【医師監修】妊娠糖尿病の原因・症状・治療法と母体や胎児への影響や発症しやすい人は?

 専門家監修 公開日:2017/12/25
【医師監修】妊娠糖尿病の原因・症状・治療法と母体や胎児への影響や発症しやすい人は?
監修
山田美恵先生
賛育会病院 産婦人科部長

「妊娠糖尿病」と診断されるのは、妊婦のうち7~9%ほど。体重が増えすぎないように気をつけていても、妊娠中は誰でも発症する可能性がある病気です。自覚症状がないまま母体と胎児に合併症を引き起こす場合もあるため、しっかりと妊婦健診を受けて早期発見をすると同時に、食事や運動などで急激な体重増加を避けることで予防していきましょう。

妊娠糖尿病とはどんな病気なの?その定義とは?

日本産科婦人科学会では、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常を「妊娠糖尿病」と定義しています。
妊娠前から糖尿病と診断されている場合や、妊娠時に診断された明らかな糖尿病は糖尿病合併妊娠と呼ばれ、妊娠糖尿病には含めません。

妊娠糖尿病の原因とは?

糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンが作用せずに高血糖となり、それによってさまざまな合併症を引き起こす病気です。前述の通り、妊娠中にはじめて発見されると妊娠糖尿病と呼ばれます。
インスリンは、食事から栄養素を吸収しエネルギーとして使用するための代謝に大きな役割を果たしており、特に糖質の代謝には不可欠なホルモンです。妊娠の経過とともに血糖値を下げるインスリンの作用が悪くなるため、妊娠初期の検査で異常がなくても、妊娠中期にも検査を受ける必要があります。

妊娠糖尿病はどのような検査で診断されるの?

日本産科婦人科学会では、全妊婦を対象に妊娠初期と中期に妊娠糖尿病のスクリーニング検査をすることを推奨しています。妊娠初期と中期に血糖測定を行い、数値が高い場合にはぶどう糖負荷試験を実施して診断をします。病院によっては血糖測定の回数が異なり、はじめからぶどう糖負荷試験を行うところもあります。
また、妊婦健診時の尿検査で尿糖が頻回に出ている方にも、ぶどう糖負荷試験を行います。
2010年には診断基準となる値が見直され、従来よりも軽度の糖代謝異常も妊娠糖尿病と診断されるようになりました。妊娠糖尿病は自覚症状がないにもかかわらず、発症すると母体と胎児に合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見をして妊婦とおなかの赤ちゃんを管理していくことが大切なのです。

妊娠糖尿病になるとどのような症状が出る?

妊娠糖尿病には、自覚症状がほとんどありません。そのため妊婦健診などで突然医師から指摘され、戸惑う方も少なくありません。
妊娠糖尿病と診断されてもすぐに治療がはじまるわけではなく、多くの場合は医師から自宅での血糖測定を指示されます。基本は朝・昼・夜・眠前の1日4回、空腹時の血糖値を測って記録し、その結果からインスリンを導入する必要があるかどうかを医師が判断します。

妊娠糖尿病になる可能性が高い人

妊娠糖尿病を発症しやすいのは、以下のような条件に該当する人です。
●肥満
●血のつながりのある方に糖尿病の人がいる
●母体年齢が高い
●巨大児を出産したことがある
●妊娠中の急激な体重増加
……など。

妊娠糖尿病になったことで引き起こされる合併症は?母体だけでなく胎児にも影響はある?

妊娠糖尿病を発症すると、母体と胎児にさまざまな合併症を引き起こすことがあります。
【母体の合併症】妊娠高血圧、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症、腎症など
【胎児の合併症】流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、多血症、電解質異常、胎児死亡など

生まれたあとの赤ちゃんへの影響は?

妊娠糖尿病のお母さんのおなかの中で高血糖にさらされ続けている赤ちゃんは、自分の体の中で血糖値を下げようとして、インスリンをたくさん出している状態です。そのため、生まれて高血糖の状態ではなくなると、新生児低血糖になってしまう場合もあります。
また、将来的に同じような病気になりやすい傾向にあります。

妊娠糖尿病と診断されたときの治療方法は?インスリンを投与するの?

妊娠糖尿病と診断されると、運動療法と食事療法によって血糖コントロールを行います。運動は無理のない範囲で行うことが望ましいものの、妊娠中は運動によっておなかが張ることもあるため、食事療法がメインとなります。
食事療法では、必要な栄養素をきちんと採ったうえで、カロリーをおさえることが重要です。食事療法でも血糖コントロールができない場合には、インスリンの投与が必要となります。

妊娠糖尿病の診断基準

妊娠糖尿病の診断基準は、75g糖負荷試験(OGTT)において次の基準の1点以上を満たした場合です。
●空腹時血糖値 ≧92mg/dL
●1時間値 ≧180mg/dL
●2時間値 ≧153mg/dL

妊娠糖尿病になったら入院が必要なの?

 

妊娠糖尿病と診断されても、必ず入院が必要なわけではありません。運動療法と食事療法を行い、それでも血糖コントロールができない場合はインスリンを投与しますが、自分でうまくコントロールすることができれば自宅で治療を行います。インスリンでもうまく血糖コントロールできない場合や、医師が入院の必要があると判断した場合には管理入院をすることになります。

妊娠糖尿病と診断されたときの食事は?どれくらい制限すればいい?

妊娠糖尿病を発症した場合の標準的なダイエットは、正常な妊婦の必要エネルギー量のおよそ70%程度に制限します。この制限量は、妊婦と胎児がともに健全に妊娠が継続でき、食後の高血糖を起こさず、空腹時のケトン体産生を高めないように配慮するためのもので、過剰なエネルギー制限は避けなければなりません。
また、食後は血糖値が上がりやすくなるため、1日の摂取量が同じでも4~6分割食にすることで、急激な高血糖をおさえることができます。

妊娠糖尿病と診断されたらお産は帝王切開になってしまうの?

妊娠高血圧症候群と診断されても、必ずしも帝王切開になるとは限りません。医師が妊婦の状態を総合的に判断し、普通のお産ができるのか帝王切開にするかを検討することになります。
ただし、巨大児や肩甲難産が予測される場合などリスクを伴うことも多く、糖尿病を持つ妊婦は帝王切開率が通常の妊婦の約2~4倍と高くなっています。

妊娠糖尿病にならないための予防方法とは?

肥満、血のつながりのある方に糖尿病の人がいる、母体年齢が高い、巨大児を出産したことがあるなど、妊娠糖尿病を発症しやすいリスクがある場合、妊娠が判明した時点から運動と食事に気をつけることをおすすめします。
急激な体重増加を避け、月に1kg増加するくらいのペースを目安にするとよいでしょう。
とはいえ、妊娠糖尿病は遺伝的な素因が大きいため、万が一診断を受けても気を落とさず継続していくことが大切です。これまでやってきたことは無駄ではなく、「運動と食事に気を使ってきたからこそ、これくらいにおさえられた」と気持ちを切り替えましょう。
バランスのとれた食事や無理のない範囲での適度な運動、十分な睡眠をとることが、妊娠糖尿病だけでなく妊娠中の病気の予防につながります。

妊娠糖尿病は出産すると治る?産後も健診が必要?

妊娠中、特に妊娠後期はどんどん大きくなる胎盤が、インスリンの働きをおさえたり分解したりして、高血糖となる因子となっていました。出産を終え胎盤が出るとその影響を受けなくなるため、インスリンの必要量は急激に減り、インスリンの投与が必要なくなる場合がほとんどです。
しかし、そのまま糖尿病へと移行する場合も少なくないため、定期的な健診が必要です。健診を受けると同時に、産後も引き続き、食事や運動などの健康管理に気をつけていきましょう。

 
参考文献等:
日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/
日本糖尿病・妊娠学会 http://www.dm-net.co.jp/jsdp/

監修
山田美恵先生
賛育会病院 産婦人科部長
順天堂大学医学部卒業。同大学附属順天堂医院産婦人科をへて、2006年より現職。専門は周産期。妊婦さんたちの健やかなマタニティライフをサポートしている先生です。

あなたにおすすめ

ママとしての毎日を楽しく
注目コラム