妊婦の鉄剤いつまで必要? 鉄剤注射とは? 効果は? 体験談もご紹介!【産婦人科医監修】

 専門家監修
公開日:2019/06/19
更新日:2019/06/24
妊婦の鉄剤いつまで必要? 鉄剤注射とは? 効果は? 体験談もご紹介!【産婦人科医監修】
監修
木下智恵先生
成城木下病院

妊娠中に多いトラブル・貧血を予防するためにも、しっかりと摂りたい鉄分。病院で鉄剤を処方された妊婦さんも多いでしょう。鉄剤について、産婦人科医の木下先生にくわしく教えてもらいました。

鉄剤とは?

 鉄剤とは、鉄分を補給するための経口内服薬のこと。サプリメントではありません。薬剤なので、鉄のサプリメントとは鉄の含有量が異なります。食事やサプリメントで必要な鉄が摂取できていない、鉄分が不足していると医師が判断した場合、処方されることがあり、鉄欠乏性貧血の治療などに用いられます。

妊婦の鉄剤に関する先輩ママの体験談

「妊娠9ヶ月から出産まで処方された鉄剤を飲んでいました。臨月のとき、吐き気がしているのは鉄剤の副作用だと思ったら陣痛でした」(ごじゃママ)

「妊娠中期に2週間だけ鉄剤を処方してもらっていました。妊娠前、貧血で鉄剤を内服していたことがあったので、鉄剤に関して不安はまったくありませんでした」(あみママ)

妊婦に鉄剤って絶対必要なの?

すべての妊婦さんに、鉄剤が“絶対”必要なわけではありません。

一方、“鉄”は妊婦さんに限らず、人間にとって欠かせないものです。血液中の鉄は、赤血球の中でヘモグロビンとして、全身に酸素を運ぶ大切な役割を果たしています。鉄が不足するとヘモグロビン値が低下して貧血症状が出ます。
妊婦健診では、一般的に妊娠初期、中期、後期の計3回、血液検査にてヘモグロビン値などを調べ、ヘモグロビン値11.0g/dL 未満で貧血、9.0g/㎗未満を重症の貧血と診断されます。妊娠していないときは12.0g/㎗未満を貧血と診断します。食事やサプリで必要な鉄が摂取できない場合、鉄剤が処方されます。

ちなみに、妊娠前の鉄分の1日の摂取推奨量は6.5㎎。妊娠中は、初期で8 〜8.5㎎、中期以降は21〜21.4㎎です。食事では、鉄を意識して積極的に摂取しなければならない大変な量です。

なぜ、妊娠すると貧血になりやすいの?

妊娠すると、体重増加に伴って、体を循環する血液量が最大約30%も増えます。増えるのは液体成分である血漿(けっしょう)がほとんどで、血液中の赤血球などの成分はそのままです。ヘモグロビンの原料になる鉄分を意識してとらないと、固体成分である赤血球は30%も増えません。そのため血液が薄まった状態になり、貧血が起こりやすくなります。

貧血になるとどうなるの? 治療は必要?

貧血になると、全身に送る酸素量が少なくなるため、心臓の鼓動が速くなり、動悸や息切れが起こります。また顔色が青白くなったりします。鉄分と結びついて体のすみずみにまで運ばれる酸素には、体内にたまる疲労物質の乳酸を減らし、疲労を回復させる働きがあります。そのため貧血になると、疲れがとれにくくなるなどの症状も出ます。お産のときまでに貧血が治っていないと、体力が足りない、出血が多い場合にショック状態になりやすい、などの心配があるので、出産までに貧血を治療しておく必要があります。

貧血にはいくつかの種類がありますが、妊娠中に起こる貧血のほとんどが、「鉄欠乏性貧血」といわれるものです。鉄分は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの成分となって酸素と結びつき、全身に酸素を運ぶ働きをしています。そのため貧血かどうかは、血液をとってヘモグロビン値や赤血球量を調べることでわかります。

また、立ちっぱなしだったときめまいを起こしたり気持ち悪くなったりすることや、急に動いたり立ち上がったときにフラフラするのは、自律神経の乱れが原因となる脳貧血です。脳に行くべき血液が一時に少なくなることで起こるもの。妊婦さんがなりやすい鉄欠乏性貧血とは違うものです。

妊婦が鉄剤を摂るとどんな効果があるの?

妊婦さんが鉄剤を摂ることによって、鉄欠乏性貧血の予防をしたり、治療をすることができます。動悸や息切れ、冷や汗、疲れやすいなどの症状が改善されていくでしょう。

妊婦用の鉄剤注射とは

最近では、鉄剤注射は減りました。経口薬の鉄剤の種類が増え、吸収率のいい鉄剤が出てきたからです。嘔吐など、消化器系の副作用が強い妊婦さんが経口薬を飲めない場合は、注射ではなく鉄剤点滴をすることが多くなっています。

妊婦の鉄剤はいつまで摂取する必要があるの?

出産するまで飲む必要がある人もいますし、出産時の出血対策として、出産してすぐに鉄剤を飲む場合もあります。いずれにしろ、鉄剤を処方した産婦人科医に相談し、自分の判断だけでやめないことが大切です。

妊婦が鉄剤を飲み忘れたらどうすればいい?

ついうっかり、飲み忘れることもあると思います。飲み忘れに気付いたときに、鉄剤を飲んで大丈夫です。
もし、鉄剤を飲むと気持ちが悪くなるなど、副作用がつらくて飲まなかったとしたら、2~3日に1回でも飲めるときに飲んでください。また、処方されている鉄剤を別の鉄剤に替えてみることで副作用が治まることもあります。どんな副作用があるのかを主治医に伝え、処方薬を変えるかどうかを含め相談しましょう。

鉄剤も薬です。必要があって処方されていますので、自分で勝手に判断して服用をやめないようにしましょう。

妊婦が鉄剤を飲むとどんな副作用がありえるの?

鉄剤を飲むと、便秘や気持ち悪くなるなどの副作用が起こることがあります。また、鉄剤を飲むと便が黒くなりますが、これは吸収されなかった鉄が排出されているためなので、心配はありません。

鉄剤は、なるべく胃に負担をかけないよう、食後に飲むように処方されます。胃の痛みやむかつきの予防のため、胃を保護する薬がいっしょに処方されることもあります。それでも副作用が出るときや副作用がつらい場合は、自分の判断で飲むことをやめるのではなく、必ず主治医に相談しましょう。鉄剤は貧血を改善するために必要な薬なので、処方されたらきちんと飲みましょう。

ただし、嘔吐などの消化器症状が出てしまい、鉄剤を飲むことができない場合や、重度の貧血の場合などは、鉄剤を点滴することもあります。鉄剤点滴は消化管を通さないので、嘔吐などの消化器症状は出ません。

昔と違って、今の鉄剤は、副作用が少なくなっています。動悸や冷や汗は、副作用ではなく、貧血の症状そのものが出ている可能性もあります。妊娠による自律神経の乱れと貧血が重なることで、動悸や冷や汗などの貧血の症状が出ることもあります。一度、病院で相談してみましょう。

構成・文/木村美穂

出典 :いちばんよくわかる妊娠・出産※情報は掲載時のものです

監修
木下智恵先生
成城木下病院
2001年、横浜市立大学医学部卒業。東京大学医学部産婦人科、順天堂大学医学部産婦人科勤務を経て2005年より現職に。専門は周産期学のほか、婦人科腫瘍、不妊症、月経異常。元気で気さくな1男2女のママドクターです。
成城木下病院

あなたにおすすめ

注目コラム