帝王切開の不安を解消するために伝えたいこと【産婦人科医インタビュー】

 専門家監修
公開日:2019/09/08
更新日:2019/09/10
帝王切開の不安を解消するために伝えたいこと【産婦人科医インタビュー】
監修
小川隆吉先生
小川クリニック院長

ドクターズインタビュー1回目は、東京都豊島区で『小川クリニック』を開業されている産婦人科医の小川隆吉先生。帝王切開のお話を中心に、手術の進め方や産後のママの体などについてお聞きしました。

帝王切開が増加傾向になっています

帝王切開が増加傾向だというのは、なぜでしょうか?

私のクリニックに限ったことではありませんが、今は帝王切開での出産が増えています。厚生労働省の医療施設動静調査(平成27年)によると、20数年前に比べると帝王切開での出産は、約2倍の19.7%。5人に1人は帝王切開で出産しているということになります。これは、高年出産が増えてきたことが大きな要因のひとつです。
さらに、医療技術の進歩によって、帝王切開による出産が『安全に生むための出産方法』であるという認識が深まってきたことも帝王切開が増えている理由でしょうね。

帝王切開になるのはどのような場合ですか?

帝王切開には、子宮筋腫や前置胎盤、多胎妊娠など、さまざまな理由で出産前経腟分娩が難しいと判断され、事前に手術日を決める『予定帝王切開』と、妊娠中や分娩中におなかの赤ちゃんの状態が悪くなったり、母体になんらかのトラブルが起きたりして早急に赤ちゃんを取り出す『緊急帝王切開』があります。

妊娠初期から帝王切開を視野に入れることもあるのでしょうか?

妊婦さんの体質や持病、妊娠経過などを踏まえて、トータルで判断しますが、帝王切開になる可能性は年齢と比例して高まってきます。
そのため、私のクリニックでは、42歳以上で初産の方は、帝王切開での出産を前提にお話させていただきます。妊娠経過で問題がなく、経過が順調であれば経腟分娩で出産することもありますが、初診で必ず帝王切開の説明をし、そのうえで分娩予約を受けつけています。
逆に42歳以下であれば、『経腟分娩を前提にしますが、何らかのリスクが生じた場合は帝王切開による分娩になる可能性があります』とお伝えしています。

帝王切開は開腹手術です。初めての開腹手術が帝王切開となる女性も多いため、帝王切開の可能性のある方への説明には時間をかけるようにしています。帝王切開の目的は、赤ちゃんと母体の安全のためであることに納得していただくまで、丁寧にお話させていただいています。新しい命の誕生のときに、後悔の気持ちは持っていただきたくないですからね
妊婦さんのほうは、初めて産婦人科を受診し、帝王切開の説明があるというのは、少し不安に感じられるかもしれません。ですが、妊婦さんのほうからも遠慮なく質問していただいて、安心して妊娠生活をすごせるようにコミュニケーションをとることを大事にしています。

ママと赤ちゃんが無事に会えるために

帝王切開の可能性が高くても、自然分娩を希望される方もいらっしゃいますか?

できれば自然分娩をしたいと希望される方もいらっしゃいますが、リスクやママと赤ちゃんの状態をお話すると、赤ちゃんのことを第一に考えて、みなさん気持ちを切り替えているようです。

予定帝王切開の場合は、事前に帝王切開が必要となる理由を納得していただけるまで丁寧に説明しますので、最初は残念に思っている方でも、徐々に帝王切開になることを受け入れて、みなさん、前向きにお産に臨んでいます。

陣痛が始まってから、急きょ帝王切開になった場合は、改めて丁寧に説明する時間がありませんが、分娩中はずっと分娩監視装置を装着しているため、おなかの赤ちゃんの様子はママ自身にリアルに伝わります。それで、赤ちゃんと一緒に頑張ろうとママも気持ちを強く持てるのだと思います。また、少しでもリスクのある場合は安心して手術を受けていただけるように、医師や助産師がつきっきりでいますので、少しでも不安感がなくなるような環境作りは心がけています。

分娩のリスクを回避し、赤ちゃんとママが無事に対面するために必要なことが帝王切開であるということを、ママ自身が理解することで、帝王切開の不安や自然分娩へのこだわりはなくなっていくのではないでしょうか。

帝王切開の受け止め方は、緊急帝王切開になった場合の方は違いますか?

妊婦さんにとって緊急帝王切開は、できれば避けたかったやむを得ない出来事。産後、落ち着いてから、「やっぱり経腟分娩で産みたかった…」と思うことがあるかもしれません。
でも、緊急帝王切開を「陣痛の途中で断念した」とマイナスに受け止める妊婦さんはいません。

私は緊急帝王切開に対して“どうせ帝王切開になるのなら、最初から切ってもらえばよかった”の気持ちを抱いている方には、「その陣痛は、意味のあることなんだ」とお伝えしています。経腟分娩では何らかのリスクが生じる可能性があるから、帝王切開に切り替えたわけで、赤ちゃんもママも無事であることの幸せをまずかみ締めて欲しい。

そして、陣痛が起きているということは、子宮口が開いてきているということ。赤ちゃん自身も陣痛の力によって外へ外へと向かって進みながら、肺の呼吸運動の準備を始めているところです。たとえ陣痛の途中で帝王切開に切り替えたとしても、陣痛を経験したことが赤ちゃんの肺を丈夫にし、産後のママの子宮の戻りを促すことにつながります。経腟分娩から緊急帝王切開に切り替えたことは、赤ちゃんとママにとって意味のあることなんです。出産のカタチは1人1人違います。帝王切開になったとしても、負い目を感じることは何ひとつないのです。

予定帝王切開も同じです。経腟分娩で産んだママに対して引け目を感じることがあるようですが、経腟分娩の苦しみと、帝王切開の術後の傷の痛みは、比べることはできませんが、どちらもおなかの中で赤ちゃんを大切に育ててきたから、母となった今があるんです。引け目を感じることは決してありませんよ。

立ち合い出産を望む人が増えていますが、帝王切開で立ち合い出産はできますか?

私のクリニックでは、帝王切開での立ち合い出産はしておりません。帝王切開は開腹手術ですので、出血量が多く、出血に慣れていない方にとってはショックが大きいと思われるからです。
ただし、予定帝王切開で立ち合い出産を希望される方には、開腹手術で赤ちゃんを取り出したらすぐにご対面いただけるように、手術室のカーテン越しに待機していただくことは可能です。赤ちゃんの産声もしっかりと聞こえますし、赤ちゃんとの初対面もできます。

帝王切開後の赤ちゃんとママのケア

帝王切開について、ママたちが誤解しがちなことはありますか?

帝王切開の場合、麻酔剤が体に入るので、赤ちゃんにすぐに授乳できないと思っている方がいますが、母乳を通して麻酔剤が赤ちゃんに影響することはありません。ですから、帝王切開後、すぐに授乳することは可能なのですが、赤ちゃんを取り出した後は、母体の術後の処置をすぐに行いますし、赤ちゃんも生まれてすぐは呼吸が安定しないことがあるので、保育器に入る場合もあります。そのため帝王切開の場合は、産後すぐではなく、少し落ち着いてから授乳する場合が多いです。帝王切開について、また、術後のママの体調についても気がかりなことがあったら、気兼ねすることなく、医師や助産師になんでも聞くようにしましょう。入院中だけでなく、退院後ももちろんです。

帝王切開は術後がつらいと聞きます。術後の経過を教えてください

帝王切開の手術の傷は、1週間ほどでふさがります。傷口の治り方や痛みの感じ方は個人差がありますが、「昨日よりもつらくない」なら快方に向かっているサイン。傷口が悪化すると、痛みはどんどん強くなっていくからです。昨日よりも痛みがの強い場合は、入院中であれば我慢せずに申し出てください。また、退院後であれば受診してください。

産後、妊婦さんが注意したほうがいいことは?

帝王切開に限りませんが、妊娠、出産、産後にかけて、女性の体はホルモンバランスが乱れます。その乱れは、ジェットコースター並みの高低差があります。そのために心も調子が悪くなることも。
産後の女性は誰もがそうなのですが、生まれたばかりの小さな命を守ることに必死で、自分のことは後回しにしがちです。不調を感じていても無意識に我慢してしまうことも。

だから、何かちょっとしたことでも心配なことがあれば、「1カ月健診を待たずに受診してください」と言っています。入院中は医師、助産師、看護師がそばについているので、こまやかにケアすることができますが、退院から1カ月健診までの間が心配なのです。

例えば、産後、出産を終え、赤ちゃんの顔を見ながら、幸せな気持ちなのにわけもなく涙が出るようなら、マタニティブルーズの可能性も。マタニティブルーズとは、出産直後から産後数日までに一時的な気分の変調のこと。これは誰にでも起こる自然な現象で、2週間くらいで自然と落ち着いてくるので心配ありません。
ただ、気分の落ち込みが2週間続き、妊娠前に比べて自分が「元気がない」「やる気がない」と感じるようなら、すぐに受診してください。そのまま放置してしまうと産後うつに発展し、日常生活に支障が生じることもあります。産後は自分のことは二の次で、赤ちゃんのお世話を第一にしがちですが、体調や心の変化を感じたら、出産した産婦人科にまずは相談してくださいね。

小川クリニック

院長小川隆吉。日本医科大学を卒業後、医局を経て1995年4月まで東京都立築地産院の産婦人科医長として勤務(東京都立築地産院は、現在は墨東病院に吸収合併)。1995年に東京都豊島区に不妊治療・産婦人科・内科治療を専門とする「小川クリニック」を開業。全室個室のクリニックで、手厚い産後ケアを目指すため、月の分娩数を20までと限っています。医師2名、助産師8名、内科医1名を配し、手厚く万全な態勢で安全なお産を目指して邁進することをモットーとしています。

監修
小川隆吉先生
小川クリニック院長
日本医科大学卒。都立築地産院産婦人科医長として勤務する傍ら、日本医科大学産婦人科講師を兼任。1995年小川クリニックを開設。医学博士、日本産婦人科学会専門医、母体保護法指定医。妊婦さんの疑問や悩みに真摯に応えてくれる、気さくで頼りになるドクターです。

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