【助産師監修】乳腺炎を予防する食事・母乳にいい食べ物って本当にあるの?

授乳中ママであれば、栄養たっぷりの母乳を赤ちゃんに飲ませてあげたいと願うもの。でも「これを食べると良い母乳が出る」「こってりした食べ物は乳腺炎の原因になる」など、授乳中の食事に関してはさまざまな情報が飛びかっており、迷ったり悩んだりすることも多いでしょう。そこで今回は、乳腺炎を心配する授乳中のママが知っておきたい食事の知識についてまとめました。
目次
授乳を経験したママたちにインタビュー!
乳腺炎を経験したことがありますか?
今回、授乳を経験した先輩ママへアンケートを行ったところ、セルフケア等により自然に良くなったケースを含めて「乳腺炎かも?と思ったことがある」もしくは「乳腺炎と診断されたことがある」とする人が半数以上も。授乳中のママにとって、乳腺炎はかなり身近な症状だということがわかりました。
授乳中の食事で悩んだことやエピソードを教えてください
「義理の母が『あんこを食べると母乳がよく出る』と大福やおはぎなどを頻繁に差し入れしてくれました。その気持ちは嬉しかったものの、それほど効果があるとも感じませんでした」(1歳3ヶ月男の子のママ)
「夫が大豆&牛乳アレルギーなので、遺伝させたくないと思い、大豆と牛乳を避けて妊娠中~授乳中をすごしました。しかも先輩ママから『授乳中は、脂っこいお肉などを食べないよほうがいいよ』と聞き、たんぱく源が摂れなくて本当に困りました」(2歳女の子のママ)
「母乳がたまってバストが張りやすかったので、低脂肪、根菜中心の和食を心がけました。結果的にひどい乳腺炎になることもなく、栄養バランスの良い食事ができたので、自分や家族の健康維持のためにも良かったと思っています」(1歳6ヶ月女の子のママ)
「産後2ヶ月の頃、乳腺炎になりかけて駆け込んだ母乳相談室の先生がとても厳しい方で、『肉を食べたでしょ!』と叱られ泣きそうになりました。しばらくはあっさりした食事に切り替え、授乳が軌道に乗ってからはお肉も食べましたが、その後は特にトラブルもなく過ごせましたよ」(3歳男の子のママ)
やはり、授乳中の食事にはいろいろ気を遣ったというコメントが多数。特に「乳腺炎予防のためあっさりした食事に切り替えた」という人が多く見られました。
乳腺炎とは?
乳腺炎とは、母乳の通り道である「乳腺」が炎症を起こした状態のことを言います。乳房のしこりや張りによって痛みを感じ、ひどくなってくると乳房がカチカチに硬くなったり、細菌感染を起こして激しい痛みや発熱が起こることも。授乳中の3~20%の女性が体験すると言われており、授乳中を通じて起こる可能性がありますが、特に産後2・3週目ごろ~3ヶ月ごろに多い症状です。
乳腺炎のいちばんの原因は、乳腺に母乳がたまった状態のままになってしまうこと。授乳間隔や授乳姿勢を見直すことがいちばんの対策になります。以下の記事にも詳しく書かれていますので、参考にしてみてくださいね。
そもそも授乳中に控えるべき食べ物ってあるの?
授乳中に「肉を食べたら母乳が詰まりやすくなる」とか「牛乳やチーズはダメよ」などと言われたことがある人も多いことでしょう。本当に避けたほうが良いのでしょうか。
アレルギーが心配される食材(牛乳、卵など)は避けるべき?
授乳中のママの中には、「赤ちゃんのアレルギーが心配だから、自分も牛乳や大豆を控えている」という人がときどきいます。
しかし『食物アレルギー診察ガイドライン2016』によると「食物アレルギーの発症予防のため、妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されている上に母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されない」とされています。
ママが卵や牛乳を控えれば赤ちゃんの食物アレルギーが予防できる、という強い根拠が今のところ見つかっておらず、アレルギーの専門医は母親の食事制限を推奨していないのです。
ただ、例えば「ママが卵を食べてから授乳すると、赤ちゃんの皮膚が赤くなる」など、明らかに食物アレルギーが疑われる場合は控えたほうが良い場合も。自己判断せずにアレルギー専門医を受診しましょう。
高脂肪・高塩分・高糖質食品は食べちゃダメ?
WHOは「高塩分と高脂肪の摂取は乳腺炎の可能性を高めるという点も含めて、食べ物は乳腺炎に関係していると考えられてはいるが、根拠はまだはっきりしていない」としています。
食べ物はママの消化器系で細かく消化されてから吸収されます。食べた物が母乳に直接含まれるわけではないのです。また乳管の太さは乳頭に近い部分では約2mm(2,000µm)、たとえば母乳中の脂肪は直径2~10µmの球状です。つまり理屈的には、食品から消化吸収された栄養素により乳管がつまりやすくなるということは考えにくいのです。
海外に目を向けてみると、アメリカ人に日本的な食事をしている人はほとんど見当たりません。チーズやハムが大好きで、チーズは高脂肪ですが貴重なカルシウム源ですから、あまり制限もしません。
授乳中のママには、エネルギーなら1日につき+350kcal、たんぱく質は+15g、ビタミンCは+40mg(厚生労働省による授乳期栄養所要量より抜粋)という具合に、妊娠前よりも多くの栄養が必要です。特定の食品を避けることにより栄養不足にならないよう、注意しましょう。
母乳をサラサラにして乳腺炎を予防できる?おすすめの食事とは
一般的に、授乳中は繊維質をたっぷり含む和食を中心にしたほうが良いと昔から言われています。また「⚪⚪を食べると母乳がサラサラになる」とか「乳腺が詰まりにくくなる」「母乳がおいしくなる」といった表現もよく見聞きしますよね。生真面目なママほど、真剣に取り組んでしまうかもしれませんね。
何か特定の食品を摂ることによって母乳の質が変わるという調査研究結果ははっきりしていないようですが、伝統的に母乳に良いとされる食材を、参考までに以下に書き添えておきます。
【伝統的に母乳に良いとされてきた食品】
■玄米
■根菜
■青菜
■大豆
■小豆
■海藻
■魚
間違えてはいけないのが、上記だけを摂ればよいと勘違いしてしまうこと。母乳は血液から作られます。ママが食べて消化吸収された栄養素から作られますので、肉も魚も野菜もバランス良く摂取することが最も大切だと言えるでしょう。また授乳中は水分不足になりやすいので、カフェインレスのお茶や白湯などでこまめな水分補給を心がけることも重要です。
授乳中に乳腺炎になりかけたら食事はどうすべき?
赤ちゃんが飲みたがったときに母乳がスムーズに出て、順調に授乳できているようであれば、ママは栄養バランスの良い食事を心がけていればOKです。
一方、バストの張りが強く残乳が気になり始めたら、脂っこい食事や脂肪分の高い飲み物を控えてみても良いでしょう。WHOでは、特定の食事が乳腺炎のリスクとなる根拠はないとはしつつも、「食事と乳腺炎には関係がある」というこれまでの経験則を否定もしていません。乳腺炎になってしまった、なりそうな予感がするという人は、高塩分・高脂肪の食事を摂りすぎないようにし、野菜・海藻・豆類を中心にあっさりした食事を心がけるのも1つの方法です。
授乳中ママにおすすめのレシピが知りたい!
授乳中は、さまざまな栄養素をしっかりバランス良く摂るのが理想的。今回は、本記事の監修者・秦先生の助産所『スイゴーニュ』での講座内容を元にしたレシピをご紹介します。
アボカドと海老のクリームリゾット
*材料
アボカド……1/2個
むきえび……10尾
マッシュルーム……2個
玉ねぎ……1/4個
オリーブオイル……小さじ1
塩コショウ……少々
無調製豆乳……1カップ
洋風だし……小さじ1
ごはん……茶碗2杯分
*作り方
①アボカドは大きめの一口大に切る。玉ねぎは粗みじん切りにする。マッシュルームは薄切りにする。むき海老は背ワタをとり、背中に包丁を入れる。
②フライパンにオリーブオイルを熱し、玉ねぎを炒める。しんなりしてきたらマッシュルームと海老を加えさっと炒め、豆乳と洋風だしを加えてひと煮立ちさせる。ご飯を加えてざっくり混ぜる。
③ごはんが水分を含んだら、塩こしょうで味をととのえて器に盛りつける。
*POINT
リゾットなど優しい味のものは、つわり中や妊娠後期に胃が圧迫されて食欲がない時などにも食べやすいのではないでしょうか。
アボカドは食物繊維・ビタミン類、ミネラル・葉酸・カリウムなど栄養成分や不飽和脂肪酸を多く含んでいる為、妊娠中~授乳中におすすめの食材です。
豆乳は牛乳に加えてカルシウム含有量は低めですが、カリウムやマグネシウム、ビタミン類が豊富です。
サーモンソテー ~きのこのソース~
*材料(2人分)
サーモン……2切れ
塩こしょう……少々
薄力粉……適量
きのこ……お好みで1袋
オリーブオイル……小さじ2
白ワイン……大さじ2
*作り方
①サーモンは塩・コショウ少々を表面に塗り5分おいて下味をつけ、焼く直前に薄力粉を薄くまぶす。
②きのこは食べやすい大きさに切る。
③フライパンにオリーブオイルを熱し、サーモンを中火で焼く。片面に焼き色がついたところでひっくり返し、サーモンの上に②のきのこを乗せてワインをまわしかけて蓋をし、蒸し焼きにする。
④火が通ったらサーモンを取りだし、きのこソースを仕上げる。水分が少ないようなら水を大さじ1~2杯足し、塩・コショウで味を整え、サーモンの上に盛り付ける。
⑤お好みでパセリを散らす。
*POINT
脂肪質の魚は、必須脂肪酸であるオメガ-3が豊富に含まれています。赤ちゃんの脳や目の発育にも好ましい成分と言われています。
ただし、加熱しないで食べるスモークサーモンは、リステリア菌による胎児感染のリスクがありますので、妊娠中の摂取は控えましょう。
食物繊維が多く含まれるきのこをたっぷりとソースに使い、便秘予防や解消を期待します。
りんごとさつまいものコンポート
*材料(2人分)
りんご……1/2個
メープルシロップ……小さじ2
さつまいも……150g(約1/2本)
水……適量
レーズン……大さじ2(約20g)
塩……少々
シナモン……お好みで
*作り方
①りんごは皮付きのまま縦八等分にした後、芯を取り除き7~8mmのいちょう切りにする。さつまいもは皮つきのまま、7~8mmの半月切りにする。
②鍋にりんごとさつまいもを2回交互に重ねて入れたら、ひたひたになるくらいの水を注ぎ、レーズンとメープルシロップ、塩を加えて火にかける。蓋をして弱火で20分程煮る。
③さつまいもが柔らかくなったら火を止め、味をなじませる。
*Point
授乳中のおやつ、離乳食にも役立つレシピです。レーズンの自然な甘みをいかし、砂糖の使用量を減らしています。さつまいもの皮にも栄養が豊富に含まれていますので、皮ごと調理することをおすすめします。りんごに含まれるペクチンは腸内環境の改善に役立ちます。
授乳中の食事と乳腺炎予防~まとめ~
繰り返しになってしまいますが、乳腺炎と食事の因果関係はまだはっきり示されてはいません。けれど、まったく関連性がないという根拠もないのです。言い伝えにも、それなりの理由があるのかもしれませんし、子育てで体力を必要とし、家族の健康を預かるママにとって、食事をおろそかにしないことはとても大事なことと言えるのではないでしょうか。
かと言って、特定の食品を避けたり食事制限まで行ってしまうのは逆効果かもしれません(日本助産師会の『母乳育児支援業務基準 乳腺炎2015』では、乳腺炎の原因及び誘引の1つとして『母親が栄養不良である』ことを挙げています)。
それに、母乳育児がストレスになってしまうようでは残念ですよね。慣れない育児に奮闘して疲れたら、時には甘い物でも食べて気分転換したいもの。神経質になりすぎず、たまには息抜きをしながらバランスの良い食生活を楽しんでみてはいかがでしょう。
レシピ考案/迫 裕子(看護師 料理研究家)

秦 万理
助産師/助産所Cigogne院長
助産所Cigogneホームページ
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