母乳育児がうまくいくコツと母乳で育てるメリット

 専門家監修 2017/10/17更新
母乳育児がうまくいくコツと母乳で育てるメリット

監修
市川香織先生 助産師・文京学院大学 保健医療技術学部准教授
1990年千葉大学医学部附属助産婦学校卒業。千葉大学医学部附属病院、千葉大学医学部附属助産婦学校教員、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課、公益社団法人日本助産師会事務局長等を経て、2014年4月より現職。2013年8月に一般社団法人産前産後ケア推

赤ちゃんにとって最適な栄養源の母乳。免疫力アップ、丈夫な体を作るなど、赤ちゃんの成長に関わるものだけに、母乳についての気がかりや疑問はたくさん。ここではママたちの気になることを助産師の市川香織先生が解説。母乳育児のメリットや成功するポイントなどを教えていただきました。

母乳育児のメリットは?

母乳育児は、お母さんと赤ちゃん側の両方にメリットがあります。赤ちゃんにとっては、「完全な栄養」。赤ちゃんが育つのに最適な要素が含まれていて、何の手を加えなくても栄養価は満点です。さらにいつでもあげられる、経済的というメリットもあります。

母乳を分泌させるホルモン「オキシトシン」は子宮を収縮させる働きがあるので、産後の初期にあげることでお母さんの体が早く回復します。またオキシトシンには、人と関わることを嬉しく感じる作用もあるとされていて、赤ちゃんとの触れ合いや子育てが、お母さんにとっての喜びにつながるとされているのです。

母乳には血を止める作用の「ビタミンK」が少ない

止血作用のあるビタミンKですが、新生児ではまだ十分に自分の体内で作り出すことができず、体外から補給する必要があります。ビタミンKが不足すると出血が止められなくなり、とくに脳内で出血があった場合は命に関わることもあります。栄養価の高い母乳ですが、このビタミンKが少ないのがデメリット。ただし、生まれてすぐと産科の退院時、1ヶ月健診時の3回、赤ちゃんに投与されることになっているので、これらをクリアしていれば心配ありません。

母乳は産後すぐからたくさん出るの?

母乳が出る量は人それぞれで、最初からうまくいくわけではありません。新生児のお母さんから『産んだら自然と出るものだと思った』『もっとたくさん出ると思った』という声をよく聞きますが、母乳育児のスタートはゆっくり。とくに出産当日や翌日は、母乳の出はまだ少なく、一生懸命絞り出そうとしても、ほんの少しにじむくらいです。「赤ちゃんは3日分のお弁当と水筒を持って生まれてくる」と言われていて、母乳が出るようになるまでの間は、おなかの中にいた時に胎盤を通してお母さんからもらった栄養と水分でカバーすることができます。ですから出産直後は母乳が出なくても焦る必要はありません。

スムーズに母乳育児ができるためのポイントは?

初めての育児では、産まれたばかりの赤ちゃんを抱っこするだけでもお母さんは精一杯。さらに授乳をするということは、お母さんにとって、とてもハードルの高いことなんです。それは赤ちゃんも同じで、母乳を飲むのは初めて。お母さんのおっぱいにくわえつくと母乳が出る、ということを学ぶまでには時間がかかります。ですから、お母さんは懲りずにおっぱいを赤ちゃんに吸わせ続けることが、スムーズにいくための第一のハードルです。産後すぐは姙娠とお産の疲れが残っていて、1~2時間おきの授乳は本当に大変ですが、そこで諦めずに「練習」することでおっぱいが作られ、出始めるのです。

最初の数日は母乳が出なくて当たり前。でもここが最初のヤマ

赤ちゃんも生まれて数日たったころには、体内に蓄えてきたものがなくなりおなかがすき始めます。「母乳が作られる・出る」お母さん側と、「飲む」赤ちゃん側のサイクルが合うまでが大切で、ここが頑張りどきです。産後の1~2日、母乳はあまり出ないのが当たり前ですが、出ないからといって授乳をしないのではなく、吸わせ続けることが大事だと知った上で乗り切れば、その後の母乳育児がスムーズにいきます。入院中は助産師さんに赤ちゃんの抱き方やおっぱいのくわえかたなどをよくチェックしてもらい、サポートを受けてください。

母乳の出がよくなる、質がよくなる食事は?

特定のものを食べ続けるのではなく、やはりバランスよく食べることが大切です。授乳中のお母さんには、野菜と良質のたんぱく質がとれる和食がおすすめ。煮物や魚、お味噌汁や豆腐など、消化するのに負担にならないのもポイント。消化がいいのは血液の循環がよくなることにつながり、必然的に母乳の出もよくなります。

母乳が足りているかどうかのサインは、おしっこが出ているか

赤ちゃんの体重の増え方や授乳間隔をチェックする方法もありますが、簡単でわかりやすいのは、おしっこが出ているかどうかです。たとえば1日10回おむつ替えをしている場合、そのうち6枚くらいがしっかりしめっている(おしっこが出ている)ならきちんと飲んでいるサイン。また、母乳の出がよくなり、授乳のリズムがととのってくると、赤ちゃんがちゃんと母乳を飲んでいるときは「ゴックンゴックン」という音が聞こえてきます。そのほか、母乳を飲ませる前はおっぱいが張っていたのが、飲ませるとラクになるなども目安になります。

「赤ちゃんの成長とともに母乳の栄養はなくなる」は間違い

赤ちゃんが1~2歳になったからといって、母乳の成分が変わるわけではありません。栄養価は変わらないのですが、1~2歳では母乳から得られる栄養だけでは足りず、主に離乳食で栄養をとるようになるので、そういう意味での「栄養」は変わってきます。そのころになると、母乳は「飲むと落ち着く」「飲むと眠れる」ためのものに。心の栄養として赤ちゃんが求めているうちはあげてほしいですね。

母乳育児を成功させるために妊娠中にできることは?

食生活や生活スタイルをととのえることも大切ですが、妊娠中だからこそ、産後の生活のコーディネートをしておきましょう。産後は4~5日くらいで退院するケースが多く、お母さんの体にはまだお産の疲れが残っています。骨盤が戻っていないので動き回るのはまだつらく、トイレ、シャワー、食事、母乳くらいですむようにするのが理想的です。産院や病院から自宅や里帰り先に帰ったら、お母さんがすることは赤ちゃんのお世話と母乳をあげることくらい、あとはお母さんも赤ちゃんと寝ていられる、くらいの環境をととのえておいてほしいですね。夫や実母など、掃除や洗濯などの家事を担ってくれる人を、自分以外で見つけておきましょう。そういったことを理論的に進められるのは妊娠中で、産後は感情的になってしまったり、段取りがうまくいかなかったりして、お母さんもイライラしがちに。妊娠中に細かく打ち合わせをしておくほうが、お母さんのため、赤ちゃんのためでもあるのです。



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