果物で葉酸をとることはできる?注意点&おすすめの食材も【専門家監修】

 専門家監修
公開日:2019/10/17
更新日:2019/11/05
果物で葉酸をとることはできる?注意点&おすすめの食材も【専門家監修】
監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士

この記事は、果物から葉酸をとることについてまとめたものです。妊娠中には積極的にとるとよいとされている葉酸。そんな葉酸を果物からとれるのかどうか、とる場合の注意点などについて、専門家にお聞きしました。

妊婦が葉酸を摂取するとどんな効果が期待できる?

葉酸は赤ちゃんの先天異常や貧血のリスクを低減させます

葉酸は、ビタミンB群のひとつで、細胞分裂やDNAの合成などに欠かせない栄養素です。そのため、ママのおなかの中で胎児がどんどん細胞を増やし、成長していく時期には必須の栄養素といえます。妊娠前~妊娠初期に葉酸を多く摂取することで、胎児の先天異常のひとつである神経管閉鎖障害のリスクを減らせることがわかっています。

神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもととなる神経管が正常に形成されないことで起こる障害をいい、無脳症や二分脊椎症などが起こります。
神経管閉鎖障害のリスクを減らすために、妊娠計画中から妊娠初期には、葉酸や、その他のビタミンなどを多く含む栄養バランスのよい食事をとることがすすめられます。

※生まれつき脊柱管にあるべき脊髄神経が背骨の外にあるため、さまざまな神経障害が起こる病気

葉酸には、新しい赤血球をつくり出す作用もあり、葉酸不足により赤血球に異常が起こり、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になるリスクがあります。妊娠中に葉酸が不足すると、ママが貧血になります。ママが貧血になると胎児に酸素や栄養を十分送れないので、胎児の健全な成長が損なわれる可能性があります

「葉酸不足は、神経管や赤血球だけでなく、その時期にでき上がりつつある体の器官に異常が生じるという研究結果もあります。葉酸不足は母体を通じて胎児の全身に悪影響をおよぼす原因になりうるのです」(井関先生)
妊娠初期はもちろん、中期以降も継続して葉酸を摂取することを心がけましょう。

食品とサプリでは葉酸の吸収率が異なります

葉酸には、食事からとる葉酸(食品に含まれる葉酸:ポリグルタミン酸)と、サプリメントや強化食品からとる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)があります。そして、食事からとる葉酸と、サプリメントでとる葉酸とでは、体内での吸収率が異なります。

食品に含まれる葉酸(ポリグルタミン酸)は、調理の段階で分解されたり、溶出したりすることで失われやすく、平均して50%ほどしか体内に吸収されません。一方、サプリメントなどによる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は、約85%と吸収率がよいため、有効に活用できます。

推奨される葉酸の摂取量は「食事摂取基準」により定められています

推奨される葉酸の摂取量の目安は、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」により示されており、時期によって異なります。

「日本人の食事摂取基準」は、5年ごとにさまざまな分野の専門家により検討・策定されており、来年度(2020年度)には、『日本人の食事摂取基準 2020年版』が使用される予定です。策定後の推奨量は以下のようになります。

【1日に摂取したい葉酸の推奨量】

・成人女性の基本摂取推奨量/240㎍(食事性葉酸)

・妊娠を希望(計画)している時期/基本量(240㎍:食事性葉酸)+400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠初期(~15週6日まで)/基本量(240㎍:食事性葉酸)+400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠中期(16週0日~27週6日)/基本量(240㎍:食事性葉酸)+240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)

・妊娠後期(28週0日~40週0日(~41週6日))/基本量(240㎍:食事性葉酸)+240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)

・授乳期/基本量(240㎍:食事性葉酸)+100㎍(食事性葉酸) →合計 340㎍(食事性葉酸)

妊娠計画中~妊娠初期は、より多くの摂取がすすめられます

成人女性の、葉酸の基本摂取量は1日に240㎍ですが、妊娠中期・後期は、それにプラス240㎍の葉酸摂取(食事性葉酸)がすすめられます。食事から葉酸をしっかりとりましょうということで、妊娠中は、妊娠による母体の変化や赤ちゃんの成長のために、より多くの葉酸が必要になるためです。240㎍という量は、「これだけ追加して摂取すれば、母体の血液(赤血球)中の葉酸の量を適切にキープできた」という報告から定められました。

一方、妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期(受胎前後)は、ふだんの食事からの基本量240㎍(食事性葉酸)では不足する可能性があるため、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)から400㎍摂取することが望まれています。神経管閉鎖障害のリスクを減らすためには、ママのおなかの中で胎児の神経管が形成される最も重要な時期に、葉酸が十分摂取できている栄養状態であることが望ましいとされているからです。

赤ちゃんの先天異常の多くは、妊娠10週以前に発生しています。とくに、中枢神経系の障害は妊娠7週未満のごく早期に発生するとされています。
脳と脊髄のもととなる神経管は、受精2週間後ぐらいに形成され始めます。その後、妊娠3週ごろから2週間ほどかけて背骨に覆われて円筒状に閉じていきます。このときに正常に閉じないと障害が起こります。

「この時期は、通常、『妊娠したかもしれない』と思うかどうか、ぐらいの時期。そして、葉酸が最も必要と考えられるのが、この、神経管が『閉じる』時期なのです」(井関先生)
そのため、妊娠を希望(計画)している時期から妊娠初期の間は、成人女性の基本摂取量(240㎍:食事から得られる葉酸)に加え、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)400㎍をプラスし、1日に合計で640㎍(食事から240㎍+サプリメントや強化食品などから400㎍)摂取することが推奨されています。

家族に神経管閉鎖障害の人がいる場合や、過去に神経管閉鎖障害を持つ赤ちゃんを出産した経験がある場合などは、医師の管理のもと、葉酸を摂取することが必要になるため、早めに産婦人科医に相談しましょう。

果物から葉酸をとることはできる?そのメリットは?

熱に弱い葉酸を摂取するのに、生で食べられる果物はおすすめ

葉酸は水溶性のビタミンで体内に蓄積されにくいため、毎日コツコツととり続けることが必要です。葉酸は、ブロッコリーやほうれん草、かぼちゃなどの緑黄色野菜や、いちご、マンゴー、オレンジなどの果物、納豆、あずきなどの豆類などに多く含まれています

葉酸には、熱に弱く加熱調理によって失われやすい特徴もあります。そのため、生で食べることのできる果物はおすすめです。
「いちごやオレンジなどの果物には葉酸が多く含まれていますし、そのまま食べられるので手軽に葉酸が摂取できますね。つわりなどで食事があまりとれないときも、果物なら食べやすいでしょう」(上田先生)

また、果物には葉酸だけでなく、ビタミンCやカリウム、食物繊維なども含まれているため、妊娠中には毎日適量を摂取することがすすめられます。

果物から葉酸をとるときのポイントは、以下のとおりです。

*新鮮なうちに食べて

鮮度が落ちると葉酸の量も減るため、なるべく新鮮なものを選び、できるだけ買った日に食べるのがベストです。

*水で洗うならサッと

葉酸は水溶性のため、長い時間水にさらすと栄養分が水に溶け出してしまいます。洗うときは短時間でサッと洗う程度にしましょう。

*保存する場合は冷蔵庫か冷暗所で

葉酸は光にも弱く、日の当たる場所に置いておくと、3日間で約70%の葉酸が分解されてしまいます。保存は冷蔵庫か涼しく暗い場所で。

葉酸が多く含まれる食品

※食品名(目安量)―葉酸含有量(㎍)

ほうれん草 2株(60g)―126㎍
モロヘイヤ(50g)―125㎍
芽キャベツ 5個(50g)―120㎍
グリーンアスパラガス 3本(60g)―114㎍
ブロッコリー 2房(50g)―105㎍
アボカド 1/2個(100g)―84㎍
赤ピーマン 1個(50g)―34㎍
さつまいも 中1/2本(100g)―49㎍
いちご 中5個(76g)―68㎍
マンゴー 1/2個―76㎍
オレンジ 中1個(130g)―44㎍
調整豆乳 200cc―62㎍
納豆(50g)―60㎍
大豆(黄大豆・乾燥)(25g)―55㎍
(七訂日本食品標準成分表/科学技術庁資源調査会編 より)

妊娠中に葉酸を摂取するときの注意点は?

葉酸の摂取には「耐容上限量」が定められています

食事摂取基準(厚生労働省)により、1日に摂取する葉酸の耐容上限量は、妊娠していないときで900~1000㎍とされています。これは食事から摂取される食事性葉酸ではなく、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の耐容上限量です。

耐容上限量とは、「多くの人にとって、習慣的に摂取しても健康障害をもたらすリスクがないと考えられる、上限となる値」のこと。つまり、この量以上を習慣的に摂取し続けると健康障害のリスクが高まることが考えられます。

ただし、葉酸は通常の食品のみで摂取している人では、過剰摂取による健康障害の心配はありません。例えば、葉酸を1000㎍摂取しようと思ったら、いちごなら中ぐらいの大きさのものを73~74粒とる必要があります。食事から摂取できる葉酸の吸収率が約50%であることを考えると、この倍の量を食べる必要があり、それを継続するのは大変です。そのため、果物から葉酸を「とりすぎること」は、まずないと考えていいでしょう。

サプリメントなどでとる場合には、過剰摂取に注意を

とりすぎに注意が必要なのは、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)でとる場合です。サプリメントなどから過剰に摂取すると、発熱やじんましん、痒み、呼吸障害などの「葉酸過敏症」を起こす可能性があります。また、血液検査をしたときに貧血が数値にあらわれず、正しい診断ができないことも。

「例えば、葉酸のサプリメント以外に、鉄分やビタミンのサプリメントもとっている場合、それらのサプリメントに葉酸が含まれていることもあり、その場合は過剰摂取になる可能性があります。1~2日とりすぎたとしても問題はありませんが、長期間にわたって過剰にとり続けることがないよう気をつけましょう」(上田先生)

耐容上限量は、妊娠中や授乳期については定められてはいません。そのため、妊娠中は、初期、中期、後期に関わらず、「とりすぎ」についてあまり心配することはありませんが、妊娠していないとき(成人女性)の耐容上限量(900~1000㎍)を参考に、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は適切な量を摂取することが大切です。

控えた方がいい果物や食べ合わせに注意が必要なものは?

妊娠中に、とくに控えたほうがいい果物などはありませんが、葉酸をとる場合には、一部、食べ合わせに注意が必要なものがあります。

体内には、葉酸を活性化させる酵素がありますが、オレンジジュースとバナナは、この酵素の働きを妨げる成分を含んでいます。そのため、オレンジジュースやバナナを、葉酸を含む食品と一緒に食べると、葉酸の吸収率が悪くなってしまいます。とる場合には、ほかの葉酸を含む食品とは別の時間にとるようにするといいでしょう。

文/出村真理子
取材協力/日本先天異常学会
参照文献/
国立健康・栄養研究所 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail652.html
七訂日本食品標準成分表(科学技術庁資源調査会編)
日本人の食事摂取基準 2020年版(厚生労働省)
校正/主婦の友社校正室

監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士
栄養学博士・管理栄養士。小児栄養学の第一人者として活躍するかたわら、トランスコウプ総合研究所取締役として栄養コーチングの手法を開発。日本栄養改善学会評議員や日本小児栄養研究会運営委員なども務める。『はじめてママ&パパの離乳食』『離乳食大全科』(主婦の友社)など監修書多数。

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