【医師監修】出生前診断とは?検査の種類・条件・費用・時期は?メリットはある?

 専門家監修
公開日:2017/11/02
更新日:2018/10/26
【医師監修】出生前診断とは?検査の種類・条件・費用・時期は?メリットはある?

妊娠したら耳にする“出生前診断(しゅっせいぜんしんだん)”。この検査をすると、どんなことがわかるの?受けたほうがいいの?出生前診断の専門家に、妊婦さんが知っておきたいことを教えてもらいました。実際に出生前診断を受けた先輩ママの声も必見です。

監修
畠山未来先生
瀬戸病院
超音波胎児検査や羊水検査、NIPT検査が受けられる所沢市の産院で、遺伝外来を受けもつ。親身なカウンセリングに定評がある。

出生前診断とはどんな検査?リスクはあるの?

出生前診断は誰もが関わりのある検査です

出産前におなかの赤ちゃんの状態を調べるのが出生前診断。ダウン症などの染色体疾患や生まれつきの病気がわかります。赤ちゃんの健康状態を早く把握することで、分娩時期や様式、分娩後の生育環境を準備しておくのが出生前診断の本来の目的です。検査の過程で赤ちゃんに病気や障害があるのでは、と不安に思うこともあるかもしれませんが、その可能性を調べることはリスクも伴うことですから、出生前診断を受けるときは、夫婦できちんと話し合っておくことが大切です。また通常の妊婦健診でも超音波検査で気になることがあれば、より精査していく流れになります。そう考えると、出生前診断は誰もが無関係でいられないものといえます。 検査には染色体疾患の可能性を評価する非確定検査として「母体血清マーカー検査」「胎児超音波検査」「母体血胎児染色体検査(NIPT)」があり、これらの検査で可能性が高いと指摘されたら、「羊水検査」「絨毛検査」といった確定検査を受けることができます。

出生前診断の主な種類

【非確定検査】

・母体血清マーカー検査 ・胎児超音波検査 ・母体血胎児染色体検査(NIPT)

【確定検査】

・羊水検査 ・絨毛検査

出生前診断でわかること・わからないこと

Thompson&Thompson Genetics in Medicine 7th editionより抜粋

染色体疾患ってどういうこと?

染色体疾患とは、染色体の量に変化が生じることで、赤ちゃんの先天性の疾患や体質の原因となること。染色体が、まるごと1本ふえていても生まれる可能性が残っているのは、13番と18番と21番染色体だけ。症状の重症度は個人差があります。上の円グラフを見ると先天性疾患をもって生まれる赤ちゃんは、全体の3~5%、さらに染色体疾患によるものは25%。 21トリソミー(ダウン症候群)は、2本のはずの21番染色体が3本あることで起こるもの。18トリソミーは18番、13トリソミーは13番で、それぞれ2本が3本になったもの。

歴史とともに進化する出生前診断。検査ごとの費用・実施時期・検査方法・わかることとは?

出生前診断には歴史的背景があり、その精度もレベルアップしています。検査ごとに実施時期やわかること、限界、リスクがあると心得て。普及した順にご紹介します。

羊水検査

染色体の全貌がわかる

羊水検査は、染色体の全貌がわかる検査。赤ちゃんの細胞が含まれている羊水を採取することで、胎児の染色体や遺伝子の疾患を調べることができます。母体血清マーカー検査やNIPTなど、非確定検査を受けたあとの確定検査として実施されます。流産や出血、破水、下腹痛が生じるリスクもあります。 【費用】約20万円 【どんな人が受ける?】染色体や遺伝子疾患が心配な人。非確定検査を受けて疾患の可能性が高いと指摘された人。 【受ける時期】羊水がたまる妊娠16週以降が適切とされます。事前に遺伝カウンセリングが必要。 【検査方法】超音波を見ながら、妊婦ママのへその下あたりに細い針を刺して、約20mlの羊水を採取。 【わかること】約2週間後に結果が判明。ダウン症候群など、染色体疾患全般について確定診断します。

絨毛検査

羊水検査よりも早くできる

妊娠初期の胎盤の一部“絨毛”を取り出し、染色体や遺伝子の疾患を調べる、超音波検査とともに認知されてきた検査。検査方法は注射針を腹壁に通して採取する“経腹法”と、鉗子で膣〜子宮頸管を通して採取する“経膣法”。羊水検査よりも早い時期に行えて、胎児の細胞が多いのもメリット。リスクは羊水検査とほぼ同じ。 【費用】約20万円 【どんな人が受ける?】特定の遺伝病の診断のために、早期に多くの胎児情報をもった細胞を必要とする人。 【受ける時期】妊娠10~13週ごろに行います。受ける時期は、施設によって多少のずれがあります。 【検査方法】胎盤の位置によって経腹法か経膣法。いずれも超音波で位置関係を確認しながら行います。 【わかること】ダウン症候群など染色体疾患全般がわかります。結果がわかるまで約2週間かかります。

胎児超音波検査

胎児を詳しく検査

90年代には超音波の技術が発達し、胎児の状態を超音波で詳しく診ることができるように。脳や消化器、心臓、手足などの臓器について調べることで、心臓や腎臓の病気、水頭症、口唇裂などがわかります。超音波で胎児に染色体異常症を示唆する所見がいくつもある場合は、NIPTや羊水検査に進むことがあります。 【費用】1万円~ 【どんな人が受ける?】赤ちゃんの病気や染色体異常が心配で、妊婦健診とは別に詳しい検査を希望する人。 【受ける時期】一般的には妊娠11~13週。施設によっては、妊娠初期と中期の2回行われることも。 【検査方法】妊婦健診初期で、まだ膣からのエコーの時期でも、おなかの上からのエコーで赤ちゃんを診ます。 【わかること】心臓や腎臓の病気が、その場でわかります。染色体異常症を示唆する所見がある場合も。

母体血清マーカー検査(クアトロ検査)

先天性異常が確率でわかる

普及したのは90年代半以降。母体の血液に含まれる、タンパク質やホルモンの値を測定。高リスクという結果が出たら、羊水検査での確定診断に進むことができます。基準値より高いか低いのかのバランスを見て、いくつかの先天性疾患についての確率を知ることができます。あくまでもスクリーニング検査のため、胎児の異常は判断できません。 【費用】約3万円 【どんな人が受ける?】染色体疾患の可能性を知りたい人。年齢制限はなく、希望すれば受けられます。 【受ける時期】妊娠15~17週が一般的ですが、施設によっては異なる場合があります。 【検査方法】妊婦ママから少量の血液を採ります。とくに事前のカウンセリングなどは必要なし。 【わかること】検査後2週間したら、ダウン症候群、18トリソミーなどの可能性が確率でわかります。 次に、2013年からスタートした新型の出生前診断「母体血胎児染色体検査(NIPT)」についてご紹介します。

新型の出生前診断「母体血胎児染色体検査(NIPT)」を解説!受けるための条件とは?メリットはある?

リスクのある羊水検査や絨毛検査の前に採血だけで、染色体異常の可能性を調べられる「母体血胎児染色体検査(NIPT)」。2013年から日本でもスタートした、この新型の出生前診断について詳しく解説します。

採血だけで3つの染色体異常の可能性がわかります

羊水検査や絨毛検査は、確率は高くないものの流産や破水などのリスクがつきもの。こうしたリスクのある検査をする前にチェックできるのが新型の出生前診断です。妊婦さんの腕から採血し、血液中に浮遊しているDNAの断片を分析することで、21トリソミー(ダウン症候群)、13トリソミー、18トリソミーの3つの染色体疾患の可能性を検査します。検査後、陽性なら確定検査のために、羊水検査が必要に。夫婦で遺伝カウンセリングを受けるのは必須条件です。 妊婦から採血した血液中に浮遊しているDNAの断片を分析することで、赤ちゃんと同じ遺伝情報をもつとされる胎盤由来のDNAの情報がわかる。

母体血胎児染色体検査(NIPT)のポイント

1. 受けられるのは35歳以上の妊婦ママ

ほかの検査では年齢に条件はありませんが、この検査では35歳以上という条件があります。年齢が低いと、本当は陰性であるのに、検査結果は誤って陽性と出る(偽陽性)など、検査が正確にできない可能性があるからです。

2. 遺伝カウンセリングを受ける必要があります

検査前には夫婦(パートナー)でカウンセリングを受け、染色体のしくみや、対象の疾患、生まれた子がどんな人生を送るのか、といった説明を受けます。必ず夫婦で受けて決めていくというスタンスは、どこの施設でも同じ。

3. 無許可の施設で受けないように注意

そもそもNIPTは臨床研究として実施されているので、受けられる施設は日本医学会が認定した施設のみ( http://www.nipt.jp/ に記載)。無認可で受けるのはリスクが大きいので避けましょう。

母体血胎児染色体検査(NIPT)の費用・実施時期・わかることとは?

【費用】約20万円 【どんな人が受ける?】 ・分娩予定日に35歳以上(凍結胚移植による妊娠は採卵時の年齢が34歳2ヶ月以上) ・ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの赤ちゃんを妊娠・出産したことがある ・胎児が21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーのいずれかの可能性が高いと指摘された(超音波検査・母体血清マーカー検査で指摘された場合、両親のいずれかに21・18・13番染色体が関与する染色体異常などがある場合) 【受ける時期】電話予約は妊娠10週あるいは12週になってから、遺伝カウンセリングや採血は14週未満に、など施設によって制限があるので、事前に確認を。 【わかること】21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーなどの3つの染色体異常についてわかります。結果は陽性か陰性で判明。陽性なら羊水検査へ。

母体血胎児染色体検査(NIPT)の検査の流れ3Step

Step1.検査前に遺伝カウンセリング

施設によりますが、妊娠週数16週未満の人が対象。検査までに夫婦で遺伝カウンセリングを受けて、検査の概要や心構えについて話し合います。

Step2.いよいよ採血します

カウンセリング後に夫婦で話し合い、検査を受けことが決まったら、妊婦の腕から採血します。採血は14週くらいまでに行うことを推奨している施設が多いよう。

Step3. 約2週間後に結果が出ます

採血後、原則2週間で結果が判明。多少のバリエーションはあるものの、基本的に陽性か陰性かで出ます。判定保留という、陽性とも陰性とも違う結果が出ることも。

出生前診断はいつごろどんな検査を受ければいいの?

それぞれの検査は受けられる時期が決まっており、どれも妊娠初期から中期にかけて、と非常に早いのが注意点。非確定検査で陽性が出た場合は、確定検査を受けることになります。検査は基本的に、胎児に異常がないこと、健康を確認するためのもので、病気を探すためのものではないと知っておいて。

出生前診断のスケジュール

※施設によって実施状況は異なります。

出生前診断はどこの施設でも受けられる?

施設によって受けられる検査と受けられない検査があります。また、そこの産院で診察を受けていない場合は受けられない、あるいは紹介状が必要になることも多いでしょう。さらに予約段階で妊娠10週、あるいは12週を過ぎていることなど、施設によって条件があるので、妊娠週数についても必ず確認しておきましょう。

不妊治療は染色体異常に影響がある?

不妊治療自体は染色体異常に影響しません。それは染色体異常の確率が自然妊娠より高くはならないからです。全体的に先天性の疾患の比率が多少ふえるといわれますが、こちらもとくに気にする数値ではありません。ただ、不妊治療をしている人は高齢出産が多いため、結果的に検査を受ける人も多くはなっています。

高齢出産なら出生前診断を受けたほうがいい?

ダウン症候群の子が生まれる可能性は、25才で0.07%、35才で0.3%。確かに高齢になるほど、染色体異常の発生する頻度は高くなりますが、全体としてはけっして高い数字ではありません。高齢での妊娠・出産のリスクでいえば、染色体異常よりも、妊娠高血圧や妊娠糖尿病のほうが、はるかに高いといえるのではないでしょうか。

“胎児ドック”ってどんなもの?

精度の高い超音波で、詳しく胎児の状態を診るという点では「胎児超音波検査」と同じですが、妊婦さんの採血と組み合わせて、ダウン症候群(21トリソミー)の確率を出している検査を、多くの施設で“胎児ドック”と呼んでいるようです。クアトロとは違う母体血清マーカーを用いて、ダウン症のリスク算定を行うこともあります。

先輩ママに聞きました!

出生前診断を受けましたか?

実際に出生前診断を受けた人は18%。「検討はしたが受けなかった」と回答した人と合わせると、40%の人が検討していることがわかります。

出生前診断を受けた先輩ママの声

「リスクは低いほうがいいのでNIPTを受けたかったのですが、切迫流産で動けず時期を逃して羊水検査を受けました。検査自体は、痛みもなくあっさりしたもので、結果は陰性でした」(Dさん38歳・産後1年3ヶ月)

「夫が50代と高齢だったので、心配になり、クアトロ検査を受けました。結果は問題なし。結果に問題があってもなくても、夫婦で共有する姿勢が大事ですね」(Mさん34歳・産後4ヶ月) 

「胎児超音波検査を受診。通常2回受けるところを、1回目に異常がなかったこと、年齢的に確率が低いこともあり1回で終了しました。夫と子どもについてじっくり話し合えてよかった」(Mさん30歳・産後4ヶ月)

「超音波検査で胎児に首のむくみが見つかり、羊水検査へ。元気に生まれましたが、結果がどうあれ産みたいと思っていました。悩んでいるなら検査を受けたほうが心の準備ができていいのでは」(Mさん30歳・産後8ヶ月)

「受けたことでモヤモヤがスッキリできてよかったです。でも高額でビックリしました」(Rさん33歳・産後11ヶ月)

「2人とも特に体に不安があるわけではありませんが、授かる前から受けようと夫と話していました。現在2人目を妊娠中で、今回もすでに受けました。検査ですべてがわかるわけではありませんが、前もって心構えができるし夫と話し合うこともできます。自分たちの“人生”、育んでいく“家族”のことなので、知れることは知りたいと思っています」(Aさん28歳・産後1年10ヶ月)

「1人目のときは、医療従事者である義母のすすめで受けましたが、漠然とした違和感がありました。2人目妊娠中の今回は受けていません。結果によっては、事前に万全の医療準備ができるメリットがあると思いますが、私は不安ばかりが大きくなってしまいそうで……。もしも困難にぶつかったときには、家族一丸となって対応したいと思います」(Sさん31歳・産後2年1ヶ月)

イラスト/ミヤギユカリ(人物イメージ)、碇優子

出典 :First Pre-mo(ファーストプレモ)2017年秋冬号※情報は掲載時のものです

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