2回目の育休&保活、退職……。働くママの「2人目の壁」問題。出産をためらう一番の原因は?【後編】

コラム
公開日:2017/10/03
更新日:2018/12/20
2回目の育休&保活、退職……。働くママの「2人目の壁」問題。出産をためらう一番の原因は?【後編】

平均出生数が「2」を下回ったころから注目され始めた『2人目の壁』。経済的な理由や現代の育児事情などから、2人目の子どもの出産をためらう夫婦が増えています。前編でお送りした「2人目の壁ができてしまう原因」に続き、公益財団法人1 more Baby 応援団 専務理事の秋山開さんに、働くママの2人目の壁についてお伺いしました。その原因は「働く環境」に大きく関係しているようです。

職場復帰への不安、2人目の産休を取りづらいなど、企業風土が働くママには影響

1 more Baby応援団が毎年行っている「夫婦の出産意識調査」によると、2人目の壁を感じてしまう理由として、必ず1位にあがるのが経済的なこと。収入が上がる見込みのない中、2人目の出産に踏み切れないケースは多く、また日本の将来を悲観的にとらえていたり、自分たち夫婦の老後について漠然とした不安を抱いている場合なども、2人目出産にブレーキをかけています。

(「1 more Baby 応援団 夫婦の出産意識調査2017」より)

※子育て世代の2958名に調査。「2人目の壁が存在すると思う」と答えた(全体の74.5%)人に限定し、2人目の壁を感じる理由を調査。

アンケートを詳しく見てみると、1位の「経済的な理由」に次いで、フルタイムママ、パートタイムママともに2位になったのが「仕事上の理由」です。とくにフルタイムママでは57.4%もの人が職場復帰や産休・育休をとることに対して、何らかの不安を抱いています。

「経済的な問題はもちろんですが、働いているママの場合は、職場復帰への不安や、2回目の産休をとることに対して、いろいろな状況を予想、想像しながら2人目を考えていると思います。2人目出産をためらうような企業風土も問題ですが、それと同時に注目したいのが、パパ側の意識です」

(「1 more Baby 応援団 夫婦の出産意識調査2017」より)

「産休や育休を取得するにあたって気になることを尋ねたアンケートでは、ママ側は上司の目が気になる、同僚の目が気になる、という回答が上位を占めますが、パパ側の1位は、『特に気になることはない』なんですね。しかし男性の育休取得率は、現在3.16%にしか過ぎません。ほとんどのパパが育休を取っていないのにもかかわらず、『気になることはない』と答えているのを見ると、やはりママほどは育休を取得することに対して現実味がなく、真剣に考えていないのではと思ってしまいます」

育休のほか、在宅勤務についても夫の意識は低い?

2人目の育休を取得することに対する意識のほか、現在政府が掲げている「働き方改革」で推進されているテレワーク(在宅勤務)についても、ママとパパ側での意識、関心の差があることがわかりました。

(「1 more Baby 応援団 夫婦の出産意識調査2017」より)

「テレワークを行うときに重要だと思うことに関しては、ママ側は上司や同僚の理解、保育園に子どもを預けてテレワークを行えるかどうかなどが上位にあがるのですが、パパ側はこれもまた『あてはまるものがない』、気にならないという意見が上位なのです。経済的な問題はパパも考えるけれど、保活問題をクリアし、やっとのことで保育園に預け、病気になったときには仕事を休まなければならない状況や、在宅勤務をしながら子育てをするなどのイメージがあまりなく、意識がかなり低いことがわかります」

パートタイムママには、仕事をやめることによる経済的な問題も

2人目の育休を取得しづらい空気がある社内の雰囲気も、2人目の壁の要因ですが、とくにパートタイムママが直面しているのは、仕事を休む、やめることによる経済的な問題です。

「正社員のママが出産を機に退職するパターンは減ってきましたけど、退職した場合、女性が復職するときには正社員の道は非常に厳しいのが実情です。それ以前に、パートタイムママの場合は、経済的な問題も大きく絡んでいて、2人目の壁を感じる理由を尋ねたアンケートの1位にある『経済的な理由』をあげたのは、正社員のママが77.6%なのに対し、パートタイムママは88.8%もいるんです。この10ポイントの差はすごく大きいと感じています。さらに、『仕事との両立がなぜ困難だと感じているか』というアンケートでは、パートタイムママの35.5%が「妊娠したら退職しなければならないような企業の風土がある」と答えているんです。

そもそも経済的なことが理由で2人目の壁を感じている人がたくさんいる中で、さらに妊娠したら職場をやめなければならない空気がある。目の前の生活が苦しいのに、妊娠して仕事をやめたら、さらに収入が減ってしまう。この問題はどうにかしないといけませんよね。

日本の企業では、子育て中のママが「特別視」されてしまっている

秋山さんの著書『18時に帰る』では、30年以上かけて働き方改革を行ってきたオランダの歩みと、現在の子育て世代の仕事をふくめた日常が紹介されています。フルタイムワーカーとパートタイムワーカーの待遇格差を禁止する法律や、労働者側から時間あたりの賃金を維持したまま、労働時間の短縮や延長を要請できる権利を定めた法律が施行されているオランダの現状は、日本の働くママにとっては理想的な一面もあります。

「オランダは同一労働同一賃金で、フルタイムとパートタイムという分け方は、労働時間によって決められます。ちなみにフルタイムは週36~40時間勤務です。労働時間によって給料も決まるのですが、上司と部下が信頼関係のもとに十分話し合い『今はこういう時期(子育て、介護など)だから、こういう働き方をしよう』と個別に柔軟に選べます。フルタイムの場合、週5日出勤でなくても、週4日出勤し、1日10時間働くのもOKです。テレワークや時短勤務を選択している人、出勤は週に1日という人のすべてが、同じ権利を持っていて、子育て世代に限らず全ての労働者がそれをどう使うのかを選べ、実際に活用しているのです。ですから会社にいなくても『何であの人はいないの?』とは誰も思わないし、迷惑だとも感じないのです。

日本では、子どもが熱を出したので早退する、休むなど、働くママはとにかく職場で気を使う場面が多いのが現実です。これは大きな問題だと思っていて、日本では子育て、介護中の人が、ある意味特別視されてしまっています。企業としては、そういう人たちをケア・サポートしなくてはいけないし、企業イメージの観点などからケア・サポートするための制度について、世の中に対し積極的に発信しています。ただ、育休などの制度があっても、実際の職場の同僚や上司から、「子どもが……」と、早退したり休んだり、産休・育休を取ることを歓迎されているかといえば、そうではない場合が多いんです。

日本はこれまで、良い意味でも悪い意味でも平等性を重視してきて、会社の就業規則が第一で、そこから外れることは認めません、というスタイルでやってきました。これは、女性は専業主婦で家庭を守り、男性が仕事に出る家庭が主流だった時代、まだ核家族が少なく、子育てもご近所さんなどの周囲がサポートしてくれた時代、年功序列の時代であればマッチしていたけれど、今のように介護中の人や、産後も働きたいと思う、働かなければならない女性など、様々な制約をもった労働者がたくさんいる社会では、一律の就業規則では抱え込めません。これからは、多様な働きかたを受け入れられる制度を設け、それを誰もが活用できるものとし、そして風土を作っていくのが大切なのです」

子育て、介護。ライフステージに応じた勤務形態を不利益なく選べる社会づくりを

さまざまな要因が絡まってできあがった2人目の壁。その大きな要因である経済面に大きく関わるのが仕事です。出産後も働くママが増えている今、秋山さんが思う「2人目の壁を越えられる社会」とはどんなものでしょうか。

「2人目の壁の問題は、あまり長期的に見てはいけないと思いますが、ある程度の期間を見つつ、社会全体を変えていかなくてはいけないと思っています。社会全体としては、世代に関係なく、その人のライフステージに応じた働き方を選択できるような制度が必要だと思っています。新卒で就職したとき、妊娠、出産、子育てをしているとき、親の介護が始まったときなど、そのときによって柔軟に働く場所や時間を変えられる制度は、絶対に必要です。そのときにもうひとつ欠かせないのが、同一労働同一条件です。働く場所や時間を変えたことで不利益をこうむらないこと。経済的な不利益や福利厚生面での不利益があると、そこがブレーキになって、自由な選択ができなくなります。多様な働き方を同一条件でサポートする制度ができること、その制度を誰もがいつでも行使できることによって、子育て世代が特別視されない環境ができてくると思います。

2010年、初めて夫婦の出生子ども数が2を下回り、1.96になりました(国立社会保障・人口問題研究所 夫婦の完結出生児数調査結果に基づく)。一昨年の人口動態調査では、第2子の出産数がかなり減ってきていることもわかりました。そもそも、未婚・晩婚化などで子どもを産む人自体が減っているなかで、さらに第2子の出産数が大きく減り、子ども1人家族の割合が増えてきていることから、これはかなり深刻な問題だと認識され、1 more Baby応援団の活動を多くのメディアなどで取り上げていただくようになりました。ただ、子どもを産む、産まない選択をするのは個人の権利であって、いつ結婚するのか、子どもを産むのかも個人の判断によるものです。私たちが問題として捉えているのは、『子どもを2人以上欲しいのに、それを実現できない人たちがいる』ということ。それが実現できる社会をつくっていくことが少子化問題という大きな課題への取り組みだと思っています」

「2人目の壁」問題 前編の記事はこちらよりチェック

書籍についての詳しい内容はこちら

1 more Baby 応援団 http://www.1morebaby.jp/

取材・文/長澤幸代

お話/秋山 開さん 1973年生まれ。外資系企業をへて、タマホーム株式会社が立ち上げた1 more Baby応援団へ参加。2015年に財団法人化し、専務理事に。二男の父親。「二人目の壁」を乗り越えるための啓蒙活動を推進。執筆、セミナー等を積極的に行っている。著書に『18時に帰る』、共著に『なぜあの家族は二人目の壁を乗り越えられたのか?』(ともにプレジデント社)がある。

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