ブドウ球菌に感染するとどうなるの? 治療や予防は何をするの? 食中毒との関連は?

 専門家監修 公開日:2018/10/11
ブドウ球菌に感染するとどうなるの? 治療や予防は何をするの? 食中毒との関連は?
監修
澤田雅子先生
澤田こどもクリニック院長

「ブドウ球菌」は、私たちの皮膚などにいるごく身近な細菌です。たいていは悪さをすることがないのですが、体調などによっては病気の原因にもなることもあるので無視できません。今回は、そんなブドウ球菌に感染した場合の治療法と予防法などを解説します。

ブドウ球菌とは?

「ブドウ球菌」という名前は何となく聞いたことがあるかもしれません。でも、実際にはどのようなもので、どんな病気の原因になるのかはわからない、という人が多いと思います。まずは、ブドウ球菌について知っておきましょう。

私たちの体にもいる身近な細菌です

ブドウ球菌は細菌の一種で、顕微鏡で見ると菌の配列や形態がブドウの房のようになっていることからこの名前がつけられました。細菌というと怖いものと思うかもしれませんが、ブドウ球菌は私たちの鼻やのどなどにいる常在細菌です。

いくつか種類はありますが、たいていは病気の原因となるものではありません。私たちは、ブドウ球菌に対してもともと抵抗力があると考えられています。

ブドウ球菌の主な感染原因や感染経路は?

体内にブドウ球菌が常在していても、健康であれば病気になることはまずありません。ただし、免疫力が落ちているときには体内に入ると、病気を引き起こすものがいくつかあります。ブドウ球菌は、さまざまなルートで体内に入ります。

おもに、傷口など皮膚から体内に入って増殖します

病気を起こすおもなブドウ球菌は、「黄色ブドウ球菌」「表皮ブドウ球菌」「腐性ブドウ球菌」の3種類です。

黄色ブドウ球菌はおもに鼻の中や表皮に常在していますが、ブドウ球菌の中では一番病気の原因になりやすいので要注意です。黄色ブドウ球菌のおもな感染経路は接触感染で、皮膚の傷口などから体内に入り増殖します。

表皮ブドウ球菌はおもに鼻の中や表皮にいて、普通は表皮から病原菌が侵入するのを防ぐバリアのような働きをしたり、表皮を健康な状態に保つ役目をしています。ところが、手術のときなどに使う血管カテーテルなどの医療器具に表皮ブドウ球菌がついていて体内に入り増殖してしまうと、化膿症を引き起こすことがあります。

腐性ブドウ球菌は、おもに泌尿器の皮膚にいます。そして、尿路から体内に侵入すると尿路感染症の原因になることがあります。

なお最近は、「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」という抗生剤の効きにくいブドウ球菌もあり、治療が難しいため問題になっています。

子供がブドウ球菌に感染するとどんな症状が出る? ブドウ球菌感染症にはどんな種類があるの?

ブドウ球菌は、どこに感染したか、どの病気を発症したかで症状が異なります。ブドウ球菌に感染してかかる病気には次のようなものがあります。

ブドウ球菌が原因の病気

とびひ(伝染性膿痂疹)

すり傷や湿疹、虫刺されをかきこわしたところなどの皮膚の傷に、黄色ブドウ球菌が感染して起こる皮膚の病気です。伝染力が強く、名前の通り体のあちこちにとびひします。
はじめはかゆみのある小さな水疱が1~2個できます。この水疱をかくと破れてびらん(赤むけの状態)になります。水疱の中には菌がいるので、分泌物がついた手でさわるとそこにまた水疱ができ、全身に広がっていきます。

SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)

黄色ブドウ球菌が全身に感染すると起こる皮膚の病気で、黄色ブドウ球菌が出す毒素が原因です。鼻や口、目のまわりからできはじめ、全身の皮膚がやけどのように真っ赤になってペロリとむけ、圧迫すると痛がります。
乳幼児がかかった場合は軽く済むことが多いのですが、大人がかかると重症化して、肺炎や敗血症などを引き起こし、ときには命にかかわることもあります。

肺炎

ブドウ球菌が肺に感染すると、肺が炎症を起こして肺炎になることがあります。たいていは風邪をこじらせ免疫力が落ちているときにかかり、38~40度の高熱が出ます。また、痰がからむため、ゴホンゴホンと湿った咳が出ます。
細菌が原因で肺炎になると、症状が重くなって急激に呼吸が苦しそうになることがあるため、赤ちゃんは注意が必要です。

髄膜炎

脳や脊髄をおおっている髄膜にブドウ球菌が感染すると起こります。ウイルス性の髄膜炎に比べると、細菌性髄膜炎は重症度がかなり高く、命にかかわることもあります。
症状は、高熱が出て嘔吐を繰り返します。激しい頭痛がするため赤ちゃんは不機嫌になり、母乳やミルクを飲む量も減ります。脳圧が上がるために、頭頂部の大泉門がふくらんできます。

骨髄炎

骨の組織にブドウ球菌などの病原体が感染し、炎症が起きて化膿します。骨折などの外傷によって細菌が入る場合と血液中の細菌が骨髄に侵入して増殖するために起こる場合があります。
血液中の細菌が原因の場合は新生児期でもかかることがあり、高熱が出たり患部が痛んだります。

食中毒

黄色ブドウ球菌がついた食品を食べたことで起こります。化膿した傷のある手で食品や調理器具をさわると傷に多く存在する黄色ブドウ球菌が食品につき、増殖するときに作る毒素によって急性胃腸炎をおこします。
症状は、吐き気、嘔吐、下痢などで、熱が出ることも。おなかが痛いため、赤ちゃんは泣きぐずり体を曲げて痛がることもあります。

ブドウ球菌感染症の潜伏期間は? 感染しやすい時期はいつ?

ブドウ球菌が原因の病気でも、潜伏期間がはっきりしているものとそうでないものがあります。感染しやすいのは、ブドウ球菌が活発になる季節です。

潜伏期間は病気によりまちまち。感染しやすいのは高温多湿な季節です

とびひの場合は、皮膚の傷に黄色ブドウ球菌が感染して2~5日くらいで小さい水疱ができはじめます。黄色ブドウ球菌の毒素が原因の食中毒は、食品を食べて2~4時間くらいで下痢や嘔吐などの症状が出るでしょう。

感染しやすい時期は、6~7月です。黄色ブドウ球菌は、高温多湿になると増殖が盛んになります。そのため、とびひも食中毒も6~7月くらいのムシムシと暑い時期になると増えるのが特徴です。そのため、食中毒は梅雨時になると多発し、また、とびひも夏によく見られますね。

ブドウ球菌に感染したとき、病院に行く目安は?

ブドウ球菌による感染症にかかった場合は、病気にかかわらず早めに受診して治療を開始することが大切です。病気ごとの受診の目安は以下の通りです。

ブドウ球菌による病気で病院へ行く目安

とびひが疑われる水疱ができたときは、数が少ないうちにできるだけ早く小児科か皮膚科を受診しましょう。とびひの水疱はかゆみが強く、かくとすぐに破れて中の菌があちこちにつき、体中に広がったり接触した子にうつしたりしてしまいます。

SSSSにかかると、最初は小さなかさぶたのようなものができ、1日たつとその周囲が赤くなって皮のむける範囲が広がります。症状は急激に進むので、赤くなった部分の皮がむけそうになったら早めに病院へ行きましょう。

肺炎は風邪をこじらせてかかることが多いため、風邪が治らず高熱が続き、ゴホンゴホンと湿った咳をするようになったら、急いで受診しましょう。

髄膜炎になると高熱が出てたて続けに吐いたり、いつもと明らかに違ってぐったりしてきます。髄膜炎は早期治療が特に重要なので、このような様子が見られたら夜中でも一刻も早く病院へ行きましょう。

骨髄炎になると、手足の一部がはれて赤ちゃんが動かしにくそうにします。熱が出たうえ、手足のどこかがはれてふれると痛がるようなときは、受診しましょう。

食中毒を起こして激しい下痢や嘔吐が始まると、赤ちゃんは急激に脱水が進んでしまいます。この場合も急いで小児科へ行きましょう。

ブドウ球菌に感染した際の診断方法と治療方法は?

ブドウ球菌が原因の感染症は、皮膚の病気とそれ以外の病気が主なものです。どの病気になったかによって診断方法は異なります。治療にはブドウ球菌に効く抗生剤が使われるのが一般的です。

病気によりさまざまな検査で菌を特定して診断します

ブドウ球菌による感染症でも、とびひの場合は医師が水疱の状態を見ればたいてい診断がつきます。ただ、最近は抗生剤に耐性を持つ黄色ブドウ球菌(MRSA)によるとびひも少なくないので、有効な治療のために水疱の中の液を調べて原因になる菌を突き止めます。

肺炎が疑われる場合は胸部のX線検査を行い、骨髄炎では血液検査とX線検査、髄膜炎が疑われる場合は原因菌を確かめるために、血液検査や髄液検査をそれぞれ行います。症状から食中毒とわかる場合は、便から菌を培養して特定します。

腕の血管から血液が採取できないときは、足の甲からとることもあります。

治療には、ブドウ球菌に効果のある抗生剤を使います

病気の原因がブドウ球菌とわかった場合には、一般的には抗生剤を使って治療を行います。とびひと診断がついたら、抗生剤の塗り薬と飲み薬が処方されます。水疱の数が少ないうちに治療を始めれば、たいてい1週間ほどで治ります。

肺炎、髄膜炎、骨髄炎などにかかったときは、症状の程度や年齢などによって抗生剤の使い方は変わってきます。赤ちゃんの場合は、入院して抗生剤の点滴をして治療することもあります。

食中毒で受診すると、赤ちゃんはほぼ入院となります。抗生剤の治療と脱水予防のため、点滴を行います。

赤ちゃんの場合は点滴がはずれないよう、包帯をしっかり巻いて固定します。

ブドウ球菌からの感染予防はなにをすればいい?

さまざまな病気を引き起こすことがあるブドウ球菌。感染しないための予防法を知っておきましょう。

体調管理に努め、手に傷があるときは食品にふれないようにしましょう

ブドウ球菌は常在菌で、私たちの鼻、のど、皮膚をはじめとした体など身近なところに生息しています。ただ、健康で免疫の働きが十分であれば、感染して発症することも少ないため、まずは健康管理に気を配りましょう。

赤ちゃんは大人より免疫力が低いので、特に体調を崩さないよう注意が必要です。早寝早起きの規則正しい生活を心がけ、日中は体を動かしてよく遊び、たっぷり眠れるようにしましょう。

ブドウ球菌による皮膚トラブルの予防には、皮膚に傷ができないようにすることも大切です。肌が乾燥気味の赤ちゃんは保湿をしっかりして爪も短く切り、かき傷ができないようにしておきます。

食中毒の予防には、日ごろから調理や食事の前には薬用せっけんでしっかり手を洗う習慣をつけるといいですね。また、ママの手に傷があるときは、食品や調理器具を素手でさわらないように注意します。

ブドウ球菌の感染症にかかってしまった場合は、分泌物や嘔吐物などをすぐ処理して人にうつさないようにすることも大切です。

取材・文/村田弥生

監修
澤田雅子先生
澤田こどもクリニック院長
1991年東京大学医学部小児科入局。国立小児病院新生児科、愛育病院小児科、東大病院小児科アレルギー外来などを経て、2003年に澤田こどもクリニックを開業。明るく親しみやすい人柄と、わかりやすい説明が評判のママ先生です。

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