妊婦の歯周病の治療や予防法は?赤ちゃんに影響は?【産婦人科医監修】


佐野麻利子先生
産科婦人科舘出張佐藤病院/フィーカレディースクリニック院長
妊娠すると、つわりで歯磨きがつらい人も多いですよね。無理は禁物とはいえ、歯磨きができないと気になるのが虫歯や歯周病。歯周病は、妊娠中は意外とこわい病気なの? 産婦人科の先生に妊婦さんの歯周病について教えてもらいました。
目次
歯周病とは?
歯周病(ししゅうびょう)とは、細菌感染によって炎症が起こることにより、歯肉(しにく)や歯根膜(しこんまく)、歯槽骨(しそうこつ)などの歯周組織が破壊されてしまう病気のこと。炎症が歯肉にとどまっている「歯肉炎」と、歯根膜や歯槽骨まで広がる「歯周炎」の2つに分類されます。
歯肉炎
歯周病の初期段階で、細菌が出す毒素などによって歯ぐき(歯肉)に炎症が起きて赤く腫れている状態です。歯と歯肉の間にプラーク(歯垢)がたまり始めて出血しやすいなどの症状があらわれますが、まだ歯を支える歯周組織までは破壊されていません。
歯周炎
プラークの中には、ものすごい数の細菌がいて、その中には歯周病を引き起こす細菌もあります。歯周病の原因菌は、酸素にふれるのが嫌いなので、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の境目のすき間)に入り込みます。そうして歯と骨の間でクッションの役割をしている部分や、歯を支える骨まで溶かしていきます。このように歯周病が進行した状態が歯周炎です。
妊婦が歯周病になりやすい原因
妊娠中はホルモンの変化や免疫力の低下によって、歯や歯ぐきにトラブルを起こす歯周病の原因菌や虫歯菌が増えやすくなります。赤ちゃんを「異物」として攻撃しないようにするため、体に侵入してくる菌やウイルスに対抗する免疫力も低下します。歯周病の原因菌や虫歯菌と闘う力も弱くなります。
また、唾液が少なくなる人も多く、口に残った食べかすや雑菌を洗い流す機能も衰えるので、歯周病や虫歯になる危険も増えます。つわりで歯磨きができなかったり、ちょこちょこ食べたりすることもあるため、プラーク(歯垢)をなかなか取り除くことができないことも関係しています。
それに、妊娠中は「エストロゲン」や「プロゲステロン」などの女性ホルモンが増えます。歯周病の原因菌の中には女性ホルモンが好きな菌がいるため、増加。妊娠前の何倍も歯周病にかかりやすくなるのです。
妊婦が歯周病になると赤ちゃんに影響はある?
歯周病の原因菌が細胞を刺激して、炎症を起こす物質「プロスタグランジン」が増加します。「プロスタグランジン」は、お産のときに子宮を刺激して、子宮収縮を起こさせる物質で、「プロスタグランジン」が分泌されることで分娩が始まります。それが血管に入り込んで血液の流れにのって子宮まで運ばれると、早産の原因になってしまうこともあるのです。妊婦さんが歯周病になると、低体重児および早産のリスクが7倍高くなるといわれています。虫歯に比べて自覚症状がない歯周病は、いつの間にか進行するので日ごろからケアをすることが大事です。
妊婦におすすめの歯周病予防とは?
つわりがひどくて歯を磨くのがつらいなら、食後にこだわらず、マシな時間帯を見つけて歯を磨くのもひとつの手。ほかにも、歯磨剤(歯磨き粉)を使わずに磨いたり、子ども用の歯ブラシやヘッドがより小さいものを使ってみることを試してみて。
また、細菌は乾燥した口の中が大好き。こまめに水分をとって口の乾燥を防ぎ、歯周病の原因となる細菌の繁殖を抑えましょう。摂取する水分は、水やノンカフェインのお茶などがおすすめです。
口の中を乾燥させないという意味では、ガムをかんで唾液の分泌を促すことも効果的。つわりなどでガムをかむことが難しければ、耳たぶの前やあごの下にある唾液腺を軽くマッサージして刺激してあげるだけでも、唾液の分泌を促すことができます。
妊娠すると、食事や生活の変化やホルモンの変化によって、歯周病をはじめとする口内トラブルが起きやすくなります。妊娠中に一度は歯科健診を受け、予防を心がけましょう。
妊婦のときの歯周病の治療について
歯周病治療の基本は、原因である細菌を除去することです。妊婦の場合は歯のクリーニングをし、急性のものは抗生剤を処方することもあります。妊娠中に歯科に行くことに抵抗がある妊婦さんもいますが、妊娠していることを伝え、母子健康手帳を見せれば、薬の処方が必要な場合も、妊娠中でも問題ないものにしてもらえます。麻酔は局所用なので胎児に影響はありませんが、過去にアレルギー反応が出たことがある場合は忘れずに伝えましょう。
妊婦の歯周病と早産の関係について教えて!
さきほどもお話ししましたが、出産が近くなると、子宮を収縮させる「プロスタグランジン」という物質が分泌されることによって、分娩が始まります。歯周病により炎症が広がると、「プロスタグランジン」が作られてしまうため、分娩時と同じように子宮の収縮が促されて早産が引き起こされてしまうといわれています。
妊娠中の歯周病に関する先輩ママの体験談
「妊娠中の歯科検診にて、歯ぐきからの出血があり歯周病を指摘されました。治療はとくにせず、念入りに歯を磨いていましたが改善されませんでした。産後は、自然と出血しなくなっていました」(yunaママ)
「歯周病が気になっていたので、歯科健診のほか、体調がいいときにしっかりと歯を磨くようにしていました。また水分もよく摂るように気をつけていました」(あみママ)
「歯周病予防として、毎日の歯磨きと合わせて、デンタルフロスとマウスウォッシュを使ってお手入れしていました」(ユアンエママ)
「妊婦さん向けの歯科健診に行っただけで、特に歯周病予防はしていませんでした」(Sママ)
取材・文/木村美穂、Milly編集部 校正/主婦の友社

佐野麻利子先生
産科婦人科舘出張佐藤病院/フィーカレディースクリニック院長
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