胃腸風邪の感染力に負けないための注意点は?【小児科医監修】


十河 剛先生
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科副部長
この記事は、感染力が強い胃腸風邪についてまとめたものです。赤ちゃんの「おなか」にくる胃腸の風邪。突然の嘔吐や下痢から始まるため、ママも驚いてしまうでしょう。つらいおなかの症状、少しでもらくにしてあげたいですね。この胃腸の風邪はとても感染力が強く、まわりの大人や子どもにもうつりやすいという特徴があります。周囲への感染を予防するためにも、胃腸風邪の原因や症状、かかったときの注意点や対処方法などを知っておきましょう。
胃腸風邪とは、どんな病気?
ウイルスに感染して起こる急性の胃腸炎です
胃腸の風邪は、一般的には「ウイルス性胃腸炎」といいます。ウイルスに感染して起こる急性の胃腸炎で、乳幼児に多いのはノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎です。
どちらのウイルスも感染力が強く、ノロウイルスは、赤ちゃんから大人までどの年代の人もかかり、赤ちゃんがかかると家庭内で次から次へと家族に感染することも珍しくありません。ロタウイルスはとくに赤ちゃんや子どもがかかりやすく、5歳までにほとんどの子どもがかかるといわれています。
胃腸風邪の原因は?
乳幼児に多いのはノロウイルスやロタウイルスです
ウイルスは口から体内に入り、腸のなかで増殖して腸の粘膜を壊します。例えば、感染した人が吐いたものや便から飛び散ったウイルスを吸い込んだり、手についたウイルスをなめたりすることで感染することが多いようです。
ウイルスのタイプが複数あること、また、ノロウイルスやロタウイルス以外にも胃腸風邪の原因になるウイルスは多数あることなどにより、一度だけでなく、何度も胃腸風邪にかかる可能性はあります。
気温が低く空気が乾燥した季節に流行します
冬はとくに胃腸炎が流行しやすくなります。一般的に、ノロウイルスは秋~冬(11~1月)、ロタウイルスは冬から春(1~5月)に多くみられます。
胃腸風邪の症状は?
主な症状は嘔吐と下痢
急激に起こる嘔吐、下痢が主症状です。白っぽい水のようなうんちが出ることがありますが、色があまり変わらないこともあります。何度も繰り返し吐き、うんちが1日10回以上出ることも。腹痛で赤ちゃんは機嫌が悪くなり、食欲もなくなります。
ノロウイルスによる胃腸炎では、激しい嘔吐は半日ほど、下痢の症状は1~2日でおさまることが多いようです。発熱を伴うことがありますが、多くの場合、熱はそれほど高くなりません。
ロタウイルスによる胃腸炎では、下痢が1週間程度続くこともあり、ノロウイルス性胃腸炎より症状が重くなりやすい傾向があります。発熱、急性腎不全、脳症などを起こすこともあるため、注意が必要です。
ノロウイルス性胃腸炎やロタウイルス性胃腸炎では、このような白っぽいうんちが出ることが。
どんな症状だった?ママたちの胃腸風邪体験談
生後7ヶ月のときノロウイルス性胃腸炎に
上の子が2歳8ヵ月のとき、夜中に突然嘔吐し、翌日ノロウイルス性胃腸炎と診断。その翌日に、上の子の下痢がよくなってきたと思ったら、7ヵ月の下の子にうつった様子。ただ、嘔吐はなく、うんちがちょっとゆるくて回数が多い程度。その後うつったママのほうが重症でした。
1歳6ヶ月のときノロウイルス性胃腸炎に
保育園で「ノロウイルスが流行している」と聞いていましたが、ある朝、突然の嘔吐。短時間のうちに何度も吐き、水を飲んでも吐くので心配しましたが、吐いた後は意外とケロッとしていて、下痢もしていたものの、腹痛はなさそうでした。3日目に嘔吐がおさまり、5日目には回復しました。
生後7ヶ月のときロタウイルス性胃腸炎に
冬の終わりごろ、上の子からうつって下痢と嘔吐の症状が。おっぱいを飲むとすぐ、ゆるいうんちが出る状態が3日ほど続きました。その後、3ヵ月の間に3回かかり、春になるまでずっと下痢が続くという状態に。本人もつらかったでしょうが、親もゲッソリ……でした。
1歳1ヶ月のときロタウイルス性胃腸炎に
突然の嘔吐と下痢から始まり、39度の熱も。3日目に熱は下がりましたが、下痢は続き、1日に7~8回白っぽい水のようなうんちが出て、おしりが真っ赤になってしまいました。うんちの回数が減ったのは5日目で、そこから急速に回復。かかったときも急でしたが、治るときもあっという間でした。
胃腸風邪にかかったときの対処法
特効薬はないので「対症療法」で回復を待ちます
ウイルス性胃腸炎のウイルスを退治する特効薬はないため、症状をやわらげる「対症療法」をしながら回復するのを待ちます。
嘔吐がひどいのは、発症後数時間~半日ほどのことが多いため、吐いたら着替えさせ、口のまわりをきれいにふいてあげましょう。吐いたものの処理をするときに家族に感染が広がるリスクがあります。記事の後半に記載している注意点を参照し、家庭内感染の予防策をとりましょう。
吐き気があるときは、吐いたものがのどに詰まらないように、横向きに寝かせます。
下痢は、ウイルスを体の外に出すための体の防御反応なので、下痢止め薬で無理に止めないほうがいいといわれます。腸の働きを整えるための「整腸薬」は処方されることがあるため、小児科で処方された場合は指示にしたがって使いましょう。
嘔吐や下痢による脱水症状を予防しましょう
嘔吐や下痢が続くと、体内の水分や電解質が失われて脱水症を起こします。脱水症は、悪化すると命に関わることもあるため、ウイルス性胃腸炎のときは「水分補給」を最優先に考えましょう。
水分補給のポイントは「経口補水液を5分ごとに5mlずつ」
脱水予防のために飲ませるときは、水分と電解質を効率よく吸収できる経口補水液が最適です。一度にたくさん飲ませると吐いてしまうことがあるため、少量ずつ、こまめに飲ませるようにします。5ml(ティースプーン1杯程度)を5分おきに飲ませましょう。吐き気がおさまってきたら、少しずつ間隔を短く、量を増やしていきます。
脱水がなく、経口補水液を嫌がる場合には、授乳中であれば母乳やミルクを、卒乳後であれば飲めるものを飲ませるようにします。糖分の多いジュースは、下痢を悪化させることがあるため避けましょう。脱水の症状が見られた場合には経口補水液を飲ませるか、どうしても飲めない場合には医療機関を受診しましょう。
脱水症の早期発見のために、こんな症状に注意!
何度も大量に吐いたときや、水のようなうんちが1日に10~20回出るとき、たくさん汗をかいたときなどは、脱水症を起こしやすくなります。脱水症状の初期症状として、「よだれが減る」「口の中がいつもよりネバネバする」など、口の中の乾燥がみられます。
上記のような状態にもかかわらず、水分が十分にとれない場合は、脱水症状が進む心配があります。
もしも、「トロトロと眠ってばかりいる」「手足が冷たい」「顔色が悪い」「おしっこが出なくなる」「皮膚に張りがなくふにゃふにゃする」「大泉門がへこんでいる」「目が落ちくぼんでいる」「呼吸が速い」などの様子がみられたら脱水症がかなり進んでいる可能性があり、早急な対応が必要です。
おしりを清潔にしてあげましょう
下痢が続くと、おむつのなかでおしりがつねに湿った状態になり、うんちの刺激も加わってかぶれやすくなります。おしりふきなどでこすって汚れを落とすと、それが刺激になることがあるため、下痢のときは座浴やシャワーでおしりを洗うといいでしょう。
洗った後は、おしりを湿ったままにせず、よく乾かしてからおむつをします。やわらかいタオルなどをそっと押しあてるようにして、やさしく水分をふきとりましょう。
経口補水液で脱水が改善されたらふだん通りの食事を
脱水症状が改善されたら、授乳や離乳食を再開しましょう。離乳食を一段階戻す必要はなく、いつも通りの内容で再開して問題ありません。食べられずに体重が減ってしまった場合などは、そのほうが体重の戻りが早いことがわかっています。
下痢が2週間以上続くときは受診を
症状のピークは吐き気が半日~1日、下痢が1週間~10日程度で、体調が元通りに戻るまでの目安は2週間程度です。
ウイルスによって腸の粘膜が壊されることで、ミルクなどに含まれる乳糖を分解・吸収できなくなることがあります。そのため、ウイルスがいなくなった後も、乳糖が分解されずに下痢が続くことがあります。下痢の症状が2週間以上続くときは、念のため小児科を受診しましょう。
胃腸風邪の感染力に負けないための注意点は?
吐いたものの処理や洗濯は徹底して「家庭内感染」を防ぎましょう
ノロウイルスやロタウイルスはとても感染力が強く、しかも、とてもしぶとく、アルコール系の消毒薬はほとんど効果がありません。一般的な除菌スプレーや除菌シートなどでウイルスを除去することはできないのです。
有効なのは、次亜塩素酸ナトリウムです。吐いたあとの掃除や洗濯には、塩素系漂白剤(ハイターなど)やベビー用消毒剤(ミルトンなど)を使用し、家庭内での感染を防ぐために、細心の注意をはらうことが必要です。
吐いたものの処理
吐いたあとの掃除や、吐いたものの処理をするときは、マスクと手袋を着用します。吐いたものや便は、ペーパータオルで静かにふき取り、ビニール袋に入れます。うんちのおむつも同様にビニール袋に入れます。
床など、吐いたものや便がついた場所は、次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液でふきます。水500mlに対し、ハイターやミルトンなどの塩素系漂白剤10mlを入れるのが目安。
処理をした後は、使用したマスクや手袋なども、すべて一緒にビニール袋に入れ、しっかり口をしばって捨てます。
洗濯
吐いたものや便で汚れた衣類は、ほかのものと分けて洗濯します。ノロウイルスやロタウイルスは乾燥しても死なないため、パタパタとたたいたり、振ったりするとウイルスが飛び散って感染を広げてしまいます。
シーツもほかのものと分けて洗濯機で洗濯し、日光にあててよく乾かしましょう。布団は、すぐに干せない場合は家族が触れない場所などに隔離しておき、天気の良い日に日光にあててよく干しましょう。
胃腸風邪の予防法は?
ウイルスを家庭内に持ち込まないことが大事です
胃腸風邪は、一般的な風邪やインフルエンザと同じく、ウイルスに感染して起こる病気のため、まずは「ウイルスを家庭内に持ち込まないこと」がいちばんの予防策です。外出先から戻ったら、必ず「手洗い・うがい」をする習慣をつけましょう。また、流行している時期には、人の多いところへのお出かけは控えたほうが安心です。
ロタウイルス性胃腸炎には予防接種があります
ロタウイルスは、予防接種で防ぐことができます。ワクチンには、2回接種するロタリックスワクチンと、3回接種するロタテックワクチンがあり、どちらのワクチンも飲むタイプです。また、予防効果はどちらも大きな差がないことがわかっています。
ロタウイルスの予防接種は、生後6週から受けることができます。ロタウイルスワクチンは、月齢が高くなってから受けると、腸が重なり合ってふさがる「腸重積」という病気を起こしやすくなります。そのため、2回接種の場合は生後24週まで、3回接種の場合は生後32週までに終わらせる必要があります。ほかのワクチンと一緒に、生後2ヵ月からスタートするといいでしょう。
ロタウイルスワクチンは任意接種で、費用がかかります。料金は医療機関によって異なり、助成金が出る自治体もあるため、事前に確認しましょう。
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文/出村真理子

十河 剛先生
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科副部長
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