【小児科医監修】マイコプラズマ気管支炎と風邪の違いは?うつるの?症状は?


片岡 正先生
かたおか小児科クリニック院長
この記事はマイコプラズマ気管支炎についてまとめたものです。保育園や幼稚園、小学校などで流行することがあるため、「マイコプラズマ」という言葉を耳にしたことがあるママやパパもいるのではないでしょうか。1年中見られる病気ですが、風邪やインフルエンザが流行する時期でもある秋~春先にかけて多くなります。風邪との違いや症状、治療法、予防対策などについて、ドクターに聞きました。
目次
マイコプラズマ気管支炎とは?
14歳以下に多く見られる感染症
鼻からのどまでを上気道、のどの下の気管支から肺までを下気道といいます。マイコプラズマ気管支炎は、マイコプラズマという病原体が気管支に炎症を起こしたものです。
マイコプラズマ気管支炎は14歳以下の子どもに多く見られる感染症ですが、大人が感染しないわけではありません。基本的には通年見られるものの、秋~春先にかけて感染する人が多くなります。
1984年、1988年など4年周期で大流行を起こした病気として知られ、以前は「オリンピックの年に流行する」と言われていました。しかし、最近ではその傾向は見られなくなっています。
マイコプラズマという病原体が気管支に炎症を起こし、熱が出ます。
マイコプラズマ気管支炎の原因は?
肺炎マイコプラズマという病原体が感染して起こる
体内に侵入する病原体にはウイルスや細菌があります。ウイルスは寄生する細胞がないと増殖できませんが、細菌は自分で増殖することができます。
マイコプラズマは自分で増殖することができる病原体なので、細菌に分類されていますが、ほかの細菌にはある「細胞膜」がないという特徴があります。一般的に細菌感染時に処方されるペニシリンなどセフェム系の薬は、細菌が細胞膜をつくるのを妨害する働きをして増殖を防ぎますが、細胞膜がもともとないマイコプラズマには効果がありません。
マイコプラズマ気管支炎と風邪との違いは?
原因となる病原体や炎症を起こす部位、症状などが違う
まず、一般的な風邪はウイルスによる感染ですが、マイコプラズマ気管支炎は細菌による感染であるという違いがあります。
感染して炎症を起こす部位も、風邪では主に鼻からのどまでの上気道であるのに対して、マイコプラズマでは気管支や肺などの下気道に炎症を起こします。症状の出方も、風邪の場合はせきや鼻水が出ても熱が出ることは少なく、比較的軽く済みますが、マイコプラズマ気管支炎の場合は発熱から始まり、せきがだんだんひどくなるのが特徴です。
マイコプラズマ気管支炎は、発熱から始まってせきがだんだんひどくなるのが特徴。
マイコプラズマ気管支炎の症状は?
発熱から始まり、その後せきがひどくなる
マイコプラズマ気管支炎に感染した場合、症状は発熱から始まります。熱は37度台の微熱のこともあれば、38度以上出ることもあります。それに伴って、全身の倦怠感や頭痛など、一見すると「風邪?」と思うような症状が現れ、3~5日間ほど続きます。
3日目ぐらいからはせきが出てきて、だんだんひどくなっていきます。基本的には自然に治る病気ですが、せきは熱が下がったあとも、長いと数週間続くことがあります。
炎症が肺に及ぶと「マイコプラズマ肺炎」となり、X線で撮影すると肺にハッキリした影が映ります。
子どもによって、微熱程度だったり、少し高い熱が出たりとさまざまです。
マイコプラズマ気管支炎はうつる?
せきやくしゃみによってうつる病気
マイコプラズマという細菌は、主にせきやくしゃみによって他人に感染していきます。ただ、感染力はそれほど強くはありません。例えば、はしかや水ぼうそうだと同じ部屋にいただけで感染することがありますが、マイコプラズマの場合は同じ布団で寝たり、体を近づけて遊んだりなど密な接触がないと、うつる確率は低くなります。
とはいえ、潜伏期間が2~3週間と長く、感染に気づくまでに時間がかかるため、その分感染が広がる可能性もあります。
同じ部屋にいるだけなら簡単にうつることはありませんが、一緒に遊ぶなどすると感染する可能性が高くなります。
マイコプラズマ気管支炎の診断方法は?
検査+経過や感染状況の説明で正しく診断
発熱が長引いていたり、せきがだんだんひどくなっていて、マイコプラズマ気管支炎ではないかと思われる場合は、検査を行ないます。
検査には以下のようにいくつかの方法があります。しかし、検査をして診断することも必要ですが、それだけで診断を下せるものではありません。
正しい診断をしてもらうためにも、発病してからの症状の移り変わりや、保育園や幼稚園、小学校、家庭内での感染状況などについて、医師にできるだけ詳しく伝えるようにしましょう。
血液検査
かかり始めの時期と、2週間空けてからの2回検査を行ない、1回目と2回目でマイコプラズマ抗体の値が4倍以上になっていた場合はマイコプラズマに感染したと判断します。ただし、検査をする間隔が2週間あり、診断を待っていては治療が遅くなるため、「マイコプラズマ気管支だった」という確認の意味合いにしかなりません。
もう1つ、IgM抗体という抗体を調べる診断もあり、この場合は発病してから1週間で陽性反応が出るといわれています。ただ、マイコプラズマに一度感染するとIgM抗体がつくられているため、陽性になったとしても、その時に感染したものか、すでに感染した時のものなのかを判断することができません。
LAMP法
のどをめん棒でぬぐい、そこに付いたマイコプラズマの遺伝子を増幅して調べる検査です。いくつかある検査方法の中でも、最も確定できる診断方法ですが、一般のクリニックなどですぐに診断することはできず、専門的な検査機関に送るため、結果が出るまでに1~3日かかります。結果を見てから治療を開始するので、陽性だった場合には治療の開始が遅れます。
迅速検査
LAMP法と同様にのどをめん棒でぬぐい、そこに付いたマイコプラズマを検出する方法です。一般のクリニックでも15分程度で結果が出るのがメリットですが、陽性と出た場合に本当にマイコプラズマに感染したといえる確率は80~90%で、LAMP法に比べると低いというデメリットがあります。
マイコプラズマ気管支炎の治療は?
マクロライド系の抗菌薬が最初に処方されます
マイコプラズマは細胞膜がないので、一般的に細菌感染時に処方するペニシリンなどセフェム系の抗菌薬は効果がありません。そのため、クラリスやジスロマックなどマクロライド系の抗菌薬を使います。
抗菌薬は最後までしっかり飲み切るのが基本。良くなったように見えても、途中でやめないことが大切です。
ただ、最近ではマクロライド系の抗菌薬に耐性のあるマイコプラズマも出てきています。普通は、マクロライド系の抗菌薬を服用し始めると1~2日で熱が下がりますが、3日たっても熱が下がる傾向が見られない場合は、耐性菌の可能性があります。
その場合には、ミノマイシンなどテトラサイクリン系の抗菌薬を処方することがありますが、この薬には副作用があるため、注意が必要です。「黄染歯」といって、歯のエナメル質の形成不全を起こし、黄色くもろい歯になってしまうため、ふつうは永久歯が完成するといわれる8歳以上でなければ処方しません。それでも、耐性菌にはテトラサイクリン系の抗菌薬が効果的ですし、長期間でなければ副作用のリスクも低いので、処方されることがあります。
オゼックスなどニューキノロン系の抗菌薬も効果がありますが、ほとんどの場合、まずはマクロライド系の抗菌薬が処方されます。薬について心配な場合は、きちんと医師に説明してもらうようにしましょう。
家庭では適度に体を動かして
家庭では、子どもに熱があっても元気がある場合は、安静にしすぎないように気をつけてください。
「安静に」と言われると、布団にじっと横になっていなくてはいけないと思うママやパパが多いですが、そうするとたんが切れにくくなります。たんが絡んでいる場合は、適度に体を動かしたほうが切れやすくなると覚えておきましょう。背中をトントンしてあげるのも効果があります。
また、発熱していてもぐったりしていなければ、入浴してもかまいません。
マイコプラズマ気管支炎の予防法は?
手洗いとうがいを徹底し、生活も整えて
マイコプラズマ気管支炎には、ワクチンはありません。せきやくしゃみなどによって感染するので、風邪と同様に帰宅したらすぐに手を洗い、うがいをしましょう。
うがいができない年齢の子どもは、外から帰ったらのどをうるおして。
マスクは、病原体に感染してせきが出ている人が周囲にうつさいようにするには意味がありますが、予防としては効果がないので、特に着ける必要はありません。
免疫力が低下していると感染するリスクが高まるので、十分に睡眠をとり、栄養バランスの良い食事を食べさせてあげましょう。
規則正しい生活とバランスのとれた栄養が体を守ります。
写真出典(一部)/はじめてママ&パパの病気とホームケア
校正/主婦の友社校正室

片岡 正先生
かたおか小児科クリニック院長
かたおか小児科クリニック
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