子供が嘔吐!熱と下痢もある?原因と対処法【小児科医監修】

 専門家監修
公開日:2019/01/17
更新日:2019/03/22
子供が嘔吐!熱と下痢もある?原因と対処法【小児科医監修】
監修
十河 剛先生
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科副部長

この記事は、赤ちゃんや子供の嘔吐についてまとめたものです。赤ちゃんや子供はもともと、大人とくらべて吐きやすい傾向があります。しかし、嘔吐には病気が原因で起こるものもあります。とくに、熱や下痢などほかの症状をともなうときには注意が必要です。子供が吐いたときの原因と対処法を、小児科の先生に聞きました。

子供が嘔吐する原因とは?

赤ちゃんは授乳後に吐きやすいもの

子供が嘔吐する原因には、さまざまなことが考えられます。赤ちゃんの胃は大人のようなくびれがなく、ラグビーボールのような形をしており、入り口が背中側にあるため、いつも仰向けに寝ている赤ちゃんは大人よりも吐きやすい傾向があります。

母乳やミルクを飲んだ後に、口の端からタラッと吐いたり(溢乳)、ゲップを出したときに吐いたりすることがありますが、そのような嘔吐の多くは生理的なものです。ほかに下痢や発熱などの症状がなく、機嫌も飲みもよく、体重も増えているなら心配せずに様子をみていいでしょう。

嘔吐をともなう病気はさまざま。ほかの症状にも注意を

ただし、嘔吐のなかには病気が原因で起こるものもあります。いわゆる「おなかのかぜ」といわれるウイルス性胃腸炎や細菌性胃腸炎のほか、かぜ症候群やインフルエンザでも嘔吐することがあります。
ほかに、肥厚性幽門狭窄症(ひこうせいゆうもんきょうさくしょう)や髄膜炎、脳炎、腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)、食物アレルギーなどの病気が原因で嘔吐の症状がみられることもあります。

嘔吐の原因を知るためには、子供の年齢や月齢、吐き方、吐く頻度、嘔吐以外にどのような症状(発熱、下痢、意識障害など)があるか、などを確認することが重要です。
いずれにせよ、ママ自身が嘔吐の原因を正しく特定することは難しいといえます。自己判断せず、嘔吐の症状がみられたら必ず小児科を受診しましょう。

子供が嘔吐したときに疑われる病気は?

嘔吐は、さまざまな病気が原因で起こることがあります。嘔吐にともなう症状別に、どのような病気の可能性が考えられるかをみていきましょう。

子供の嘔吐に発熱をともなうとき

・かぜ症候群

さまざまなウイルスなどが原因で起こる、いわゆる「かぜ」でも吐くことがあります。熱が出ることもありますが、出ないことや、出てもそれほど高くないこともあります。鼻水、鼻詰まり、せき、のどの痛みなどの症状を伴う場合は、かぜ症候群の可能性が考えられます。
かぜを治す薬はないため、症状をやわらげるための対症療法をしながら、安静と水分補給を心がけて様子をみます。

・インフルエンザ

インフルエンザウイルスに感染することで起こる病気。急な高熱のほか、せきや鼻水、のどの痛みなどかぜと同じような症状がみられることもありますが、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身症状が強く出て、症状も重くなります。
とくに赤ちゃんは重症化しやすく、肺炎、気管支炎、中耳炎、熱性けいれん、脳症など、重篤な合併症を起こすこともあるため、注意が必要です。

子供の嘔吐に下痢をともなうとき

・ウイルス性胃腸炎

子供の嘔吐の原因として、もっとも多いのがウイルス性胃腸炎です。ノロウイルスやロタウイルスなど、多くのウイルスが原因で起こります。突然の嘔吐と下痢が主症状で、発熱をともなうことも多くあります。下痢がなく、嘔吐だけの場合もあります。
ウイルス性胃腸炎の場合、嘔吐のピークは症状が出始めてから半日ほどです。嘔吐に下痢が重なると、体内から急速に水分と電解質が失われて脱水症になりやすくなるため、こまめな水分補給を心がけましょう(詳しくは「子供が嘔吐したときの対処法は?」を参照)

・細菌性胃腸炎

ウイルスではなく細菌が原因で起こる胃腸炎。黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌、カンピロバクター、ボツリヌス菌、病原性大腸菌(O-157など)など、さまざまな細菌が原因となり、食中毒やペットによる感染もあります。
嘔吐、下痢、発熱などが主症状で、原因菌により少しずつ症状は異なりますが、感染した菌の種類によってはウイルス性胃腸炎より症状が重くなることがあります。

子供の嘔吐に意識障害をともなうとき

・髄膜炎・脳炎・脳症

髄膜炎とは、脳や脊髄の表面を覆っている髄膜に、ウイルスや細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。ウイルスによって起こる無菌性(ウイルス性)と、細菌によって起こる細菌性に分けられ、細菌性髄膜炎のほうが症状が重い特徴があります。
主な症状は、高熱、頭痛、繰り返し起こる嘔吐などで、首のうしろの硬直、けいれんや意識障害を起こすこともあります。非常に症状が重く、入院治療が必要になるため、ヒブや肺炎球菌の予防接種を受けて予防を心がけましょう。

脳炎は、ウイルス感染により脳に炎症が起こる病気です。症状は髄膜炎とほぼ同じですが、脳神経がダメージを受けるため、後遺症が残ることがあります。単純ヘルペス、風疹、はしか、水ぼうそう、おたふくかぜなどのウイルスは、合併症として脳炎を起こすことがあるため、注意が必要です。

 ほかにも、意識障害がある場合には先天代謝異常など、重篤な病気が隠れている可能性があります。

それ以外にもこんな病気の可能性が……

・腸重積症

腸の一部が腸のなかに入り込んでしまう病気です。突然激しく泣いたり、おさまったりを繰り返すこと、いちごゼリーのような血便が出ることがこの病気の特徴です。
発症から数時間たつと、腸が重なり合った部分の血流が妨げられて壊死してしまう危険があります。激しく泣いたり、おさまったりを繰り返し、間欠的に顔色が悪くなる、吐くなどの症状がみられたら、夜間でも大至急受診しましょう。

・肥厚性幽門狭窄症

胃の出口部分である「幽門」が厚く、十二指腸への通り道が狭くなる病気。生後2~3週間から2ヶ月ごろに発症することが多く、飲んだ母乳やミルクが胃から十二指腸へ送られにくく、逆流するために吐いてしまいます。
赤ちゃんはもともと吐きやすいものですが、吐く頻度がどんどん増え、授乳のたびに吐く、吐き方が激しくなって噴水状に吐く、体重が増えない、あるいは減る、などという場合はこの病気の可能性が考えられます。男の子に多い病気です。最近では「マーライオンのように吐く」と表現するお母さんが多いです。

・食物アレルギー

ある決まった食べ物を口にすることで、発疹や下痢などの症状を起こすことをいいます。原因となる食品は、卵、乳製品、小麦が多く、それ以外にも、大豆やそば、かに、えびなど、さまざまなものがあります。
主な症状は、皮膚の赤み、かゆみ、じんましんなどですが、下痢、嘔吐、せき、くしゃみ、鼻水、口やのどの違和感などの症状がみられることもあります。症状が出るまでの時間は、食べてから20分以内のことが多いですが、6~8時間後や1~2日後など、時間が経ってから出ることも。
また、複数の症状が同時に、かつ急激に起こる「アナフィラキシー」という状態になると、ショック状態に陥ることもあります。
皮膚や呼吸異常などの症状がなく、嘔吐だけの場合もあるため、嘔吐が続く場合は受診が必要です。

子供が嘔吐したとき、病院を受診する目安は?

こんなときはしばらく様子をみてOK

・授乳後に口の端からタラッとこぼれるように吐いたり、ゲップと同時に吐いたりすることがあるものの、機嫌も飲みもよく、体重が増えている
・吐いたあとはふだんと変わらない様子で、ほかに症状(発熱や下痢など)がない

こんなときは診療時間内にかかりつけの小児科へ

・発熱、下痢など、嘔吐以外の症状がある
・1日に何度も繰り返し吐く
・2週間以上、嘔吐が続く

こんなときは夜間でも至急病院へ!

・吐き方がどんどん激しくなり、おさまらない
・水分がまったくとれない
・血便が出た
・緑色もしくは黄色のものを吐く
・赤色、黒色、もしくはコーヒーのような色のものを吐く
・呼びかけに反応しない
・顔色が悪く、唇が紫色になっている
・けいれんを起こした

子供が嘔吐したときの対処法は?

着替えさせるなど身の回りをきれいに

吐いたもので衣類やシーツが汚れた場合、そのままにしておくと不衛生な上、吐いたもののにおいが吐き気を誘発することがあります。着替えやシーツの交換をして、ぬるま湯でしぼったガーゼなどで口のまわりをきれいにふいてあげましょう。

ウイルス性胃腸炎などが原因で吐いた場合、着替えや吐いたものの処理をするときに、家族に感染が広がるリスクがあります。「子供が嘔吐したときの注意点は?」で紹介している注意点を参考に、家庭内感染を予防しましょう。

あおむけで寝ていると、吐いたものがのどに詰まって窒息する心配があります。吐き気が強く、いつ吐くかわからないときは、気道をふさがないよう横向きに寝かせると安心です。

水分補給をして脱水予防を

嘔吐を繰り返す場合や、嘔吐と下痢の症状が重なっている場合などは、体内の水分や電解質が急激に失われて脱水症を起こしやすくなります。嘔吐が続くときは、「水分補給」を最優先に考えましょう。

脱水予防のために飲ませるときは、水分と電解質を効率よく吸収できる経口補水的が最適です。吐き気のあるときには、一度にたくさん飲ませると吐きやすくなることがあるため、ティースプーン1杯程度(5ml)を5分おきに飲ませるようにします。少量ずつ、こまめに飲ませることを繰り返し、吐き気がおさまってきたら、少しずつ量を増やし、間隔も短くしていきましょう。

「おしっこや汗、よだれの量が減る」「口の中がかわく(口の中がネバネバする)」などの症状は、脱水症のサイン。このような症状がみられたら、経口補水液を飲ませるか、飲めない場合には小児科を受診しましょう。

子供が嘔吐したときに注意すべきことは?

こんなときは脱水症が重症化している危険が! 

脱水症のサインがみられても水分が十分にとれない場合、症状が進む心配があります。脱水症は、ひどくなると命に関わることもあるため、以下のような症状がみられたらすぐに受診しましょう。

・ずっとウトウトと眠ってばかりいる
・不機嫌でずっとグズグズ泣き続けている
・手足が冷たい
・顔色が悪く、目が落ちくぼんでいる
・おしっこが出なくなる
・皮膚に張りがなくフニャフニャする
・大泉門がへこんでいる
・呼吸が速い

感染症の場合は家庭内感染の予防を

ノロウイルスやロタウイルスなどによるウイルス性胃腸炎の場合、吐いたものの処理をするときに家族が感染してしまうことがあります。そのため、吐いたものの処理や洗濯、掃除をするときには細心の注意を払っておこないましょう。

吐いたものの始末をするときには、使い捨てのマスクと手袋、できればエプロンも着用します。吐いたものはビニールなどで包み込んだり、ペーパータオルで静かにふき取ったりしてビニール袋に入れましょう。

吐いたものがついた場所や床は、布でしっかりふきます。ノロウイルスやロタウイルスは、除菌スプレーなどでは死滅しません。そのため、次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液でふくことが必要です。水500mlに対し、塩素系漂白剤(商品名:ミルトン、ハイターなど)10mlを入れた液に浸してしぼったぞうきんで、吐いた部屋の床全体をふきましょう。
ぞうきんや、床にふれたスリッパ、くつしたなど、処理に使ったものはすべてビニール袋に入れてしっかり口をしばり、密閉して捨てます。

吐いたもので汚れた衣類やシーツは、ほかのものと分けて洗濯機で洗濯し、日光にあててよく乾かします。布団も、天気の良い日に日光にあててしっかり干しましょう。すぐに干せない場合には、家族が触れない場所などに隔離しておくと安心です。

文/出村真理子

イラスト/もり谷ゆみ(出典:育児誌Baby-mo)

監修
十河 剛先生
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科副部長
1995年、防衛医科大学校医学部卒業。複数の病院勤務を経て2007年に済生会横浜市東部病院小児科医長、13年より現職。専門は肝・胆道疾患。武道の有段者で、二児のパパでもあります。

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