妊娠後期にも葉酸の摂取は必要?とりすぎのリスクは?【専門家監修】

 専門家監修
公開日:2019/10/15
更新日:2019/11/05
妊娠後期にも葉酸の摂取は必要?とりすぎのリスクは?【専門家監修】
監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士

この記事では、妊娠後期の葉酸摂取について紹介します。「妊娠中、とくに妊娠初期に多くとることが大切」と言われる葉酸ですが、妊娠後期にも必要なのでしょうか?妊娠後期の妊婦さんの体の状態、葉酸の必要性、多くとりすぎることのリスク、おすすめのとり方などを専門家にお聞きしました。

妊娠後期の妊婦さんの体の状態は?

おなかもますます大きくなり母体への負担も大きくなります

妊娠後期になると、赤ちゃんの成長にともないおなかもさらに大きくなり、ママ自身が感じる以上に母体への負担が大きくなってきます。血液量が増えるため、血が薄い状態になって貧血になりやすくなり、大きくなった子宮に胃や肺などが圧迫され、胃もたれや動悸、息切れなどの症状がみられることも。

一度にたくさん食べられなくなるため、少量ずつこまめに食事をとったり、貧血を予防するために鉄分を多く含む食事を考えたりしましょう。胎動が強くなって夜何度も目が覚めたり、腰痛、足のつり、むくみなどのマイナートラブルに悩まされることも。

お産が近づいて赤ちゃんが骨盤内に下がってくると、胃もたれや動悸などは軽くなりますが、膀胱や腸を圧迫することで頻尿や便秘になりやすくなります。
赤ちゃんに会える日までもう少し。出産の準備を進めながら、リラックスしてその時を待ちましょう。

妊娠後期に葉酸を摂取するとどんな効果が期待できる?

葉酸は赤ちゃんの先天異常や貧血のリスクを低減させます

葉酸は、ビタミンB群のひとつで、細胞分裂やDNAの合成などに欠かせない栄養素です。そのため、ママのおなかの中で胎児がどんどん細胞を増やし、成長していく時期には必須です。とくに、妊娠前~妊娠初期に葉酸を多く摂取することで、胎児の先天異常のひとつである神経管閉鎖障害のリスクを減らせることがわかっています。

神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもととなる神経管が正常に形成されないことで起こる障害をいい、無脳症や二分脊椎症などが起こります。
神経管閉鎖障害のリスクを減らすために、妊娠計画中から妊娠初期には、葉酸や、その他のビタミンなどを多く含む栄養バランスのよい食事をとることがすすめられます。

※生まれつき脊柱管にあるべき脊髄神経が背骨の外にあるため、さまざまな神経障害が起こる病気

悪性貧血を予防するため、妊娠中期・後期にも積極的に摂取を

妊娠前~妊娠初期に、積極的に摂取することがすすめられる葉酸ですが、妊娠中期や後期にはとらなくていい、というわけではありません。

「葉酸には、新しい赤血球をつくり出す作用もあり、葉酸不足により赤血球に異常が起こり、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になるリスクがあります。妊娠中に葉酸が不足すると、ママが貧血になります。ママが貧血になると胎児に酸素や栄養を十分送れないので、胎児の健全な成長が損なわれる可能性があります。」(井関先生)

また、母乳は血液からつくられるため、産後の授乳期にも葉酸を積極的に摂取することで、母乳の質が向上することが期待できます。
妊娠初期はもちろん、中期・後期や授乳期にも積極的に葉酸をとることがすすめられます

妊娠後期に必要な葉酸の摂取量は? 

成人女性の基本摂取量に「プラス240㎍」の摂取がすすめられます

葉酸は、水溶性のビタミンであり、体内に蓄積されにくい特徴があります。また、推奨される摂取量が多いため、毎日コツコツと摂り続けることが必要です。推奨される葉酸の摂取量の目安は、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」に示されており、時期によって異なります。
また、葉酸には食事からとる葉酸(食品に含まれる葉酸:ポリグルタミン酸)と、サプリメントや強化食品からとる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)があります。

「日本人の食事摂取基準」は、5年ごとにさまざまな分野の専門家により検討・策定されており、来年度(2020年度)には『日本人の食事摂取基準 2020年版』が使用される予定です。策定後の推奨量は以下のようになります。

【1日に摂取したい葉酸の推奨量】

・成人女性の基本摂取推奨量/240㎍(食事性葉酸)

・妊娠を希望(計画)している時期/基本量(240㎍:食事性葉酸)400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠初期(~15週6日まで)/基本量(240㎍:食事性葉酸)400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠中期(16週0日~27週6日)/基本量(240㎍:食事性葉酸)240㎍(食事性葉酸) →合計 480㎍(食事性葉酸)

・妊娠後期(28週0日~40週0日(~41週6日))/基本量(240㎍:食事性葉酸)240㎍(食事性葉酸) →合計 480㎍(食事性葉酸)

・授乳期/基本量(240㎍:食事性葉酸)100㎍(食事性葉酸) →合計 340㎍(食事性葉酸)

「妊娠中期・後期には、葉酸の分解や排泄が進みやすくなるという報告があります。つまり、より体内に蓄積されにくくなることが考えられるため、悪性貧血を予防するために、中期以降も積極的に葉酸をとり続けることが大切なのです」(上田先生)
中期以降には、妊娠前の摂取量にプラス240㎍(食事性葉酸)し、1日で合計480㎍(食事性葉酸)の摂取を心がけましょう。

貧血の予防や良質な母乳の分泌のために、産後の授乳期にも積極的に葉酸を摂取することがすすめられています。産後は、妊娠前の240㎍(食事性葉酸)に100㎍(食事性葉酸)プラスして1日で合計340㎍の摂取を心がけられるといいですね。

妊娠後期に葉酸をとりすぎるとどうなる?

葉酸過敏症がみられたり、貧血が正しく診断できなくなることが

食事摂取基準(厚生労働省)により、1日に摂取する葉酸の耐容上限量は、妊娠していないときで900~1000㎍とされています。これは食事から摂取される食事性葉酸ではなく、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の耐容上限量です。
耐容上限量とは、「多くの人にとって、習慣的に摂取しても健康障害をもたらすリスクがないと考えられる、上限となる値」のこと。つまり、この量以上を習慣的に摂取し続けると健康障害のリスクが高まることが考えられます。

葉酸は通常の食品のみで摂取している人では過剰摂取による健康障害の心配はありません。ただし、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)でとる場合は、過剰摂取することで、発熱やじんましん、かゆみ、呼吸障害などの「葉酸過敏症」を起こす可能性があります。また、血液検査をしたときに貧血が数値にあらわれず、正しい診断ができないことも。

妊娠中や授乳期については、耐容上限量が定められていませんが、妊娠していないとき(成人女性)の耐容上限量(900~1000㎍)を参考に、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は適切な量を摂取することが大切です。

妊娠後期に葉酸をとる方法は?

基本は食事からとり、足りない分はサプリメントで補足を

葉酸の摂取方法についてですが、基本的には、なるべく多種類の食材を使った栄養バランスの良い食事からとることが望ましいのです。なぜなら食事から葉酸を摂取した場合には過剰摂取による健康障害の心配がないからです。従って妊娠中期、後期には出来るだけ食事から葉酸を摂るように心がけます。

ただし妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期(受胎前後)の時期は、先に説明したように通常より多くの葉酸摂取が望ましいため、基本の食事に加えてサプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)で補うことがすすめられます。

「妊娠を希望する時期から妊娠初期まではプラスすべき葉酸の摂取量が多いため、食事だけでは必要な量をとることが難しいかもしれません。そのため、妊娠初期にはサプリメントは有効と考えられます。しかし、妊娠中期や妊娠後期には、できるかぎり食事からとれるよう心がけましょう」(上田先生)

食事から葉酸を上手にとる5つのポイント

「食事からとる場合、葉酸は水溶性ビタミンで熱に弱い性質があるため、調理するときに分解されたり、ゆで汁に溶け出たりして、およそ50%が失われてしまいます。なるべく効率よく摂取するために、調理するときには以下のことに気をつけましょう」(上田先生)

①1日350g以上の野菜を食べる

葉酸は、野菜に多く含まれますが、調理により半分が失われてしまいます。必要な量の葉酸を摂取するためには、なるべく多くの種類の野菜を1日350g以上食べることが必要です。魚介類や肉、牛乳などビタミンB12を含む食品と一緒にとると、働きがアップします。妊娠中期以降は1日400g、後期以降は450gを目標に、毎食たっぷり野菜をとりましょう。

②新鮮なうちに、なるべく生で食べる

鮮度が落ちると葉酸の量も減るので、野菜や果物はなるべく新鮮なものを選び、できるだけ買った日に食べるのがベスト。葉酸は水や熱に弱いため、生の状態がベターです。

③水で洗うときは短時間で。汁ごと食べて

葉酸は水溶性のため、長い時間水にさらすと栄養分が水に溶け出してしまいます。洗うときはササッと。みそ汁やスープ、煮びたしなど、汁ごと食べられるメニューがおすすめです。

④加熱時間はできるだけ短く

葉酸は熱に弱いため、加熱時間は短くしたいもの。ゆでるとゆで汁に葉酸が溶け出てしまうため、蒸したり、油で炒めたりする調理法がおすすめです。油炒めにしたり、片栗粉でとろみをつけたりすると、溶け出た葉酸を逃さずとることができます。

⑤食品は冷蔵庫か冷暗所で保管を

葉酸は光にも弱く、日の当たる場所に置いておくと、3日間で約70%の葉酸が分解されてしまいます。冷蔵庫に入れない食品は、涼しく暗い場所で保管しておきましょう。

葉酸が多く含まれる食品

葉酸は、緑黄色野菜や果物、豆類などに多く含まれています。体内に蓄積されにくく、調理によって失われる量も多いことを考え、毎日コツコツととることが大切です。

※食品名(目安量)―葉酸含有量(㎍)

ほうれん草 2株(60g)―126㎍
モロヘイヤ(50g)―125㎍
芽キャベツ 5個(50g)―120㎍
グリーンアスパラガス 3本(60g)―114㎍
ブロッコリー 2房(50g)―105㎍
アボカド 1/2個(100g)―84㎍
赤ピーマン 1個(50g)―34㎍
さつまいも 中1/2本(100g)―49㎍
いちご 中5個(76g)―68㎍
マンゴー 1/2個―76㎍
オレンジ 中1個(130g)―44㎍
調整豆乳 200cc―62㎍
納豆(50g)―60㎍
大豆(黄大豆・乾燥)(25g)―55㎍
(七訂日本食品標準成分表/科学技術庁資源調査会編 より)

食品とサプリでは葉酸の吸収率が異なります

食事からとる葉酸と、サプリメントでとる葉酸とでは、体内での吸収率が異なります。食品に含まれる葉酸(ポリグルタミン酸)は、調理の段階で分解されたり、溶出したりすることで失われやすく、平均して50%ほどしか体内に吸収されません。一方、サプリメントなどによる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は、約85%と吸収率よいため、有効に活用できることがメリットと考えられます。

サプリメントでは過剰摂取に注意が必要

食事から葉酸を摂取する場合には、調理の段階でどのぐらい葉酸が失われるか、はっきりわかりにくいなどの理由から、摂取できる葉酸の量が不確実になることが考えられます。サプリメントからとると、摂取量が明確にわかりやすいというメリットもあります。

「一方で、サプリメントや強化食品では過剰摂取にならないよう注意が必要です。例えば、葉酸のサプリメント以外に、鉄分やビタミンのサプリメントもとっている場合、それらのサプリメントに葉酸が含まれていることもあり、その場合は過剰摂取になる可能性があります。1~2日とりすぎたとしても問題はありませんが、長期間にわたって過剰にとり続けることがないよう気をつけましょう」(上田先生)

妊娠後期に葉酸をとるためにおすすめのメニューやサプリメントの選び方は?

葉酸に加え、不足しがちな鉄分やカルシウムも意識して摂取を

葉酸を豊富に含む、緑黄色野菜や果物、豆製品を使ったメニューをとり入れましょう。葉酸は熱や水に弱いため、果物は新鮮なうちにそのまま食べるのがおすすめです。野菜や豆類などはサッと煮てスープやシチューなどにして、汁も一緒にとると溶け出した葉酸も逃すことなくとることができます。

葉酸のほか、妊娠中には鉄分やカルシウムも不足しやすい栄養素といえます。とくに鉄は、妊娠中期・後期には妊娠前の倍以上の量をとる必要があります。赤身肉、赤身魚(カジキなど)、牡蠣、あさりやしじみ、干しエビ、海藻、豆類、緑黄色野菜など、鉄分を多く含む食品も意識してとることを心がけましょう

サプリメントは成分や安全性などをきちんと確認しましょう

サプリメントや強化食品は医薬品とは違い、一定の規格があるわけではなく、含まれる成分や量などもさまざまです。ひとつだけの栄養成分が含まれるものもあれば、複数の成分が添加されているものもあり、過剰摂取や成分の相互作用などの心配もあります。

選ぶときは、メーカーやブランドの問い合わせ窓口がきちんと設置されているところを選びましょう。葉酸のサプリメントでも、葉酸だけでなく、カルシウムや鉄分など妊婦さんに不足しがちな栄養素がプラスされているタイプも多いようです。含まれる成分や、使用している素材、製造過程、添加物の有無など、品質や安全性も十分に確認したうえで選ぶことが必要です。

サプリメントや強化食品の形状としては、錠剤、タブレット、キャンディなど、いくつかのタイプがあります。ライフスタイルなどに合わせて、とりやすいものを選ぶといいでしょう。
「ただし、お菓子のタイプは、手軽さとおいしさから、つい食べすぎてしまう心配も。過剰摂取を防ぐためにも、とる量を決め、食事からの葉酸摂取が基本ということを忘れずに」(上田先生)

文/出村真理子
協力/日本先天異常学会
参照文献/
国立健康・栄養研究所 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail652.html
七訂日本食品標準成分表(科学技術庁資源調査会編)
日本人の食事摂取基準 2020年版(厚生労働省)

校正/主婦の友社校正室

監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士
栄養学博士・管理栄養士。小児栄養学の第一人者として活躍するかたわら、トランスコウプ総合研究所取締役として栄養コーチングの手法を開発。日本栄養改善学会評議員や日本小児栄養研究会運営委員なども務める。『はじめてママ&パパの離乳食』『離乳食大全科』(主婦の友社)など監修書多数。

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