先天性風疹症候群の原因・症状は?治療法や予防策は?【厚生労働省と患者会のママに取材】

コラム 公開日:2018/12/07
先天性風疹症候群の原因・症状は?治療法や予防策は?【厚生労働省と患者会のママに取材】

先天性風疹症候群とは、妊娠中にママが風疹ウイルスに感染することが原因で、おなかの赤ちゃんに影響が残るというものです。症状としては命に別状はないものの、心疾患や、目の病気、聴覚に影響が残るといわれています。生後、どのように成長していくのか、育てていくママやパパにはどのような思いがあるのでしょうか。
先天性風疹症候群患者会のAさんがMilly読者のために話してくださいました。

妊娠中の風疹、予防策、影響について詳しくは、「【産婦人科医監修】妊婦が風疹にかかったら? 抗体がないと胎児にはどんな影響がある?予防法は?」をお読みください。

妊娠17週で風疹にかかり、「もしかして」「いや大丈夫」を繰り返す日々

Milly編集部(以下----) お子さんは今、何才ですか? 先天性風疹症候群による影響はどのようなことがあるのでしょうか。

Aさん 「次男は、もうじき6歳の誕生日を迎え、来春小学校に進学します。先天性風疹症候群により、感音性高度難聴があります。左耳で聴こえるのは100㏈(デシベル)以上で、飛行機の騒音も聞こえるかどうか。右耳で聴こえるのは80㏈以上、耳元で大きくしゃべってやっと聴こえるくらいです。補聴器を生後4カ月から使用しています。」
(編集部注:普通の会話やチャイムの音などの音が60㏈で、数値が高いほうが大きな音)

右耳に補聴器をしているAさんの次男くん。春には小学校1年生です。

----風疹にかかったのは、妊娠何週のころですか?

Aさん 「私が風疹にかかったのは妊娠17週のころでした。どこから感染したのかは、はっきりわかりません。そのころ、上の子は3歳で保育園に通園していましたが、保育園でも流行はなく、当時勤めていた会社でも、風疹にかかっていた人はいませんでした。1時間以上かけて電車通勤していたので、通勤ラッシュの中での感染かと思われます。

かかったときの自覚症状としては、風邪みたいな感じで始まりました。頭痛と寒気がして、夕方から発熱。39度まで上がりました。その日は会社を休み、次の日には熱が下がったので出社しましたが、それから顔に発疹が少し出始めたんです。だんだん体に広がり、ただの風邪じゃないなと思い、会社の昼休みにインターネットで調べて、風疹かも……と思ったのが最初でした。

その時は、『ただ事じゃない……どうなるんだろう』という思いと、『まだ風疹と決まったわけじゃない』、という気持ちで揺れていました。

その後、さらに発疹が広がってきたので会社を早退。内科をまず受診しました。抗体価検査をしたのですが、そのときはHIは64倍でした。あとからわかったのですが、この数字はまだ抗体価が上がっていく途中でした。『発疹の原因は風疹が原因じゃないかもしれない』とも思い、皮膚科へ行ってみると、初見で<風疹>と診断されました。さらにかかりつけの産婦人科を受診したらHIは256倍と急激に上がっていて、風疹に感染したことが確定した、というのが診断までの流れでした。

産婦人科では、先天性風疹症候群の確率や、どんな障害が残るかといった一般的な説明だけがされました。そして、さらに専門の病院を紹介されて受診。妊娠17週なので、おそらくそんなに大きな障害は残らないのではないか、もし残るとしたら聴覚で、心臓や脳などに重篤な障害が残る確率は低い…といった説明がありました。そしてその後、おなかの赤ちゃんへの感染を調べるために羊水検査を受けることにしました。

風疹にかかったのが6月27日、羊水検査を受けたのは7月10日でした。妊娠19週のころです。羊水検査の結果は<陰性>でした。その結果に医師からは『たぶん大丈夫でしょう』と検査結果を告げられ、ホッとしつつも、出産までは心のどこかにいつも風疹のことがひっかかっていました。」

誕生後、聴覚スクリーニングで何度も再検査に…

----出産後はどのような経過でしたか?

Aさん 「妊娠経過は順調で、発育も標準的。上の子が帝王切開だったので、今回も妊娠38週の時に予定帝王切開で出産。出生体重は2636gでした。そして全員が受ける新生児聴覚スクリーニングを受けたところ、どうしても要再検査となってしまうのです。風疹にかかった経過があったし、妊娠中に検査をした専門の病院からは追跡調査の依頼もあったので、臍帯血検査も出しました。その結果、やはり赤ちゃんは<先天性風疹症候群>であると確定しました。

産院では毎日のように聴覚検査をしていました。私としてはやっぱり風疹のせいかな、と思っていましたが、先天性風疹症候群の赤ちゃんを見たことがない看護師さんたちは『耳に水がたまっているせいなのかも』と、私を安心させるために言葉をかけてくれました。
けれども連日、再検査になること自体が私にはショックで、入院中はとてもつらかったです。

出産したのは総合病院だったので、小児科の先生から、今できる検査はできるかぎり調べてみようということになり、赤ちゃんは眼科も受診して脳のCTも撮りました。その結果、障害があるのは耳だけだろうということになったのです。
その後、生後1カ月からは、地域の大規模な小児医療センターを紹介してもらって通い始めました。

その当時、とてもつらかったけれど、上の子もいるから私も泣いてばかりもいられなくて……。それでもやっぱり、スクリーニングで何度も引っかかってしまうことがつらくて泣く、という日々でした。

子供が難聴だった場合は早期からの療育が必要、ということは事前にいろいろ調べて知ってはいました。でも、まだ赤ちゃんが先天性風疹症候群だと確定するまでは、『もしかしたら耳に水がたまっているだけかも』と期待をしたり、その一方で『早く療育を!』とあせったり。
わざと大きな音を立てて、赤ちゃんが反応するかどうかの様子を見たり……。療育のための情報を得ていた分、早くなんとかしたいと焦る気持ちと、風疹じゃないと否定する気持ちと、ずっとせめぎ合っていました。」

泣いてばかりはいられない。気持ちを切り替えて療育へ

----赤ちゃんが先天性風疹症候群だとわかってから、療育を始めるまでの気持ちを教えてください。

Aさん「パパは、私が風疹にかかったときの直前に発熱していたんです。それで一緒に抗体価を調べました。検査結果のHI値は低く、風疹の免疫をもっていないということがわかったのです。それでもパパは、俺のせいかも…と一瞬思ったようでした。難聴がわかったときには、切り替えが早い人なので、『一生懸命育てなきゃだよね』と言いました。ポジティブなんです。はじめはへこんだ、と言っていたけど、わりとあっさり気持ちを切り替えたように、見えました。

1カ月たって、地域の大規模な小児医療センターで赤ちゃんは高度の難聴である、とあらためて診断がされました。『とんでもない障害を残しちゃった』と思いましたが、私も、切り替えは早いほう。たくさん泣いたけど、確定してからは療育をがんばろう、と思うことにしました。」

Aさんが実際に療育に使っていた楽器類。さまざま種類の音を積極的に聞かせました。

----具体的に療育はどのようなことをしていましたか?

Aさん「療育は、さまざまな種類の音を意識的に聞かせました。いろいろな楽器で音を出したり、話しかけたり。赤ちゃん難聴外来、音楽外来などに通いました。自分でも、何ができるのか調べたりもしました。

生後4カ月で補聴器をつけて1カ月後、生後5カ月くらいから、太鼓の音に反応し始め、1才前には名前を呼ぶと手をあげるという反応を見せるようになりました。幸い、息子は、補聴器をいやがらない子でした。赤ちゃんによっては、自分で取ってしまうこともあるそうなので、つけていてくれたのはほんとうによかったと思います。

おしゃべりの始まりは2才ころ。発音はあまりよくないけど、彼なりに「わんわん」などの言葉を発するようになりました。乗り物が好きなので「しんかんせん」と言えるようになったのが、1才8カ月ごろでした。ベビー難聴外来と地域のろう学校に、週1回療育に通いました。」

子育てメインの生活のために、仕事も辞めて向き合うことに

----その後の経過は?

Aさん「1才9カ月で左耳の人工内耳を入れることになりました。(編集部注:人工内耳はインプラントを体内に埋め込む手術が必要)難聴児のためのおしゃべりをすることがメインカリキュラムの療育機関にも通い始めました。今も幼稚園を休んで週2回通っています。1~2才のころは2週に1回、2才から4才のころは週3回、その後は週1~2回といったところです。療育に行く日は、幼稚園を休んで通います。療育は母子一緒で1日がかりです。ほかの親子とも一緒にグループでカリキュラムを受けるのです。そのためもあって、それまで勤めていた会社は辞めて療育に通う日々でした。そして今年の春から、またパートとして復職。仕事と両立しつつも、今はすっかり子育てメインの生活です。

左耳の人工内耳。

お兄ちゃんの時はワーキングマザーとして忙しい毎日を送っていたせいか、今思い出すとなにかと保育園まかせだったことも。けれども、今は違います。療育に通うほかにも、毎日次男の横で話しかけ続ける生活。大変といえばそうですが、とにかくやるしかなかったのです。先天性風疹症候群であるとわかってから、必死に子供とかかわってきました。

大規模な小児医療センターに通っていたころは、週2~3日、たくさんの検査を受けました。心臓、眼科、血液、発達神経、先天性風疹症候群の場合は、通院中も隔離されなくちゃいけなかったのが、親としてはほんとうにつらかったです。ほかの子たちと別のところにいなくちゃいけなくて……。(編集部注:風疹ウイルスの排泄が認められた場合、唾液や鼻汁、尿中の風疹ウイルスが感染源となる可能性がある。そのため、ウイルスが排出されている間はほかの患者と接触しないように隔離される)

1才9カ月で人工内耳を埋め込む手術を受けてからは、両方の耳から音が入るようになりました。今では、人工内耳の左耳をメインで使っているようです。発音もずいぶんよくなりました。今もまだ “たちつてと”  “さしすせそ” の発音むずかしいのですが、これからまた訓練を重ねていくようになると思います。

療育で使われる、言葉を覚えるために使われる絵カード。

療育と、こうした医療のおかげで、今はほとんどコミュニケーションにも問題なく過ごしています。心配だったのは、難聴と関係する発達の遅れでした。次男はすべてがゆっくりめで、おすわりができるようになったのも少し遅かったような気がします。

もともと、なんでもマイペースでのんびりした性格の次男。それは難聴とも関係があるのかもしれませんが、騒ぐタイプの子ではありません。入園前はお友だちと一緒に遊ぶというよりも、ひとりで遊ぶことが多かったですが、幼稚園に通うようになったときに『幼稚園楽しい』と言っていたのでほっとしました。お友だちの様子を見て、くすくす笑っていたりもしていました。4才くらいからだんだん慣れたのか、自分からお友だちに話しかけることも多くなりました。そして、小学校は通常学級に進学します。難聴学級には週1回通う予定です。」

----お兄ちゃんとの関係は、どうですか?

Aさん「次男は、お兄ちゃんとはケンカもしますが、お兄ちゃんが大好きなので、仲良く遊んでいることも多いです。弟の耳の聞こえづらさをお兄ちゃんなりに分かっているようで、遊ぶ時によく聞こえていないようだと、何度も繰り返し伝えてくれたり、お風呂などで補聴器などをはずしている時は近づいて口元を見せながら、ゆっくり話しています。

どうしても、お兄ちゃんにはいろいろと弟のフォローを頼むことが多いので、お兄ちゃん優先の時間を作ったりということも気をつけています。どちらかを置いてけぼりにしないよう、どちらもとりあえず巻きこんで、楽しく過ごせるようにと心がけています。

子育てする中で変わったのは、「これができるようになった!」という喜びというか安堵が大きくなったこと。兄弟ともに、ひとつひとつの成長を、丁寧に見るようになった、という実感はあります。」

他人事と思わないで、風疹のこと、もっと知ってほしい

----最後に、Millyを読んでいる方へ伝えたいことは?

Aさん「風疹のこわさは、たくさんの人に知ってほしいです。私もそうだったけれど、知らない人、まだまだ多いと思います。妊娠前に抗体価検査を受けて、必要ならワクチン接種も受けてください。女性はもちろん、男性も。他人事だと思わないでほしいです。私が風疹に感染したのは通勤電車でしたから。」

もし、妊娠中に風疹にかかったら、どうしたらいいの?

(写真右から)厚生労働省健康局結核感染症課の繁本憲文さん、柳川愛実さん。

Aさんと同じように、もしも妊娠中に風疹にかかったら、どうしたらいいのでしょうか。厚生労働省健康局結核感染症課 課長補佐の繁本憲文さんにお話を聞きました。

「先天性風疹症候群と確定すると、国のサポートとしては、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象になり、助成を受けることができます。助成額は所得に応じて変わります。まずは自治体に問い合わせてください。

もし妊娠中に風疹にかかったら、受診した医療機関から保健所に届け出る規定があります。これにより、どこで先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれる可能性があるかを把握できるようになっています。

ただ、まずは妊婦さんが風疹にかからないことが先決なので、厚生労働省としては、企業の健康管理者に向けて意識喚起のリーフレットを配布したり、風疹抗体価検査を健康診断に組み込むように勧めたりしています。また、風疹は飛沫感染することから、咳エチケットについての啓発活動も行っています。

さらに、抗体を持っていない率の高い39~56歳の男性を原則無料のワクチン接種の対象にする方向で検討中です。これは抗体検査を受け、免疫が十分ではないと判明した人を対象にしています。抗体検査については、すでに無償化になっている自治体もありますが、この年齢層の男性を2019年に、国として無料化する方針です。」

妊婦さんと胎児を風疹から守るために、今、日本全体が動いているのです。

取材協力/厚生労働省、先天性風疹症候群患者会

参照文献/日本産婦人科学会日本産婦人科医会国立感染症研究所日本小児感染症学会小児慢性特定疾病情報センター

取材・文/関川香織

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