【産婦人科医監修】妊娠中のビタミンB12の役割は?効果は?葉酸サプリで補える?

 専門家監修
公開日:2018/11/29
更新日:2019/01/16
【産婦人科医監修】妊娠中のビタミンB12の役割は?効果は?葉酸サプリで補える?
監修
竹内正人先生

妊娠中は赤ちゃんの成長のためにも、妊婦さんの健康のためにも、しっかり栄養をとりたいですね。なかでもビタミンは、体の調子を整え、活動を正常に維持するために必要な栄養素。今回は細胞の生成にかかわり、貧血予防にも役立つ、ビタミンB12について紹介します。

ビタミンB12とは?

ビタミンB12はビタミンB群に含まれる、水溶性ビタミンです。コバルト(ミネラルの一種)を含み、別名「コバラミン」ともいわれています。赤い色をしていることから「赤いビタミン」と呼ばれることもあります。
ビタミンを含む食品といえば、野菜や果物を思い浮かべますよね。ところが、ビタミンB12は肉、魚、乳製品などの動物性食品に多く含まれ、植物性食品にはほとんど含まれていません。

ビタミンB12は2つの段階を経て、食べものから体内へ吸収されます。まず、胃に入ると胃酸が食品中のビタミンB12を引き離します。そのあと胃でつくられた「内因子」という特別なタンパク質と結びついて、小腸にある回腸で吸収されます。

ビタミンB12の体内での働きは?

では、ビタミンB12には、どのような働きがあるのでしょうか。

DNAの合成を助ける

ビタミンB12には、同じ水溶性ビタミンの葉酸と協力して、全細胞の遺伝物質であるDNAの合成を助けます。ビタミンB12が不足すると、細胞の生成が妨げられてしまいます。

赤血球を作り、貧血を予防する

ビタミンB12は、血液細胞を健康に保つ働きがあります。赤血球は骨髄の中で細胞分裂を繰り返し、成熟したあとに血液中に送り出されます。

ところが、ビタミンB12や葉酸が不足すると細胞分裂がうまくできず、骨髄の中の赤芽球(赤血球になる前の細胞)は大きくなるものの成熟することができません。その結果、血液中に送り出される赤血球が不足し、貧血(巨赤芽球性貧血)を引き起こしてしまいます。

体内の神経伝達を助ける

脳からの指令が全身の神経に伝えられるとき、さまざまなビタミンが関わり、それらの伝達をスムーズにしています。ビタミンB12が不足すると神経細胞のDNAがうまく合成できず、神経伝達に支障をきたしてしまいます。

たとえば、手足のしびれや痛みなどの症状が現れる末梢神経障害は、ビタミンB12の不足が原因の1つとされています。

睡眠のリズムを整える

ビタミンB12は睡眠にも関係しています。規則正しい生活を送っている人は、夜になると自然と眠くなり、朝になると自然と目が覚めます。この生活リズムは、メラトニンというホルモンが分泌されることで起こります。ビタミンB12はメラトニンの分泌を調節して、睡眠のリズムをコントロールしています。

妊娠中のビタミンB12の効果は?

妊娠すると、おなかの赤ちゃんに血液を送る必要があるため、体内の血液量は最高時で通常の1.4倍になります。ただし、血漿(水分)が大幅に増えるわりに、赤血球や白血球はそれほど増えないので、血液が薄まり、貧血になりやすくなります。
貧血というと、鉄分不足をイメージする人が多いでしょう。鉄は赤血球の原料となる大切な栄養素です。でも、鉄分だけではなく、ビタミンB12と葉酸の2つの栄養素の働きによって、正常な赤血球に成長するのです。

妊娠中のビタミンB12欠乏症とは?胎児にも影響する?

妊娠中にビタミンB12が著しく不足すると、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)が起こる可能性はあります。貧血になると動悸や息切れがしたり、顔色が青白くなったりします。また、疲労感や全身の倦怠感などの症状が出ることがあります。さらに、貧血が悪化し、お産のときまでに治っていないと、出血量が増えてショック状態になりやすかったり、産後の回復が遅れたりする心配もあります。

また、ビタミンB12欠乏症がひどくなると、手足のしびれなどの知覚障害や食欲不振、味覚の低下、悪心などが現れることがあります。そうなると胎児にも血液が届かなくなり、発育にも悪影響を与える可能性があります。

しかし、実際に先進国でビタミンB12欠乏症になることはほとんどありません。ビタミンB12欠乏症になる人の多くは、胃や小腸(回腸)の切除手術をした人や、胃酸の分泌が低下した高齢者などです。ビタミンB12は腸内細菌によっても合成されるため、通常の食事をしていれば、不足することはないといわれています。

妊娠中にビタミンB12をとるときの注意点は?

妊娠中のビタミンB12の摂取について注意が必要なのは、卵も牛乳・乳製品もとらない徹底した菜食主義者(完全菜食主義者:ビーガン)の人です。ビタミンB12は、動物性食品に多く含まれるので、穀物や野菜を中心に食事をしているビーガンの人は不足してしまいます。医師に相談し、サプリメントなどで補うようにしましょう。

妊娠中のビタミンB12の摂取量は?

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、ビタミンB12の推定平均必要量と推奨量は、次のようになっています。

一般の女性の場合の推定平均必要量

18~29歳  2.0㎍/1日

30~49歳  2.0㎍/1日

推奨量

18~29歳  2.4㎍/1日

30~49歳  2.4㎍/1日

*µg(マイクログラム)は1gの百万分の1

妊婦さんの場合の推定平均必要量

18~29歳  2.3㎍/1日

30~49歳  2.3㎍/1日

推奨量

18~29歳  2.8㎍/1日

30~49歳  2.8㎍/1日

ちなみに日本人女性のビタミンB12の摂取状況は、国民健康・栄養調査(平成27年度)によると次のようになっています。

20~29歳  4.9㎍/日
30~39歳  4.3㎍/日

ビタミンB12と葉酸の関係は?

葉酸は、妊娠初期の赤ちゃんの発育(とくに妊娠7週ごろまで)に欠かせない栄養素。葉酸が不足すると、二分脊椎などの神経閉鎖障害のリスクがあります。

ビタミンB12と葉酸は、どちらもDNAの合成や赤血球の形成にかかわっています。どちらか一方でも不足すると、細胞分裂がうまくいかなくなります。また、体内に入った葉酸はいくつかの過程を経て代謝されますが、その最後の段階でビタミンB12が葉酸の再生成に関わる酵素の働きを助けます。

ビタミンB12は肝臓でたくさん貯蔵されていますが、葉酸は体内貯蓄量が少ないので、妊娠中に不足しないよう、しっかりとる必要があります。妊娠中の推奨量は480㎍ですが、厚生労働省は、妊娠の1カ月以上前から妊娠12週までは、食事のほかにサプリメントから1日400㎍摂取することをすすめています。

ビタミンB12が豊富で妊娠中にとるべき食品は?

ビタミンB12は動物性食品の中でも魚介類に多く含まれています。多くの魚は100gで1日の妊婦さんの推奨量を軽く満たします。また、しじみは貝類の中でもとくにビタミンB12が多く、100g中に68.4㎍含まれています。しじみをみそ汁に5~6個入れれば、1日の妊婦さんの推奨量になります。
植物性食品には、ビタミンB12の含有量がゼロか、ごくわずかしか含まれていません。ただし、例外的に海藻類ののりには多くのビタミンB12が含まれています。それぞれの食品の含有量は次のとおりです(すべて100gあたり)。

魚類

にしん(生):17.4㎍
さんま(皮つき・生):16.2㎍
まいわし(生):15.7㎍
かたくちいわし(生):13.9㎍
まさば(生):12.9㎍
あゆ(天然・生):10.3㎍
ほっけ(生):10.7㎍
かたくちいわしの煮干し:41.3㎍
うるめいわしの丸干し:24.7㎍
いくら:47.3㎍
たらこ:18.1㎍
かずのこ:11.4㎍
辛子明太子:11.3㎍

・貝類    

しじみ:68.4㎍
あかがい:59.2㎍
はまぐり:28.4㎍
かき:23.1㎍

・海藻類

干しのり:77.6㎍
焼きのり:57.6㎍
味つけのり:58.1㎍
あおのり(素干し):32.1㎍

*文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)参照

ビタミンB12が豊富でも妊娠中に控えるべき食品は?

牛レバーや鶏レバーもビタミンB12を豊富に含む食品ですが、これらはビタミンA(レチノール)も豊富に含んでいます。ビタミンAは妊娠初期に過剰にとると、胎児の奇形のリスクが高まるといわれていますので、とり過ぎには注意しましょう。

妊娠中ビタミンB12は葉酸サプリで補える?

ビタミンB12は、ほとんどのマルチビタミン剤に含まれています。ビタミンB12と葉酸を併せたサプリメントやビタミンB12だけのサプリメントも市販されています。ビタミンB12の含有量を調べたいときは、製品のラベルを確認しましょう。

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ビタミンB12は、大量に摂取したとしても、体内で必要な分しか利用されません。残りは尿と一緒に排出されるので、過剰症(健康障害)になる心配はないでしょう。

取材・文/小沢明子

監修
竹内正人先生
⽇本医科⼤学⼤学院修了。⽶国ロマリンダ⼤学留学を経て、葛飾⾚⼗字産院などに勤務。
よりやさしい「⽣まれる・⽣きる」をサポートするため、国や地域、医療の枠をこえて活動する⾏動派産科医。

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