葉酸の摂取量と、妊娠中に摂ることの効果を知りたい!【専門家監修】

 専門家監修
公開日:2019/10/08
更新日:2019/10/10
葉酸の摂取量と、妊娠中に摂ることの効果を知りたい!【専門家監修】
監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士

この記事では、妊娠中に葉酸を摂取するメリットについて紹介しています。「妊娠中にとると良い」と言われる葉酸について、どのような効果が期待できるのか、妊娠中の摂取量、とりすぎによるリスク、とり方のポイントなどを専門家にお聞きしました。

妊婦が葉酸を摂ることにはどんな効果があるの?

新生児障害の発症リスクを抑えるという報告があります

葉酸は、ビタミンB群のひとつで、細胞分裂やDNAの合成などに欠かせない栄養素です。そのため、ママのおなかの中で胎児がどんどん細胞を増やし、成長していく時期には必須の栄養素といえます。とくに、妊娠初期(受胎前後)に葉酸を多く摂取することで、胎児の先天異常のひとつである神経管閉鎖障害のリスクを減らせることがわかっています。

神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄の元となる神経管が正常に形成されないことで起こる障害をいい、無脳症や二分脊椎症などが起こります。
神経管閉鎖障害のリスクを減らすために、妊娠計画中から妊娠初期には、葉酸や、その他のビタミンなどを多く含む栄養バランスの良い食事をとることが勧められます。

※生まれつき脊柱管にあるべき脊髄神経が背骨の外にあるため、様々な神経障害が起こる病気

巨赤芽球性貧血の予防に有効

葉酸には、新しい赤血球をつくり出す作用もあり、葉酸不足により赤血球に異常が起こり、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)になるリスクがあります。妊娠中に葉酸が不足すると、ママが貧血になります。ママが貧血になると胎児に酸素や栄養を充分送れないので、胎児の健全な成長が損なわれる可能性があります。

葉酸を十分に摂取することで、ママの悪性貧血を予防することにつながります。また、母乳は血液からつくられるため、産後の授乳期にも葉酸を積極的に摂取することで、母乳の質が向上することも期待できます。

「葉酸不足は、神経管や赤血球だけでなく、その時期にでき上がりつつあるからだの器官に異常が生じるという研究結果もあります。このように、葉酸不足は母体を通じて胎児の全身に悪影響をおよぼす原因になり得ます」(井関先生)

葉酸の摂取量は?どのぐらい必要なの?

妊娠の時期によって異なります

葉酸は、水溶性のビタミンであり、体内に蓄積されにくい特徴があります。また、推奨される摂取量が多いため、毎日コツコツと摂り続けることが必要です。推奨される葉酸の摂取量の目安は、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」に示されており、時期によって異なります。
また、葉酸には、食事からとる葉酸(食品に含まれる葉酸:ポリグルタミン酸)と、サプリメントや強化食品からとる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)があります。

「日本人の食事摂取基準」は、5年ごとにさまざまな分野の専門家により検討・策定されており、来年度(2020年度)には、「日本人の食事摂取基準 2020年版」が使用される予定です。策定後の推奨量は以下のようになります。

【1日に摂取したい葉酸の推奨量】

・成人女性の基本摂取推奨量/240㎍(食事性葉酸)

・妊娠を希望(計画)している時期/基本量(240㎍:食事性葉酸)400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠初期(~15週6日まで)/基本量(240㎍:食事性葉酸)400㎍(サプリメントなどからとるプテロイルモノグルタミン酸)

・妊娠中期(16週0日~27週6日)/基本量(240㎍:食事性葉酸)240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)

・妊娠後期(28週0日~40週0日(~41週6日))/基本量(240㎍:食事性葉酸)240㎍(食事性葉酸)→合計 480㎍(食事性葉酸)

・授乳期/基本量(240㎍:食事性葉酸)100㎍(食事性葉酸) →合計 340㎍(食事性葉酸)

妊娠計画中~妊娠初期は、より多くの摂取がすすめられます

妊娠中期と後期は、非妊娠時からプラスして240㎍の葉酸摂取(食事性葉酸)がすすめられます。食事から葉酸をしっかりとりましょう、ということで、妊娠中は、妊娠による母体の変化や赤ちゃんの成長のために、より多くの葉酸が必要になるためです。240㎍という量は、「これだけ追加して摂取すれば、母体の血液(赤血球)中の葉酸の量を適切にキープできた」という報告から定められました。

一方、妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期は、ふだんの食事からの基本量(240㎍(食事性葉酸))では不足する可能性があるので、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プロテイルモノグルタミン酸)から400㎍摂取することが望まれています。
神経管閉鎖障害のリスクを減らすためには、ママのおなかの中で胎児の神経管が形成される最も重要な時期に、葉酸が十分摂取できている栄養状態であることが望ましいとされているからです。

赤ちゃんの先天異常の多くは、妊娠10週以前に発生しています。とくに、中枢神経系の障害は妊娠7週未満のごく早期に発生するとされています。
脳と脊髄の元となる神経管は、受精2週間後ぐらいに形成され始めます。その後、妊娠3週ごろから2週間ほどかけて背骨に覆われて円筒状に閉じていきます。このときに正常に閉じないと障害が起こります。

「この時期は、通常、『妊娠したかもしれない』と思うかどうか、ぐらいの時期。そして、葉酸が最も必要と考えられるのが、この、神経管が『閉じる』時期なのです」(井関先生)
そのため、妊娠を希望(計画)している時期から妊娠初期の間は、成人女性の基本摂取量(240㎍:食事から得られる葉酸)に加え、サプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)400㎍をプラスし、1日に合計で640㎍(食事から240㎍+サプリメントや強化食品などから400㎍)摂取することが推奨されています。

家族に神経管閉鎖障害の人がいる場合や、過去に神経管閉鎖障害を持つ赤ちゃんを出産した経験がある場合などは、医師の管理のもと、葉酸を摂取することが必要になるため、早めに産婦人科医に相談しましょう。

妊娠中期以降や産後の授乳期も積極的に摂取を

「妊娠中期・後期には、葉酸の分解や排泄が進みやすくなるという報告があります。つまり、より体内に蓄積されにくくなることが考えられるため、悪性貧血を予防するために、中期以降も積極的に葉酸をとり続けることが大切なのです」(上田先生)
中期以降には、妊娠前の摂取量に240㎍(食事性葉酸)プラスし、1日で合計480㎍(食事性葉酸)の摂取を心がけましょう。

貧血の予防や良質な母乳の分泌のために、産後の授乳期にも積極的に葉酸を摂取することがすすめられています。産後は、妊娠前の240㎍(食事性葉酸)に100㎍(食事性葉酸)プラスして1日で合計340㎍の摂取を心がけられるといいですね。

基本は食事から摂取。足りない分はサプリでプラス

葉酸の摂取方法についてですが、基本的には、なるべく多種類の食材を使った栄養バランスの良い食事からとることが望ましいのです。なぜなら食事から葉酸を摂取した場合には過剰摂取による健康障害の心配がないからです。したがって、妊娠中期・後期にはできるだけ食事から葉酸をとるように心がけましょう。
ただし、妊娠を希望(計画)している時期~妊娠初期(受胎前後)の時期は前述の通り、通常より多くの葉酸摂取が望ましいため、基本の食事に加えてサプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)で補うことがすすめられます。

「食事からとる場合、葉酸は水溶性ビタミンで熱に弱い性質があるため、調理するときに分解されたり、ゆで汁に溶け出たりして、およそ50%が失われてしまいます。なるべく効率よく摂取するために、調理するときには以下のことに気をつけましょう」(上田先生)

*食事から葉酸を上手に摂る5つのポイント

① 1日350g以上の野菜を食べる

葉酸は、野菜に多く含まれますが、調理により半分が失われてしまいます。必要な量の葉酸を摂取するためには、なるべく多くの種類の野菜を1日350g以上食べることが必要です。魚介類や肉、牛乳などビタミンB12を含む食品と一緒にとると、働きがアップします。妊娠中期以降は1日400g、後期以降は450gを目標に、毎食野菜をたっぷりとりましょう。

②新鮮なうちに、なるべく生で食べる

鮮度が落ちると葉酸の量も減るので、野菜や果物はなるべく新鮮なものを選び、できるだけ買った日に食べるのがベスト。葉酸は水や熱に弱いため、生の状態がベターです。

③水で洗うときは短時間で。汁ごと食べて

葉酸は水溶性のため、長い時間水にさらすと栄養分が水に溶け出してしまいます。洗うときはササッと。みそ汁やスープ、煮びたしなど、汁ごと食べられるメニューがおすすめです。

④加熱時間はできるだけ短く

葉酸は熱に弱いため、加熱時間は短くしたいもの。ゆでるとゆで汁に葉酸が溶け出てしまうため、蒸したり、油で炒めたりする調理法がおすすめです。油炒めにしたり、片栗粉でとろみをつけたりすると、溶け出た葉酸を逃さずとることができます。

⑤食品は冷蔵庫か冷暗所で保管を

葉酸は光にも弱く、日の当たる場所に置いておくと、3日間で約70%の葉酸が分解されてしまいます。冷蔵庫に入れない食品は、涼しく暗い場所で保管しておきましょう。

*葉酸が多く含まれる食品

葉酸は、緑黄色野菜や果物、豆類などに多く含まれています。体内に蓄積されにくく、調理によって失われる量も多いことを考え、毎日コツコツととることが大切です。

※食品名(目安量)―葉酸含有量(㎍)

ほうれん草 2株(60g)―126㎍
モロヘイヤ(50g)―125㎍
芽キャベツ 5個(50g)―120㎍
グリーンアスパラガス 3本(60g)―114㎍
ブロッコリー 2房(50g)―105㎍
アボカド 1/2個(100g)―84㎍
赤ピーマン 1個(50g)―34㎍
さつまいも 中1/2本(100g)―49㎍
いちご 中5個(76g)―68㎍
マンゴー 1/2個―76㎍
オレンジ 中1個(130g)―44㎍
調整豆乳 200cc―62㎍
納豆(50g)―60㎍
大豆(黄大豆・乾燥)(25g)―55㎍
(七訂日本食品標準成分表/科学技術庁資源調査会編 より)

監修
井関祥子先生
東京医科歯科大学医歯学総合研究科分子発生学分野教授/日本先天異常学会副理事長
監修
上田玲子先生
帝京科学大学教育人間学部教授 栄養学博士
栄養学博士・管理栄養士。小児栄養学の第一人者として活躍するかたわら、トランスコウプ総合研究所取締役として栄養コーチングの手法を開発。日本栄養改善学会評議員や日本小児栄養研究会運営委員なども務める。『はじめてママ&パパの離乳食』『離乳食大全科』(主婦の友社)など監修書多数。

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