つわりを楽にする薬はある?妊娠中に薬を飲む場合の注意点と吐き気の対処法は?【産婦人科医監修】

 専門家監修
公開日:2019/09/06
更新日:2019/09/24
つわりを楽にする薬はある?妊娠中に薬を飲む場合の注意点と吐き気の対処法は?【産婦人科医監修】
監修
楠木総司(くすのき そうし)先生
あらかわレディースクリニック院長

つわりでなかなか食事がとれない、吐き気がおさまらない時期が続くのはつらいもの。そんな時は、つい「つわりに効く薬はないの?」と思ってしまいますよね。かといって、妊娠中は安易に薬を飲むわけにもいかず、悩ましいものです。そこで、産婦人科医の楠木総司先生につわりを楽にする薬について、伺いました。

つわりとは? つわりの原因は?

つわりとは、妊娠初期に起こるさまざまな不快症状のことです。つわりが始まるのは妊娠5週目前後からで、10週ごろにピークを迎え、16週ごろに終わるのが一般的です。

症状は、吐き気やめまい、頭痛、食欲不振、眠気など人によって異なり、程度にも個人差があります。つわりで日常生活に支障が出るほどつらい症状があらわれる人もいれば、妊娠前とほとんど変わらずに過ごせる人もいます。

つわりが一体どうして起こるのか、実はその原因ははっきりしていません。「妊娠によってホルモンの分泌に変化が起こるから」という説もあれば、「赤ちゃんという自分とは異なる存在を宿すことによるアレルギー反応である」という説もあります。

つわりの時に処方される吐き気を抑える薬は?

つわりは、ほとんどの妊婦さんに起こる現象で病気ではないとはいっても、あまりにつらい症状が続くと、「つわりに効くお薬はないの?」と思う人がいても不思議ではありません。だからと言って、ドラッグストアなどで売っている市販の吐き気止めを安易に飲むのは、やめましょう。

吐き気がつらくてたまらないという妊婦さんは、まず産婦人科の医師に相談してください。症状に応じて、吐き気止めや胃薬を処方してもらえる場合もあります。

妊娠中に処方される吐き気止め(一般例)

・プリンペラン(成分:メトクロプラミド)

妊娠中にどうしても吐き気止めが必要な場合に用いられる代表的な薬です。弱った胃腸の動きを活発にし、食べ物を胃から腸へ送り出すのを助ける効果があり、吐き気、嘔吐、胸焼け、食欲不振、膨満感などの不快症状を改善します。

・ピドキサール(成分:ビタミンB6)

吐き気止めではありませんが、つわりの吐き気や嘔吐を予防、改善するうえで効果があるのではないかと考えられているのが、ビタミンB6です。ビタミンB6のつわり改善効果については、研究者によって意見が分かれるところですが、実際に「楽になった」という妊婦さんもいますので、試してみる価値はあるとされています。

ビタミンB6は市販もされていますが、服用は主治医の先生に相談してからにしましょう。

つわりの時に胃薬を飲んでも大丈夫? 漢方薬の効果は?

妊娠中に増加する「黄体ホルモン(プロゲステロン)」は、食道の筋肉を弛緩させたり、消化機能の低下を招いたりするとされています。それが原因となって、妊娠中は、胃が荒れたり、逆流性食道炎になったりする可能性がアップするとも考えられています。

吐き気だけにとどまらず、実際に嘔吐してしまう状態が続くと胃が荒れて、さらに吐き気をもよおすという悪循環に陥るケースも珍しくありません。

胃粘膜の荒れや、嘔吐を繰り返すことで生じる不快症状の軽減には、一般的に以下の薬が用いられます。

妊娠中に処方される胃薬(一般例)

・マーロックス(成分:複合制酸剤)

胃酸を中和して、胃粘膜を保護する効果があります。つわりで嘔吐が続き、胃が荒れてしまった場合に用いられます。

つわりの不快症状を和らげる目的として、漢方薬が処方されるケースもあります。漢方では、胃腸のケアがさまざまな不調を未然に防ぐことにつながると考えられており、つわり時の胃の不快症状を軽減するものも複数あります。

妊娠中につわり軽減の目的で処方される漢方薬(一般例)

・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)

つわり時によく用いられる漢方薬の代表格で、食欲不振や吐き気、胃に水がたまっているような感じの症状を軽減します。

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

喉や食道のあたりに詰まりを感じるような不快症状がある際に用いられます。気分がすぐれない、吐き気などつわりの諸症状緩和に効果を発揮します。

・人参湯(にんじんとう)

手足が冷えやすい、胃腸の虚弱、下痢や嘔吐、腹痛などを軽減する目的で用いられる漢方で、つわり症状の緩和にも効果があるとされています。

・五苓散(ごれいさん)

急性胃腸炎の際に用いられる漢方薬で、口が渇く、尿量が少ない、めまいや頭痛などの症状を緩和する効果もあります。

以上は、つわり症状を軽減するとされる漢方薬の一例です。妊婦さんの症状に応じて、他の漢方薬が処方されるケースもあります。なお、つわり時は顆粒タイプのお薬が飲みにくく感じられる人もいます。漢方薬によっては錠剤タイプもありますので、医師に相談し、自分に合ったものを処方してもらいましょう。

つわりの薬が効かない時の対処方法は?

つわり症状を軽減する目的で出される薬が、誰にでも必ず効くというわけではありません。妊婦さんによっては、「飲んだけどさっぱり効かなかった」という人や「薬を飲んでもすぐに吐いてしまって、効果がなかった」という人もいます。

そのような場合は、症状を改善できるように点滴で栄養を補給するなどの方法も考えられます。

つわりの薬を飲みたいけど、飲めない時の対処方法は?

持病を抱えているなど、妊婦さんによっては薬を飲みたくても飲めない場合もあるでしょう。
けれども、つわりを軽減する方法は薬を服用する以外にも選択肢はあります。

産婦人科の医師と相談しながら、アロマやマサージ、呼吸法、食事の摂り方を工夫するなど、さまざまなアプローチを試しながら乗り切りましょう。

つわりの薬の影響は?

妊娠中に産婦人科のお医者さんが、つわりの症状に応じて処方する薬は、基本的に安全性が認められているものです。流産や早産の発生を高めることがなく、なおかつおなかの赤ちゃんに悪影響を及ぼすリスクのない薬が処方されますので、安心して服用できます。

市販薬については、すべてをひとくくりにして「飲んではいけない」とは言えませんが、「飲んでも大丈夫」とも言い切れません。市販薬のなかには、「妊婦さんが服用しても問題ない」とされているものがある一方で、つわりの時期に飲むと赤ちゃんに悪影響を及ぼすものもあります。

つわりの症状があらわれる妊娠初期は、赤ちゃんにとって重要な器官が形成される時期と重なります。この時期は薬の影響も出やすいため、服用には注意が必要です。

過去に処方された薬の残りや市販薬を自己判断で服用するのは禁物です。家族や知り合いに、「これは安全だから、飲んでも大丈夫」などとすすめられても安易に応じてはいけません。

もし、普段飲み慣れている市販薬の胃薬などがあって、それを飲めば楽になりそうだという場合は医師に相談してみましょう。

つわりで病院に行くタイミングは?

つわりの症状やつらさの程度は、妊婦さんによって異なります。そのため、「病院に行くのはこのタイミングで」と一概には言えませんが、目安として次のような症状が見られた場合は妊娠悪阻(にんしんおそ / 脱水や飢餓が起こり治療が必要な状態)の可能性がありますので、受診が必要です。

・嘔吐が続いて、食べ物や飲み物を口にできない

・喉が乾く

・おしっこの回数が少ない、おしっこの色が濃くなった

・体重が減った(妊娠前の体重より10%以上の減少が目安)

・頭痛やめまいがおさまらない

これらの症状以外にも「つらい」「我慢できない」場合は、一人で思い悩まず早めに受診してください。

つわりの時に薬を飲む場合の注意点は?

つわりで、吐き気や胃腸の不調が続いてあまりにつらい時は、無理をせずかかりつけの医師に相談しましょう。症状に応じて、おなかの赤ちゃんに悪影響のない安全なお薬を処方してくれます。

ただし、安全性が認められている薬が処方されるとはいえ、自分で勝手に回数を増やしたり容量を変えたりするのは危険です。服用の際は、用法と容量を必ず守りましょう。

取材・文/干場綾子

監修
楠木総司(くすのき そうし)先生
あらかわレディースクリニック院長
平成16年順天堂大学医学部卒業、医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本婦人科腫瘍専門医、日本産科婦人科学会内視鏡技術認定医、日本性感染症学会認定医。2019年6月にオープンした東京・町屋の「あらかわレディースクリニック」は、妊娠・出産だけでなく産後ケアによるママと赤ちゃんのサポートも行っています。また、婦人科疾患に対する腹腔鏡手術も備えた産科・婦人科施設です。

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