葉酸のサプリとは?妊娠中にとる効果&注意点をご紹介【専門家監修】


井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長

上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士
この記事は、葉酸のサプリメントについてまとめたものです。葉酸サプリとはどのようなものなのか、いつから使用するものなのか、そのメリットや注意点などについて、専門家に教えていただきました。
葉酸のサプリとは?
葉酸サプリとは、妊娠中に欠かせない栄養素である「葉酸」を効率よくとれるサプリメントのこと。そもそも、葉酸とはどのような栄養素なのでしょうか。妊娠中に摂取が必要とされている理由から説明します。
葉酸は赤ちゃんの先天異常や貧血のリスクを低減させます
葉酸は、ビタミンB群のひとつで、細胞分裂やDNAの合成などに欠かせない栄養素です。そのため、ママのおなかの中で胎児がどんどん細胞を増やし、成長していく時期には必須の栄養素といえます。妊娠前~妊娠初期に葉酸を多く摂取することで、胎児の先天異常のひとつである神経管閉鎖障害のリスクを減らせることがわかっています。
神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもととなる神経管が正常に形成されないことで起こる障害をいい、無脳症や二分脊椎症※などが起こります。
神経管閉鎖障害のリスクを減らすために、妊娠計画中から妊娠初期には、葉酸や、その他のビタミンなどを多く含む栄養バランスのよい食事をとることがすすめられます。
※生まれつき脊柱管にあるべき脊髄神経が背骨の外にあるため、さまざまな神経障害が起こる病気
葉酸サプリは妊娠したら飲む必要があるの?
妊娠を希望する時期から飲むことがすすめられます
赤ちゃんの先天異常の多くは、妊娠10週以前に発生しています。とくに、中枢神経系の障害は妊娠7週未満のごく早期に発生するとされています。
脳と脊髄のもととなる神経管は、受精2週間後ぐらいに形成され始めます。その後、妊娠3週ごろから2週間ほどかけて背骨に覆われて円筒状に閉じていきます。このときに正常に閉じないと障害が起こります。
「この時期は、通常、『妊娠したかもしれない』と思うかどうか、ぐらいの時期。そして、葉酸が最も必要と考えられるのが、この、神経管が『閉じる』時期なのです」(井関先生)
そのため、妊娠を希望(計画)している時期から妊娠初期の間は、より多くの葉酸を摂取することが必要です。
葉酸をどのぐらいとればいいかについては、この後に説明しますが、葉酸は、水溶性のビタミンであり、体内に蓄積されにくい特徴があるため、毎日とり続ける必要があります。また、妊娠を希望(計画)する時期から妊娠初期には、とくに多くの葉酸を摂取することがすすめられ、食事だけでは十分な葉酸をとることができない可能性が考えられます。そのため、妊娠を希望(計画)する時期から妊娠初期には、サプリで補うことがすすめられます。
妊娠中期以降も葉酸は継続してとることが必要
葉酸には、新しい赤血球をつくり出す作用もあり、葉酸不足により赤血球に異常が起こり、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になるリスクがあります。妊娠中に葉酸が不足すると、ママが貧血になります。ママが貧血になると胎児に酸素や栄養を十分送れず、胎児の健全な成長が損なわれる可能性があります。
「葉酸不足は、神経管や赤血球だけでなく、その時期にでき上がりつつある体の器官に異常が生じるという研究結果もあります。葉酸不足は母体を通じて胎児の全身に悪影響をおよぼす原因になりうるのです」(井関先生)
妊娠初期はもちろん、中期以降も継続して葉酸を摂取することを心がけましょう。
食品とサプリでは葉酸の吸収率が異なります
葉酸には、食事からとる葉酸(食品に含まれる葉酸:ポリグルタミン酸)と、サプリメントや強化食品からとる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)があります。
そして、食事からとる葉酸と、サプリメントでとる葉酸とでは、体内での吸収率が異なります。食品に含まれる葉酸(ポリグルタミン酸)は、調理の段階で分解されたり、溶出したりすることで失われやすく、平均して50%ほどしか体内に吸収されません。一方、サプリメントなどによる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は、約85%と吸収率がよいため、有効に活用できます。
葉酸サプリはどのぐらいとればいい?食事よりサプリでとった方がいいの?
推奨される葉酸の摂取量は「食事摂取基準」により定められています
推奨される葉酸の摂取量の目安は、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」により示されており、時期によって異なります。
「日本人の食事摂取基準」は、5年ごとにさまざまな分野の専門家により検討・策定されており、来年度(2020年度)には、『日本人の食事摂取基準 2020年版』が使用される予定です。策定後の推奨量は以下のようになります。
【1日に摂取したい葉酸の推奨量】
・成人女性の基本摂取推奨量/240㎍(食事性葉酸)
・妊娠を希望(計画)している時期/基本量(240㎍:食事性葉酸)+400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)
・妊娠初期(~15週6日まで)/基本量(240㎍:食事性葉酸)+400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)
・妊娠中期(16週0日~27週6日)/基本量(240㎍:食事性葉酸)+240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)
・妊娠後期(28週0日~40週0日(~41週6日))/基本量(240㎍:食事性葉酸)+240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)
・授乳期/基本量(240㎍:食事性葉酸)+100㎍(食事性葉酸) →合計 340㎍(食事性葉酸)
妊娠計画中~妊娠初期は、より多くの摂取がすすめられます
成人女性の、葉酸の基本摂取量は1日に240㎍ですが、妊娠中期・後期は、それにプラス240㎍の葉酸摂取(食事性葉酸)がすすめられます。食事から葉酸をしっかりとりましょうということで、妊娠中は、妊娠による母体の変化や赤ちゃんの成長のために、より多くの葉酸が必要になるためです。240㎍という量は、「これだけ追加して摂取すれば、母体の血液(赤血球)中の葉酸の量を適切にキープできた」という報告から定められました。
一方、妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期(受胎前後)は、ふだんの食事からの基本量240㎍(食事性葉酸)では不足する可能性があるため、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)から400㎍摂取することが望まれています。神経管閉鎖障害のリスクを減らすためには、ママのおなかの中で胎児の神経管が形成される最も重要な時期に、葉酸が十分摂取できている栄養状態であることが望ましいとされているからです。
妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期には、成人女性の基本摂取量(食事性葉酸240㎍)に加え、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)400㎍をプラスし、1日に合計で640㎍(食事から240㎍+サプリメントや強化食品などから400㎍)摂取することが推奨されています。
家族に神経管閉鎖障害の人がいる場合や、過去に神経管閉鎖障害を持つ赤ちゃんを出産した経験がある場合などは、医師の管理のもと、葉酸を摂取することが必要になるため、早めに産婦人科医に相談しましょう。
葉酸摂取の基本は「食事から」
多くの摂取が必要な妊娠前~妊娠初期はサプリメントで補足を
「葉酸の摂取方法についてですが、基本的には、なるべく多種類の食材を使った栄養バランスのよい食事からとることが望ましいのです。なぜなら食事から葉酸を摂取した場合には過剰摂取による健康障害の心配がないからです。したがって妊娠中期、後期にはできるだけ食事から葉酸をとるように心がけましょう」(上田先生)
葉酸は、ブロッコリーやほうれん草、かぼちゃなどの緑黄色野菜や、いちご、マンゴー、オレンジなどの果物、納豆、あずきなどの豆類などに多く含まれています。
ただし、妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期(受胎前後)は、先に説明したように通常より多くの葉酸摂取が望ましい時期でもあり、ちょうどつわりの時期と重なることも多いもの。そのため、基本の食事に加えてサプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)で補うことがすすめられます。
葉酸の摂取は、基本的には食事からと考え、サプリメントは、より多く必要になる妊娠前~妊娠初期や、食事をあまりとることができないつわりの時期などに、それを補うものと考えましょう。
葉酸をサプリでとるメリットと注意点は?
葉酸が不足しがちな時期に効率よくとれることがメリット
つわりで食欲がないとき、葉酸を多く含む食品が食べられないときなども、サプリメントなら飲むだけで必要な量の葉酸を摂取することができます。つわりの時期は、葉酸をより多く摂取することが必要な時期と重なっていることが多いため、効率よく葉酸をとるためには有効と考えられます。
食事から葉酸を摂取する場合には、調理の段階でどのぐらい葉酸が失われるか、はっきりわかりにくいなどの理由から、摂取できる葉酸の量が不確実になることが考えられます。サプリメントからとることには、摂取量が明確にわかりやすい利点もあります。
サプリでとる場合は過剰摂取に注意
葉酸の摂取には、「耐容上限量」が定められています。耐容上限量とは、「多くの人にとって、習慣的に摂取しても健康障害をもたらすリスクがないと考えられる、上限となる値」のこと。つまり、この量以上を習慣的に摂取し続けると健康障害のリスクが高まることが考えられます。
食事摂取基準(厚生労働省)により、1日に摂取する葉酸の耐容上限量は、妊娠していないときで900~1000㎍とされています。これは、食事から摂取される食事性葉酸ではなく、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の耐容上限量です。
葉酸は、通常の食品のみで摂取している人では過剰摂取による健康障害の心配はありません。ただし、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)でとる場合は、過剰に摂取することで、発熱やじんましん、痒み、呼吸障害などの「葉酸過敏症」を起こす可能性があります。また、血液検査をしたときに貧血が数値にあらわれず、正しい診断ができないことも。
「例えば、葉酸のサプリメント以外に、鉄分やビタミンのサプリメントもとっている場合、それらのサプリメントに葉酸が含まれていることもあり、その場合は過剰摂取になる可能性があります。1~2日とりすぎたとしても問題はありませんが、長期間にわたって過剰にとり続けることがないよう気をつけましょう」(上田先生)
耐容上限量は、妊娠中や授乳期については定められてはいません。そのため、妊娠中は、「とりすぎ」についてあまり心配することはありませんが、妊娠していないとき(成人女性)の耐容上限量(900~1000㎍)を参考に、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は適切な量を摂取することが大切です。
サプリメントは成分や安全性などをきちんと確認しましょう
サプリメントや強化食品は医薬品とは違い、一定の規格があるわけではなく、含まれる成分や量などもさまざまです。ひとつだけの栄養成分が含まれるものもあれば、複数の成分が添加されているものもあり、過剰摂取や成分の相互作用などの心配についても考える必要があります。
選ぶときは、メーカーやブランドの問い合わせ窓口がきちんと設置されているところを選びましょう。葉酸のサプリメントでも、葉酸だけでなく、カルシウムや鉄分など妊婦さんに不足しがちな栄養素がプラスされているタイプも多いようです。含まれる成分や、使用している素材、製造過程、添加物の有無など、品質や安全性も十分に確認したうえで選びましょう。
サプリメントや強化食品の形状としては、錠剤、タブレット、キャンディなど、いくつかのタイプがあります。ライフスタイルなどに合わせて、とりやすいものを選ぶといいでしょう。
ただし、お菓子のタイプは、手軽さとおいしさから、つい食べすぎてしまう心配も。過剰摂取を防ぐためにも、とる量を決め、食事からの葉酸摂取が基本であることを忘れないようにしましょう。
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文/出村真理子
取材協力/日本先天異常学会
参照文献/
国立健康・栄養研究所 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail652.html
日本人の食事摂取基準 2020年版(厚生労働省)
校正/主婦の友社校正室

井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長

上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士
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