赤ちゃんの斜視の原因とチェック法は?手術はするの?【医師監修】


浜 由起子
日本橋はま眼科クリニック院長
この記事は、赤ちゃんの斜視についてまとめたものです。赤ちゃんが「寄り目」に見えるのは、もしかしたら斜視かもしれません。斜視は、早く見つけて対処することがとても大切。そのチェック法や治療などについて、専門家にお話を伺いました。
目次
赤ちゃんの斜視とはどんなもの?
片方の目が違う方向を向く
斜視とは、片方の目は正面を向いているのに、もう片方の目が違う方向を向いてしまう状態のこと。「寄り目」と言われることもあります。2~3%の子どもに斜視が現れます。
内斜視の例。向かって右側の目の黒目が鼻側に寄っています。
違う方向を向くのは必ず片方の目
大人が変顔で「寄り目」をする場合、両方の黒目をぐっと鼻の付け根に寄せますね。このような状態は、医学的に斜視とは言いません。斜視は、必ずどちらか片方の黒目だけが違う方向を向いている状態です。
一時的に視線が乱れるのは斜視ではない
また、「一瞬だけ片目が違う方向を向いた」というのも斜視とは考えません。
赤ちゃんの目は発達途中です。視線が定まらなかったり、黒目をキョロキョロと動かしたりすることはよくありますが、斜視の症状が出始めると、片方の目が寄ったりまっすぐになったりします。しかもそれは一瞬のことではなくて、一日の中で何度もそういうことが起こります。顔を横に向けた時に一度だけ片方の目が内側に寄った!と心配して受診なさる方がいますが、これは斜視ではありません。
テレビやスマホの影響は?
斜視が現れる時期は、その原因や種類によってさまざまです。ただし、赤ちゃんの斜視は生活環境などによって後天的に発症するものは少なく、もともとその要因を持って生まれてきています。
ですから、残念ながら予防法はありません。斜視に関してだけ言えば、テレビやスマホの影響も考えにくいです。ただし、幼いうちからテレビやスマホを長時間見るのは、目の発達だけでなくいろいろな点で望ましくありません。
幼い子どもの発達に、スマホやテレビの見せ過ぎはよくありません。
赤ちゃんの斜視をチェックする方法
斜視ではないかと気になったら、赤ちゃんの目を正面から見てみましょう。両方の黒目がまっすぐ正面を向いているかどうか、確認します。
カメラで撮影してチェック
最もわかりやすいのは、赤ちゃんの顔を正面からフラッシュ撮影してみることです。両方の黒目の真ん中に、同じようにフラッシュの白い光が写っているかどうかをチェックしましょう。斜視があると、光が黒目の真ん中ではなく、上下左右にずれて見えます。
フラッシュ撮影の例。斜視ではない場合は、写真のように左右の黒目の中心の同じ位置に光が入ります。
フラッシュの光を目に入れて大丈夫?
カメラのフラッシュが赤ちゃんの目の発達に影響を及ぼすことはありません。延々とフラッシュを浴びせ続けるのはよくありませんが、常識的に何枚か写真を撮ることは全く問題ありません。
もしどうしてもフラッシュの光を浴びせるのが気になるなら、スマホでフラッシュなしで撮影してみましょう。撮った写真を拡大してみると、両方の黒目の位置がよくわかりますよ。
鼻の付け根をつまんでみる
赤ちゃんの顔は、寄り目に見えやすいことをご存じですか? 大人に比べて鼻の付け根が低く、その部分の皮膚が目にかぶさって鼻の付け根側の白目が少なく見えるため、黒目が内側に寄っているように見えるのです。これを偽内斜視(ぎないしゃし)と言います。
偽内斜視は成長とともに目立たなくなり、目の機能にも影響しません。
気になるときは、鼻の付け根をつまんで確認してみましょう。偽内斜視なら、かぶさっている皮膚をつまむと黒目が中心にあるのがわかります。また、カメラのフラッシュの光も両方の黒目の中央で反射するはずです。
偽内斜視の例
赤ちゃんは鼻の付け根が低く、寄り目に見えることがあります。
鼻の付け根をつまんでみると、黒目が中心にあるのがわかります。
赤ちゃんの斜視の種類
斜視には、目の向く方向によっていくつかの種類があります。
・外斜視/片方の黒目が外側にずれている
・内斜視/片方の黒目が内側に寄っている
・上斜視/片方の黒目が上に向いている
・下斜視/片方の黒目が下に向いている
いずれも、見た目が気になりますね。
ただし、早い段階で見つけて対処しないと視機能に問題が出てくる可能性があるのは、内斜視です。それ以外の斜視も適切な治療をしないと子どもの視機能の発達に影響しますが、内斜視ほど急ぎません。まずは内斜視を発見することが大切です。
早く見つけて対処したい赤ちゃんの内斜視 原因と治療法
赤ちゃんの内斜視の原因は、大きく3つあります。
1. 先天的なもの
2. 強い遠視
3. それ以外の原因
1.乳児内斜視(先天性内斜視)は生後6ヶ月以内に発症
乳児内斜視(先天性内斜視)は、生後6ヶ月以内に発症します。新生児の視線は定まらないことが多いのですが、1ヶ月もすると片方の目が寄っているのがはっきりとしてきます。3ヶ月健診で発見されることも多いので、健診はしっかり受けましょう。
先天性の内斜視は、生後6ヶ月以内に現れてきます。
治療は早期の手術
生後すぐの赤ちゃんは、まだあまりよく目が見えていません。いろいろなものを見ながら、目の機能は少しずつ発達していきます。
特に「両眼視(立体視)」の機能は、生後6ヶ月~1歳半の時期に獲得されると言われています。この時期を逃すと、その後治療や訓練をしても両眼視を獲得できず、ちょっとした段差でつまずいたり、階段の上り下りをこわがったりすることがあります。
このため、乳児内斜視がわかったらできるだけ早く手術することが大切になってきます。
2.強い遠視による内斜視は6ヶ月以降に発症
遠視による内斜視は乳児内斜視よりも遅く、生後6ヶ月以降に発症します。発症時期として多いのは、1歳半~3歳です。赤ちゃんの内斜視の原因として最も多いのがこのタイプで、調節性内斜視と呼ばれます。
遠視には遺伝的な要因も大きいので、ママやパパ、肉親に遠視の人がいる場合は、内斜視が現れてこないかどうかを注意深く観察しましょう。
遠視による内斜視が現れてくるのは、1歳半~3歳が多い。
遠視とは何?
近視は、遠くのものが見えない状態ですね。
遠視は近視の逆で「近くが見にくい」「遠くのものは見える」と思っている人がいますが、これは間違い。遠視とは、目に力を入れないと(調節をしないと)近くにも遠くにもピントが合わない状態です。
実は、赤ちゃんはほとんどの子が軽度の遠視です。ただし強い遠視があると、ものを見る時に見えにくく、赤ちゃんには「眼精疲労」がないために強く調節して内斜視になってしまうのです。ピントが合わない状態が続くので、そのままにしておくと視力の発達がピンボケのままで止まってしまいます。これが弱視です。ですから、できるだけ早い段階で強い遠視を発見し、治療をすることが必要なのです。
治療は眼鏡による矯正
遠視による内斜視は、眼鏡による矯正が標準的な治療です。
目が大きく見える眼鏡をかけている、小さなお子さんを見かけることがありますね。早めに対処することで弱視にならず、内斜視が徐々に改善していく可能性があります。
3歳児健診では視力検査が行われる
3歳児健診では、動物のカードなどを使って視力検査が行われます。3歳なら、見たものをある程度言葉で伝えられるため、この時期の検査となっています。目の機能が順調に育っているかどうか、この検査である程度のことはわかります。
ただ、強い遠視はなるべく早く見つけることが大切です。遠視による内斜視は生後6ヶ月以降に出てきますから、1歳、2歳で内斜視が疑われたら、ぜひ眼科を受診してください。特に親族に遠視の人がいる場合は、早めに受診しましょう。小児眼科を専門に見ているドクターならベストです。
先輩ママの体験談/健診で遠視と内斜視がわかりました!
1歳ごろまで、やや寄り目っぽいかな?と感じられることがありましたが、あまり気にしていませんでした。初めての子どもだったこともあり、「赤ちゃんはこんなものかな」と。パパが「なんだか寄り目っぽくない?」と言うこともありましたが様子見。3歳児健診で遠視による内斜視を指摘され、「見る訓練をしないと弱視になるかも」と言われて眼鏡を作りました。
内斜視だったのは右目です。正面を向いている左目には1日数時間アイパッチを貼り、右目で見る訓練をしました。おとなしい子でしたが、眼鏡をかけるととても活発になってびっくり。現在7歳ですが矯正視力が1.2あり、弱視の危険はなくなりました。ただ、遠視はかなり強かったようで、眼鏡を使わずにすむようになるかどうかは不明です。
5歳。眼鏡をかけるようになって活発になりました。遠視は強く、まだ右目が少し内側に寄っています。
3.内斜視の原因はほかにも
先天的な乳児内斜視、遠視が原因の調節性内斜視のほかにも、内斜視の原因はあります。
先天性白内障
先天性緑内障
脳の異常
などがその例です。
これらは生後まもなく発見されることが多く、また、至急手術をしないと失明につながるものもあります。
白内障なら水晶体という目のレンズを取り替える手術、緑内障なら眼圧を下げる手術など、原因によって治療は異なります。
発生数はまれですが、赤ちゃんの目の様子が気になるときはできるだけ早くかかりつけ医などに相談しましょう。
内斜視以外の斜視の治療は?手術はするの?
赤ちゃんの斜視には、内斜視以外にも外斜視、上下斜視があります。
いずれも内斜視と同様にきちんと検査をし、視機能の発達に問題がないかどうかを見守っていく必要があります。
見た目が気になるから手術をしたいというケースもあるでしょう。手術をすれば見た目のアンバランスは目立たなくなりますから、容姿を気にする年齢になってからでもいいでしょう。
一部写真・イラスト出典/はじめてママ&パパの0~6才病気とホームケア
文/中根佳律子
※本記事の症例写真を除く画像は、記事テーマと関係がないイメージ画像です。

浜 由起子
日本橋はま眼科クリニック院長
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