2人目出産をためらう理由 多くの家族がぶつかっている「2人目の壁」問題【前編】

コラム
公開日:2017/10/02
更新日:2018/12/20
2人目出産をためらう理由 多くの家族がぶつかっている「2人目の壁」問題【前編】

「経済的にやっていけるか心配」「こんなに大変な子育てを、もう1回できるか自信がない」「また育休をとって大丈夫なのだろうか……」。2人目を考えたとき、こんなことが頭に浮かんだママやパパは少なくないはずです。今、さまざまな理由から第2子以降の出産をためらう「2人目の壁」にぶつかる家族が増えています。なぜ2人目の壁を感じてしまうのか、子育て世代のリアルな状況を、公益財団法人「1 more Baby応援団」専務理事の秋山開さんにお聞きしました。

経済的な理由がトップの常連だが、子ども1人と2人以上の世帯収入の差はほとんどない

「そろそろ2人目の子どもがほしいけれど、どうしても踏み出せない」。2人目出産を躊躇する夫婦を応援している「1 more Baby 応援団」。理想の数だけ子どもを産み育てられる社会を実現するため、さまざまなシンポジウムやアンケート調査などに基づく情報提供を積極的に行っています。1 more Baby 応援団のホームページに掲載されている数々のアンケート調査からは、「2人目の壁」にぶつかる家族の現実が浮かび上がり、この問題がひと筋縄ではいかないものだと考えさせられます。

「1 more Baby応援団では、過去5年間にわたって1年ごとに『夫婦の出産意識調査』というアンケートを行ってきましたが、2人目の壁を感じる理由として常にトップにあがるのが、経済的なことです。なかでも『今後、収入が上がる見込みもなく、現在の収入でもう一人子どもを育てられるか不安』という声は多く、経済的な不安を抱えながら1人目の子育てをしている現状がうかがえます。

ただ別のアンケートで、子どもが1人・子どもが2人以上いるパパやママ1032人を対象に所得の調査をしたところ、子どもが1人の世帯と2人以上の世帯で、実は家庭の所得はさほど変わらず、むしろ子ども1人世帯のほうが若干多いという結果が出ました。年収の多い・少ないは子どもの人数とは関係ないことがわかったと同時に、子ども1人の家族は、日本の将来や老後など、自分たちだけの力では解決しがたい社会情勢に不安を抱えていることが多いのもわかり、このような漠然とした不安や心配が、2人目の壁を感じている大きな原因の一つだと考えられます」

(「1 more Baby 応援団 夫婦の出産意識調査2017」より)

※子育て世代の2958名に調査。「2人目の壁が存在すると思う」と答えた(全体の74.5%)人に限定し、2人目の壁を感じる理由を調査。経済的な理由を筆頭に、第1子の子育てで精一杯、育児ストレスなど精神的な理由も上位にあがっています。

働くママ・専業主婦ママの間で、2人目の壁の理由に差が

上記にある、2人目の壁を感じる理由を問うアンケートを詳しく見ていくと、働いているママと、専業主婦ママでは、1位の経済的な理由以下の内容が、少しずつ異なってくることがわかります。

「経済的な理由は働くママも専業主婦ママも変わりませんが、1日中こどもと一緒に過ごす専業主婦ママの場合は、1人目の子育てが大変だからと2人目を躊躇することもあります。いわゆる『ワンオペ育児』による精神的なストレスも、大きく影響していると考えられます。一方で働くママは、仕事上の理由が上位にあがります。1人目のときは産休を取りやすかったけれど、2人目は職場の空気的にとりづらいと感じている人も多くいます。そうして2人目出産をためらっているうちに、今度は年齢的な壁が生じてくるという悪循環ができあがっているのもアンケート結果から見えてきます」

ママに多くの負担がかかる、家事・育児によるストレスは大きな要因

多くのママたちが感じている、「育児ストレスなど心理的な理由」による2人目の壁。ママひとりで育児のほとんどを担っている、パパがあまり育児に積極的ではないという場合には、ママの肉体的・精神的な負担が増え、2人目が欲しくてもそんな余裕はない、と2人目の壁を作ってしまっているケースも少なくありません。

「『夫の家事・育児時間が長いと出生数も多い』という調査結果もあるほど、夫婦関係は2人目の妊娠・出産に大きく影響していると思われます。これもある調査で明らかになったのですが、寝る前にお休みのキスをする、誕生日にはプレゼントを渡し合うなど、夫婦仲がいいと思われることをしているのは、1人より2人以上の子どもを持つ夫婦のほうが、割合が高いんです」

シンポジウムやアンケート調査などで、これまでたくさんの家族を見てきた秋山さんは、仲のいい夫婦には共通点があるといいます。

「家事や育児に積極的に参加している旦那さんをもつ奥さんの多くが、旦那さんに対して、初めの期待値というか、『だまっていても、やってくれる』という考えを捨てているように思います。共通しているのは、旦那さんに『これを、ここまでやっておいてほしい』と具体的に指示を出し、してもらったことに対しては、必ずお礼やほめる言葉を伝えるようにしていること。子どもが産まれたばかりのころは、仕事で忙しい旦那さんに気を使って、奥さんと赤ちゃんが一緒に寝て、旦那さんは寝室を別にするパターンも多いと思いますが、そうすると『育児は妻がやってくれるもの』と意識が根付いてしまうので、あえて新生児期から寝室は一緒にするという家庭もありました。人間には得手不得手があるので、どうしても苦手な家事があって当然だと思います。でも、その苦手な部分を夫婦がお互い大目に見て、伸ばしてあげるような『ひとつのチーム』だと考えられたら、育児ストレスも多少変わるのかなと思います」

働き方を変えたら生活の軸が変わり、家族の絆が強くなった

現在、高校生と小学生の男の子の父親である秋山さん。朝は8時前後から勤務を開始し、18時には退社、夕食を家族でともにする生活を送っています。そんな秋山さんの生活が現在のスタイルになったのは4~5年前。それまでは早朝に家を出て、夜中に帰宅するハードワ-カー。平日は家事・育児に参加することもなかったといいます。

「以前は深夜1時ごろに帰宅し、食事をして寝る毎日でしたので、子どもはもちろん、妻とも1日1時間も話ができませんでした。今は18時に退社しますので、家族と接する時間がかなり増えました。子どもと話す時間も増えて、自然と子どもの状況や気持ちもわかるようになりましたし、余力があるので家事もします。ハードワークをこなしていた当時は、『家族を養うために自分は仕事に集中すればいい』と考えていましたが、今は、仕事も家庭もバランスをとらないと、結局どちらも成り立たないのだと感じています。以前は仕事で疲れ、妻はワンオペ育児で疲れ、お互いにイライラしていたせいか、夫婦ゲンカも多かったんですね。でも今の生活になってからはケンカも減り、笑顔が多くなりました。子どもたちも親が笑っていたほうが幸せなので、家族の輪というか、絆のようなものが強くなったと、今すごく感じています」

2人目の壁を越えると決めた理由の多くは「子どものこと」

経済的な理由や育児に対する心理的ストレス、また仕事との両立など、2人目の壁を感じる理由は単純ではなく、いろいろな要素がからんでいるもの。ただ、2人目の壁を越えた家族が存在するのも事実です。その壁を越えた大きな理由やきっかけは何だったのでしょうか。

「2人目の壁を越えたきっかけを尋ねるアンケートで、何回調査をしても必ず1位になるのが、『第一子を考えて』という答えです。これは『きょうだいをつくってあげたい』という思いのあらわれであって、子どもにどういう環境を与えてあげたいかを夫婦で考えた末の結果だと思うんです。2人目の壁を越えないと決めた家族もまた、子どもに十分な教育を受けさせてあげたい、その費用を確保したいなど、やはり子どものことを考えての決断だったはずです。今2人目の壁にぶつかり、なかなか答えが出せずにいる方たちも、『子どもにどういう生活をさせてあげたいか』を、子どもたちが大人になった時の環境も考えて最優先事項にすると、また2人目出産に対する考え方が変わってくるのかなと思います。

経済的な不安や将来への不安がまったくない家庭はないと思うんです。経済的なことも、仕事と育児の両立も、子育てのストレスや精神的な負担も心配だけど、それを乗り越えられるのは、きっと子どものためだからなんですよね。保険料を見直す、電気代をおさえるなど、生活費を節約する努力をしても、きっと経済的な不安がなくなることはないし、さまざまな対策をしても、漠然とした不安は残ってしまうものです。だからこそ、子どもにとってどんな環境を用意するのが一番いいのかを軸に、マインドチェンジをすることが、2人目の壁問題を解消する大きな糸口になるのかなと思います」

書籍についての詳しい内容はこちら

1 more Baby 応援団 http://www.1morebaby.jp/

取材・文/長澤幸代

お話/秋山 開さん 1973年生まれ。外資系企業をへて、タマホーム株式会社が立ち上げた1 more Baby応援団へ参加。2015年に財団法人化し、専務理事に。二男の父親。「二人目の壁」を乗り越えるための啓蒙活動を推進。執筆、セミナー等を積極的に行っている。著書に『18時に帰る』、共著に『なぜあの家族は二人目の壁を乗り越えられたのか?』(ともにプレジデント社)がある。

あなたにおすすめ

注目コラム