産後うつの症状をチェック!原因や対策、なりやすい時期はいつまで?

コラム
公開日:2018/01/17
更新日:2018/01/18
産後うつの症状をチェック!原因や対策、なりやすい時期はいつまで?

妊娠・出産による身体的な疲れや、慣れない育児への精神的なストレスなどで、産後のママなら誰でも起こる可能性のある「産後うつ」。言葉は聞いたことがあるものの、具体的にはどのような症状が見られるのかは知らない人も多いはずです。産前・産後で変わる生活環境や産後うつを予防する対策などを、文京学院大学編集・発行のリーフレット「ママから笑顔がきえるとき」に掲載されている内容にそって紹介します。同大学保健医療技術学部准教授で助産師の市川香織先生のお話も参考にしてください。

産後うつとは?

産後うつとは、妊娠・出産を乗り越えて毎日の育児に奮闘していた女性が、ある日突然何もする気がなくなったり、みじめな気持ちになったり、自分の感情が抑えきれなくなるなど、うつの症状が表れることをいいます。「涙が止まらない」「家族のちょっとした言葉にイライラする」といった「マタニティーブルーズ」は一過性のもので自然と治る一方、一部の人たちには「産後うつ」の症状が出てくることがあります。

産後うつが起こる原因と発症率

「産後は赤ちゃん中心になり、それまでの生活スタイルから大きく変化します。また、『お産してから何日もたっているのに、体がうまく動かない』『24時間、2時間おきの授乳でほとんど眠れていない』『母乳がうまく出ない』『育児がうまくいかないのは私がいけないのでは……』といった、出産・育児によるストレスも重なります。しかしながら多くのママたちは『それでも母親の私がやらなきゃ』と頑張りすぎてしまうのです。今は誰もが産後うつを発症しやすくなっていて、現在、産後うつになる可能性は7~10人に1人と言われています。産後うつになることは、決して他人事ではないのです」(市川先生)

2016年に発表された、東京都監察医務院や順天堂大学の報告によると、2005年から2014年の10年間に、東京23区内で63人の妊産婦(妊娠中と出産後1年未満)が自殺しており、妊産婦の死因で「自殺」が最も多いことがわかりました。こういった事実からも、産後のママの精神面をケアする必要があると考えられています。

産後うつの兆候や症状、チェックしたいこと

産後うつになると、それまでとママの気持ちに変化が起きます。何もする気が起きない、赤ちゃんがかわいく思えない、赤ちゃんをかわいいと思えない自分に自己嫌悪を感じる、常に疲労感があるといった症状は、産後うつの兆候かもしれません。このようなときは、赤ちゃんの一時保育を利用するなど、パパやパートナー、保健師、助産師などに助けを求め、ママ自身の心身のケアを。さらに、眠りたいのに眠れない、笑えない、全てのことに無関心、自分を傷つけたくなる、とまで思うようになってしまうと、ママ自身で何かを判断、行動するのが難しくなることも。保健センターに相談する、メンタルクリニックなどの医療機関を受診するなど、身近な人が気づき、一緒にアクションを起こす必要があります。

産後うつが育児にもたらす影響は?

「産後うつになると、何事もやる気が起きないという症状が見られるようになります。何もできない、何事にも手がつかないということは、そもそも育児自体ができないことになりますので、母乳をあげられない、ミルクを作ることもできない、おむつを替えられないなどと赤ちゃんのお世話がほとんどできなくなる可能性があります。

そのとき、親など家族のサポートがあれば、ママのかわりに赤ちゃんのお世話を行うこともできますが、ママができないことをパパがひとりで肩代わりした場合、今度はパパが追い込まれる状況になり得ます。実際、パパがその役割をひとりで担った家庭では、育児・家事・仕事をすべて行い、パパ自身が破綻してしまったこともあります。このような物理的な面での影響はもちろんですが、産後うつによりママがいつも無表情で、子どもに話しかけられないような状況だと、子どもの情緒的な発達に影響を及ぼす可能性も考えられます」

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産後うつにかかりやすい時期は? いつからいつまでが要注意?

「最近はお産入院の期間が短いこともあり、授乳の仕方や赤ちゃんのお世話に不安を抱えたまま退院し、ママ自身の体力も回復しないまま自宅での育児が始まるケースが珍しくありません。それでも『自分のことができなくても仕方ない』『母親なのだから、ちゃんと育児をしなきゃ』と、自分の体の回復を後回しにしてしまうママはたくさんいます。しかし体が回復しないままでは心まで滅入ってしまうので、心身ともに子育てがつらい、こんなはずじゃなかった、と感じてしまうようになります。あるインターネット調査によると、『自分は産後うつだったかもしれない』と感じた人は、回答した人の約半数もいて、そう感じた時期について一番多かったのが『産後1~3ヶ月』という結果が出ました。とくに出産直後から産後3ヶ月までの間は、ママ自身も心身のケアを受けられることが大切です」

新生児期は昼夜関係なく2~3時間おきに授乳をするので、ママはきちんと体を休めることができません。赤ちゃんを連れての買い物では想像以上に体力・気力を使ったり、そもそも外出するのにも準備が必要だったり、なかなか思うように行動できません。赤ちゃんのお世話をしながらの家事なども慣れないことが多く、ママは自分でも気づかないうちに疲れがたまっていきます。周囲に頼れる人や相談できる人がいない場合には、自分だけが社会から孤立してしまっているような、孤独感や疎外感に心が支配されてしまうことも……。

「近年は初産婦の年齢が変化していて、20年くらい前までは20代が中心だったのですが、ここ10年くらいは主に30代となり、30代後半から40代での初産も珍しくありません。このように社会的な構造が変化することで、出産する環境にも変化が生じています。これまで産前・産後は実家に帰る『里帰り出産』をする人が多く、産後のママのケアを主にその親が担っていました。しかし出産年齢が高まるにつれ、親も高齢になり、親に頼れないと感じている人も増えてきています。また、親が遠方にいて頼れない、親がまたその親を介護していて余裕がない、という声も多く聞くようになりました。

核家族化とともにご近所づきあいが薄くなり、これまで住んだことのない土地で地域とうまく交流ができず、産後あまり外出をしない親子もいます。なかには、『赤ちゃんが大声で泣いたら、虐待していると通報されてしまうのではないか』と、窓も開けずに赤ちゃんと家に閉じこもるママもいます。このようにママと赤ちゃんの行動範囲が狭まることで、さらにママが社会から孤立してしまっているのは、今は特殊なことではありません。

産後うつだと診断される人は一部だとしても、産後のサポートが得られない、ママ自身の体がなかなか回復しない、母乳が出ない、育児がうまくできないと感じている人の中には、何かの支援があれば乗り越えられる人から、かなり産後うつに近い人までいて、実は多くのママがボーダーライン上にいるのではないかと思います。そのボーダーライン上にいるママたちに、元気に子育てをしてもらえるようにするような支援が必要なのです」

産後うつを予防するための対策や、相談できる場所を知っておく

妊娠中から産後も、ママやパパを支える支援はたくさんあります。住んでいる自治体にはどんなサービスや支援があるのかは、できれば妊娠中に調べておきたいもの。とくに、妊娠期から子育て期にわたり、さまざまな不安や悩みを相談できる保健師や助産師は、妊娠中から関わりを持ったり、調べておくのが理想的です。周囲にSOSのサインを出すことは恥ずかしいことでも、母親失格だと感じることでもありません。下記を参考に、ぜひチェックを。

◆市区町村の子育て支援……児童館、子育てひろば、ファミリー・サポート・センター、一児預かり、育児サークルなど、子育てを応援する事業を各自治体で行っています。無料・有料はさまざまです。市区町村の広報紙やホームページなどからも確認できます。

◆保健師……各自治体、地域ごとにいます。妊娠中から産後まで、妊娠・出産・育児に関するさまざまなことを相談できます。ママ以外にも、パパや家族からの相談にも応じています。

◆助産師……主に医療機関で出会います。妊娠中から産後も相談にのってくれます。助産外来(有料)で相談を行っているところもあります。

◆民間サポート……家事支援やベビーシッターによる一時預かりなど、有料で行っています。

◆産後ケア施設……育児支援や母乳ケア、産後のママの体のケアなど、育児がスタートしたばかりのお母さんを、助産師や看護師などの専門家が心身ともにサポートします。自治体、民間で行っているものがあり、施設によっては宿泊、日帰りタイプを選べます。内容や料金はさまざまですが、自治体で運営しているものはまだ少なく、民間の施設は高額になるケースが多いので、費用の何割かを負担する自治体も増えています。利用できる人数が限られているため、すぐに定員になってしまう場合もあるので、詳細などは事前に確認を。

「現在は、さまざまな機関により個々に行われている支援ですが、今後はそれらを包括し、妊娠中から育児期まで切れ目なく支援を行う、子育て世代包括支援センターの設置が各市区町村で進められています。産後ケア施設を利用したママたちからは、『ゆっくり休むことができてよかった』『ゆっくり食事ができた』という言葉や、『産後ケア施設へ行って、授乳がうまくできるようになった』『ママ友の仲間ができた』という声も聞かれます。専門家や同じ立場のママとの関わりによって、自分の育児の仕方を認めてもらえた、受け入れてもらえたという、ママ自身の承認欲求や尊厳欲求が満たされ、それが、『子育てが楽しい』と思えることに繋がるのだと考えられます」

妻の産後うつを予防するために夫ができることは? どんなサポートをするべき?

「子育て世代包括支援センターのような社会的なサポートも、産後うつを予防するには必要ですが、家族の中でも、できれば妊娠中からサポート体制をととのえておくことが、産後うつの予防になります。『イクメン』という言葉が世の中に定着してしばらくたちますが、今のパパたちはとても育児に積極的です。ただ、まだまだ日本の男性の育児休暇取得率は低く(2016年度は3.16%)、産後、パパを頼りにできる状況には至っていません。ですから、とくに産後3ヶ月までをどのように過ごすのか、家事や子育てに関しては誰がどのようにサポートするのかを家族の中で計画しておくことが大切です」

パパやパートナーができることは、日頃からママの話をよく聴くように心がけること。「家にいるんだから、育児も家事もするのはあたりまえ」「赤ちゃんが可愛いのはあたりまえ」という母性神話のような思い込みがあると、それが知らず知らずのうちに態度や言葉に出て、ママにプレッシャーをかけてしまう可能性もあります。ママはもちろん、パパもそのような思い込みをなくし、前向きに子育てができるような心構えが必要です。また、ママとパパの子育ての分担を決め、ママが子育てから離れられる時間を考えておく、パパは産前・産後の女性の心と身体の変化を理解しようとすることも大切です。

旦那がうつに!? パパの産後うつが増えている

「最近はパパにも家事や育児を担ってもらうことが期待され、仕事以外にもパパの役割が増えています。ママと同様、パパにも子育てへの不安や心身のストレスなどから、産後うつの症状が表れることがあります。アメリカでは、10%の父親に産後うつが見られたという研究結果も出ていて、とくに産後3~6ヶ月に多く見られることがわかりました。ママが産後うつになると、パパも産後うつになるリスクは高まります。とくに産後、パパ・ママの親のサポートが受けられない場合は、パパの役割は増えます。パパも妊娠中から職場での理解を求めるなど、産後の生活にそなえて準備をしておくことが大切です」

リーフレット「ママから笑顔が消えるとき」をぜひチェック

市川先生が総合監修し、産後うつ問題に詳しい、広尾レディース 院長 宗田聡先生がアドバイザーとなり作成されたリーフレット「ママから笑顔がきえるとき」には、産後うつに関する基礎知識、産前産後の生活の変化、産後のママの気持ちの変化と対処方法などについてわかりやすく説明されています。とくに、産後うつの可能性を低・中・高にわけて、どのようにママの気持ちが変化していくかを解説している箇所は、ママだけではなくパパや家族にも読んでほしいところです。母子健康手帳に収まるサイズのリーフレットは、全国市区町村の保健センターにて配布しているほか、文京学院大学ホームページからもダウンロードすることができます。リーフレットの内容をベースにした動画もチェックを。

「ママから笑顔がきえるとき」公式ホームページ

https://www.u-bunkyo.ac.jp/faculty/health/2017/11/20171122.html

「ママから笑顔がきえるとき」動画URL

https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=3MFwHvnjGtM

Profile
市川香織先生
助産師・文京学院大学 保健医療技術学部准教授
1990年千葉大学医学部附属助産婦学校卒業。千葉大学医学部附属病院、千葉大学医学部附属助産婦学校教員、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課、公益社団法人日本助産師会事務局長等を経て、2014年4月より現職。2013年8月に一般社団法人産前産後ケア推進協会を立ち上げ、代表理事もつとめる。

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