赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の原因と症状は?ステロイドはどう使うの?【症例写真つきで専門医が解説】

 専門家監修 2017/10/12更新
赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の原因と症状は?ステロイドはどう使うの?【症例写真つきで専門医が解説】

加藤さき子先生
高野医科クリニック副院長
1984年日本医科大学卒業。同大学日本医科大学付属病院皮膚科助手、複数のクリニック勤務などを経て、2003年から現職。日本皮膚科学会認定専門医。葛飾区にあるクリニックは、アトピー性皮膚炎をはじめとした肌トラブルの診療やスキンケアの指導が評判で、幅広い年齢層の患者でにぎわっています。

「アトピー性皮膚炎」というと、アトピー性皮膚炎はやっかいな病気だというイメージを持つママも多いようです。でもアトピー性皮膚炎は、適切な治療やケアを行えば、症状を改善することができる病気です。むやみに怖れるのではなく、まずはアトピー性皮膚炎についての正しい知識を持ち、対応や予防対策を知っておくことが大切です。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎とは?

痒みの強い湿疹を繰り返します

アトピー性皮膚炎は、よくなったり悪化したりを繰り返す、痒みの強い慢性の湿疹のことです。
アトピー性皮膚炎の症状は乳児湿疹とよく似ていますが、
①悪くなったりよくなったりを繰り返す
②痒みが強い
③アレルギー体質を持っていることが多い
④湿疹のできる部位に特徴がある
という4点が乳児湿疹とは違っています。「③アレルギー体質を持っていることが多い」かどうかは、赤ちゃんの場合、両親や兄・姉にアトピー性皮膚炎、花粉症、喘息などがあるかどうを参考にします。

赤ちゃんは、いつからアトピー性皮膚炎になるの?

発症の時期はさまざまです

アトピー性皮膚炎の症状が出る時期には、個人差があります。早ければ生後2ヶ月ごろから見られることもありますが、幼児期や小学校入学後に発症することもあれば、思春期や大人になってから発症する例も、とまちまちです。
赤ちゃんの場合は乳児湿疹と症状が似ていて区別が難しいため、湿疹ができて2ヶ月以上繰り返すかなど、経過を見ながら慎重に判断していきます。月齢が低いうちは、「湿疹=アトピー性皮膚炎」と決めつけず、気になるときはまず、受診することが大切です。
アトピー性皮膚炎と診断されても、適切な治療とケアを行なうことで、早ければ2歳過ぎ、遅くとも3歳過ぎには症状が落ち着いてくる子が多くなります。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の原因はなに? 母乳や遺伝は関係ある?

赤ちゃんの場合、アレルギーが関係しているアトピー性皮膚炎は少なくありません。でも、アトピー性皮膚炎=アレルギーと思うのは間違いです。アトピー性皮膚炎とアレルギーの関係についても、知っておきましょう。

アトピー性皮膚炎=アレルギー、ではありません

私たちは、細菌やウイルスなどの異物(抗原)が体内に入ってきたときに、排除しようとする働き(免疫)が備わっています。体内に異物が侵入すると、それに立ち向かうため体内に「抗体」ができ、2度目にその異物が入ってきたときに、それを撃退しようとします。
このシステムが特定の異物に対して過剰に作用し、誤作動を起こしてさまざまな症状を引き起こすのがアレルギーです。アトピー性皮膚炎とアレルギーの関係には経皮感作が大きく関係しています。経皮感作とは、抗原を皮膚で認識して、全身性のアレルギーを発症することです。2010年に加水分解小麦を含む石鹸を使用していた人の中に小麦アレルギーが多く発症して社会問題となりました。今まで小麦食品を問題なく食べていた人が、小麦成分が皮膚から入ることにより、それを抗原と認識してアレルギー反応が起きたのです。口から入ってもアレルギーは発症せず、皮膚から入ると発症しやすいのです。アトピー性皮膚炎の場合、皮膚が乾燥し、バリア機能の低下がアレルギーを発症すると考えられているのです。アレルギーを発症した場合、抗原に触れることが皮膚の発疹などの症状を悪化させるので、避けなくてはなりません。アレルギーの発症を予防するためにも保湿をしっかりすることがとても重要なのです。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、バリア機能の未熟さが原因

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の場合、一番の原因は、皮膚のバリア機能の働きが弱いということです。
人間の皮膚の表面は角層という細胞の層でおおわれていて、外からほこりや汚れ、ウイルスなどが体に侵入したり、体内から水分が出てしまったりするのを防いでいます。この働きを皮膚の「バリア機能」といいますが、赤ちゃんは皮膚が薄いうえに、このバリア機能が未熟で弱いのです。
そのため、夏に汗をかく、冬に空気が乾燥する、洋服がこすれる、体をゴシゴシ洗うなど、外からの刺激を少しでも受けると炎症が起きやすい状態です。炎症が起こると痒みが出てくるため、そこをかいてしまい、傷ついた皮膚から空中のアレルゲン、ウイルスや細菌、ホコリなど、さまざまなものが体内に侵入して、その結果アトピー性皮膚炎を引き起こすのです。

母乳が原因で、アトピー性皮膚炎になる?

ママがアトピー性皮膚炎で、その母乳を飲ませていたとしても、赤ちゃんがアトピー性皮膚炎になることはありません。ママがアレルギー体質の場合は、母乳を飲ませても飲ませなくても、すでに赤ちゃんに遺伝している可能性が高いでしょう。
また、赤ちゃんが検査によって食物アレルギーとわかり、医師の指導で食品の除去をしている場合は、母乳を与えているママにも食事制限が加えられることがあります。ただ、なかには自分の判断で食品制限をしているママもいるようですが、それでアトピー性皮膚炎が防げたり、治ったりするわけではありません。赤ちゃんにアレルギーやアトピー性皮膚炎の心配があるときは、必ず医師に相談しましょう。

親がアトピー性皮膚炎だと、赤ちゃんにも遺伝する?

両親のどちらか、または2人ともアトピー性皮膚炎であっても、必ずしも赤ちゃんがアトピー性皮膚炎になるわけではありません。でも、両親のどちらかでもアレルギー体質だと、赤ちゃんにもその体質が遺伝する確率は高いといえるでしょう。アレルギー体質の赤ちゃんは、今はアトピー性皮膚炎の症状が出ていなくても、後から症状が出てくる可能性もあります。むやみに心配する必要はありませんが、予防のために今からていねいなスキンケアを心がけるといいですね。

アトピー性皮膚炎の症状

痒みの強い湿疹が上から下へと広がります

アトピー性皮膚炎になると、赤くジクジクしていて、痒みの強い湿疹ができます。赤ちゃにアトピー性皮膚炎の湿疹が出るのは、まず顔や頭からです。痒いために、赤ちゃんは抱っこしたときのお母さんの洋服や、寝かせたときシーツに顔をこすりつけることもあります。また、耳のつけ根が切れる「耳切れ」になる子も多いでしょう。これは、アトピー性皮膚炎の特徴的な症状です。
顔や頭に出ていた湿疹は、やがて手足の関節の内側、おなか、足首など、徐々に体の下に向かって左右対称に広がっていきます。痒みも変わらず強いので、夜は熟睡できずに何度も起きてしまったり、無意識に湿疹をかきこわして膿みが出たりするなど、ひどくしてしまうこともあります。そして、治療をしないと、一時的によくなったかと思うとまたひどくなる、ということを慢性的に繰り返します。

アトピー性皮膚炎の症状を写真で確認!

ほお、あご、おでこにできたアトピー性皮膚炎

最初は、顔や頭から赤い湿疹が出始めます。この赤ちゃんは、かきむしって真っ赤になっています。

かいて真っ赤になった胸の湿疹

痒みが強いためかいてしまうと、皮膚がはがれてバリア機能がさらに悪化するという悪循環に。

アトピー性皮膚炎の特徴「耳切れ」

アトピー性皮膚炎になると、耳のつけ根が切れたりただれたりします。

関節の内側やこすれやすい部位にも湿疹が

汗や汚れがたまりやすくこすれやすいので、ひじの内側やひざの裏側もアトピー性皮膚炎ができやすい部位です。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の治療方法と薬の使い方

生後2~3ヶ月以降に顔に湿疹が出始めて、ケアをしているのになかなか治らないというときは、アトピー性皮膚炎の疑いがあるので診てもらいましょう。アトピー性皮膚炎が疑われたら、医師はこれまでの湿疹の出方やできている部位を見るほか、家族にアレルギー性の病気の人がいないかなどを聞き、必要があれば血液検査などもして総合的に診断します。

アトピー性皮膚炎は塗り薬で治療

アトピー性皮膚炎と診断がついたら、皮膚の状態を整えてバリア機能を回復させ、これ以上有害な物質が皮膚から侵入しないようにします。そのため、皮膚の状態に合わせた塗り薬を使った局所療法を行います。症状が軽い場合は、非ステロイド剤を使ったり、ワセリンなどの保湿剤で肌の乾燥を和らげる治療をしたりします。でも、たいていは痒みが強いことが多いので、痒みを抑える働きのあるステロイドの軟膏を使います。
そのほか、痒みが強い場合は、抗ヒスタミンや抗アレルギーの飲み薬が処方されることもあります。その場合は、飲み薬とステロイドの塗り薬を併用して治療します。

アトピー性皮膚炎の治療へのステロイド剤使用と影響について

ステロイド剤は早く症状を抑えるために不可欠です

アトピー性皮膚炎の湿疹がひどい場合は、ステロイドの塗り薬を使ってとにかく症状を早く抑えることが大切です。皮膚の症状が落ち着いてきたら、ステロイド剤をやめてスキンケアに切り替えて皮膚のバリア機能を回復させていく、という治療が有効です。
ステロイド剤は、副腎で作られる「副腎皮質ホルモン」を人工的に合成したもので、炎症を抑える、血圧を上げる、骨や筋肉の形成を促す、などの作用があります。ステロイドの塗り薬は、アトピー性皮皮膚炎のような湿疹の炎症や痒みや赤みを抑えるのに有効ですが、副作用などの影響をこわがるママも多いようです。
たしかに、ステロイドの塗り薬は、皮膚が薄くなる、カンジダなどの皮膚感染症にかかりやすくなる、などの副作用が知られています。でもそれは、効きめの強いものを大量に長期間使い続けた場合だけです。
赤ちゃんは皮膚が薄くて薬の吸収がいいため、効きめの穏やかなものを短期間(1~2週間)しか使わないのが基本です。ステロイド剤の安全性は、科学的にも証明されているので、正しく使えば副作用の心配はありません。ママの判断でステロイド剤を塗る量を少なくしたり、早めにやめてしまったりすると、何度もぶり返す恐れがあります。必ず医師の指示に従って使ってください。

アトピー性皮膚炎に使われるステロイド剤

ステロイドの塗り薬は、効きめによって「非常に弱い」「弱い」「強い」「非常に強い」「最も強い」の5段階に分けられます。赤ちゃんに使われるのは、おもに「非常に弱い」「弱い」に分類されるもの。症状がひどいときなどまれに、「強い」の段階のものがごく短期間だけ使われることもあります。

非常に弱い:プレドニゾロン軟膏など

弱い:ロコイド軟膏、アルメタ軟膏、キンダベート軟膏、レダコート軟膏など

強い:リンデロンV軟膏、ベトネベート軟膏、フルコート軟膏など


ステロイド剤の使い方

・1回の量は、大人の人さし指の第一関節までしぼり出したくらいです。

・1回量を、大人の手のひら2枚分の範囲に塗ります。低月齢の赤ちゃんだと、胸~おなか全体くらいが塗れます。

・ステロイドは、すり込まずに表皮に薄くのばすように塗ります。

アトピー性皮膚炎の治療前と後

4ヶ月のときに、アトピー性皮膚炎と診断された子。ひどいときは、かきむしった湿疹から体液が出てぐちゃぐちゃになったほど。飲み薬・塗り薬に治療とスキンケアを続けた結果、9ヶ月になるとかなりきれいになってきました。

湿疹が一番ひどかったとき

よくなったころ


赤ちゃんがアトピー性皮膚炎と診断されたら、何に気をつけたらいい?

アトピー性皮膚炎は、ステロイド剤で治療するとともに、普段の生活では「皮膚への刺激を避ける」&「保湿する」がポイントです。この2つを守って、皮膚のバリア機能を回復させていきます。

刺激になることは避けましょう

アトピー性皮膚炎の皮膚にとって、一番の大敵が刺激です。日常生活では、外から皮膚へ刺激となることは、できる限り避けるよう心がけましょう。

皮膚は汚れたままにしておかない

汗やアカなどの汚れは、アトピー性皮膚炎の皮膚には大きな刺激。汚れたら、できるだけ早くぬれタオルでふくかシャワーをするなどして、常に清潔を保つようにします。おむつも、汚れたらできるだけ早く替えましょう。
授乳や離乳食の後は、口の周りについた母乳やミルク、食べ物をきれいにしてあげます。ぬれガーゼを使う場合は、ゆるくしぼって洗い流すようにし、乾いたタオルで水分をそっとふきとります。

環境も清潔を心がけて

ダニやハウスダスト、カビは、アトピー性皮膚炎を悪化させると言われています。室内はカビ予防のため風通しをよくし、掃除をこまめにしてホコリをためないようにしておきましょう。

衣類は肌に優しいものを

直接肌につける衣類の接触刺激も、湿疹を悪化させる一因になります。衣類は、綿100%のものを選び、タグはとってしまい、縫い目がゴワゴワしたものは避けます。また、洗濯のとき、肌着などの衣類に洗剤が残っていると、皮膚への刺激になってしまいます。ゆすぎは普通より1~2回多くするなど、洗剤が繊維に残らないようにしましょう。

清潔にした皮膚はしっかり保湿を

アトピー性皮膚炎になったら、ステロイド剤で症状を抑えたり皮膚への刺激を避けて清潔に保つことに加え、保湿が欠かせません。
保湿剤は、赤ちゃん用のものなら何でもいいのですが、ローションタイプやクリームタイプの商品の一部には、アルコールが含まれていて、刺激になってしまうことがあります。おすすめは、白色ワセリンです。塗るとややベタつきますが、皮膚に定着して保湿効果が高く、添加物などは一切含まれていません。どんな部位でもつけられ、皮膚に油の膜を作って保護できます。

保湿剤の使い方

・アトピー性皮膚炎の場合は、とにかくこまめな保湿が必要です。お風呂上りやおむつ替えなどの後、朝起きたときや外出から帰ったあと、食後など、肌をきれいにしてからしっかり保湿剤を塗りましょう。

・入浴後は、肌表面に水分が残っているうちに保湿剤をつけて水分の蒸発を防ぎます。量は、少し多いと思うくらいにつけると効果的です。

・症状が改善しても、コンディションの良い状態を保つために保湿剤を使ったスキンケアはずっと続けましょう。

アトピー性皮膚炎には、石鹸はどんなものを使ったほうがいい?

アトピー性皮膚炎には、低刺激性の石鹸を

アトピー性皮膚炎だからといって、必ずしも「アトピー用」と書かれた高価なものを使わなくてもかまいません。特に赤ちゃん用でなくてもいいのですが、無香料で無添加の低刺激なものを選びましょう。迷ったときは、皮膚科でおすすめの石鹸を教えてもらうといいですね。
石鹸で体を洗うときは、ママの手に石けんをよく泡立て、くびれ部分も忘れずに優しく洗ってあげましょう。石けん分が残らないようによく流し、ふきとる時はタオルで軽く抑えるようにして水分をとります。

アトピー性皮膚炎の赤ちゃんに、日焼け止めは使っていいの?どんなものを使えばいい?

薬→日焼け止め、の順で塗ります

アトピー性皮膚炎の赤ちゃんは、紫外線も刺激になるため、外出時には日焼け止めを塗ってあげましょう。ステロイドなどの軟膏を使っている場合は、まず先に薬を塗り、上から日焼け止めを薄く肌に伸ばします。日焼け止めは低刺激のものを選び、お風呂では石鹸でしっかり洗い落とすことを忘れずに。かぶれることがあるので、日焼け止めの成分を肌に残したままにしないことが大切です。

アトピー性皮膚炎の予防法はある? 保湿剤を使うといいってほんと?

本当です。アトピー性皮膚炎は外からの刺激を受けて発症します。ていねいなスキンケアを習慣にして肌を良い状態に保ち、アトピー性皮膚炎を防ぎましょう。

アトピー性皮膚炎の予防には「保湿」が第一

赤ちゃんは、肌トラブルがなくてももともと皮膚が薄く、バリア機能が弱い状態です。そのうえ、生後3ヶ月過ぎくらいから皮脂の分泌量が減ってきて、皮膚が乾燥しがち。少しの刺激でもすぐに炎症を起こし、傷ついた皮膚から有害な物質が侵入して、アトピー性皮膚炎を発症しやすくなります。発症を予防するには、皮膚を保護してよい状態を保ち、有害物質が皮膚から侵入しないようにすること。そのためには、保湿が何より大切です。

保湿は早い時期からこまめにしましょう

アトピー性皮膚炎は、早ければ生後2~3ヶ月から発症するので、予防のためには生まれてすぐから保湿をすることが理想です。保湿剤は、保湿効果の高い白色ワセリンがおすすめですが、肌トラブルがなければどんなものでもかまいません。1日何回も、こまめにつけることが大切です。入浴やおむつ替えのあとや、朝起きたとき、外出から帰ってきてから、授乳や離乳食後など、肌をきれいにしてからたっぷり保湿剤を塗りましょう。

取材・文/村田弥生

写真協力/育児雑誌『Baby-mo』の全国読者のみなさん

一部写真出典/『はじめてのママ&パパの病気とホームケア』(主婦の友社刊)

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