子どもをたたく、無視するのは虐待? しつけとのボーダーラインってどこ?

 専門家監修
公開日:2017/02/12
子どもをたたく、無視するのは虐待? しつけとのボーダーラインってどこ?
監修
長谷川博一先生
こころぎふ臨床心理センター センター長・臨床心理士
監修
宮里暁美先生
国立大学法人お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所教授・文京区立お茶の水女子大学こども園園長

「危険なことをしたので、思わずたたいてしまった」「どうしてもイライラがおさまらなくて、子どもを無視してしまった」。そんな経験、ありませんか? ママにとっては「しつけ」でも、子どもにとってはどうなのでしょう。毎日の育児シーンでよくあるケースについて、育児誌「Baby-mo」読者ママたちのアンケートをもとに、臨床心理士の長谷川博一先生と、お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所 教授の宮里暁美先生のご意見をおうかがいしました。

これってしつけ? その1 いけないことを伝えるために、ときには多少の体罰を与える

◆ママたちにとっては……しつけだと思う 83%/虐待だと思う 17%
●本当にやってはいけないことをしたら、おしりペンペンします(しつけ)
●友だちをたたいたときなど、たたかれたら痛いと教えることは必要だと思います(しつけ)
●私は殴られて育ちました。なぜそんなに怒られるのか、理解できませんでした(虐待)

体罰を受ければやめますが、それはおびえているからです
子どもにとって、親は安全地帯のはず。そこに体罰という恐怖があっては、親子の信頼関係を揺るがすことになります。たたけばその行為をしなくなるので、親は効果があったと思いがちですが、それはカン違い。おびえただけです。特に、手をたたくのはよくありません。手はその人の意思が強く表れる場所です。手をたたかれると「何もするな」というメッセージが子どもに伝わっていきます。
体罰はいいことだとは思いません。特に赤ちゃん時代には百害あって一利なし。小学生や中学生になり、愛されているという思いが十分に育まれたうえでなら、親のやむにやまれぬ体罰が心に響く瞬間があるのかもしれませんが……。(宮里暁美先生)

これってしつけ? その2 食事中の行儀が悪すぎる。何度注意してもやめないから一食抜く

◆ママたちにとっては……しつけだと思う 44%/虐待だと思う 56%
●1食ならいいと思います。遊んだら食べられないと学習することは大切です(しつけ)
●1食抜いて次の食事まで遊ばせ、あえておなかをペコペコにさせて食べさせます(しつけ)
●しつけだと言って、生きることに必要な衣食住を奪うのはいけないと思います(虐待)

食事に恐怖やおどしを持ち込まないで
食事に集中できない理由を見つけましょう。量が多すぎるのかな? あれ、テレビがついたまま? わが子はどのタイミングで席を立つのか、探偵のような気分で様子を見て、理由がわかってきたら対策をたてましょう。偏食がひどい子も、自分で育てた野菜は食べたりします。根気強くいろいろな工夫をしてください。食は、体や心の健康と密接につながっています。食卓に恐怖やおどしを持ち込むのは自重したいですね。(宮里暁美先生)

これってしつけ? その3 怒りがおさまらず、子どものことをしばらく無視してしまう

◆ママたちにとっては……しつけだと思う 33%/虐待だと思う 47%/どちらでもない 20%
●ママが冷静になるためにも必要。怒りがおさまったら抱きしめてあげればいいと思う(しつけ)
●無視すると、子どもの心が傷つくだけじゃなくて、その傷がどんどん広がりそう(虐待)
●ママも人間だから、感情をぶつけることがあっても仕方がないと思います(どちらでもない)

無視は強烈な「嫌い」のメッセージです
親の気持ちがギリギリで、子どもに暴力をふるいそうなときなどは、一時的に子どもから離れたほうがいいかもしれません。このときお母さんが突然消えると何が起きているのかわからず不安になりますから、「ママはトイレに行くよ」などと、自分の居場所を知らせてから距離をおきましょう。顔が見えているのに無視するのは、「私はあなたが嫌いです」と積極的に伝える「言葉」です。赤ちゃんにそんなメッセージを伝えたくはないですよね。(長谷川博一先生)

これってしつけ? その4 安全な場所で、おしおきとして外に出す

◆ママたちにとっては……しつけだと思う 44%/虐待だと思う 50%/どちらでもない 6%
●小さいころに外に出された経験があるが、見えるところに親がいました(しつけ)
●外に出されると、突き放されたと思いそう。子どもにはすごくこわいことだと思う(虐待)
●事故にあったりしたら、おしおきではすまないから(虐待)

家から出すというのは、心理的なダメージが大きいです
おしおきで山に置き去りにされた男の子の事件がありましたが、あれば心理的な虐待だと思います。「言うことを聞かないから」と、親は自分を正当化しますが、子どもにとって親に見捨てられるというのは、計り知れないダメージです。もう捨てられたと思ったから、男の子は親を追いかけずに逆方向に歩いていったのでしょう。おしおきで外に出すというのも同じ。安全かどうかは子どもの心理には関係ありません。(長谷川博一先生)

出典 :Baby-mo(ベビモ) 2017年01月冬春号※情報は掲載時のものです

監修
長谷川博一先生
こころぎふ臨床心理センター センター長・臨床心理士
1959年生まれ。東海学院大学教授を経て、2012年こころぎふ臨床心理センターを設立。心理カウンセラーとして活動する一方、児童虐待問題にも熱心に取り組んでいる。
監修
宮里暁美先生
国立大学法人お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所教授・文京区立お茶の水女子大学こども園園長
お茶の水女子大学人間発達教育科学研究所教授。30年以上、保育の現場に従事し、保育者養成にも携わる。著書に『子どもたちの四季』(主婦の友社)など。

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