【産婦人科医監修】胎児発育不全の原因は?赤ちゃんへのリスクや障害は?

 専門家監修
公開日:2018/11/29
【産婦人科医監修】胎児発育不全の原因は?赤ちゃんへのリスクや障害は?
監修
竹内正人先生

おなかの赤ちゃんが元気で育ってほしい、妊婦さんならみんなそう願いますよね! 胎児発育不全は、赤ちゃんの成長に関わる病気。その原因や診断方法などについて知っておきましょう。

胎児発育不全とは?

おなかの赤ちゃんが元気で成長しているかどうか、気になりますね。でも、胎児の発育の様子は、直接確認することができません。そこで目安になるのが、胎児の推定体重です。
母子健康手帳に掲載されている「胎児発育曲線」を見てみましょう。この胎児発育曲線は、正常に生まれた赤ちゃんたちの妊娠中のデータをもとにつくられた、胎児の発育具合を確認するためのツール。上下2本の線の間に胎児の推定体重が入っていて、週数を追うごとに大きくなっていれば、順調に育っているといえます。

(参照文献)日本産科婦人科学会周産期委員会「胎児計測と胎児発育曲線について」

しかし、妊娠週数に対し、胎児の推定体重が下の線から出てしまい、週数を追うごとに体重が減ったり、変わらなかったりした場合は、赤ちゃんの発育が遅れている可能性があります。
このように「何らかの理由によって胎児の発育が遅れ、妊娠週数相当の推定体重よりも明らかに小さい場合」を胎児発育不全といいます。

胎児発育不全の診断方法は?

胎児発育不全の診断では、推定体重だけでなく、必要に応じて羊水量や胎盤の状態を確認する検査が行われ、総合的に判断されます。

妊娠週数の確認

胎児発育不全は、正確な妊娠週数が診断の基本です。排卵日の推定や、妊娠8週~12週での胎児の頭殿長(頭からおしりまでの長さ)が適切かどうかを確認します。

子宮底長の測定

子宮の大きさを確認するために、妊婦健診では子宮底長を測定します。子宮底長が増えなかったり、増える量が少なかったりすると胎児の発育が遅れている可能性があります。ただし、子宮底長は誤差が大きいので目安の1つと考えます。

胎児の推定体重

超音波検査によって、児頭大横径(頭の横幅・BPD)、腹部前後径(おなかの縦幅・APDT)、腹部横径(おなかの横幅・TTD)、大腿骨長(太ももの骨の長さ・FL)などを計測し、これらを組み合わせた数式で胎児の推定体重(EFL)を算出します。胎児は小さいので、たった1ミリの測定差が大きく影響します。実際の体重と5~10%の誤差が出ることがあるため、胎児発育不全が疑われるときは、何回か測って体重の推移を見守ります。

胎児の腹囲の測定

超音波検査で胎児の腹囲(AC)を測定し、正常の範囲を下回っていた場合には、胎児発育不全の可能性があります。

羊水量の測定

超音波検査で羊水の量を測定し、羊水が少ない場合は、胎盤機能が低下している可能性があります。なお、羊水がほとんどない場合は胎児の腎臓に異常がある可能性もあります。

血流の測定

胎盤の機能に異常があると、胎児に十分な血液を送ることができません。そのため、超音波検査(超音波パルスドプラ法)で臍帯や胎児の血管(中大脳動脈)などの血流を測定します。

胎児発育不全には2種類のタイプがある      

胎児発育不全には均衡型と不均衡型の2つのタイプがあり、胎児の体型や発症する時期に違いがあります。

・均衡型

このタイプは頭と体が同じように小さく、均衡のとれた体型になるため「均衡型」といわれています。Normal smallと呼ばれ、母子に問題なく体質的に小さい赤ちゃんは均衡型です。なお、妊娠初期は、胎児の個体差がほとんどありません。したがって、妊娠初期から胎児が小さい場合は、胎児自身に何らかの異常があることも考えられます。

不均衡型

妊婦さん自身の病気や、胎盤・臍帯などに異常があると、血流の流れが悪くなり、胎児への酸素や栄養が不足してしまいます。頭は妊娠週数に近い大きさになりますが、胴回りが小さく、やせた胎児になります。これは、低栄養状態になったときに、最も大切な脳を維持しようとする、一種の防衛反応と考えられています。このタイプは「不均衡型」といわれ、妊娠中期から後期に多くみられます。

胎児発育不全の原因は? 

胎児発育不全の原因は、主に母体側、胎児側、母体側と胎児側を結ぶ胎盤や臍帯の3つに分けられます。ただし、原因は1つとは限らず、原因不明の場合もあります。

【母体側】

妊娠前にやせていた

妊娠前にやせていると、胎児発育不全のリスク要因に。妊娠前の体重がBMI〔計算式=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕18.5未満の「やせ」の妊婦さんは、妊娠中の体重が順調に増えないと胎児発育不全のおそれがあります。

妊娠中の体重増加が少なく低栄養

一般的に、妊婦さんの体重と胎児の体重は比例します。妊婦さんの摂取エネルギーが極端に少なく、栄養が不足すると胎児の体重にも影響します。

妊婦さんの合併症

妊婦さんが妊娠高血圧症候群、糖尿病、腎疾患、抗リン脂質抗体症候群、膠原病などの病気にかかっていると、胎児にうまく血液を送ることができなくなります。とくに妊娠高血圧症候群は、胎盤の機能と密接に関係しているので、胎児発育不全の要因になりやすいといわれています。

【胎盤・臍帯】

前置胎盤(胎盤が子宮口の一部、または全部をふさいでいる状態)や、胎盤の機能が低下した場合、胎児発育不全の原因に。また、胎盤についている臍帯の位置が適切でなかったり、臍帯がねじれていたり、結ばれてしまったりした場合も、胎児に十分な血液を送れないため、成長が遅れる原因となります。

【胎児側】

ふたごなどの多胎

子宮の大きさには限りがあるので、胎児の数が多いほど、胎児の体重は小さくなります。また、胎盤を占める割合によって、胎児の体重差も出てきます。

薬、アルコール、たばこの影響

薬の中には、胎児の発育に影響を及ぼすものがあります。また、妊婦さんが常用的にアルコールを摂取したり、喫煙を続けたりすると、胎児が低体重になります。妊娠中の喫煙は、胎児発育不全が3.5倍に増加するというデータも!

胎内感染、先天奇形、染色体異常

トキソプラズマ、風疹、サイトロメガロ、ヘルペス、A型B型肝炎ウイルス、結核、梅毒などの感染や先天奇形、染色体異常などは、胎児発育不全の原因となります。

胎児発育不全の症状は?

基本的に、妊婦さんが自覚症状を感じることはありません。妊婦健診を受けたとき、医師から指摘されることが多いでしょう。ただし、妊婦さんが自覚できるサインとして、胎動があります。医師から胎児発育不全の可能性が指摘され、頻繁にあった胎動が急に少なくなったと感じたら、胎児の状態をチェックする必要があるので、できるだけ早く受診しましょう。日々リラックスして、胎動を感じられるようにするといいですね。

胎児発育不全の治療法は?

胎児発育不全を改善する効果的な治療法は、確立されていないのが現状です。ただし、母体側に原因があるときは、その原因を取り除くことで胎児発育不全の改善が期待できます。
たとえば、妊娠高血圧症候群などの合併症があればその治療を優先し、飲酒や喫煙をしている場合は、すぐに禁酒、禁煙にします。また、妊婦さんの摂取カロリーが足りないと、胎児も栄養不足になるため、しっかり食事をとることも大切です。

胎児発育不全だとお産は?赤ちゃんに障害は?

胎児発育不全で生まれた赤ちゃんは、低酸素状態になったり、低糖症、低カルシウム血症などにかかりやすく、精神発達遅延の発症率も高くなるといわれています。
そのため、推定体重がほとんど増加しなかったり、胎児の予備能力が低下してきたりしたときは分娩を検討します。とくに妊娠週数が早い場合は、子宮内の環境の悪化によるリスクと早産によるリスクの両方を考え合わせ、お産のタイミングを決めます。
お産は陣痛誘発剤を使って経膣分娩をするか、胎児が分娩のストレスに耐えられないと考えられる場合は帝王切開を選択します。

胎児発育不全の予防法は?

胎児発育不全を防ぐために妊婦さんができることは、薬の服用に注意したり、禁煙・禁酒をしたりすることです。
さらに、妊娠中は必要なカロリーをとり、栄養バランスよく食べることも大切です。近年、出生体重が2500g未満の赤ちゃんが増えているのをご存じですか? やせ願望のある若い女性は、産後、スリムな体型に戻すため、妊娠中の体重増加はなるべく抑えようとする傾向があるようです。
妊婦さんが低栄養状態だと、遺伝子の働きを調節する仕組みが変化して、赤ちゃんは将来、生活習慣病にかかりやすい体質になるといわれています。胎児発育不全を防ぐためだけでなく、生まれてから健康に育つためにも、妊娠中は適切な体重増加が重要です。

取材・文/小沢明子

監修
竹内正人先生
⽇本医科⼤学⼤学院修了。⽶国ロマリンダ⼤学留学を経て、葛飾⾚⼗字産院などに勤務。
よりやさしい「⽣まれる・⽣きる」をサポートするため、国や地域、医療の枠をこえて活動する⾏動派産科医。

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