「わが子の睡眠のプロ」になると、それが育児の自信に【睡眠コンサルタント愛波文さん 第2回】

コラム 2017/06/20更新
「わが子の睡眠のプロ」になると、それが育児の自信に【睡眠コンサルタント愛波文さん 第2回】

米国IMPI公認資格を日本人で初めて取得し、妊婦と子どもの睡眠コンサルタントとして活躍中の愛波さん。コンサルテーションを行う中で感じた子どもの睡眠に対する日米の違いや、寝かしつけの「予防」という考え方についてうかがいました。

睡眠コンサルタントが感じた、日本とアメリカの子どもの睡眠に対する認識の違い

(第1回はこちらから)

2児のママであり、妻であり、睡眠コンサルタントをしながら講師も務める愛波さんのもとへは、アメリカ人や日本人をはじめ、世界各国の子どもの睡眠に悩む人々からの相談が寄せられます。寝ない子どもに困っているのは世界共通。しかし、中でも日本は子どもの睡眠に関する情報が圧倒的に不足していると感じることがあるといいます。

「アメリカ人がコンサルテーションを受けるとき、『子どもの睡眠に関するあの本もこの本も読んだ。インターネットでも調べた。それらの情報をもとにこんなことをやってきたけど解決しないから、あなたには何が提供できるの?』という相談の仕方をしてきます。この時点で、子どもの睡眠に関する基礎知識はかなりある状態。対して日本人は、なぜ睡眠が大切なのかという知識を十分に持っていない場合が多く、解説なども含めコンサルテーションが長くなりがちです」

日本人が睡眠の重要性を理解していないことは、日本の子どもたちの就寝時間が世界的にみても最も遅いという点にもあらわれています。

「脳や身体の成長には十分な睡眠が必要です。寝る時間が22時、23時というのは、アメリカではありえない話。さらに、朝も両親の仕事に合わせて早いですよね。おそらく日本人の子どもはみんな睡眠時間が足りていないのではないかと思います」

夜の睡眠と日中の睡眠(昼寝)の合計。子どもによってもっと睡眠が必要な場合、少なくてもよい場合など個人差がある。<愛波さんご提供の資料をもとに作成>

日本でも浸透してほしい、寝かしつけにおける「予防」という考え方

眠る環境を整える、生活スケジュールを改善するということは、アメリカ人にとっては“睡眠の基礎”であり、コンサルテーションを受ける前に自分で試してみる部分。寝かしつけにはさまざまなメソッドや考え方があるため、自ら調べて学び、自分の考えを持つということが、わが子に最適な寝かしつけ法や睡眠を選んでいく上で大切だといえそうです。

「子どもの睡眠を理解して『わが子の睡眠のプロ』としての自信がつくと、それが子育てでの自信にもなります。最終的に、悩んで相談に来た方が育児を楽しめるようになると、私もこの仕事をしていてよかったなと思いますね」

日本とアメリカでは環境や社会的な要因による違いもあると思いますが、なぜこれほどまで知識に差があるのでしょうか。

「そもそも睡眠に対する“意識”に違いがあると思います。まだ日本人には、予防としてコンサルテーションを受けるという習慣がありません。アメリカでは、仕事復帰に向けて子どもの睡眠を整えていこうと早くから行動します。しかし日本人のお母さんが相談にくるのは、仕事復帰して2~3カ月後の限界に達したときなので、まずお母さんのケアから始めることになります」

寝かしつけの予防という考え方を日本ではほとんど耳にしませんが、アメリカではマタニティ教室などで子どもの睡眠を勉強する機会があるというから驚きです。かくいう愛波さんも妊婦のときには子どもの睡眠に関する準備をしていなかったので、出産後の睡眠不足からつらい思いをしたのだそう。

「子どもが生まれてうれしいはずなのに、しんどい。子どもをかわいいと思えなくて、そう思っている自分が悲しい。そんな時期がありました。でも実際、同じように感じているお母さんは多いと思います。本来なら子どもの睡眠に関する基礎知識は妊婦のときに学んでほしいものですが、一方で希望や幸せしかない妊娠期にはわかりにくいし、心に響かないということもよく理解できます。ですから、生後1~2カ月ごろに学ぶことができればいいですね」

自分が満たされることでまわりも満たすことができる「シャンパンタワーの法則」

自身も5才と2才の子育てをしている愛波さん。19時ごろには寝かしつけ、その後の時間を自分時間や仕事に充てているそうです。日本の特に働くママのお宅では、19時に寝かしつけるのはなかなか難しいような気もしますが……。

「コンサルテーションを行って子どもの睡眠を整えていくと、19時や20時には寝るようになり、そして朝まで起きなくなります。子どもが早く寝る習慣がつけば、お母さんにも自分の時間が生まれます。いまだに日本人はお母さんは苦労してあたりまえ、みんなやっていることだからなどと、子どものために尽くすことを美とする考え方が根強くありますが、子育ても新しいものを受け入れて変化させていく必要があると思います」

もともと愛波さんも子どもの寝かしつけに悩んでいた母親のひとりでした。子どもの睡眠を整えたことで自分の時間が持てるようになり、息子さんの機嫌もよくなったという経験の持ち主。子どもが満たされ機嫌よく過ごすためには、お母さん自身が満たされていることが不可欠だといいます。

「私が睡眠講座やコンサルテーションでも必ずお伝えしている、『シャンパンタワーの法則』というものがあります。4段のシャンパンタワーを思い浮かべてください。人間関係に置き換えると、一番上のグラスが自分、上から2段目が家族、3段目が友人や同僚、一番下が他人です。そしてグラスが人の心、シャンパンが愛情をあらわします。シャンパンタワーは上から注ぎますよね。自分の心が満たされると、それが家族へ、友人や同僚へ、さらには知らない人たちにも愛を注げるのです。だからお母さん自身が満たされていないと、子どもは絶対に満たされないんですよ」

もっとまわりに頼って! 自分の時間を作ることに罪悪感を感じる必要はありません

日本のお母さん、お父さんは、もっとまわりに頼っていいのではと話す愛波さん。実際にコンサルテーションでも、そうしたマインドを変えるようなアドバイスも行っているそうです。

「行政やシッターさん、日本にはファミリーサポートという制度もありますよね。子どもを預けて買い物に行ってもいいんです。抵抗があるなら、自分が自宅にいながら子どもを見ていてもらって寝たり、家事をしたりしてもいい。ニューヨークでは1時間子ども2人をお願いして20ドル。高いけれどそれでも私は頼みます。日本のファミリーサポートでは1時間数百円だと聞いて驚きです!」

次回は、子どもの睡眠の基礎知識や土台作りについてご紹介します。
(第3回へ続きます)

子どもの睡眠コンサルタント 愛波 文さん
長男の夜泣きや子育てに悩んだことから睡眠について学び、アメリカで働きながら米国IMPI(International Maternity and Parenting Institute)公認資格を日本人で初めて取得。現在、ニューヨークで5才と2才の男の子のママとして子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む育児者のコンサルティングを行う。IMPIと提携し、日本語での妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座(オンライン)を開催し、講師も務めている。
http://sleepingsmartconsulting.com/
公式ブログ http://ameblo.jp/babysleepsite/
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Instagram  @aya_aiba

撮影/福村美奈(主婦の友社写真課) 取材・文/木村亜紀子

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