絨毛膜羊膜炎とは? 早産の原因になる? 症状や治療の方法は?【産婦人科医監修】


升田春夫先生
三枝産婦人科院長
早産の原因で最も多いのは細菌による感染です。なかでも絨毛膜羊膜炎は、早産の原因の第1位となっています。自覚症状がほとんどないので、予防をするにはきちんと健診を受けることが大切。絨毛膜羊膜炎の基本的なことを知っておきましょう。
絨毛膜羊膜炎とは?
絨毛膜羊膜炎とは、どんな病気なのでしょうか。
卵膜の絨毛膜と羊膜が感染した状態
おなかの中の赤ちゃんは、卵膜(らんまく)という薄いけれど弾力性のある丈夫な膜で包まれています。卵膜は外側から「脱落(だつらく)膜」「絨毛(じゅうもう)膜」「羊膜」の3層で構成されています。
絨毛膜は表面に絨毛(細かい突起)があり、この一部分から胎盤がつくられ、ママの血液から酸素や栄養を吸収し、おなかの赤ちゃんに送ります。羊膜はいちばん内側にあり、へその緒の表面も覆っています。
絨毛膜羊膜炎は、絨毛膜と羊膜に細菌が感染し、炎症を起こした状態をいいます。
絨毛膜羊膜炎には不顕性と顕性がある
絨毛膜羊膜炎は、進行具合によって「不顕性」と「顕性」の大きく2つに分かれます。不顕性は子宮内に感染していない状態で、治療を行えば早産を予防でき、妊娠の継続が可能です。一方、顕性は子宮内に感染している状態で、進行を止めにくく、多くは早産になってしまいます。そのため、不顕性の段階で早期発見、早期治療をすることが重要になります。
絨毛膜羊膜炎と早産との関係
妊娠22週以降から37週未満に出産することを早産といいます。早産の原因で最も多いのが感染症によるものです。はじめは、膣内に起こった感染症でも、気づかずにそのままにしておくと、膣内から子宮頸管、さらに卵膜(羊膜、絨毛膜)まで感染が進行してしまいます。そうなると子宮頸管がやわらかくなったり、卵膜がもろくなって破れたりして、前期破水(陣痛がはじまる前に羊水が流れ出てしまう症状)や早産になるおそれがあります。
おなかの赤ちゃんにとって、最も安全で快適に過ごせる場所は、羊水と卵膜で守られた子宮の中です。赤ちゃんの体の機能が完成する妊娠37週までは、1日でも長く子宮の中で育てることが大切。できる限り感染症を予防して、早産になるのを防ぎましょう。
絨毛膜羊膜炎の原因
絨毛膜羊膜炎は、膣内の細菌のバランスが乱れることから始まります。本来、膣内はラクトバチルスという乳酸菌(善玉菌)によって酸性に保たれ、乳酸菌以外の菌の増殖を防いでいます。ところが何らかの原因によって乳酸菌以外の菌が増えると、膣内はアルカリ性に傾き、感染症にかかりやすい状態になります。この状態を「細菌性膣症(さいきんせいちつしょう)」といいます。
細菌性膣症になると、その一部が「膣炎」を引き起こすことがあります。膣炎が進行すると「頸管炎(子宮頸管に感染)」→「不顕性絨毛膜羊膜炎」→「顕性絨毛膜羊膜炎」と、子宮の中へ向かって感染と炎症が広がっていきます。
細菌性膣症は、大人の女性の10~30%はかかったことがあるといわれるほど、比較的よくある病気です。細菌性膣症の症状は、においのあるおりものですが、まったく症状のないケースも少なくありません。妊娠中は免疫力が低下しているため、細菌性膣症が起こりやすいといわれています。膣炎、頸管炎の段階で治療を行うことができれば、絨毛膜羊膜炎を防ぐことが可能です。
絨毛膜羊膜炎の症状と検査方法
不顕性の場合
不顕性の絨毛膜羊膜炎の場合、自覚症状はほとんどありません。健診のときに子宮頸管の短縮などがみられた場合は、おりものの検査などが行われることがあります。
おりものの検査では、減菌綿棒で膣内のおりものや子宮頸管の粘液を取り出し、炎症の有無を調べます。また、膣内の細菌を培養して調べたり、膣内の状態が酸性かアルカリ性かを確認したりする検査(pH検査)も行われます。さらに、感染によって卵膜に炎症が起こると膣内に流れ出てくる物質(フィブロネクチン)があるので、その有無をみる検査が行われることがあります。
顕性の場合
不顕性絨毛膜羊膜炎が進行して顕性絨毛膜羊膜炎になると、最もわかりやすいのは発熱(38度以上)です。また、おなかの張りや子宮頸管の短縮などの切迫早産の兆候や、おりものの増加、白血球の増加などがみられます。超音波検査、血液検査、おりものの検査などが行われます。
絨毛膜羊膜炎の治療方法とかかる期間
できる限り不顕性の段階で診断し、感染の進行を止めることが重要です。
不顕性の場合
不顕性の場合は、抗菌薬で細菌の増殖や感染を抑えたり、子宮収縮を抑える薬を投与したりして安静に過ごします。治療期間は症状によって異なるので一概にはいえませんが、この段階であれば妊娠の継続が可能で、赤ちゃんにも影響することはありません。
顕性の場合
顕性の場合は、治療を始めても効果は期待できず、早産を食いとめるのは難しくなります。症状によっては、抗菌薬などを使ったり、膣の中を食塩水や消毒液などで洗浄したりする治療を数週間行うこともありますが、多くの場合は数日中にお産になります。お産の時期が遅れるとかえって赤ちゃんの状態を悪くすることがあるからです。
絨毛膜羊膜炎の胎児への影響は?
不顕性の場合
不顕性の場合は、子宮の収縮を抑えて早産にならないようにすれば、赤ちゃんへの影響はまずありません。
顕性の場合
顕性の絨毛膜羊膜で早産になった場合、感染そのものが赤ちゃんに及ぶととても危険な状態になります。さらに、赤ちゃんが脳性麻痺を発症する可能性もあります。また、妊娠週数が早ければ早いほど、生まれた赤ちゃんの体の機能は未完成な部分が多く、NICU(新生児集中治療室)で入院生活を送ることになります。
絨毛膜羊膜炎の予防法
まずはママの健康が第一です。ママの免疫力が低下すれば、膣内の自浄作用が低下します。栄養をしっかりとって、十分な睡眠を心がけ、夫婦げんかなどのストレスを避けましょう。
また、性交渉ではコンドームを使いましょう。さらに、身体を清潔に保つことも大切です。早期に発見するために、おりものの異変を感じたときは医師に相談してください。
取材・文/小沢明子

升田春夫先生
三枝産婦人科院長
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