赤ちゃんの腸重積症ってどんな病気?原因・症状・治療方法は?【症例写真付&専門医解説】

 専門家監修
公開日:2018/02/06
更新日:2019/07/05
赤ちゃんの腸重積症ってどんな病気?原因・症状・治療方法は?【症例写真付&専門医解説】
監修
渋谷紀子先生
総合母子保健センター愛育クリニック

「腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)」という病名を聞いたことがありますか? これは、急に腸と腸の一部が重なり合ってしまう病気です。赤ちゃんにも思った以上に多く、気づかずにいて治療が遅れると重篤な症状になることもある病気。病気のサインなどの症状をよく理解しておき、赤ちゃんの様子が少しでも「おかしいな」と思ったら、早く受診することが大切です。そんな腸重積症の原因や症状、治療方法や病院へ行くめやすをお知らせしましょう。

腸重積症とはどんな病気?

腸重積症は、文字通り腸が重なり合ってしまう病気です。いくつかのパターンがありますが、症状や、起こりやすい年齢・性別などは共通しています。

腸が重なりあって腸閉塞を起こします 

腸重積症は、文字どおり腸が腸の中に入りこんで重なり合ってしまう病気です。腸が重なり合うと、中に入りこんだ腸は外側の腸の一部に締めつけられてしまいます。そのため、腸閉塞(ちょうへいそく:腸の内側が狭くなり、腸の中にある物が流れなくなってしまう状態)の症状が起こって、飲んだり食べたりしたものが通らなくなってしまったり、血液がスムーズに流れなくなったりします。

腸重積症が起こりやすいところは、小腸の末端で大腸に一番近い回腸と呼ばれる部分で、この回腸が大腸に入りこむケースが最も多く見られます。そのほか、小腸が小腸に入りこむケースもありますし、重なった小腸がさらに大腸にめりこんで三重になるなど、ひとくちに腸重積症といってもさまざまなケースがあります。ただし、どのようなパターンの腸重積症でも、症状に変わりはありません。

2歳以下の乳幼児に多い 

腸重積症は生後4ケ月から1歳ごろまでを中心に、2歳以下の乳幼児に多く見られます。性別では2対1くらいの割合で男の子のほうが多いといわれていますが、この理由ははっきりとはわかっていません。

季節的にはあまり差はないといわれています。もともと病気を持っていない子供に起こる特発性の場合は、以下で説明するようにウイルス感染が関係していることもあり、かぜが流行る冬場や季節の変わり目にやや多くなる傾向があるようです。

腸重積症の原因は?

ウイルス感染で、腸の一部がはれて起こると考えられています

腸重積症の多くは原因がはっきりしませんが、かかった赤ちゃんのほとんどが、もともと病気がないのに突然かかる特発性の腸重積症です。この場合、調べると小腸の終わりのところにあるリンパ組織が腫れていることが多く、また腸重積症になる前にかぜをひいたり下痢を起こしたりしていた例が見られます。そのため、特発性の腸重積症はウイルス感染などによって小腸末端のリンパ組織が腫れ、腸の壁がかたく厚くなって、そこから入り込んでしまうのではないかと考えられています。

腸重積症の典型的なケース。小腸の終わり(回腸)がはれてかたくなり、大腸の始まる部分(盲腸)に入り込んでしまいます。

腸重積症はどんな症状なの?

腸重積症には、「泣いたりおさまったりをくり返す」「いちごゼリー状の血便が出ることもある」など、いくつかの特徴的な症状があります。以下のような症状をよく知っておくことが大切です。

1.元気だった赤ちゃんが、前兆もなく急に激しく泣く

いつもどおりに遊んでいた赤ちゃんが、何の前ぶれもなくいきなり火がついたように激しく泣きだして、ママをびっくりさせます。おなかの痛みがひどく、顔色が悪くなり、体を丸めて苦しむこともあります。

2.いったん落ち着くものの、再び激しく泣くことをくり返す

腸重積が起こっても、最初は痛みが間隔をおいて襲ってくるので、激しく泣いたあとしばらく落ち着き、またしばらくすると泣く…ということをくり返します。泣く間隔は、だいたい数分~15分おきくらいです。

3.泣き方が徐々に持続的になり、胆汁を吐くことも

腸重積症では、時間がたつにつれて泣く間隔が短くなり、やがて持続的になってきます。飲めずに吐いてしまうので、脱水でぐったりしてくることもあります。吐くのは、最初は飲んだり食べたりしたものですが、だんだん吐くものがなくなって腸の内容物になり、胆汁が混じって黄色っぽい粘液状のものになってきます。また、いちごジャムやゼリー状の赤い便が出ることもあります。

【写真で見る】腸重積症の重要なサイン いちごジャムのような血便

【写真で見る】腸重積の重要なサイン いちごジャムのような血便腸重積症の特徴の一つ、いちごジャムを広げたような血便。ただし、病気の初期には出ないことが多く、病院で浣腸してはじめて出ることもあります。

病院へ行く目安は?

腸重積症になったら、家でケアできることはありません。何より大切なのは、腸重積症が疑われたら一刻も早く受診すること。受診のめやすを知っておきましょう。

特有の症状に気づいたら、夜中でも大至急受診して 

腸重積症は時間がたつほど腸の傷みがひどくなり、元の状態に戻すのが難しくなります。そのため、最も重要なのは早期発見と早期治療。赤ちゃんが吐いたうえ、激しく泣くのと落ち着くのをくり返すなど、腸重積症が疑われるような症状が見られたら、診察時間外や夜中でも急いで病院へ行きましょう。

また、飲み物を与えても飲めなかったり、飲めてもすぐ吐くときは、脱水症を起こす危険もあります。ぐったりしてきたときには、一刻も早く受診しましょう。なお、腸重積症の治療は特別な設備が必要になるので、できれば小児外科のある大きな病院へ行くといいでしょう。

血便が出るのを待たないで病院へ

腸重積症というと、「真っ赤ないちごジャム状の便が必ず出る」と思っている人も多いようですが、必ずしも早い段階で特徴的な便が出るとは限りません。実際、血便は病気が進み、病院で浣腸を受けて初めて出ることも多いもの。血便が出なくても、赤ちゃんが激しく泣いたり泣きやんだりをくり返し、ぐったりしてきたら、とにかく早めに病院へ行きましょう。

もし、家にいる間に血便が出たら、それは症状が進んでいる証拠です。医師が診断するときの目安になるので、うんちのついたおむつを必ず持って大至急受診してください。

腸重積症の診断方法は?

問診と触診ののち、エコー検査などで診断 

病院では、問診で赤ちゃんの様子を聞き、腸重積症の疑いがあると医師はまず触診して調べます。おなかを手でさわるとしこりがあるはずですが、赤ちゃんが痛みで泣いているとわかりにくいこともあります。

血便が出ていない場合は、浣腸をして確かめることも。多くの場合、超音波によるエコー検査で診断がつきますが、消化管造影検査を行うこともあります。

【写真で見る】高圧浣腸の造影写真による診断

【写真で見る】高圧浣腸の造影写真による診断真ん中あたりに見える、うっすらと白い三日月のような部分が、入り込んだ腸の先端です。「カニ爪状陰影欠損」と呼ばれる腸重積の特徴で、これが見られることも診断材料の一つ。

腸重積症は、とにかく早期発見が大事!

発見が遅れると命にかかわることも

腸が重なり合って血液の流れが悪くなると、締めつけられた腸の組織は徐々に壊れてしまいます。その結果、腸から出血して便に血が混じります。さらに、腸重積が起こってあまりに時間がたつと、血流が遮断されたままになり、腸の組織が腐って腸に穴があいてしまうことさえあり、そうなると「腹膜炎(ふくまくえん)」を併発する恐れもあります。 

腸管の壊死や穿孔性腹膜炎が進行するとショック症状を起こして命にかかわるので、早期の診断・治療が大切なのです。

今は、診断や治療の技術が発達したと同時に、ママたちにも腸重積症という病気が知られてきたので、昔のように手遅れになって命を落とすようなことはめったになくなりました。
とはいえ、腸重積症は起こってから時間がたてばたつほど腸が傷んでしまうので、とにかく早めの対応が重要です。

腸重積症の治療法は?病院ではどんなことをするの?

まず、高圧浣腸で治療

腸重積が起きてだいたい24時間以内に診断がつけば、高圧浣腸という治療で、たいていの場合は腸の重なりは戻ります。高圧浣腸とは、肛門から造影剤や空気、生理食塩水などを高圧で注入し、入り込んでいる腸を押し戻す方法です。高圧浣腸を行って腸の重なりが戻ると痛みが消えるので、赤ちゃんはケロツと元気になるでしょう。

診断までに時間がかかると、手術になることも

高圧浣腸でも治らない場合は、開腹手術になります。また、診断までに時間がかかり、腸の一部が腐っていると予想される場合は、圧力をかけると穴があく恐れがあるので高圧浣腸を使えません。このような場合は、手術をすることになります。

手術は、腸が腐っていなければ、お腹を開いて腸の重なり部分を元に戻すだけですみますが、腸の一部の血流が悪くなってすでに腐っているときは、その部分を切り取ってつなげます。通常、腸を切る長さはそれほど長くはないので、その後の成長に影響する心配はまずありません。

最近では、腹腔鏡という内視鏡をお腹に入れて腸の状態を見ながら元に戻すこともあります。どの方法をとるかは、医療施設や医師の判断によります。

高圧浣腸後、丸1日は入院

高圧浣腸で腸の重なりが戻ったときでも、最低24時間様子を見ます。開腹手術をした場合は、腸の通りが戻るまで1週間から10日間ほど入院することになるでしょう。 

腸が治ったのが確認されるまでは、飲んだり食べたりはNG。点滴で水分や栄養を補給します。腸が完全に戻り、ほかの病気に感染していないかなどをチェックして、OKなら退院が許可されます。

腸重積症が再発する可能性はあるの?

高圧浣腸で腸の重なりを戻したあと、当日中に10%の割合で再発することがあります。そのため、赤ちゃんが元気になっても最低1日は入院して様子を見ることが多いでしょう。

また、腸重積症の原因が先天的な異常である場合、たとえば、腸の内部にポリープができていたり、腸の外側にメッケル憩室というポケットのような飛び出た部分があったりすると、腸重積症を起こしやすくなります。原因となるポリープやメッケル憩室がある限り何度も腸重積症をくり返すことがあるので、医師とよく相談することが大切です。

文/村田弥生

イラスト/長岡伸行

出典 :はじめてママ&パパの 0~6才 病気とホームケア※情報は掲載時のものです

監修
渋谷紀子先生
総合母子保健センター愛育クリニック
東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、山王病院、NTT東日本関東病院などの勤務を経て、現職。専門は小児アレルギー。私生活では四女の母でもある、やさしくパワフルなドクターです。

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