熱性けいれんの対処法は?後遺症やてんかんは?【小児科医監修】

 専門家監修
公開日:2018/12/20
更新日:2019/03/22
熱性けいれんの対処法は?後遺症やてんかんは?【小児科医監修】
監修
渋谷紀子先生
総合母子保健センター愛育クリニック

この記事では、熱性けんれんを起こしたときの対処法や後遺症の気がかりについて解説しています。発熱時に赤ちゃんが突然、体をこわばらせたり、ぴくぴく震えたりする熱性けいれん。初めて経験したら、パニックになりそうですよね。いざというとき落ち着いて対処するために、熱性けいれんについて知っておきましょう。

熱性けいれんとは?

筋肉が自分の意思と関係なく、収縮することを「けいれん」といいます。「ひきつけ」といわれることもあります。

そのなかで38度以上の熱を出したことがきっかけとなって起こるのが「熱性けいれん」です。3ヶ月以上6才未満の子供に発症しますが、特に1~2才のときに多く見られます。

熱性けいれんは乳幼児の3~8%が経験するといわれています。珍しい病気ではなく、誰にでも起こる可能性があるということです。

熱性けいれんの症状

典型的な熱性けいれんの症状は次のようなものです。

1 全身がこわばる

体が硬く突っ張った状態になります。手をかたく握りしめ、足を突っ張らせて、背中は弓なりに。息が止まり、唇は紫色になります。白目を向いたり、1点を見つめて固まったりすることもあるでしょう。

この状態は1分ほど続きます。

2 全身の緊張が抜ける

体の硬直がとれます。そのときに目が動いたり、両手両足をピクピクとふるわせたり、口から泡を吹いたりします。

この状態は数分間続きます。

けいれんがおさまると……

熱性けいれんで疲れた赤ちゃんは数分から数時間、グッスリ眠りこむことがありますが、目覚めたあとはいつもと変わらない様子になります。眠らずに、すぐ普段と同じ状態に戻る赤ちゃんもいます。

赤ちゃんの熱性けいれんを目の当たりにすると、「このまま死んでしまうのでは」とパニックになるママやパパもいるようです。しかし、通常の熱性けいれんであれば、ほとんどが2~3分、長くても5分以内におさまります。命の心配はありません。

熱性けいれんの原因

原因は正確にはわかっていません。熱性けいれんには、「高熱が出る病気にかかったときに、熱の上がり始めに起こりやすい」という特徴があります。赤ちゃんは脳の神経発達が未熟なため、発熱が刺激となり、脳神経に異常な興奮が起こるのではないかと推測されています。

脳神経の異常な興奮が全身へと伝わると、体の筋肉が発作的に収縮します。そのため、瞬時に体が硬くこわばった状態となってしまうのです。

また、熱性けいれんには体質的なものも関係しているのではないか、といわれています。両親のどちらかに熱性けいれんを起こした経験がある場合、赤ちゃんも熱性けいれんを起こす可能性が高まります。

「熱性けいれんを一度起こすとくり返す」といわれることもありますが、これは正しくありません。熱性けいれんを起こした赤ちゃんで、2回目の熱性けいれんを起こすのは約30%。さらにそのうちの20~30%が3回目の熱性けいれんを起こすといわれます。

このデータからもわかるように、70%の赤ちゃんは1回、熱性けいれんを起こすだけですんでいます。初回の熱性けいれんは2度目を引き起こす要因にはなりません。

熱性けいれんをくりかえしやすい赤ちゃんの特徴

体質的に熱性けいれんをくり返しやすい赤ちゃんもいます。次のような特徴があれば、熱性けいれんをくり返す可能性があると考えられています。

・両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある

・1才未満で熱性けいれんを発症した

・39度以下の発熱で熱性けいれんを発症した

・発熱から1時間以内に熱性けいれんを発症した

単純な熱性けいれんの場合は、くり返したとしてもそれほど心配はいりません。通常は5才ごろには熱性けいれんを起こさなくなっていきます。

熱性けいれんが起きたときの対処法

赤ちゃんが初めて熱性けいれんを起こしたときに、あわてずに対処するのは難しいかもしれません。でも、赤ちゃんのためにもまずはママとパパが気持ちを落ち着け、次のように対処しましょう。

●けいれんの時間をはかる

●赤ちゃんの衣服をゆるめる

●吐いたときにものをつまらせないように、顔を横に向ける

●けいれんの様子を観察する

次のような点を観察しましょう

けいれんは左右対称か? 目や手足の動きを見る。

体は固まっているか、ぴくぴくふるえているか?

目はどちらの方向をむいているか?

呼びかけにこたえるか?

※もしできれば、スマホでけいれん中の様子を動画撮影します。

●けいれん後に体温を測る

初めての熱性けいれんの場合、熱性けいれんであるかどうか確認するために病院の受診が必要です。けいれんがおさまり赤ちゃんの呼吸が落ち着いたら、早めに病院に向かいましょう。夜間の場合は救急外来を受診してください。

けいれん後に寝てしまった場合は、起こす必要はありません。ただし、起きるのは待たずに寝かせたままで病院に向かいます。

受診では、けいれんしていた時間、様子、けいれん後の体温、家族のけいれん経験の有無などを医師に伝えます。けいれんの様子を動画撮影した場合は、それも医師に見せましょう。

2回目以降の熱性けいれんで受診するかどうかは、かかりつけ医の指示に従います。

救急車を呼ぶ目安

次のような症状があるなら、単純な熱性けいれんではない別の病気が疑われます。ためらわずに救急車を呼び、大至急病院へ急ぎましょう。

・けいれんが5分以上続く

・けいれんの様子が左右非対称

・短時間にけいれんをくり返す

・けいれん後に意識が戻らない

・6ヶ月未満の赤ちゃん

原因がなんであれけいれんが30分以上続くと、脳に障害が出る恐れがあります。早めの治療を行うためにも、けいれんが5分を越した時点で救急車を呼びましょう。病院に到着するまでにけいれんがおさまったとしても、そのまま救急搬送して医師の判断をあおぎます。

初めての熱性けいれんの場合、救急車を呼んでもOK

単純な熱性けいれんの場合は、本来なら救急車を呼ぶ必要はありません。しかし、初めてのけいれで、その緊急度をママやパパが判別するのは難しいこと。ですから、不安な場合は救急車を呼んでも大丈夫です。

熱性けいれんが起きたときの注意点

熱性けいれんが起きているときにやってはいけないこともあります。例えば、かつてはけいれんを起こしたら舌をかまないように、割り箸をかませたりしました。これは現在ではやってはいけないこととして明確に否定されています。

してはいけない行動

×けいれん中に口に物を入れる

口に物を入れると、舌をのどに奥に押し込んで窒息する危険があります。けいれん中に赤ちゃんが舌を噛むことはないので安心してください。

×激しく揺さぶる

意識をはっきりさせるために、揺さぶったり肩をたたきながら大声で呼びかけたりするのも、してはいけない行為です。けいれんの原因が頭蓋内の出血であった場合などは、病状の悪化を招きます。

熱性けいれんで後遺症が残ることはある?

熱が刺激となって起こる単純な熱性けいれんの場合、後遺症が残ることはありません。合併症もなく、特別な治療はしなくても成長とともに自然に起こらなくなります。そのため、熱性けいれんは良性の病気といわれています。

複雑型熱性けいれんの場合

熱性けいれんのほとんどは、心配のいらない熱性けいれんです。ただし、次のような特徴が見られる熱性けいれんは、脳神経に何らかの問題があって起こる「複雑型熱性けいれん」の可能性があります。

・けいれんの様子が左右非対称

右(左)半身だけ、あるいは手だけ足だけなど、体の半分や一部だけにけいれんが起こります。

・15分以上けいれんが続く

けいれんが5分以内でおさまらず、15分以上続きます。

・24時間以内に何回もけいれんが起こる

初回のけいれんから1日のうちに何度もけいれんを繰り返します。

これら3つの特徴のどれかに当てはまる場合、複雑型熱性けいれんの可能性があるため、病院を受診しましょう。

なお複雑型熱性けいれんであっても、通常は後遺症などを心配する必要はありません。ただ複雑型熱性けいれんがあると、将来的にてんかんを起こす可能性が高まります。そのため、検査や経過観察など必要な処置を行います。

熱性けいれんは予防できる?

熱性けいれんは後遺症や合併症もなく、成長とともに自然に起こらなくなる病気です。ですから、本来なら予防する必要はありません。

しかし、熱性けいれんを起こす赤ちゃんの様子を見て、つらい気持ちになるママやパパは多いため、予防的に使うけいれん止めの薬が処方されることがあります。

けいれん止めとして処方されることが多いのは、「ダイアップ」という薬です。おしりから入れる座薬で、熱の上がり始めに使って熱性けいれんの発症を予防します。

座薬を使う基準

日本小児神経学会は予防的に座薬を使う基準を次のように示しています。

・使うタイミングは熱の上がりぎわ。37.5度くらいのときに

・熱が下がらなければ、8時間後に再度、座薬を入れる

眠気、ふらつきなどの副作用が出ることがあるので、投与後は赤ちゃんの様子を見守りましょう。副作用が疑われる症状があれば、医師に相談してください。

解熱剤の使用は通常通りで

熱性けいれんを起こさないために解熱剤を使用したい、と思うママやパパもいるかもしれません。しかし、さまざまな研究により、解熱剤を使用しても熱性けいれんの再発予防にはならないことがわかっています。

また、以前は解熱剤を使うと、薬が切れて熱が上がる過程でけいれんを起こす可能性があると考えられていましたが、現在ではそのような影響はないとされています。

ですので、解熱剤は熱性けいれんと関係なく、通常通り使用してかまいません。ただし、ダイアップと併用するときは、30分以上時間をずらして使用するようにしましょう。

熱性けいれんに似た病気

熱性けいれん以外にも赤ちゃんがけいれんを起こす病気はあります。心配のないけいれんもあれば、命に関わる病気もあるため、それぞれの特徴を知り、必要であれば大至急病院へ向かいましょう。

憤怒けいれん

6ヶ月~1才半の赤ちゃんに起こる症状で、激しく泣いたときに息がうまくできなくなり、けいれんを起こします。「泣き入りひきつけ」ともいわれ、病気ではありません。ただし、初めて起こしたときは、念のため病院を受診しましょう。

てんかん

脳の神経細胞のなかに刺激に敏感な部位があり、電気的な刺激に対して異常な反応を起こしてけいれんを発症する病気です。脳の一部に発作が起こるタイプ、脳全体に発作が広がるタイプなどその種類により、合う薬は異なります。必ず病院を受診し、必要な検査と治療を受けましょう。

髄膜炎、脳炎

髄膜や脳がウイルスや細菌によって炎症を起こす病気です。高熱、嘔吐、頭痛などの症状があり、10分以上続くけいれんが何度も起こります。命に関わる病気なので、救急車を呼び一刻も早く治療を受けましょう。

頭蓋内出血

頭蓋内に出血が起きると、嘔吐や意識障害とともにけいれんが起こることがあります。頭を強く打つなど、外傷によって起こることがほとんどです。命に関わる状態なので、救急車を呼び、一刻も早く病院へ。

脱水症

体内の水分が極端に不足して、体温調節がうまくいかなくなる脱水症が進むと、けいれんを起こすことがあります。脱水症がかなり悪化した状態なので、救急車を呼び、すぐに病院に向かいましょう。

熱性けいれんとてんかんとの違いは?

複雑型熱性けいれんがあると、将来的にてんかんを発症する可能性が高くなることがわかっています。

てんかんはすでに紹介したように、脳神経の電気信号の異常反応によって起こる病気です。熱性けいれんは通常なら5才ごろまでにおさまりますが、てんかんの場合は成長したあともけいれんを起こすことがあります。

またてんかんは熱がない普通の体調のときでも起こる可能性があるため、てんかんの発症を抑える抗てんかん薬の服用が必要となります。

熱性けいれんが起こると症状の激しさに気が動転しますが、そのほとんどは心配のないものです。落ち着いて対処し、不安な点があれば医師に相談しましょう。

監修
渋谷紀子先生
総合母子保健センター愛育クリニック
東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、山王病院、NTT東日本関東病院などの勤務を経て、現職。専門は小児アレルギー。私生活では四女の母でもある、やさしくパワフルなドクターです。

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