【小児科医監修】低出生体重児にはどんなリスクが?障害が残ることもあるの?出生届けはどうする?

 専門家監修
公開日:2019/08/07
更新日:2019/08/29
【小児科医監修】低出生体重児にはどんなリスクが?障害が残ることもあるの?出生届けはどうする?
監修
渡辺とよ子先生
わたなべ医院院長

この記事は、低出生体重児についてまとめたものです。生まれたときの体重が少ないと、「元気にちゃんと育っていける?」「障害が残ったりしない?」などと心配になってしまうママもいるでしょう。発達や発育のペースはゆっくりになりますが、医療が進歩した現在では、小さく生まれても、適切な治療やケアをおこなえば、一般的な体重で生まれた赤ちゃんと同じように順調に育っていく子も多くいます。経過を観察することは必要ですが、あまり心配しすぎずに見守っていけるといいですね。

低出生体重児とは?未熟児とはどう違うの?

低出生体重児とは、生まれたときの体重が2500g未満の赤ちゃんのこと

一般的に、赤ちゃんの生まれたときの体重については、2500gで生まれる子もいれば、4000gで生まれる子もいて、もともと個人差が大きいものです。

低出生体重児とは、生まれたときの体重が2500g未満の赤ちゃんのこと。
生まれたときの体重により、体のさまざまな働きの成熟ぐあいが異なるため、現在では2500g未満の赤ちゃんすべてを「低出生体重児」、1500g未満では「極低出生体重児」、1000g未満では「超低出生体重児」と区別して呼ぶことがあります。

未熟児とは、生きていくために必要なからだの機能が成熟する前に(未熟な状態で)生まれてきた赤ちゃんのことをいいます。以前は、低出生体重児のことを未熟児と呼んでいましたが、「未熟児」という言葉に医学的な定義はありません。ただし、未熟児のほとんどは低出生体重児なので、一般的には、ふたつはほぼ同義語と考えていいでしょう。

低出生体重児で生まれる確率は?

およそ10人に1人が低出生体重児

この30年、生まれてくる赤ちゃんの数(出生数)は減っていますが、低出生体重児の割合は増加しています。1980年には5%だった低出生体重児が2005年には9%を越え、2018年では9.5%でした。つまり、現在の日本では、約10人に1人が2500g未満で生まれているということになります。

低出生体重児になる原因は?

いちばんの原因は、赤ちゃんが早く生まれてしまう「早産」

低出生体重児として生まれる原因として多いのは、予定日よりも早く生まれてしまうために小さく生まれる「早産」です。早産になる原因としては、不明な場合も多いのですが、子宮内や腟に起こる感染症が多く、とくに、おなかの中で赤ちゃんを包んでいる絨毛膜と羊膜に感染が起こる「絨毛膜羊膜炎」が多くみられます。

そのほか、本来は出産のときまで閉じている子宮口が突然開いてしまう「子宮頸管無力症」など、母体の病気、子宮の奇形、赤ちゃん側の要因など、さまざまな原因で早産になる可能性があります。双子や三つ子などの多胎では子宮が大きく引き伸ばされるためおなかが張りやすく、早産になりやすい原因の一つです。

胎盤の働きなどが悪く、十分に発育できないことも

早産でなくても、おなかの中で赤ちゃんの体重があまり増えないことがあります。病気ではなく、その家族が遺伝的に小柄ということもあります。病的な原因として、赤ちゃんに酸素や栄養を届けるために働く「胎盤」の機能が悪いこと(胎盤の機能不全)が考えられます。
胎盤の機能不全は、妊娠高血圧症候群など、ママの病気によって起こるほか、喫煙やアルコールも重大な影響があります。赤ちゃん側の要因で起こることもあります。

胎盤が正常に働かないと、成長のために必要な酸素や栄養が赤ちゃんに送られないため、体重が増えないことや、体の機能が十分に成熟しないことなどが起こります。

低出生体重児にはどんなリスクが?障害が残ることもあるの?

体温、呼吸、哺乳など、生きていくための機能が未熟

低体重で生まれることのいちばんの問題は、生命を維持するための体の機能が成熟していないこと。具体的には、体温が保てない(低体温症になりやすい)こと、呼吸が不安定になりやすいこと、哺乳力が弱くおっぱいが飲めないことなどが挙げられます。

そのため、低体重で生まれた赤ちゃんは、新生児集中治療室(NICU)で体のさまざまな機能が成熟するまで、その替わりとなる治療やケアを受けます。
具体的には、体温を維持するために保育器で管理し、呼吸をサポートするために、肺機能の成熟度に合わせて酸素投与や人工呼吸機を用いた管理などを行います。点滴で水分補給をしたり、口から母乳やミルクを飲めない場合には、口や鼻から管を通して母乳やミルクを胃に入れたりもします。

合併症や後遺症に注意

低体重で生まれた赤ちゃんのなかでも、ママのおなかの中での健康状態がとても悪く、重症な仮死状態で生まれた場合や、1000g以下の超低出生体重児として生まれた場合などは、頭蓋内出血や感染症などの合併症が生じるリスクが高くなります。

また、慢性的な肺疾患や未熟児網膜症などの合併症が起こることもあるため、注意が必要です。
重い合併症を起こした場合には、後遺症が残ったり、後の発育や発達に影響を及ぼしたりすることもあるため、その場合は慎重に経過を観察することが必要になります。

「低出生体重児=障害が残る」とあまり心配しないで

生まれたときに体重が少なく、体のさまざまな器官や働きが未熟だったり、合併症や後遺症の可能性があったり…ということを聞くと、心配になるママも多いでしょう。でも、低出生体重児だからといって全ての子に障害が残るわけではないので、心配しすぎることはありません。

入院中にはNICUで、赤ちゃんの体の未熟な働きを補い、合併症の予防・治療のためにできる限りのサポートをおこないます。現在の新生児医療はとても進歩しており、生後に適切な医療サポート受ければ、かなり小さく生まれた赤ちゃんでも元気に育つことが多くなっています。

医師やスタッフ、そして、赤ちゃんの「元気に育つ力」を信じて、見守ってあげられるといいですね。

低出生体重児の出生届けは?

出生届けのほか「低体重児の届出」が必要です

低出生体重で生まれた赤ちゃんも、そうでない赤ちゃんと同様、生まれたら出生届けを提出します。低出生体重で生まれた場合には、出生届けのほかに、母子保健法により「低体重の届出」を行う義務があります。担当医に必要事項を記入してもらい、家族が自治体に書類を提出します。

届け出をすることにより、医療費の補助制度である「未熟児療育医療給付制度」を利用することができます。ほかにも、赤ちゃんが退院した後に、保健師による訪問育児指導を受けることができます。

低出生体重児の出産費用や医療費は?

出生後の治療費や入院費は助成制度も

出産費用は、低出生体重の赤ちゃんも、そうでない赤ちゃんも変わりません。出生後にかかる医療費は、赤ちゃんの状態や必要な治療、入院日数などにより異なります。

低出生体重で生まれた場合、自治体に「低体重児の届出」をすることで、「未熟児療育医療給付制度」を受けることができます。これは、NICUなどに入院した赤ちゃんにかかる医療費を補助する制度で、申請の方法や補助の程度は自治体によって異なります。詳しくは、病院や役所に確認しましょう。

低出生体重児のその後の経過は? 

体重が増え、自力で呼吸と哺乳がしっかりできるようになったら退院

生まれた後、どのぐらいで退院できるかは、出生時の体重や赤ちゃんの状態、合併症の有無などによって異なります。一般的には、早く生まれるほど体の機能が未熟な状態で生まれてくることになるため、入院の期間が長くなる傾向があります。

体の機能が成熟し、医療のサポートがなくても家庭で育てられるようになったら、退院となります。目安として、「ある程度体重が増え、自力でしっかり呼吸でき、おっぱいを飲めるようになったら」と考えるといいでしょう。早産だった場合、およそ出産予定日が過ぎたころです。

発育・発達はゆっくりでも、成長に伴いあまり差がなくなります

もともと、赤ちゃんの発育・発達には個人差が大きいものですが、早産や低出生体重で生まれた赤ちゃんは、正期産で生まれた赤ちゃんと比べて、発育や発達がゆっくりであることを理解しておきましょう。
例えば、一般的には生後3~5ヶ月ぐらいで首がすわりますが、低出生体重の赤ちゃんの場合、予定日よりどのぐらい早く生まれたかにもよりますが、生まれた日から数えた月齢では、その時期に首がすわっていないことが多いと考えられます。

発育や発達のペースは、赤ちゃんが予定日よりどのぐらい早く生まれたか、どのぐらいの体重で生まれたか、生まれたときの体の機能の発達具合はどうだったか、生後の経過はどうだったか、などによって異なります。

低出生体重で生まれた赤ちゃんの場合、ひとつの目安として、「退院したときがお誕生日」ぐらいのつもりで、そこから数えた月齢で、発達・発育をみていくといいでしょう。
最初のころは、発育や運動機能の発達のスピードは、標準的な体重で生まれた赤ちゃんと比べるとだいぶゆっくりですが、成長とともにその差はだんだんと縮まっていき、3歳ごろには、あまり差はなくなっていくでしょう。

ひとりひとりで成長のスピードは異なるため、ゆっくりでも、少しずつでも、その子のペースで成長していけるように、ママは「焦らず」「比べず」「気長に」見守ってあげられるといいですね。

医師の指示に従って経過をみていきましょう

退院後の通院など、経過観察については、その子によって異なります。退院後も受診の必要がある場合や、日常生活において注意が必要なことがある場合などは、退院時に医師から説明があるはずなので、指示に従いましょう。

経過に問題がなければ、低出生体重で生まれたからといって、特別に心配することはありません。退院できたということは、医療のサポートがなくても家庭で育っていく十分な力が赤ちゃんに備わったということ。心配しすぎず、子育てをスタートさせてくださいね。

ただし、気になることや心配なことがある場合は、いつでも、出産した病院や最寄りの小児科に連絡し、相談しましょう。

文/出村真理子
※ 写真はイメージで本記事の内容とは無関係です。

監修
渡辺とよ子先生
わたなべ医院院長
札幌医科大学医学部卒業後、国立小児病院新生児科(NICU)や東京都立墨東病院周産期センター新生児科部長、同病院副院長をへて2014年より現職に。多くの乳幼児をみてきた渡辺先生ならではの、的確で親切な助言が好評。これまで『母乳育児 ミルク育児の不安がなくなる本』(主婦の友社)など監修に携わった育児本多数。

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