【小児科医監修】未熟児の成長や後遺症のリスク、低出生体重児との違いは?

 専門家監修
公開日:2018/11/19
更新日:2018/12/18
【小児科医監修】未熟児の成長や後遺症のリスク、低出生体重児との違いは?
監修
佐野博之先生
淀川キリスト教病院 小児科 主任部長

赤ちゃんが予定日より早く生まれたり、低体重で生まれた「未熟児」だと、健康に育つのかとても心配になりますね。今回は、未熟児の定義とその成長過程や、障害・後遺症のリスク、育てるうえでの注意点などをまとめました。

「未熟児」とは?「低出生体重児」との違いは?

小さく生まれた赤ちゃんのことを、「未熟児」と呼ぶことがありますね。最近は「低出生体重児」という言い方も耳にすることがあると思います。実際に未熟児とはどのような赤ちゃんのことを言うのでしょうか。

未熟児は、早産児または低体重で生まれた赤ちゃんのことです

「未熟児」とは、広い意味では妊娠37週未満の早産で生まれた赤ちゃんのことを言います。体重が少なく生まれた赤ちゃんのことを未熟児と言う場合もありますが、そういった赤ちゃんはたいてい早産で生まれた場合が多いものです。

出生体重が少なく生まれた赤ちゃんのうちでも、体重によって体の機能の成熟具合が違うため、2500g未満の場合は「低出生体重児」、1500g未満の場合は「極低出生体重児」、1000g未満の場合は「超低出生体重児」と区別して呼ぶこともあります。

早く生まれたり低体重で生まれたりした赤ちゃんでも、体の機能に問題がない場合もありますが、多くは体の機能が完全ではなく、感染に対する抵抗力などが弱く、体温調節や呼吸の機能も未発達な状態のことが多いのです。そのため、生まれてしばらくは保育器の中で育てるなど特別なケアが必要とされます。

赤ちゃんが未熟児になる要因は?

未熟児が生まれるのは、どのような原因があるのでしょうか。赤ちゃんが未熟児になるのは、おもに早産によることが多いのです。

子宮の感染症などにより早産になることが主な原因です

早産の原因のほとんどは「絨毛膜羊膜炎(じゅうもくまくようまくえん)」です。これは、赤ちゃんを包んでいる絨毛膜と羊膜に感染が起こってしまう病気です。女性の膣は、肛門や尿道といった多くの菌がいる場所に近い位置にあるため、何らかの原因で菌が膣から子宮内に入り込んで感染を起こすことがあるのです。

このほか、「子宮頸管無力症」(子宮頸管が本来支えなくてはいけない子宮を支えられなくなり、子宮が収縮を起こしたり子宮口が開いてしまったりする状態)が原因の早産もあります。

また、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)などが原因で、状態が悪くなった母体や胎児の安全のために妊娠を中断する必要があり、人工的に早産となることもあります。

未熟児で生まれた場合、障害や後遺症のリスクは?

赤ちゃんが未熟児だと、ママやパパが何より心配するのは障害や後遺症のことでしょう。実際に、未熟児に障害や後遺症が起こる可能性はあるのでしょうか。

病気や合併症の心配があり発育・発達もゆっくりですが、心配ないケースも多いのです

未熟児の赤ちゃんは、慢性肺疾患や未熟児網膜症などといった病気になるリスクがあるのは事実です。特に超低出生体重児では、壊死性腸炎・脳室内出血などの重篤な合併症の心配もあります。そのため、医師は注意深く赤ちゃんを見ていきます。

また、早く生まれれば生まれるほど、また出生体重が少なければ少ないほど、成長や運動発達は遅めになる割合が高くなります。とはいえ、未熟児でもその後の経過が順調で、体の発育や運動発達は多少ゆっくりでも問題がないことも多いものです。

未熟児の出生状況や未熟児が生まれる割合は?

未熟児や低出生体重児は、実際に以前より増えているそうです。それでは、どれくらいの割合で生まれているのでしょうか。

出生数は減っているのに、低出生体重児の割合は倍増しています

この30年間で、出生数が減少していることを知っている方は多いでしょう。でも、生まれる赤ちゃんは少なくなっているのに、早産児や低出生体重児の割合は増加しているのです。

平成25年のデータによると、その年に生まれた赤ちゃんのうち早産児の割合は6%弱で、出生体重2500g未満の赤ちゃんの割合は9.6%でした。ここ数年は大きな変化はないのですが、30年前と比べると、低出生体重児の割合は約2倍に増加していて、特に出生体重1500g未満の極低出生体重児と1000g未満の超低出生体重児の割合が増加していることがわかっています。

低出生体重の赤ちゃんが多くなった原因ははっきりとはわかっていませんが、一つは出産年齢の高齢化が考えられます。また、医療の進歩によって、かなり早く生まれた赤ちゃんや体重が少なく小さく生まれた赤ちゃんでも助かるようになり、よりよい状態での対応が可能となったこともあるでしょう。

未熟児で生まれた場合、病院はいつ退院できるの?

未熟児で生まれた赤ちゃんは、NICU(新生児集中治療室)に入ることも多くいつごろ退院できるのかママやパパは気になるでしょう。どれくらい早く生まれたか、または出生児の体重がどれくらいだったかで、退院の日程も違ってくるようです。

多くの未熟児が、しばらくNICUで慎重に経過を見ます

NICUで小さく生まれた赤ちゃんの診療をする監修の佐野博之先生。

未熟児は、体の機能など文字通りすべてが未熟であるため、まずはNICUで呼吸・循環のサポートを行うとともに、感染や出血、合併症などが起こらないように注意しながら経過を見ていきます。

呼吸のサポートとしては、赤ちゃんの肺機能の成熟度によって酸素投与から人工呼吸管理まで行う場合があります。長期の点滴や特別な薬剤が必要な場合は、中心静脈カテーテルという細い管を入れます。また、口から母乳やミルクを飲むことができない赤ちゃんは、鼻や口から胃に管を入れて母乳やミルクを注入します。

ただし、早産児でもNICUでの治療が必要でない場合もあります。特に、妊娠35週前後以降に生まれると、NICUに入らなくてすむ割合も高くなります。逆に、正期産児でもNICUでの管理が必要な場合もあります。

NICUから出た後も、未熟児は体の機能が成熟して家庭で育てられるようになるまで、病院で医師が発育や発達を見守ることが必要です。入院期間は赤ちゃんの状態によっても違うので、何週間または何ケ月たてば退院できるとはとはいちがいに言えません。

一般的には、もともとの予定日ごろには退院できる、と医師から説明されることが多いようです。ただし、早く生まれるほど体は未熟で未発達な状態なため、十分に育つまで入院日数は長くなりがちです。退院が本来の予定日を過ぎてしまう割合も高くなるでしょう。

未熟児の子の成長過程は? 成長はいつごろ追いつくの?

未熟児で生まれた赤ちゃんが順調に成長して退院できたあとも、ママやパパにはさまざまな心配が続くでしょう。特に、成長過程は正期産の赤ちゃんと比べてどうなのか、という点が一番気になるのではないでしょうか。

未熟児の成長はゆっくりめで、個人差が大きいものだと考えましょう

早産で生まれた赤ちゃんの成長は、お誕生日からの月齢で見ていくと、正期産で生まれた赤ちゃんよりどうしても遅めになります。

たとえば、妊娠24週目に500gで生まれた超低出生体重の赤ちゃんは、本来の予定日を迎えるころには生後4カ月になっていますが、そのころ体重が3000g到達している率は少ないのです。

また、生後4ケ月でもくびが座っていることはまずないでしょう。運動発達が進んでいく順番はどの赤ちゃんも同じですが、発達の時期はお誕生日からの月齢で見ていくと、正期産の赤ちゃんに比べてかなりゆっくりめになります。

一般に、未熟児の発育や運動発達のペースは、赤ちゃんがどれくらい早く、どれくらいの体重で生まれたか、体の機能の発達はどうかなど、さまざまな要因で個人差がとても大きくなります。

未熟児の成長は「修正月齢」で見ていくのが基本です

そこで、未熟児の成長を見ていくときには、「修正月齢」を基準にします。これは、もともとの予定日を「修正月齢0カ月」として基準にし、そこからどれくらいたったかで月齢を見ていくものです。

たとえば、2月1日が予定日だった赤ちゃんが1ケ月早く1月1日に生まれた場合、2月1日が修正月齢で生後0ケ月となります。この赤ちゃんは5月1日には生後4ケ月になりますが、体の発育や運動発達などは修正月齢の生後3ケ月で順調かどうかを見ます。

正期産の赤ちゃんの成長にいつごろ追いつくかは、赤ちゃんによっても違ってきます。たいてい、3歳くらいになると追いついてきて、修正月齢でなく実際の年齢で見ていけるようになることが多いようです。ですが、早く生まれた赤ちゃんほど成長のペースはゆっくりなので、小学生になってやっと追いつくというケースもあります。

いずれにしても、それぞれの赤ちゃんなりにゆっくり少しずつでも成長していることが大切だと考えましょう。同じ月齢の正期産の赤ちゃんと比べたりせず、焦らず気長に成長を見守ってあげたいですね。

※低出生体重で 生まれた赤ちゃんは、自分の力で呼吸ができず、母乳も1人では飲めないため、NICUの保育器の中 で育てられています。そんな赤ちゃんの成長のそばには、一緒に過ごすご家族や、医療の向上や用品開発に取り組む関係者が、よりよいサポートをするべく寄り添っています。

こうしたNICUをとりまく現在の環境について、多くの方に伝えようと紙おむつmoonyでおなじみのユニ・チャームが実施していたのが「ちいさな いのち応援プロジェクト」です。

「ちいさな いのち応援プロジェクト」の一環として、低出生体重児の現状をより多くの人に伝えるために、1000g台で生まれNICUに入院していた双子の赤ちゃんの成長と家族を追った動画を公開。

NICUの中でケアを受けながら、体重が少しずつ増え無事に退院し、家族と一緒に過ごしながら1歳の誕生日を迎えるまでの成長の軌跡をぜひご覧ください。

「ちいさないのち、その成長にありがとう」の動画

未熟児の出産後のサポート内容は、どのようなものがあるの?

未熟児を出産したママには、心のケアが必要なことも多いもの。病院でもさまざまなケアをしてくれるようです。

病院ではママのメンタルをサポート

赤ちゃんを早産で出産したママは、妊娠中の生活が悪かったのか、自分の体質のせいか、などと自責の念を抱くことも多いものです。でも、早産になったのは、ママのせいではありません。

「私たち医師や病院のスタッフは、そのことをママにしっかり話すとともに、赤ちゃんの誕生に対して心から“おめでとうございます!”という思いを伝えることから始まります。入院後も家族が赤ちゃんに対して愛着を感じたり愛情が持てたりするように、心理的なサポートが必要な場合はそのお手伝いもしていきます」と佐野先生。

未熟児だと届け出が必要なの? 未熟児養育医療とはどういうもの?

未熟児が生まれた場合は、自治体に届けを出すことでさまざまなサポートや医療費の補助などが受けられるようになります。

届けを出せば、保健師さんの指導や医療費の補助が受けられます

早産かどうかに限らず、低出生体重児が生まれた場合は、母子保健法で「低体重児の届出」の義務というものがあり、ある一定の要件を満たした場合に所定の申請用紙を担当医が記載し、家族が自治体に提出することになります。この届け出により、赤ちゃんの退院後は保健師さんが育児の訪問指導を行ってもらえます。

また、届け出をすることで、「未熟児養育医療給付制度」を受けることもできます。これは、NICUなどに入院した赤ちゃんの医療費を自治体に補助をしてもらえる制度です。ただし、自治体や地域によって、申請方法や補助の割合などは変わってきますので、入院中の病院が対応すると思いますので、必要な場合は確認するといいですね。

未熟児の赤ちゃんを育てるうえでの注意点は?

赤ちゃんが順調にすくすく育ち、念願の退院の日を迎えたら家族の生活が始まります。家庭では、次のような点に注意・気配りをして、赤ちゃんを育ててあげましょう。

感染症に注意を。予防接種は実際の月齢で受けましょう

赤ちゃんが入院している病院では、退院してからママやパパが子育てを楽しめるように、さまざまな説明やアドバイスをしてくれるでしょう。経過が順調であれば、特別な心配をする必要はありません。

ただし、未熟児は呼吸機能や感染の防御に対しては、正期産の赤ちゃんより弱い場合もあります。退院後しばらくは、周囲でかぜやインフルエンザなどの感染症がはやっているときは家族全員で予防に努め、もし、赤ちゃんに感染が疑われるときは早めに受診することが大切です。

なお、予防接種の時期については修正月齢ではなく、生まれてからの月齢で受けます。この点を間違えないようにしましょう。そして、接種できる時期がきたら早めに予防接種を受け、赤ちゃんの健康を守ってあげてくださいね。

取材協力/淀川キリスト教病院ユニ・チャーム
文/村田弥生

※TOP画像及び記事中の淀川キリスト病院 NICU画像以外の母子画像はイメージです。

監修
佐野博之先生
淀川キリスト教病院 小児科 主任部長
平成9年 大阪大学医学部 卒業
平成9年~大阪大学医学部 小児科
平成10年~りんくう総合医療センター市立泉佐野病院 小児科
平成12年~大阪大学医学部 小児科
平成13年~大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科
平成24年~愛染橋病院 小児科 副部長
平成25年~淀川キリスト教病院 小児科 部長
平成29年~同 主任部長
資格
小児科専門医・指導医
新生児専門医:指導医
診療情報管理士
NICUを備えた病院で、家族の気持ちに寄り添った医療を実践しているドクターです。

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