『1歳半ごろの言葉の理解』はどのくらい?話さない原因は?【専門家監修】

 専門家監修
公開日:2020/01/03
更新日:2020/01/24
『1歳半ごろの言葉の理解』はどのくらい?話さない原因は?【専門家監修】
監修
小林哲生
NTTコミュニケーション科学基礎研究所 上席特別研究員

この記事は、1歳半ごろの赤ちゃんの言葉の理解についてまとめたものです。
お誕生日を迎える頃から、意味のある単語を口にする子が増えてきます。赤ちゃんの中で、言葉の芽はどんな風に育っているのでしょうか。

1歳半の赤ちゃん、言葉はどのくらい理解している?

1歳半ごろは、多くの子に初語が出ている時期

赤ちゃんが初めて口にする意味のある単語を「初語(しょご)」といいます。

初語が出るのは、平均すると1歳前後。早い子は10ヶ月ぐらいからと言われることもありますが、NTTコミュニケーション基礎科学研究所の調査では、10ヶ月で初語が見られるのは20%ぐらい。11ヶ月で約50%、1歳で60%、1歳1ヶ月で約80%に初語が見られるという結果でした。

多くはお誕生日の前後に「ママ」「まんま」「(いないいない)ばぁ~」などの単語を発するようになってきます。

1歳半の時点では多くの子が初語を口にしていますが、まだ確認できないケースも5%ぐらいあります。

赤ちゃんは言葉を話し始める前に、多くの言葉が理解できるようになっています。言葉の理解がしっかりできていれば、たとえ1歳半で初語が出ていなくても「言葉の発達が遅れている」とは言えません。言葉の発達は個人差がとても大きいものなのです。

単語は口にするけれど使い方はまだまだ

赤ちゃんが初語を口にすると、「どんどんお話できるようになる!」と思うかもしれませんが、そうではありません。

初語が出てから半年ぐらいは、時々「あれ、別のことを言ったかな?」と周囲が気がつく程度。

1歳半ではまだ口にする単語の数はそれほど多くなく、使い方も大人が考える「正しい」ものではないことが多いのです。

たとえば、わんわん。

大人は「わんわん」と言えば犬のことだと思います。

でも1歳半の赤ちゃんにとっては、犬も猫ももしかしたらライオンも、4本足で歩く動物はすべて「わんわん」だったりします。

あるいは、家で飼っているチワワは「わんわん」だけれど、外を散歩している犬はそうは呼ばない、ということもあります。

人とのやりとりや、名詞が多い

また、このころの赤ちゃんが口にする単語は大きく2種類に分かれます。

① 「どうぞ」「ありがとう」「ちょうだい」など人とのやりとりに関係するもの

② 「ママ」「パパ」「ぶーぶー(車)」「くっく(靴)」など身近な名詞

がそれです。

「いく(行く)」「みる(見る)」のような動詞や、「きれい」「たのしい」といった形容詞はまだ出てきません。単語をつなげて文を話すこともしません。

1歳半の赤ちゃんの言葉の世界は、まだまだ混沌としています。

「わんわん」が「犬一般」のことだと理解して正しく使ったり、単語と単語をつなげて自分の気持ちを言い表したりできるようになるのはもう少し先です。

周囲の大人はたくさん話しかけながら、あたたかく見守ってあげてください。

関連リンク⇒⇒⇒赤ちゃんの言葉の発達をうながすポイント!~1才からのおしゃべり講座~

1歳半なのに言葉を話さない。その原因は?

多くの子が少しずつ意味のある単語を口にするようになっている1歳半。このころにまだ初語が出ないと、不安になることもありますね。

先にも述べましたが、言葉の発達はとても個人差が大きいものです。1歳半で初語が出ないのは珍しいことではありません。

1歳半健診では「意味のある言葉を話しますか?」と聞かれるかもしれませんが、初語が出ていないからすぐに対策が必要、ということでもありません。早めに対策をしたほうがいい場合もありますが、多くはその子の発達のペースなのです。

1歳半で初語が出ていない原因には、さまざまなことが考えられます。たとえば――

赤ちゃんの性格

のんびり屋さんだったり恥ずかしがり屋さんだったりすると、外交的で積極的な子よりも初語が出るのは遅いかもしれません。

言葉の意味は理解しているので「パパに持っていって」とリンゴを渡せば、トコトコとパパのところに向かったりします。

言葉のインプットが少ない

とても静かな環境で暮らしている、ママやパパがとても無口、人から話しかけられることがほとんどないなど、言葉を聞くことが少なければゆっくりめの発達になることはあり得ます。

ただし、明らかに言葉の発達に遅れが出るほどインプットが少ない環境というのは、現代の日本ではあまりないようにも思います。

耳の聞こえが悪い

言葉が発達するためには、耳が聞こえていなければなりません。

重度の難聴は「声をかけても振り向かない」といった様子から気づかれることが多く、早い時期から補聴器を使用するなどの対策がとれます。

むしろ軽度の難聴が見過ごされることがあり、それが言葉の遅れにつながることも。

対人関係が苦手

社会的な手がかりや感情を読み取るのが不得手、人への関心が薄いなど、発達障害(自閉スペクトラム症*)があると言葉の発達が遅れぎみになります。

周囲が気づいていない

初語は出ているのですが、周囲がそれに気づかないケースもあります。

発声にかかわる機能や筋肉は大人に比べて未熟なので、聞き取れていないのかもしれません。

1歳半で言葉を話さないときの対策は?トレーニングは必要?

多くの場合はその子の発達のペースなので、特に対策をする必要はありません。発達のペースを乱すような無理矢理のトレーニングはしないほうがいいですね。

ただ、日常生活でいくつか心がけているといいことはあります。

ゆっくり話しかける

赤ちゃんに話しかけるときはしっかりと目を合わせて、できるだけゆっくりと話しましょう。

赤ちゃんは周囲のまねをしながら言葉を覚えていきます。早口すぎてまねしにくかったり、大人が一方的におしゃべりをして赤ちゃんが反応する機会がなかったりすると、話しにくくなってしまいます。

声のトーンは高めに。しぐさは大きめに

赤ちゃんに話す時、自然に声のトーンが高くなりますよね。あの話し方が赤ちゃんには聞き取りやすいと言われています。

低い声でぼそぼそ話しかけるよりは、高めのトーンではっきりと発音したほうがいいですね。

嬉しいときは大ニコニコで、困ったことを伝えるには困った顔でと、表情やしぐさも少し大きめを心がけたほうが、言葉の理解がしやすいかもしれません。

テレビやビデオはできれば一緒に見る

ちょっと家事をしたいとき、静かにしていてもらいたいとき、テレビやビデオは便利な道具ですね。

「テレビに子守をさせるな!」と言われることがありますが、ママやパパのちょっとした息抜きにもテレビを使うな、と言うのは乱暴です。人間の発達は、その程度のことで影響されるものではありません。

ただ、余裕があるときは、いっしょに見るといいですね。赤ちゃんとテレビを見ながら「ぶーぶーが来たね」「笑ってるね。嬉しいね」「あ、あれはなんだろう?」などと、話しかけましょう。

言葉はコミュニケーションの道具です。テレビから一方通行で流れてくる言葉に大人が反応する様子を見ることは、道具としての言葉の使い方を覚えるいい機会になると思います。

赤ちゃん言葉を否定しない

「赤ちゃん言葉ではなく、最初から正しい言葉を覚えてほしい」と考える人もいますね。でも赤ちゃんにとっては「いぬ」より「わんわん」の方が発音しやすいもの。

「ワンワンじゃなくて犬よ!」と直すと、赤ちゃんは混乱します。ひとつのことをふたつの言い方で理解するのは、言葉を覚えつつある赤ちゃんにとってはハードルが高いものです。

少し大きくなるまでは、赤ちゃん言葉もコミュニケーションの手段として受け入れていった方が、言葉の理解が進みやすいでしょう。

関連リンク⇒⇒⇒うちの子はおなかが出てる? 言葉が遅い? 1才7カ月ベビーのコレ気になる

発達障害が疑われる場合は

1歳半ではっきりと発達障害がわかることはまずありません。

診断の基準はいくつかありますが、特性のあらわれ方の違いや環境要因などを見極める必要があるため、専門の医師でも一度の診察ではすべてを判断できない場合があります。

はっきりと診断がつくのは自閉スペクトラム症*で4~5歳ごろと言われています。

ただし、発達障害の場合、早めに対処することでその子の生きづらさが軽くなったり、周囲の理解が進んだりということはあります。

言葉の発達の遅れも、適切なサポートをすることで、口にする単語が増えたり人とのやりとりがスムーズになったりする可能性があります。

初語が出ない、言葉の発達が遅い様子に加えて

・泣き方がとても激しくあやしても泣き止まない
・ほとんど泣かない
・抱っこしても目を合わせない
・後追いをほとんどしない
・あやしても笑わない
・体にさわられるのをいやがる

などの気になる様子が見られるときは、自治体の保健センター、子ども家庭センター、小児神経科、かかりつけ医などに相談してみましょう。

*自閉スペクトラム症/人とのコミュニケーションがとりにくく、こだわりが強い、感覚が過敏などの特性があるため、生きづらさを感じることが多い発達障害のひとつ。

文/中根佳律子

監修
小林哲生
NTTコミュニケーション科学基礎研究所 上席特別研究員
専門は乳幼児心理学。乳幼児の言葉の発達について膨大なデータを元に解析するなど、科学的なアプローチで研究を重ねている。データに裏打ちされた理論を基にNHK教育テレビ『いないいないばぁっ!』にかかわるなど、アドバイスは具体的・実践的。著書に『0~3さい はじめての「ことば」』(小学館)、監修に『頭のいい子を育てるプチ あかちゃんごおしゃべりえほん』(主婦の友社)など。

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