【小児科医監修】赤ちゃんの脳性麻痺 原因や特徴は?

 専門家監修
公開日:2019/06/24
更新日:2019/07/01
【小児科医監修】赤ちゃんの脳性麻痺 原因や特徴は?
監修
渡辺とよ子先生
わたなべ医院院長

この記事は、脳性麻痺(のうせいまひ)についてまとめたものです。「脳性麻痺」という言葉は聞いたことがあるけれど、いったいどんな病気なのでしょう?その原因や特徴、合併症や治療法など、脳性麻痺の基礎知識を解説します。

脳性麻痺とは?

胎児~新生児の間に、脳が障害を受けて起こる

ママのおなかの中にいる間から、新生児(生後4週間)までの間に脳が何らかのダメージを受けて、自分が思ったように手足を動かしたり、姿勢を保ったりするのが難しくなるのが脳性麻痺(のうせいまひ)です。

疑わしいような妊娠分娩歴があれば、生後まもなくの検査で脳性麻痺があるかどうか、ある程度予測がつくこともあります。また、なかなか首がすわらない、おすわりができないなど、発達の遅れによって見つかることもあります。

脳性麻痺の疑いがあって成長や発達に遅れが出そうな赤ちゃんの場合、生後まもなくからかかりつけ医が注意深く見てくれるのが普通です。脳性麻痺は「私が頑張って、早い段階で見つけなければ手遅れになる!」と、ママが見つけ出そうとするような病気ではありません。

赤ちゃんが脳性麻痺になる原因

脳性麻痺、つまり胎児や生後間もない赤ちゃんの脳がダメージを受ける主な原因は次のようなものです。ただし「明らかに脳性麻痺だけれど、その原因がわからない」ということもあります。

ウイルス感染・細菌感染

妊娠中にママが風疹やサイトメガロウイルス、B群溶血性連鎖菌(GBS)などに感染すると、胎児や新生児にも感染して髄膜炎などを起こし、脳が障害を受けます。

胎児期、出産時の低酸素

胎盤が早期にはがれる、へその緒が胎児の首に巻きつくなどで、胎児に送られるべき酸素が不足することで、脳が障害を受けます。脳の中で運動機能を司る部分は、低酸素などの障害に弱いと考えられています。

脳血管障害

分娩時の脳出血、脳障害、出生後の脳外傷など。

核黄疸

脳の中には黄疸に弱い部分があります。新生児黄疸は誰にでも出るものですが、黄疸が強くなった場合、これをほうっておくと黄疸が重症化(核黄疸)して、脳に障害を受けることがあります。最近は産院での黄疸の管理がきちんとしているので、黄疸が原因で脳性麻痺になることは、昔ほどありません。

赤ちゃんの脳性麻痺の特徴

脳性麻痺は脳のどの部分に、どれぐらいの障害を受けたかによって、現れる症状には個人差があります。

脳性麻痺の主な症状は運動障害です。しかしたとえば、非常に難産でお産のときの低酸素状態がひどくて、大脳皮質など脳の広い範囲の機能がダメージを受けた場合などには、知的障害を伴うこともあります。

脳性麻痺の赤ちゃんによく見られる症状は次のようなものです。

●手足の麻痺

●体が硬い

●反り返りが強い

●手足が勝手に動いてしまう

●バランスがうまくとれない

●飲み込む力や噛む力が弱い

顔つき、姿勢など、現れる症状や程度はさまざま

脳性麻痺の症状の現れ方やその程度には、個人差があります。

たとえば大人が脳溢血を起こした場合を考えてみてください。軽症なら脳溢血を起こす前とほとんど同じ生活に戻れますが、重症の場合は寝たきりになることもあります。脳性麻痺の症状の現れ方もこれに似ています。脳がダメージを受けている部位や程度によって、バリエーションがあるのです。

・知的な発達は全く問題なく、歩くとちょっと足をひきずる。手の繊細な動きが苦手

・顔の筋肉がうまく動かせないために無表情な顔つきになったり、話すときに顔がゆがんだり動いたりする

・筋肉がうまくコントロールできないために笑えない、笑っているわけではないのに笑っているように見える

・自分で呼吸ができず、人工呼吸器が必要

これらはいずれも、脳性麻痺の症状の一例です。十把ひとからげにはできないほど、症状の程度には開きがあります。

赤ちゃんの脳性麻痺の種類

脳性麻痺は以下の5タイプに分けられ、タイプによって症状が異なります。このうち頻度が高いのは、アテトーゼ型と痙直型です。

アテトーゼ型

自分の意志とは関係なく、手足や顔など、体のあちこちが動いてしまう(不随運動)。たとえば目の前のものをとろうとしてもとれない、話すときに顔がゆがんでしまうなど。

痙直型

手足が硬直して、突っ張った状態になる。

固縮型

筋肉が固まって、関節が動かしにくい。

失調型

体や手足のふるえ、バランスの悪さなどが目立つ。

混合型

アテトーゼ型と痙直型など、2つ以上のタイプが混ざっている。

赤ちゃんの脳性麻痺の合併症

精神発達や言葉の遅れ、てんかん、誤嚥性肺炎を起こすことも

脳性麻痺は主に運動機能に障害が現れる病気を指します。しかし脳のどこにダメージを受けたかによって精神発達や言葉の遅れ、視聴覚の障害、てんかんによるけいれんなどを合併することがあります。

脳は神経回路のかたまりです。脳に障害があるということは、その回路がショートしやすいということ。てんかんによるけいれんは、興奮して神経回路がショートしたような状態です。

脳性麻痺の合併症として、てんかんが出るのは5~6歳ごろからと少し大きくなってから。人によっては、20歳を過ぎてから、てんかんが現れることもあります。

また脳性麻痺で飲み込む力が弱い子の場合、誤嚥性肺炎を起こすこともあります。

赤ちゃんの脳性麻痺の治療法

リハビリで残っている機能の低下を防ぐ

脳性麻痺かどうかは、ママへの問診、赤ちゃんの診察、赤ちゃんの頭部のCTやMRI画像などをもとに判断します。

脳性麻痺と診断された場合、今のところ病気そのものを治す根本治療はありません。しかし理学療法、作業療法などのリハビリテーションやマッサージをすることで、残された機能の低下を防ぎ、日常生活の不自由さを軽減することができます。

薬物療法を行う場合も

また筋肉のつっぱりや緊張を和らげるために神経ブロック療法やボツリヌス注射をする、てんかんを抑えるような薬物療法を行うこともあります。

脳性麻痺は予防はできる?

風疹などの感染症対策を

低出生体重児、早産児は、脳性麻痺になるリスクが高いと言えます。数字でどれぐらいと出すのは難しいのですが、たとえば1000g未満で生まれた赤ちゃんが脳性麻痺になる確率は1割ぐらいです。しかしその1割の脳性麻痺の子たちの9割は普通に保育園や幼稚園、学校に通えます。

脳性麻痺は原因不明の場合もあり、確実に予防できる方法はありません。妊娠中のママはウイルスや細菌に感染しないよう、できるだけ規則正しい生活を送り、きちんと食事をとりましょう。また、風疹などの感染症対策はしっかりとしておきたいですね。

出産はアクシデントにすみやかに対応できる産院で

脳性麻痺は妊娠中から新生児の間に、脳に障害を受けることで起こります。万一、出産時にアクシデントが起こったときにすみやかに的確な対応がとれるクリニックや産院を選びましょう。

現在は日本全国に総合周産期センター、各地域の周産期センターがあり、産院やクリニックと連携して「これは危ない!」というときに、適切な医療が受けられるシステムになっています。「お産は人生の大切なイベントだから」と豪華な産院や食事のおいしさなどで産院を選ぶ人は少なくありませんが、万一のときに安心な態勢が整えられているかどうかも、きちんと確認しておきましょう。

監修
渡辺とよ子先生
わたなべ医院院長
札幌医科大学医学部卒業後、国立小児病院新生児科(NICU)や東京都立墨東病院周産期センター新生児科部長、同病院副院長をへて2014年より現職に。多くの乳幼児をみてきた渡辺先生ならではの、的確で親切な助言が好評。これまで『母乳育児 ミルク育児の不安がなくなる本』(主婦の友社)など監修に携わった育児本多数。

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