妊婦が風邪で発熱したら、おなかの赤ちゃんへの影響は?どんな治し方がベストなの?【産婦人科医監修】

 専門家監修
公開日:2019/03/19
更新日:2019/05/10
妊婦が風邪で発熱したら、おなかの赤ちゃんへの影響は?どんな治し方がベストなの?【産婦人科医監修】
監修
天神尚子先生
三鷹レディースクリニック 院長

妊娠中はホルモンの影響などにより妊娠前と比べて免疫力や抵抗力が落ちているため、風邪を引きやすくなるといわれています。なので、どんなに手洗いやうがいをこまめにしていても、また冬だけでなく暖かい季節であっても、ウイルスに感染して風邪を引いてしまうことがあります。万一、妊娠中に風邪を引いてしまってもあわてないように、おなかの赤ちゃんへの影響や受診のタイミング、治し方などについて押さえておきましょう。

妊婦が風邪で発熱するのは危険なの?

妊婦さんが風邪を引いても、ウイルスは直接赤ちゃんには影響しないと考えられているため、それほど大きな危険はありません。ただし、妊娠中は抵抗力が落ちているため、風邪が長引いたり、また妊娠初期などはつわりで十分な栄養がとれていないこともあり、風邪が悪化してしまうことがあります。

37度くらいの微熱であれば、基本的に心配はいらないので、栄養をとってゆっくり休んで様子を見るようにしましょう。

なお、38度以上の高熱が続くような場合は、風邪ではなくインフルエンザやほかの感染症にかかっている可能性もあります。早めに受診するようにしてください。

妊婦が風邪を引いた場合、胎児への影響は?

「自分が風邪を引くと、おなかの赤ちゃんも具合が悪くなってしまうのでは?」と考える妊婦さんもいるようですが、先ほどもお話ししたとおり、基本的に妊婦さんが風邪を引くことによって、おなかの赤ちゃんに悪影響が出ることはありません。風邪の症状がそれほど重いものでなければ、特に心配する必要はないでしょう。

ただし、38度以上の高熱が続くような場合は、妊婦さんの脈拍が早くなって子宮内の環境も悪くなるため、赤ちゃんも不快に感じるはず。また、熱によって妊婦さんがひどい脱水症状を起こすと、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性も出てきます。

なお、激しいせきが出る場合は腹圧がかかっておなかが張ることもあるため、流産や早産を招く危険性がないとも言い切れません。特に、病院で切迫流産や切迫早産のおそれがあると診断されている人は注意が必要です。早めに受診をして、薬を処方してもらうのがいいでしょう。

受診せずに妊婦が風邪を治すには?

「妊娠中はなるべく薬に頼らずに風邪を治したい」と思う妊婦さんは多いはず。熱がそれほど高くなく、くしゃみや鼻水程度の軽い風邪であれば、受診せずに以下の対処法を用いながら、家でゆっくりと体を休めて様子を見るのがいいでしょう。

安静

風邪を引いてしまった場合は、とにかく安静にするのがいちばん。体をゆっくり休めて、バランスのとれた食事でしっかり栄養を補給し、睡眠もきちんととりましょう。ただし、安静にしていてもなかなか風邪がよくならないような場合は必ず受診し、服薬など医師の指示にしたがって治療をしてください。

水分補給

風邪を引くと発熱や鼻水などの症状により、脱水症状を起こしやすくなります。特に、下痢や嘔吐(おうと)がある場合や、つわりで食事や水分がきちんととれていない場合は要注意。こまめに水分を補給するようにしてください。

また、風邪を引くとのどの粘膜や鼻の粘膜が乾いて、のどが痛くなったり、くしゃみや鼻水が出やすくなります。これらを緩和させるためにも、こまめに水分補給をし、家の中も乾燥しないように加湿器などを使って湿度を適度に保つようにするといいでしょう。

民間療法

風邪のときは体を冷やさないようにすることが基本です。昔から風邪にいいといわれているハーブティーやしょうが湯、くず湯などを飲むと体が温まります。温かい飲み物は、水分補給もできるので一石二鳥。

また、このほかにも免疫力を高めるビタミンC、のどや鼻の粘膜を保護する働きのあるビタミンAやβ(ベータ)カロテンを多く含む緑黄色野菜や果物などを積極的にとるようにするのもおすすめです。

妊娠中に風邪を引いたときの受診のタイミングは?

妊娠中に風邪を引いてしまった場合は、どのようなタイミングでどのお医者さんにかかればいいのか迷ってしまうところ。

風邪を引いてつらいときは、内科またはかかりつけの産婦人科にまずは電話で連絡を入れてみましょう。受診のタイミングや内科と産婦人科のどちらにかかればいいかといったアドバイスをしてくれるはずです。

かかりつけの産婦人科であれば、妊娠中でも飲める薬を選んで出してくれますし、妊娠の状況をきちんと把握しているため安心です。内科を受診することもできますが、その場合は「妊娠している」むねを医師に必ず伝えるようにしてください。

ただし、38度以上の熱がある場合や関節に痛みがある場合などは、インフルエンザやほかの感染症の可能性もあるため、内科もしくはかかりつけの産婦人科にすぐに連絡を入れ、早めに受診する必要があります。なお、風邪の症状とあわせておなかの張りなどがある場合は、急いでかかりつけの産婦人科を受診するようにしてください。

内科や産婦人科を受診する際は、ほかの人に風邪をうつさないようにするためにも、またほかのウイルスに新たに感染しないようにするためにも、必ずマスクを着用し、帰宅後はしっかり手洗いとうがいをしてください。

妊娠中でも風邪薬を服用することはできるの?

一般に市販の風邪薬は、病院で処方されるものよりも成分が弱くなっていますが、中には妊娠中は避けたほうがいい成分が含まれている薬もありますので、自己判断で市販の風邪薬や解熱剤を服用するのはやめましょう。

「葛根湯(かっこんとう)」などの漢方薬は比較的安全なものが多く、副作用が少ないといわれていて、妊娠中に病院で処方されることもあります。ただ、市販の漢方薬は病院で処方されるものと成分が違う場合もあるので、同じ「葛根湯」だからといって自己判断で市販のものを服用するのは危険です。

風邪薬については、病院で処方をしてもらうか、薬局で薬剤師に妊娠していることを伝えたうえで選んでもらうのがいいでしょう。

風邪に似た感染症にはどんなものがあるの?

「風邪かな?」と思う症状でも、実はほかの感染症が原因となっている場合があります。症状がつらい場合や長引く場合、また熱が高い場合などは、早めに病院を受診しましょう。風邪に似た感染症で、妊娠中に特に気をつけたいものとしては次の4つがあります。

劇症型A群溶連菌感染症

あまり聞いたことのない病名だと思いますが、この劇症型A群溶連菌感染症は妊婦さんもかかる可能性のある重篤(じゅうとく)な感染症です。発熱やのどの痛み、また吐き気や嘔吐などの風邪と同じような症状が出るため注意が必要です。

妊娠中にこの感染症にかかると、強い子宮収縮が起きて流産や早産を引き起こすだけでなく、場合によっては妊婦さんやおなかの赤ちゃんが死亡する危険もまれにあるため、十分な注意が必要です。

トキソプラズマ症

トキソプラズマは猫などの寄生虫で、フンなどを介して人に感染します。またそのほかに、牛や豚の生肉を介して感染するケースもあります。通常は感染してもあまり心配はいりませんが、妊娠中に初めて感染した場合は、流産や早産を引き起こしたり、胎児に感染して赤ちゃんの脳や目に障害が起こる可能性があります。

妊娠中は生肉を避けて、肉にはしっかりと火を通してから食べるようにしましょう。また、ペットに口移しでエサを与えたりするのはやめて、触ったあとやフンの始末をしたあとはしっかりと手洗いをするようにしてください。

ただし、妊娠中に感染することはまれなので、心配しすぎる必要はありません。妊娠初期の健診で抗体を検査する病院もあるので、気になる場合は医師に相談してみましょう。

サイトメガロウイルス感染症

サイトメガロウイルスはセックスのほか、母子感染として胎盤を通じて(経胎盤)、分娩時の産道から、また授乳によって感染します。妊娠のごく初期に感染した場合のみ、おなかの赤ちゃんに重い後遺症などの影響が出ることがあります。症状は、発熱や肝臓やリンパ節の腫れなど。ただし、ほとんどの場合は無症状です。妊娠初期の健診で抗体を検査する病院もあります。

りんご病

りんご病は「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」ともいわれ、ヒトパルボウイルスに感染して起こる病気です。発症するとほおがりんごのように真っ赤になり、手足に赤い斑点が見られるのが特徴です。妊娠中に感染すると、母体には風邪のような微熱やのどの痛み程度の症状しか出ませんが、30%の割合で胎盤を通して赤ちゃんに感染してしまいます。

妊娠20週未満に初めて感染すると、おなかの赤ちゃんに重度の貧血や水腫(むくみ)が起こったり、流産・早産の原因となる可能性があります。

りんご病は子どもがかかりやすい病気なので、妊娠初期は可能な限り、子どもの多い場所や人ごみの多い場所などに行くのを避けるようにしましょう。

風邪を引かないようにすることが大切

普通の風邪であれば妊娠中でもそれほど心配する必要はありませんが、どんなに軽い症状でも、せきや鼻水、のどの痛みなどがあるととても不快です。妊娠中に風邪を引いたときの対処法を押さえておくことは大切ですが、いちばんいいのはやはり風邪を引かないようにするということ。

妊娠中は、手洗いやうがいをこまめにするとともに、なるべく人ごみに行くのは避けたほうがいいでしょう。バランスのよい食事と十分な睡眠をとって、風邪に負けないように免疫力を高めるのも効果的です。

文/土田奈々子 校正/主婦の友社

監修
天神尚子先生
三鷹レディースクリニック 院長
日本医科大学付属病院、同大学産婦人科を経て、2004年に現クリニックを開院。年齢によって異なる女性のライフステージを考慮した治療を行っています。2人の子育てをした経験からくるアドバイスは頼りになると評判です。

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