【FP監修】学資保険VS貯蓄、どっちがおすすめ? それぞれのメリット&デメリットが知りたい!


山田静江先生
大学まででおよそ1千万円とも言われる、子どもの学費。高校までは家計の中からやりくりするとしても、大学進学時にはまとまったお金が必要になってきます。これを貯めるにあたり、パッと思いつくのが「学資保険」と「貯蓄」。両方とも代表的な教育資金の準備方法ですが、一体どちらが良いのでしょうか? ファイナンシャルプランナーの山田静江先生にお話を聞きながら、それぞれの特徴はもちろん、メリット&デメリットも徹底比較しました!
学資保険の特徴は?
学資保険とは、将来の教育資金を準備するための保険のこと。毎月決まった額を払い続ければ、子どもが一定の年齢になったとき、祝い金や満期金として学資金を受け取ることができます。また、契約者に万一のことがあったら、保険料の支払いが免除されるのも大きな特徴。保険会社によって「学資保険」ではなく「こども保険」と言うところもありますが、目的は同じです。
学資保険のメリット
【メリット1】契約者が亡くなったら、保険料の支払いが免除される
あまり考えたくないことですが、子どもの成長過程で親にもしものことがあったら、家計に大きな影響が出てしまいます。貯蓄はもちろん、保険料の支払いも難しくなるでしょう。しかし、学資保険に入っていれば、契約者である親が死亡または高度障害状態になったとき、その後の保険料が免除になり、学資金を全額受け取ることができます。不測の事態があっても、子どもの教育資金を確保できるのは大きなメリットです。
【メリット2】教育資金を必要なタイミングで受け取れる
学資保険は、契約時に「保険金をいつ受け取るか」を選ぶことができます。受け取り時期は保険会社によって違いますが、いちばんポピュラーなのは子どもが18歳になったときに一括で受け取るもの。これは最もお金がかかる大学入学時に、まとまったお金を準備するためのプランです。
また、最近人気なのは、大学入学から卒業まで必要な学費をまかなえるよう、18歳から4年間、毎年学資金を受け取るプラン。他にも小・中・高の入学時に祝い金が出るプランもあります。このように家庭の状況に合わせて、必要なお金を必要なときに受け取ることができるのもメリットのひとつです。
■教育資金を受け取るベストタイミングは?■
たとえば大学入学時など、一番お金が必要なとき=ベストタイミングではありますが、ここで注意したいのが「返戻率」。これは支払った保険料に対し、学資金をいくら受け取れるかの割合を示したもので、商品によって割合はまちまちです。ただ、同じ商品でも契約方法によって返戻率を上げることが可能! その方法のひとつが、学資金を受け取る時期を遅くすること。「例えば、祝い金のあるプランは満期より前に学資金の一部を受け取ることになるので、返戻率が下がってしまいます。祝い金は一切もらわず、大学進学時に一括で受け取ると返戻率も高くなるのでおすすめです」(山田先生)
【メリット3】途中で解約しにくいので、強制的にお金を貯められる
学資保険は途中で解約すると、払った保険料の一部しか戻って来ず、いわゆる「元本割れ」になる可能性があります。これは普通に考えるとデメリットなのですが、逆にとらえると解約しにくい=継続することで自動的にお金が貯まっていくので、結果的にメリットになります。教育資金の準備は、一朝一夕でできるものではありません。長期に渡って着実に貯めていくには、学資保険の仕組みをうまく利用するのも手です。
【メリット4】支払った保険料より、受け取る金額が増える場合がある
先ほど【メリット2】でも触れた「返戻率」。支払った保険料に対して学資金をいくら受け取れるかの割合を示しており、100%を下回ると元本割れになってしまいます。かつては返戻率120%などという学資保険もあったようですが、近年ではどんなに高くても110%以下、商品によっては100%以下のものも…。とはいえ、わずかでも元本を上回る学資保険があるのも事実。
ちなみに、返戻率は加入時の親子の年齢や払込期間、学資金の受取時期によっても変わってくるので、しっかり調べて加入しましょう。
■返戻率の高い学資保険を選べば間違いない?■
返戻率が高いと受け取る学資金も多くなるので、おトク感があるのは事実。しかし、それだけで学資保険を選ぶのは早計かもしれません。「返戻率が低い商品は、かわりに保障が手厚いなど、違うところでメリットがあるのでそこを見落とさないで欲しいですね。それから、返戻率を上げるために無理なプランを組み、保険料が払えなくなったりすると本末転倒! まずは自分に合ったプランを考え、その上で不要な特約を削るなどして返戻率を上げられるか考えましょう」(山田先生)
【メリット5】生命保険料控除が使え、節税になる
学資保険は生命保険の一種なので、生命保険料控除の対象になり、最高4万円まで控除を受けることができます。手続きも難しくなく、会社員は年末調整、自営業などの人は確定申告のときに申請すればOKです。ただし、学資保険は「一般生命保険料控除」の枠に入り、ここには死亡保険なども含まれます。そのため、すでに他の生命保険などに入っていて上限額に達していると、控除の対象にならないので注意!
■そもそも「生命保険料控除」とは?■
生命保険料控除とは、支払った保険料に応じて、所得から一定の金額が差し引かれる制度のこと。簡単に言うと、生命保険に入って保険料を払っていると、少し税金が安くなるということです。ちなみに平成23年12月末までに契約した保険は「旧制度」、平成24年1月以降に契約した保険は「新制度」の対象となり、控除額も違ってきます。自分がいくら控除を受けられるのか、調べる際には注意しましょう。
学資保険のデメリット
【デメリット1】途中で解約しにくい
学資保険は掛け捨て型の保険と違い、途中解約してもお金が戻ってきます。しかし【メリット3】で触れたように、支払った保険料よりも返戻金(戻って来るお金)のほうが少なく、元本割れになる可能性が…。とくに加入してから短期間で解約すると、返戻金がかなり少なくなることが多々あります。
【デメリット2】長期間に渡り、お金が自由に引き出せない
基本的に、積み立てた学資金は満期になるまで引き出すことはできません。もし、どうしても引き出したい場合は、【デメリット1】のように途中解約しなければならず、元本割れのリスクも高まります。途中解約しにくいからこそ、継続してお金を貯められるという点はメリットと言えますが、もし何かの事情でまとまったお金が必要になっても簡単に解約できないという点は、デメリットとも言えるでしょう。
■途中解約で多いパターンは?■
「月々の保険料の支払いが厳しくなった」「なんとなく契約したが、あとから契約内容が希望と違うと気づいた」などが多いようです。学資保険は10年以上に渡り、ずっと続けていくもの。途中解約のリスクも大きいので、加入する前に内容をきちんと検討しておきましょう。契約前に確認しておくべきことは、以下の通り。
●契約者は誰なのか
●何歳まで支払うのか
●月々いくら支払うのか
●満期の受取額はいくらなのか
●受取時期はいつなのか(一括か、年金タイプか)
●保障内容はどんなものか
最低限、上記の事柄はチェックしておきましょう。「いちばん大事なのは、無理なく払い続けられるかどうか。いくらにすれば分からない場合は、最低1万円程度を目安にしましょう。児童手当をそのまま保険料に回すのもアリです」(山田先生)
貯蓄の特徴は?
貯蓄とはお金を含む資産全般をためることですが、ここでは銀行などを利用してお金を貯めることと考えます。その中でも、教育資金を貯めるのによく使われるものをピックアップしました。
●普通預金
お金を自由に出し入れできる預金のこと。「普通」という名前の通り、広く一般的に使われており、給与受取りや決済口座としても利用されます。預け入れ、払い戻しが自由な分、定期預金などに比べて金利は低く設定されています。
●定期預金
預け入れから一定の期間、お金を引き出せない預金のこと。期間は銀行によって違いますが、最短1ヶ月~最長10年くらいまで選ぶことができます。一定期間払い戻しをしないことを条件に、普通預金よりも金利が高く設定されています。
●積立定期預金
毎月決まった日に、決まった金額を口座から引き落とす形で貯める定期預金のこと。積立期間を自分で設定することもできるので、子どもの大学進学のために…など、目標に向かってお金を貯めるのに向いています。こちらも定期預金と同様、普通預金よりも金利は高めに設定されています。
貯蓄のメリット
【メリット1】積立期間や金額を自分で決められるので、無理なく続けやすい
定期預金の場合、最初にまとまったお金が必要ですが、預け入れ期間を最短1ヶ月~最長10年くらいまで自由に選択できます。一方、積立定期預金は月々の積立額を選べるだけでなく、ボーナス月には増額したり、臨時収入があったら引き落とし日以外にも預け入れができたりと、さらに自由度が高め。期間に関しても自分で決められ、満期を定めずに続けることも可能です。家庭の状況に合わせて自由にカスタムできる点は大きなメリットと言えるでしょう。
【メリット2】途中で解約しても元本割れしない
定期預金は、最初に定めた期間は原則として解約できません。どうしても途中解約したいときには金利が下がってしまったり、解約手数料を取られたりすることもありますが、元本割れのリスクはないので安心して預けることができます。普通預金はもちろんいつでも解約できますし、どの預金も元本が保証されているのは大きなメリットと言えます。
貯蓄のデメリット
【デメリット1】ほとんど利息がつかない
金利が高かった時代は、定期預金に預けるだけでかなりの利息がつきました。でも今は低金利で、利息もほんのわずか。銀行によって違いはあるものの、一般的な普通預金の金利は0.001%、定期預金でも0.01%程度と言われています。この金利で計算すると、普通預金に100万円預けても年間の利息はたった10円。定期預金でも100円という状況。大金を長期間預けても、たいしてプラスにはなりません。
【デメリット2】お金が自由になる分、使い込むリスクも高い
普通預金はもちろん、積立定期預金も比較的自由にお金を引き出せるので、つい使い込んでしまう恐れが……。自由度が高い=急な出費にも対応できるのはメリットとも言えますが、貯金が苦手な人、お金があると使ってしまう人にはデメリットになることも。
【デメリット3】学資保険のような保障が一切ない
当たり前のことですが、貯蓄はお金を預けるだけなので、契約者が死亡したときの保障はありません。親にもしものことがあったとき、学資保険なら保険料が免除され、満期金を受け取ることができますが、貯蓄は貯めた分が戻って来るだけなので、子どもに十分なお金を残してあげられない可能性もあります。また、保障を準備するにはほかの保険に加入しなければいけないので、その点もデメリットと言えそうです。
学資保険と貯蓄の違いは?
金利の高さ
●学資保険:低い・わずかに元本を上回る(商品によって下回る場合あり)
●貯蓄:かなり低い・ほんのわずかに元本を上回る
今は低金利の時代で、学資保険も貯蓄も元本を大きく上回ることはありません。しかし、両者を比べると伸び率が高いのは、やはり学資保険。商品によっては元本割れするものもありますが、払込期間や満期の設定によって返戻率のUPも可能です。
保障のあり・なし
●学資保険:あり
●貯蓄:なし
学資保険は契約者が死亡したり、高度障害状態になったりすると保険料が免除になり、満期金を受け取れるという利点があります。一方、貯蓄はお金を貯めるだけなので、親に万一のことがあっても何も保障はありません。
途中解約するとどうなるか
●学資保険:元本割れの可能性あり
●貯蓄:元本割れなし
学資保険も貯蓄(定期預金、積立定期預金)も、基本的には自由にお金を引き出すことはできません。そして途中解約した場合、学資保険は元本割れする可能性が高くなります。一方、定期預金は途中解約しても元本は保証されているので、お金が減ることはありません。
節税効果のあり・なし
●学資保険:あり
●貯蓄:なし
学資保険は生命保険料控除の対象になるので最高4万円まで控除を受けられますが、貯蓄には節税効果はありません。ちなみに、銀行預金の利息には20%程度の税金がかかっています。この税金は銀行が計算し、かわりに納付してくれているので、私たちが受け取っている利息は、すでに税金を差し引いた金額ということになります。
インフレリスクのあり・なし
●学資保険:あり
●貯蓄:なし
インフレになると、物価が上がり、お金の価値が下がってしまいます。そこで困るのが学資保険。学資保険の金利は、契約したときから満期まで変わりません。ということは、インフレになると契約時の学費より、満期の学費のほうが高くなっている可能性があり、想定していた学資金では足りなくなる恐れがあるのです。一方、定期預金は金利が上がればその分が利息に還元されるので、インフレにも少しだけ対応できます。
学資保険と貯蓄、どっちが良い?
優劣を決めることはできませんが、総合的に見ておすすめしたいのは…やっぱり学資保険。「教育資金を計画的に貯められるだけでなく、親にもしものことがあったら保険料の払い込みなしで満期金を受け取れる。この保障があるのが大きなメリットだと思います」(山田先生)。もちろん家庭の状況や、ライフプランによって違いはありますが、これを踏まえつつ学資保険向きの人、貯蓄向きの人をまとめてみました。
学資保険に向いている人
●まだ十分な教育資金を準備できていない
●死亡保障のある保険に入っていない
●お金があると使ってしまうなど、貯金が苦手
貯蓄に向いている人
●すでに教育資金を準備できている
●ほかの生命保険などに加入していて、万一のとき子どもに十分なお金を残せる
●コツコツ貯金するのが得意
ここまで学資保険と貯蓄、どちらを選ぶか考えてきましたが、一番おすすめしたいのはひとつに絞るのではなく併用すること。「たとえば月2万円を教育資金にあてるとしたら、学資保険に1万円、積立定期預金に1万円というふうに併用する。資金に余裕があって運用したい人は、学資保険とジュニアNISAなどを併用するのもアリですね。何にせよ、どれか1つではなく、いくつか選択肢を作ってリスクを分散させるのが良いと思います」(山田先生)
大学進学に向けて準備しておきたい教育資金は、最低200万円。可能であれば400万~500万円が理想です。簡単には貯まらない金額だからこそ、どんな方法で貯めるのかじっくり検討を。子どものため、とがんばりすぎて途中で挫折しては元も子もありません。家庭の状況やライフプランに合わせて、無理なく続けられる方法を考えましょう。
取材・文/遠藤まゆみ

山田静江先生
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