井上和香さん 「私らしさ」よりもSNSの反応に振り回されていた育児。「いい母親」を目指すうちに生まれた小さな違和感 ~mama’s LIFE Vol.4 第3回~

井上和香さん 「私らしさ」よりもSNSの反応に振り回されていた育児。「いい母親」を目指すうちに生まれた小さな違和感 ~mama’s LIFE Vol.4 第3回~

連載 MAMA'S LIFE Vol.4〜井上和香さん〜

妊娠・出産をへて、母となった今もテレビや雑誌の世界で輝き続けるママたち。今回は、産後半年で女優としての活動を再開した、井上和香さんの育児風景に迫ります。母として仕事をもつ女性として、充実した日々を過ごされているイメージの井上さん。ブログやインスタグラムなどから伝わる幸せな毎日の裏で、ご自身が感じていたこととは。

ママたちのブログやインスタが楽しみ。ステキな写真が撮れるママさんに憧れます!

有名人の子育ては、いろいろな意味で注目度が高いもの。最近はタレントやモデルさんがご自身の育児の様子をブログやインスタグラムなどで発信することも増え、同じ境遇のママたちにとってはとても身近で心強い存在に感じられることも多くなりました。いつもは「見られる側」である井上さんも、たくさんのママたちのブログを読み、育児の参考にすることもあるそう。

「ほかのママさんたちのブログを読むのが好きでよく見させていただいているのですが、『今日も楽しかった♪』『今日も子どもがかわいくて仕方ないです』といった内容の投稿を読むと、すごいなっていつも思います。出産して1年半くらいになりますが、私はまだまだ余裕がなくて、『どうしたらこんなに毎日楽しく過ごせるのだろう』って。みなさん投稿している写真もステキだし、離乳食や料理の画像などはすごくキレイ! どうしたらあんなふうに撮れるのか、教えてほしいくらいです!」

「私が離乳食の写真を載せるときは、すごく上手にできたとき。そこまでちゃんと毎日作れません(笑)」という井上さん。それでも、ステキな育児風景を残したいと写真の撮り方などを工夫したそう。

「でも、『きれいに撮れた!』と思ってブログにUPしても、写真の端っこのほうにごはんを小分けにしているタッパーが映り込んでいたりするんですよね(笑)。保育園に行く前の忙しい時間に頑張って写真を撮ったけれど、そんな『素』のひとコマを隠せなかったりすると、『あ~、やっぱり私は朝からキレイにごはんを撮影するなんて無理!』って思っちゃいますね」

私は誰の母親なの? SNS上での自分に感じ始めた「ギャップ」

とはいえやはり気になるのは、ブログを楽しみにしてくれているママたちや、インスタをフォローしてくれている人たちからの反応。とくに有名人の場合は、そのコメントの内容が実にさまざま。嬉しい言葉もあれば批判的な反応も「見えない相手」から数多く寄せられます。「それはそれ、私は私」と切り離せるならばいいけれど、井上さんの場合は、いつの間にか「SNS向け」に家事・育児を頑張るようになっていたそう。

「ふとそんな自分に気づいて、『私は誰のお母さんなんだろう』『誰のための育児なんだろう』って思いました。SNSで発信することで多くのママさんとの距離感がすごく縮まるぶん、批判も多くなるんですね。だから『これをやったら批判される』『これを書いたらダメな母親って思われる』と、何かをするたびに頭をよぎるようになりました」

いつしか『SNS上に育児の様子を投稿する意図がだんだん変わってきてしまった』と感じていた井上さん。育児は誰にも頼らず毎日頑張っているし、いっぱい、いっぱいになりながらも仕事との両立を続けてきた。でもSNSで評価されるのがいい母親、みんなにいいねと言われればそれが正解という自分なりの基準ができてしまい、リアルな育児風景や気持ちを伝えられなくなっていったといいます。

「離乳食はバランスのとれたメニューが何品もないと投稿できないとか、自分で高い壁を作ってしまっていました。娘は母乳も飲んでいるため、離乳食の食べムラがあるんです。野菜はあまり食べないし、ごはんもただの白米の状態では食べてくれないことも。でも焼きのりでごはんをはさむとよく食べてくれるので、母としては『今日はごはんをちゃんと食べた。もうそれだけでも十分だ』って思うんです。食べてくれること、娘が楽しく食事をすることが本当は大切なのに、『今日はごはんと焼きのりだけでした』なんて内容をブログには絶対に書けないと思ってしまう。『離乳食、たったそれだけですか?』ってコメントが寄せられるんじゃないかと思うと、そのことはブログ上では、なかったことになってしまうんですね。

芸能人という職業柄、何を投稿してもある程度批判されることは仕方がないと思っています。でも、気にしちゃいけないと思っても、やっぱり批判的な意見やコメントを読めば気が滅入ってしまいます。『子どもは親を選べませんからね』というコメントをもらったときはつらかったですね。娘に『ほかのお母さんのほうがよかった?』と聞いてしまいましたから……」

私が変われば周りも変わる。ありのままでいいんだと勇気をもらった

「いいね」と思われる内容を投稿したい。そう意識するうちに、「ステキなお母さんですね」「いつもたくさんごはんを作られていてすごいです!」といったコメントを多くもらうように。しかし今度は、リアルな日常とのギャップが生まれ、新たなストレスを感じ始めます。そんなことが続いたある日、それまでのように「ステキな育児ライフ」をブログに綴っていた井上さんの手が止まります。

「『今日も幸せで楽しい1日でした』なんて書きながら、『またきれい事ばっかり』と自分で思っていたんです。もう自分をよく見せることにも疲れてしまっていたのか、その日のブログは、途中から本心を書きました。『本当はこんな楽しそうな日々じゃないんです』と。何度注意しても聞いてくれない娘に対してイライラするし、つい大きな声を出してしまうこともある。それが私ですって。『もういい、ダメな母親だって思われてもいいや』と投稿してしまいました」

ところが、そのブログの内容には予想もしなかったうれしい反響が。その多くは励ましや賛同のコメントでした。

「たくさんの方々に、『わかります!』『私もそうです』と言葉をいただきました。『ひとり目の育児はそんなものですよ』『ひとりじゃないから大丈夫ですよ』と先輩ママさんにコメントをいただいたときは、本当にうれしくて。『みんな一緒なんだ、私だけじゃないんだ』って安心して、読みながら涙がボロボロこぼれてしまいました。育児を頑張るママたちを励ますことができたらと思い、書き続けてきたブログなのに、逆に励まされてしまって。そのときのブログは無意識に書いていたと思うのですが、こんな母親の私でも受け入れてくれる方がたくさんいたことがうれしかったです。それからは気持ちがとてもラクになり、これからは本音やリアルな育児の様子を、どんどん書いていこうって思えるようになりました」

育児中のママたちは、イライラしたり落ち込んだり、毎日しんどい思いをするのはあたりまえ。しかし『いい母親でいたい』がゆえに、いい面だけを他人に見せてしまい、さらに精神的な負担を自らかけているママはきっと少なくありません。それを身をもってわかっている井上さんだからこそ、同じママたちへはこんな思いが。

「自分のイヤなところって人には伝えにくいし、どうしてもいいところばかりを見せてしまいます。自分がどう見られているかを気にしたり、ほかのママと比べて『私って最低な母親だ』と感じながら育児をしているママも多いと思うんです。でもそう思うことって自然だし悪いことじゃない。完璧な母親なんていないと思います。ただただ、子どもがかわいいから育児をやっていける、それだけでじゅうぶんだなって最近は思います」

(第4回へ続きます)

撮影/瀬津貴裕(biswa.) ヘア&メイク/シバタロウ(p-cott) スタイリング/岡田紗季 取材・文/長澤幸代

ニット¥19,000+税/ソブ、スカート¥27,000+税/ダブルスタンダードクロージング(ともにフィルム)  パンプス¥26,000+税/ETOILE(Dhyana.)  ピアス¥6,500+税、ネックレス¥24,000+税/ともにCISOLASSE(ルイールコーポレーション)


PROFILE
井上和香さん
1980 年5月13日生まれ。2002年にデビューし、2003年「第41回ゴールデン・アロー賞、グラフ賞」を受賞。2004年より女優としての活動を開始し、ドラマを中心に、映画やCM、舞台など、数多くの作品に出演。2012年に映画監督の飯塚健氏と結婚、2015年7月に第一子となる女の子を出産。産後もドラマやバラエティなどで活躍を続ける。
公式ブログ公式インスタグラム

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