脂漏性湿疹の症状とケア対策!症例写真もご紹介【医師監修】


馬場直子先生
神奈川県立こども医療センター 皮膚科部長
この記事は、脂漏性湿疹の症状とケア対策についてまとめたものです。生後間もない赤ちゃんの頭やまゆ毛に赤いブツブツやかさぶたができて、びっくりしたというママも多いのではないでしょうか。これは「乳児脂漏性湿疹」といって、月齢の低い赤ちゃんに起こりやすい肌のトラブル。きちんとケアをすれば、だんだん良くなっていくので、心配はいりません。原因はなにか、どうすれば治るのかなどについて、ドクターに聞きました。
目次
脂漏性湿疹とは?
赤ちゃんによくできる湿疹を「乳児湿疹」と呼んでいます。乳児脂漏性湿疹はそのひとつで、皮脂の多い場所にできる湿疹です。頭皮やひたい、耳の周辺、髪の生えぎわ、まゆ毛から鼻のまわりなど、顔回りを中心に、わきの下やおなか、背中などに見られることもあります。
乳児脂漏性湿疹自体にかゆみはほとんどありませんが、少しの刺激にも反応しやすくなるため、外からの刺激によってかゆみが出る場合があります。赤ちゃんの手が届く範囲にできると、かいてしまってひどくなり、ジュクジュクした状態になることもあるので、早めにケアをしてあげましょう。
脂漏性湿疹ができやすい部位
●頭皮やひたい、耳のあたり、髪の生えぎわ
●まゆ毛から鼻の周り、ほほ
●わきの下やおなか、背中
脂漏性湿疹の症状は?
頭皮やまゆ毛など毛が生えているところには、皮脂がたくさん分泌して、「乳痂」といって黄色くベタッとした脂やフケのようなものがついたり、かさぶたのようになったりします。ひたいなどでは赤い湿疹がくっつき合うようになり、広範囲に真っ赤になってしまうこともあります。
ひたい、まゆ毛、鼻の回りなどに脂漏性湿疹が。清潔にして保湿するケアで、2ケ月ほどでよくなった。
まゆ毛の周囲にできたかさぶた状の脂漏性湿疹。1ケ月ほどで落ち着いた。
脂漏性湿疹の原因は?
皮脂の分泌が多く、炎症が起きること
皮脂は肌の表面をおおう脂分で、有害物質が体内に入らないようにしたり、肌内部の水分が蒸発しないようにする働きをしています。
皮脂を分泌する「皮脂腺」は毛穴の入口近くにあるため、皮脂の分泌が活発だと毛穴が詰まりやすくなります。また、毛穴だけでなく皮脂腺自体にも脂がたまって炎症を起こし、湿疹ができてしまうのです。
真菌・マラセチアが炎症を起こす?
マラセチアとは、皮膚に常在する真菌(カビ)の一種です。普段トラブルを起こすことはありませんが、皮膚の抵抗力が落ちると増殖して湿疹を発症することがあります。大人の「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」は、これが原因ではないかと言われています。赤ちゃんの脂漏性湿疹の原因としても、このマラセチアがかかわっているのではないかと考える研究者はいます。ただ、大人の脂漏性皮膚炎と、赤ちゃんの脂漏性湿疹とでは薬の効き方などで違う点もあります。赤ちゃんの脂漏性湿疹の原因はマラセチア、と解明されているわけではありません。
マラセチアは皮脂が多いと増殖しやすい
マラセチアは、皮脂をエサにして増殖します。生後しばらくの皮脂が多い時期に脂漏性湿疹がよく見られるのは、これが理由の可能性があります。
脂漏性湿疹ができやすい時期は?
ママからのホルモンの影響がある生後2~3ヶ月ごろまで
生まれてすぐから生後2~3ヶ月ごろまでの赤ちゃんは、ママからもらったホルモンの影響で皮脂の分泌がとても盛ん。つまり、脂漏性湿疹ができやすい状態です。
この時期を過ぎるとママからのホルモンの影響がなくなり、皮脂の分泌量は急激に減っていきます。そのため、きちんとケアをしていれば、遅くとも生後6ヶ月ごろまでにはだんだんと治まっていきます。
ただし、そのころになると皮膚は逆に乾燥しやすくカサカサしてくるため、引き続きスキンケアはきちんと行うことが大切です。
脂漏性湿疹ができたときの対処法と注意点
石けんできれいに洗う
脂漏性湿疹ができたところにかさぶたのような皮脂が貼りついている場合は、お風呂でていねいに取りのぞきます。「湿疹ができていたら石けんを使わないほうがいいのでは?」と思うママもいるかもしれませんが、皮脂はお湯だけではとれません。石けんを手で泡立てて、指の腹を使ってやさしく洗いましょう。
ひたい、まゆ毛、鼻、ほほなど、脂っぽくなりやすく、脂漏性湿疹ができやすいところは、特にていねいに洗います。
頭に黄色いかたまりのようなかさぶた状のものができている場合は、入浴の前にベビーオイルをつけ、30分くらいおいてふやかします。かさぶたが浮き上がってきたら、お風呂で洗いながらそっととれる分だけ取りのぞきます。
1回できれいにしようと思わず、時間をかけて少しずつ
かさぶたのようなかたまりは、その下にある湿疹が露出するのを防ぐ役割をしています。しっかり固着していることが多いため、無理やりとろうとするとかえって悪化してジュクジュクしてしまうことがあります。1回のスキンケアできれいにしようと思わず、分厚いものを少しずつ削いでいくイメージで、1ヶ月ぐらいかけて取りのぞきましょう。
石けん成分をしっかり流し、やさしく水気をふき取る
石けんで洗ったあとは、お湯をたっぷりふくませたガーゼや、弱めのシャワーなどでしっかり石けん成分を流します。水分をふき取るときも、ゴシゴシこするのは刺激になるのでNG。やわらかいタオルで押すように水分をふきとります。
洗った後の保湿が大切!
きれいに洗ったあとは、しっかり保湿することが大切です。「皮脂の分泌が盛んなら、保湿は必要ないのでは?」と思うかもしれませんが、皮脂が洗い流されたままの状態では肌内部の水分が蒸発して乾燥してしまいます。
乾燥は肌トラブルの元なので、お風呂から出たら5~10分以内を目安に保湿剤を塗りましょう。顔回りにできているときは、授乳後、起床時やお昼寝後、お散歩などから帰ったときなどにも、きれいにふいてから保湿するといいでしょう。
保湿剤には、病院で処方される「ヒルドイドソフト」などがありますが、「どんな保湿剤がいい?」と迷ったときは、ワセリンがおすすめです。ワセリンは余分な成分が一切入っていないので、安心して使えますし、薬局などで手軽に手に入ります。
脂漏性湿疹の対処法――生活面からの治療アプローチ
Step1 入浴時に石けんで皮脂を取りのぞく
Step2 石けんを泡立てて指の腹を使ってやさしく洗う
髪の生えぎわにできやすいので、しっかりきれいに。
Step3 洗ったあとはお湯をたっぷりふくませたガーゼや弱めのシャワーなどでしっかり石けんを流す
Step4 やわらかいタオルで押すように水分をふきとる
ガーゼは意外と刺激が強いので、綿100%のやわらかいタオルでふく。
ゴシゴシこすらず、やわらかいタオルで軽く押さえるようにふく
Step5 しっかり保湿する
脂漏性湿疹ができたら、病院に行くべき?――薬物療法
「清潔にして保湿する」という基本的なスキンケアをしても、いつまでも治らない、ジュクジュクしている、湿疹がどんどんひどくなってくる、顔の半分以上に赤みがあるなどの場合には、皮膚科を受診しましょう。
亜鉛華軟膏やステロイドが処方される
受診すると、湿疹の状態に合わせた薬が処方されます。ジュクジュクしている場合には、湿疹からしみ出す汁を吸収して乾燥させ、皮膚の再生を促す亜鉛華軟膏が、炎症を起こしていて赤みが強い場合にはステロイド剤が処方されることも。
ステロイド剤に対して怖いイメージを持っていたり、副作用を怖れるママもいますが、正しく使えば炎症が治まり、赤ちゃんがラクになります。処方された場合は勝手に判断せず、医師に使用法を確認して、指示通りに使いましょう。
脂漏性湿疹を予防するためのケアは?
脂漏性湿疹ができたときには石けんでよく洗い、石けん成分を残さず、やさしく水分をふき取り、しっかり保湿します。実はこれは、予防のためのスキンケアでもあります。
脂漏性湿疹予防のためにも、1日1回はお風呂に入って肌を清潔に保ち、石けんでやさしく汚れを落としてから、必ず保湿をします。「清潔・低刺激・保湿」は、すべての肌トラブルの予防と改善につながる基本のスキンケアです。毎日の習慣にして、赤ちゃんのデリケートな肌を守ってあげましょう。
大人にも同じような疾患がある
実は、大人にも赤ちゃんの脂漏性湿疹と同じような症状が出る「脂漏性皮膚炎」という慢性の疾患があります。思春期や40~60歳代の大人に多く、頭皮をはじめ、顔や胸、背中のほか、わきや股などの毛が生えているところにフケのようなものが見られます。
脂漏性皮膚炎はステロイド剤や抗真菌薬などの塗り薬で治療します。皮脂が多いと原因となる真菌(カビ)が繁殖しやすくなるため、日常生活では、赤ちゃんの脂漏性湿疹と同様に清潔にすることが基本です。

馬場直子先生
神奈川県立こども医療センター 皮膚科部長
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