EBウイルス感染症とは?症状や検査、治療や予防の方法は?【小児科医監修】


澤田雅子先生
澤田こどもクリニック院長
「EBウイルス感染症」は、聞き慣れない病名で育児書などでもあまり見かけない病気かもしれません。最近ではネットで症状などから検索されることが多くなり、「ウイルス」「感染症」などと聞いて、「うちの子は大丈夫?」と心配になるママもいるようです。でも、むやみに心配する前に、EBウイルス感染症とはどんな病気なのか、ぜひ正しい知識を持っておいてほしいと思います。
目次
EBウイルス感染症とは?
EBウイルスという名前はそもそもあまり耳にしたことがないと思いますが、まずはどんなウイルスなのかを正しく知ることが大切です。
「伝染性単核(球)症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)」を起こすウイルスです
EBウイルスは、発見者のEpstein(エプスタイン)とBarr(バー)の名前の頭文字からつけられたウイルスで、ヘルペスウイルスの仲間です。このEBウイルスに感染してかかるのが、「伝染性単核症」または「伝染性単核球症」と呼ばれる病気です。
EBウイルス感染症は、唾液が感染源となることから、「キス病」とも言われています。感染しても、症状は軽い風邪程度ぐらいですみますし、これといった症状があらわれないこともあります。
国立感染症研究所によると、特に乳幼児期に初めてEBウイルスに感染した場合は、“不顕性感染”といって、感染したのに症状が出ない状態のことが多いとされています。ただし、一度EBウイルスに感染すると、ウイルスは体内に潜伏して一生住み続けることになります。
EBウイルスの感染経路は?
感染症というからには、どんな経路でうつるのか気になりますね。EBウイルスは、ほかの感染症とは違う珍しい経路でうつります。
EBウイルスは、おもに唾液を介することで感染します
EBウイルスは、輸血による感染や濃厚な接触による飛沫感染も少しは報告されていますが、おもな感染源は唾液です。EBウイルスの感染者とキスをしたり、感染者が咳をしたときに唾液が口の中に入ったりしたなどでうつります。
キスといっても、恋人同士や夫婦のキスだけでなく、親子や親しいもの同士がスキンシップのためにキスをすることでもうつります。それだけでなく、家族や親しいもの同士が飲み物や食べ物を共有するなどでも、唾液を介してうつってしまうことがあります。そのため、乳幼児でも家族や周囲の人とのふれあいの中で、感染することがある病気と言えるでしょう。
年齢別のEBウイルス保有率は国によって異なりますが、国立感染症研究所によると、日本では2~3歳ごろまでに子どもの約70%がEBウイルスに感染し、20歳代になると90%以上が抗体を持っているといいます。
ただし、EBウイルスによる伝染性単核(球)症は感染症の中でも届け出の義務はないため、年間どれくらいの人が感染しているか正確な数はわかっていません。
EBウイルス感染症の症状は?
EBウイルス感染症は、ネット検索などでは「発熱」「のどの痛み」などよくある症状を検索するとヒットしやすい病気です。実際の症状は、風邪などとよく似ているようです。
乳幼児は、感染しても症状が出ないことが多い病気です
前述したように、乳幼児が初めてEBウイルスに感染したときは、目立った症状があらわれない“不顕性感染”になることが多いものです。発症するケースが多いのは、思春期以降に感染した場合です。
日本では正確な感染者数はわかりませんが、アメリカでは年間で人口10万人当たり約50人の患者が発生していて、特に発症率の高い年齢層の大学生では、不顕性感染者の数も考慮に入れると10万人当たり約12,000人もの人が発症しているのはないか、との報告があります。
EBウイルスに感染して発症する場合は、4~6週間という長い潜伏期間ののちに症状があらわれますが、私たちでも気づきやすいのは以下のような症状です。
・発熱後、数日間高熱が続く
・のどが痛い
・扁桃炎を起こす
・おもに首のリンパ節が腫れる
・疲れがとれにくい、とにかくだるい
伝染性単核(球)症の症状は風邪の症状とよく似ているため、感染に気づかないまま治ってしまうケースも多いでしょう。思春期以降の人に上記のような症状が見られ、伝染性単核(球)症が心配なときは、念のため受診すると安心ですね。
EBウイルス感染症の検査方法は?
EBウイルスに感染していることが疑われるときは、血液検査をしてEBウイルスに対する抗体価を調べます。ただ、この病気が疑われたらすぐに検査が必要、というわけではないので、まずは小児科で相談しましょう。
感染は血液検査でわかりますが、乳幼児が検査をすることはまれです
血液検査でEBウイルスの抗体価を調べるといっても、伝染性単核(球)症の症状は風邪をはじめとしてほかの病気にもよく見られる症状が多いものです。さらに、乳幼児の感染者は、不顕性感染がほとんどで症状からこの病気を疑うことはあまりないので、小児科で乳幼児にEBウイルスの抗体価検査をすることはあまりありません。
大人の場合も、医師は症状を聞いていきなりEBウイルスの検査をするのではなく、まず喉や鼻の粘膜を採取するなどして、ほかの感染症を疑って調べることがあります。
EBウイルス感染症の治療法は?
赤ちゃんは、EBウイルスに感染しても発症することは少ないとはいえ、万一発症してしまったら、どんな治療法があるのか気になりますね。EBウイルス感染症は適切な治療をすれば、わりあい短期間で治る病気です。
治療は対症療法が中心で、短期間で治ります
EBウイルスによる伝染性単核(球)症は、ほかのウイルス感染症と同様に特効薬はないため、直接病気を治すことはできません。かわりに、発熱やのどの炎症を抑えるなど、症状をやわらげるための対症療法を行います。
伝染性単核(球)症の症状は、たいてい1~2ケ月でおさまります。乳幼児の場合はまずありませんが、思春期以降の感染者の場合は合併症として無菌性髄膜炎、脳炎、視神経炎、脳神経マヒといった中枢神経症状が起こることもあります。
この病気と診断がついて症状がおさまるまでは、安静にして水分補給に努めるなど医師の指示に従って過ごすことが大切です。
症状は長くても4ケ月以上続くことはめったにありませんが、6ケ月以上続くときは「慢性活動性EBウイルス感染症」という病名で呼ばれることもあります。
なお、伝染性単核(球)症は治ってもEBウイルスが死滅するわけではなく、一部がのどや血液中の細胞の中に潜伏しています。そしてときどき再び活動を始め、感染者の唾液の中にEBウイルスが含まれるようになります。
いつ再活動を始めるかは人によってまちまちですが、たいてい症状は出ずに体内で起こります。一度でも感染して発症した経験のある人は、EBウイルスが再活動していることもあるので、乳幼児に唾液感染しないよう注意が必要です。
EBウイルス感染症の予防法は?
どんな病気でも、赤ちゃんにはできるだけかからないようにしたいですね。EBウイルス感染症も、いくつかのポイントを押さえれば感染の機会はぐっと減りそうです。
赤ちゃんは、感染者とできるだけ接しないで
Bウイルス感染症は唾液を介して感染するため、日常のちょっとした行動でかかりやすく、予防はとても難しいものです。感染者を隔離したとしても、感染を完全に予防することは無理だとされる病気ですが、乳幼児の場合は感染者とは接触しないことが一番の予防になります。
家族など身近な人が感染・発症している場合は、
・乳幼児とキスをしない
・感染者が飲みかけたり、食べかけたりしたものは乳幼児に与えない
などのことを守りましょう。
伝染性単核(球)症にかかった場合、登園・登校は?
2歳くらいまでの赤ちゃんは、めったに発症しないというEBウイルス感染症による伝染性単核(球)症。でも、万一発症した場合、保育園に通っている子は登園できるのか、どのような基準があるのでしょうか。
「伝染性単核(球)症」を発症しても、体調が良くなれば登園OK
EBウイルスによる伝染性単核(球)症は、おもな感染源が唾液であるため、空気感染や飛沫感染する病気と比べると、感染者が学校や保育園、幼稚園に行ったからといって一気に周囲に広がる可能性は低いものです。そのため、EBウイルス感染症は学校保健安全法では「通常出席停止の措置は必要ないと考えられる感染症」に分類されています。
日本小児科学会の予防接種・感染症対策委員会が発表している2017年4月改訂版の『学校、幼稚園、保育所で予防すべき感染症』によると、伝染性単核(球)症を発症した場合の登校・登園は、「解熱し、全身状態が回復した者は登校(園)可能である。」としています。
ただし、学校や保育園、幼稚園でこの病気が流行したとき、それを抑えるために、必要があれば校長や園長が校医や園の指定医の意見を聞いて、感染者を出席停止とすることはあります。
いずれにしても、保育園などで集団生活をしている子が伝染性単核(球)症と診断がついた場合は、園などに必ず報告するとともに、登園についてはかかりつけ医に相談し、指示に従うことが大切です。
赤ちゃんのママは、EBウイルス感染症をむやみに怖がらないで!
EBウイルスに万一感染してしまったとしても、赤ちゃんの場合は伝染性単核(球)症を発症することは少なく、感染に気づかずにすんでしまうことも多いものです。また、症状が出たとしても軽くすむケースがほとんどです。
治療は対処療法ですが、症状も風邪などと同じ程度で、短期間で自然に治っていきます。むしろ小さいうちにかかって知らないうちに抗体を獲得しておいた方がよく、問題となるのは大きくなってからの初感染の場合です。小児科医の医師の指示に従ってきちんと対処していけば、基本的には心配のない病気です。
ネット検索などでこの病気を目にしたとしても、かかる前から神経質になって感染を心配することのないようにしてくださいね。
一部画像出典:『はじめてママ&パパの病気とホームケア』(主婦の友社 刊)
※本記事中の画像はイメージです。
文/村田弥生

澤田雅子先生
澤田こどもクリニック院長
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