理な金額設定で途中解約してしまうことほど、もったいないことはありません。保険料支払いを、月々1万円ベースで考えてほしいのはこのためです。児童手当はそのまま貯めれば200万円になりますので、児童手当を保険料にあてるのもよいでしょう。その場合、18歳満期の学資保険を15歳で払い終えれば、返戻率をアップさせることもできます」(山田先生)
受け取ったお金に税金がかかることがある
学資保険の満期保険金には税金がかかる可能性があることもデメリットにあげられるでしょう。まず確認しておきたいのは「誰が保険料を払っているか」「誰が満期保険金を受け取るのか」。払う人と受け取る人が同じなら“所得税”、違うなら“贈与税”がかかります。また所得税のなかでも「どうやって受け取るか」でも変わり、一括で受け取るなら“一時所得”、年金で受け取ると“雑所得”になります。
インフレリスクがある
インフレになると物価が上がり、相対的にお金の価値は下がります。物価が2%上がると、100円で買えたものが、102円になるということ。つまり100円の価値が下がっているのです。
学資保険の場合、契約時に利回りが確定するため、加入後にインフレが進行すれば、実質的な資産価値は下がってしまいます。また契約時の学費より満期の学費のほうが高くなっている可能性があり、想定していた学資金では足りなくなる恐れもあります。
「インフレリスクに備えるなら、インフレに強い株式投資と組み合わせて積み立てていくのも手。たとえば月2万円貯めるなら、1万円は学資保険、もう1万円はつみたてNISAやジュニアNISAで運用することで、確実に貯めながらリスク分散することにもなります」(山田先生)
生命保険の特徴とは?
学資保険代わりに使える生命保険とは、どんなものでしょうか。
「ひと昔前に人気だったのが“低解約返戻金型終身保険”。保険料払込期間中は、解約返戻金を安くおさえることで、保険料を安くし、払込終了時には返戻率が100%を超え、その後も契約を継続すれば、さらに返戻率はアップし、返戻金が増えていくもの。しかし現在は、払込期間が10年や15年といった商品の販売は終了、残っているのは65歳払済ぐらいです。しかもこの場合、解約返戻金は100%を超えません」(山田先生)
そこで今、注目されているのが外貨建ての保険です。
外貨建ての保険って?
外貨建ての保険のうち、学資保険として利用できる可能性があるのは、“終身保険”と“個人年金保険”です。
●オリックス生命保険
保険料と保険金、ともにドル建ての終身保険。保険料支払いのたびに、そのときの為替で円換算の保険料は変わります。たとえば契約年齢が35歳男性で、保険期間は終身、払込期間10年の場合、年払いなら、保険金額30,000米ドルで、125,961米ドル。月払いなら、保険金額30,000米ドルで、10,788米ドル。払込期間中の死亡保険金は、払い済みの保険料相当額のみで、この間に解約すると解約返戻金が少なくなるのは、上記の低解約返戻金型終身保険と同じ。10年払込後、14~17年目に解約すると、ドル建てで113.2~120.2%まで増えます(金利は契約時に固定)。
●マニュライフ生命
保険料は円建て、保険金はドル建ての個人年金保険。保険料は円建てなので、毎月の円換算保険料(仮に1万円とします)は変わりません。保険金はドル建てなので、そのときの為替レートで毎月1万円のドルを購入するので、ドルコスト平均法(定期的に一定金額を購入することで、高値時は少なく、安値時は多く買えるため、平均取得単価を下げられる)が働きます。10年目以降は保険料の支払いを止められるため、たとえば10年支払い、その5~8年後に解約すると、ドル建てで110~117.7%に増えます(積立利率が2.6%のまま固定したと仮定したときのシミュレーション。利率は毎月変動)。
「上記の外貨建て終身保険は、11年目以降に死亡保険がつくのがメリットですね。個人年金保険はドルコスト平均法が働くのが有利。円高(=ドル安)のときには、ドルをたくさん購入できて、反対に円安(=ドル高)のときには少ししか購入できないので、平均でみると割安なドルをたくさん購入できることになります」(山田先生)
※レートや利率は2020年1月6日現在のものです。
学資保険と生命保険のメリットは?
学資保険の大きなメリットは、保険期間中に契約者である親に万一のことがあったら、以後の保険料を支払わなくても、満期には満期金が受け取れることです。ただし18歳満期に設定しているなら、受け取れるのは18歳。それまで待たなければいけません。逆に言うと18歳まで預かってもらえるので、貯金の苦手な人にとってはメリットかもしれません。
外貨建ての保険は、万一のことがあったら、すぐにまとまった額の保険金が受け取れて、契約はそこで終了します。お金の使い道が自由なのはメリットです。
どちらも保障を得ながら、お金を貯められるのがメリットでしょう。またメリット【5】で説明したように、どちらも生命保険料控除が使えるので、節税にもなります。
学資保険と生命保険のデメリットは?
途中解約すると、支払った保険料よりも解約返戻金のほうが少なく、大きく損をする可能性のあるのがどちらともデメリット。特に外貨建ての終身保険は、払込期間中の解約返戻金を低い水準におさえている分、かなり損してしまいます。簡単に解約できず、資金が長期間固定されてしまうことがデメリットになることもあります。
また外貨建ての保険のデメリットは、為替の影響を強く受けること。保険料の支払時に円高、保険金を受取時は円安になっていると、保険金は増えますが、反対に受取時が円高になっていると、払い込んだ保険料より少なくなる恐れがあります。さらに為替手数料や販売手数料など、通常よりも多く手数料がかかるケースがあるのも気をつけたい点です。
学資保険と生命保険、結局どっちに入るべき?
結局どちらを選べばよいかというと、それぞれのメリットとデメリットを比べて決めることになります。そのポイントは次の通り。
①解約時期
学資保険は、だいたい18~22歳と満期時期=解約時期が決まっているため、教育費という明確な目的に向けて貯めることになります。ただし子どもの将来についてはよくわからない、中学受験や大学院進学、留学に使えるようにしておきたい、という人は外貨建ての保険のほうがよいかもしれません。途中解約の可能性があるなら、あらかじめ払込期間を短く設定しておくのも手。
②返戻率
メリット【4】で説明したように、返戻率とは支払った保険料に対し、満期保険金がいくら受け取れるかの割合を示したもの。返戻率が高いほど、戻るお金も多くなりますので、この返戻率でどちらにするか決めるのも選択肢のひとつです。
一見すると、学資保険より外貨建ての保険のほうが、返戻率が高いイメージですが、学資保険も支払期間を短くする、まとめて支払うなど工夫次第で、返戻率をアップさせられます。どちらにしようか迷ったら、それぞれの保険の総支払額と受取額を自分で計算してみましょう。返戻率は受取額÷保険料総額で算出できます。
③保障
返戻率は高いほどよいかと言うと、一概にそうとも言えません。返戻率が低い分、保障が厚かったり、他の部分でメリットのあったりということがあります。
学資保険も外貨建ての保険も、死亡や病気の保障をつけることができるので、わが家に必要な保障を見極めて、納得できるほうを選ぶことが大切です。
教育費は将来、絶対にかかるお金。親の想定外の進路を子どもが望むかもしれません。急に用意することはできませんので、こうした保険商品を利用して、子どもが小さいころからコツコツと貯めていきましょう。
※掲載の内容は2019年現在のものです。
文/池田純子

山田静江先生
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