【医師監修】妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の原因と症状、治療や予防法は?薬や入院は必要?

 専門家監修 公開日:2017/12/18
【医師監修】妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の原因と症状、治療や予防法は?薬や入院は必要?
監修
山田美恵先生
賛育会病院 産婦人科部長

妊娠が原因の高血圧である「妊娠高血圧症候群」。この病気は誰にでもなる可能性があり、発症するとお産が終わるまで治りません。重症化すると合併症を引き起こして命にかかわることもあるため、栄養バランスのとれた食事と急激な体重増加を避けることでしっかり予防していきましょう。

妊娠高血圧症候群とはどんな病気なの?その定義とは?

日本産科婦人科学会では、妊娠したことが原因で起こる高血圧で、妊娠20週以降、産後12週までに高血圧を発症した場合、または高血圧に蛋白尿を伴う場合を「妊娠高血圧症候群」と定義しています。さらに、妊娠32週未満で発症した場合は「早期型」と呼ばれ、重症化しやすいため注意が必要です。
妊娠前から高血圧と診断されている場合や、妊娠20週未満に発症した場合は高血圧合併妊娠と呼ばれ、妊娠に伴うものではなくもともと高血圧を持っていた方が妊娠したと考えられ、妊娠高血圧症候群とは区別されます。
以前は妊娠中期以降に高血圧、蛋白尿、むくみなどがあらわれる病気を妊娠中毒症と呼んでいましたが、高血圧が認められる場合に焦点をしぼり、妊娠中毒症という病名を廃止して2005年より日本産科婦人科学会が「妊娠高血圧症候群」という病名を採用しました。

妊娠高血圧症候群の診断基準

収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上、あるいはその両方の場合が診断の目安です。収縮期血圧が160mmHg以上、もしくは拡張期血圧が110mmHg以上になると重症と判断され、基本的に入院となります。
妊娠高血圧症候群は、まれに突発的に血圧が上がって発症することもありますが、兆候がある場合がほとんど。妊婦健診で行われる血圧測定と尿検査は、早期発見のための大切な検査です。
妊娠高血圧症候群という診断にいたらなくても、初めから血圧が高めの人や健診のたびに少しずつ上がってきている場合には、医師から自宅で朝晩血圧を測るよう指示が出ることもあります。

妊娠高血圧症候群になるのはなぜ?その原因とは

妊娠高血圧症候群は、妊婦の約20人に1人の割合で起こりますが、なぜ発症するのかのはっきりとした原因はわかっていません。

妊娠高血圧症候群を発症しやすいのはこんな人

妊娠高血圧症候群の原因はわかっていませんが、発症しやすいのは以下のような条件に該当する人です。

●母体年齢が高いまたは若年
35歳以上で発症率が高くなり、40歳以上でリスクが高まります。また、15歳以下でも危険度は高まります。

●初産(初産婦)
今回が初めてのお産の妊婦に多くみられます。

●双子などの多胎妊娠
多胎妊娠は母体への負担が大きく、妊娠高血圧症候群のリスクも高まります。

●肥満
BMIや体重が多いほどなりやすいといわれています。

●もともと血圧が高い
正常範囲内でももともと血圧が高めの人は、発症率が高まります。

●持病がある
甲状腺のトラブル、慢性腎炎などの腎臓病、糖尿病がある人は要注意。

●血のつながりのある方に高血圧の人がいる

●前回の妊娠で妊娠高血圧症候群になった

……など。

自覚症状は頭痛やめまい。軽症だと自覚症状がないことも

自覚症状としては頭痛やめまいがあげられますが、重症化していても気づかず妊婦健診で発見されるといったことも少なくありません。不安要素がある人は、自宅で血圧を測ることをおすすめします。また、頭痛やめまいの症状が出るときは同時に血圧も高くなるため、そのような場合には医師に相談するとよいでしょう。

妊娠高血圧症候群と診断されたときの治療法は?食事療法が基本?薬や入院は必要?

一度、妊娠高血圧症候群を発症すると、出産するまで治りません。血圧が上がらないように日常生活を管理し、できるだけ長く赤ちゃんをおなかで育てられるようにします。軽症の場合には安静が第一に、1日の塩分摂取量の目安を7~8gとしてオーバーしている場合には減塩&低カロリーの食事を心がけ、経過を観察していきます。重症の場合には、母体や胎児に合併症を引き起こす可能性があるため、原則として入院となり薬を投与して管理します。

重症化したことで引き起こされる合併症とは?

妊娠高血圧症候群の軽症、重症にかかわらず起こる可能性のあるけいれん発作(子癇)のほか、脳出血やHELLP症候群、常位胎盤早期剥離などを引き起こすこともあります。

妊娠高血圧症候群の人がやっていいこと、悪いこと

妊娠高血圧症候群と診断されてしまったら、安静と食事療法が基本。では、日常生活ではどこまでOKで、どんなことはNGなのでしょうか。

△ 入浴
入浴は血圧が変化しやすいので注意が必要です。リラックスする程度ならOKですが、長時間入るのはやめましょう。

△ 仕事
軽症なら医師との相談のもと、就業時間を短縮するなど無理をしないよう工夫をしましょう。重症の場合は入院になることが多く、仕事はお休みです。

× 外食
外食は塩分が高く、高カロリーになりがちなのでやめましょう。同様にお惣菜も控えたいところです。自炊で栄養バランスのとれた食事をしましょう。

× 旅行
外出先で何が起こるかわからないので遠出はNG。重症の場合、入院中の散歩も制限されます。

妊娠高血圧症候群と診断されたらお産は帝王切開になってしまうの?

妊娠高血圧症候群と診断され、たとえ重症であっても必ずしも帝王切開になるとは限りません。医師が妊婦の状態を総合的に判断して、普通のお産ができるのか帝王切開をするかを検討することになります。

妊娠高血圧症候群は出産すると治る? 産後の体に影響は?

妊娠高血圧症候群は妊娠にまつわる病気のため、出産をすれば産後12週までには治ります。産後12週を過ぎても血圧が戻らない場合には、高血圧を発症していないか、他の病気がないかどうか内科を受診して詳しく調べましょう。
また、妊娠高血圧症候群を発症した人は、将来、高血圧や生活習慣病になりやすいことがわかっています。産後も引き続き、食事などの健康管理に気をつけていきましょう。

妊娠高血圧症候群にならないための予防法は?

妊娠高血圧症候群は原因がはっきりしていないことから、予防法も確立されていないのが現状です。しかし、肥満や高血圧がリスクを高めるとわかっているため、食べすぎによる急激な体重増加や塩分のとりすぎを避けることが予防につながります。

妊娠高血圧症候群になった先輩ママの体験談

ある日、上の血圧が150を超えた!
高血圧の傾向があり、先生からは「毎日計測して、上が150を超えたらすぐに連絡しなさい」と言われていました。ある日そのラインを超え、そのまま即入院になりました。

双子の妊娠で妊娠高血圧症候群に
おなかのベビーは双子。妊娠が進むにつれ、血圧がぐんぐん高くなっていきました。そして、8ヶ月のとき入院&絶対安静に。なんとか臨月までもたせて、帝王切開で出産しました。

ストレスをためすぎたかも……
仕事が忙しくて、いつも睡眠不足。無理を重ねていたら妊娠高血圧症候群と診断されてしまいました。赤ちゃんに悪かったと反省しました。

妊娠高血圧症候群は、重症化すると合併症を引き起こす怖い病気です。普段からストレスを減らして、適度な運動と栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。自覚症状があまりないことから、しっかりと妊婦健診を受けることも大切です。また、経産婦よりも初産婦の方が発症する確率は高いものの、2回目以降の妊娠でも発症することはあります。特に子育てをしていると、子どもを優先にしてママは無理をしてしまいがちなので、なんとなく頭が痛い、めまいがするなどと感じたときには、早めに病院へ相談をすることをおすすめします。

参考文献等:
日本産科婦人科学会 http://www.jsog.or.jp/
日本妊娠高血圧学会 http://www.jsshp.jp/

監修
山田美恵先生
賛育会病院 産婦人科部長
順天堂大学医学部卒業。同大学附属順天堂医院産婦人科をへて、2006年より現職。専門は周産期。妊婦さんたちの健やかなマタニティライフをサポートしている先生です。

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