井上和香さん 初授乳で幸せの絶頂のはずなのに。思わぬ気持ちに困惑した入院生活~mama's LIFE Vol.4 第2回~

井上和香さん 初授乳で幸せの絶頂のはずなのに。思わぬ気持ちに困惑した入院生活~mama's LIFE Vol.4 第2回~

連載 MAMA'S LIFE Vol.4〜井上和香さん〜

現在1才6カ月の女の子のママとして、育児と女優・タレント業と両立する多忙な毎日を送っている井上和香さん。産後は持ち前の華やかさに加え、母としてのやわらかさも備わり、ますます魅力的な女性に。そんな井上さんも、初めての育児は壁にぶつかり、嫌いな自分と常に向き合うことの連続だとか。ご主人との二人三脚でスタートした育児ライフは、どのようなものだったのでしょう。

どんなに疲れていても休みはない。育児の現実をまざまざと感じた

出産予定日を11日過ぎたものの、お産は順調にすすみ、分娩台に上がっていきんだのはたったの3回! 「超」がつくほどの安産でしたが、子宮の収縮がうまくいかず出血が止まらないトラブルに見舞われた井上さん。絶対安静のため、そのまま一睡もせずに分娩台で朝を迎えました。幸い大事には至らず、無事病室へ戻ることができたのですが……。

「食事もずっとしていないし、とにかく心身ともに疲れきっていたので、まずは眠りたかったんです。でも病室へ戻って間もなく看護師さんから『では、授乳をしましょう』と。赤ちゃんのお世話はもちろん、授乳をすると子宮が収縮するからという理由もあったと思いますが、眠気も疲れも限界。看護師さんもそんな私の気持ちを理解してくれていたと思うのですが、『頑張りましょう』と励まされ、初めての授乳にチャレンジしました」

フラフラな状態ではあったものの、この瞬間は誰もが「母になった喜び」を感じるはず。井上さんもそう思っていました。

「正直、産んだときのあの喜びとは真逆と言ってもいいくらいの気持ちでした。『おっぱいを初めてあげて感動しました!』『とても嬉しかったです』という声を聞いていましたが、そんな気持ちにはほど遠いというか、不安や焦りが先立ってしまったんですね。私は今、抱っこしているこの子におっぱいをあげる気力も体力もないのに、『私が授乳しないとこの子は生きていけない。2時間おきの授乳なんて私にできるの?』と、とにかく自信がなくて。まず乳首をくわえさせる段階でうまくいかないし、『赤ちゃんが息できるよう、鼻のところは乳房でふさがないでください』と看護師さんに言われると、『そんなことで赤ちゃんは息ができなくなっちゃうの!? どうすればいいの?』と命の重さを急に感じたりもしていました。

私はひどい母親なのではないか。不安で自分を責めてばかりいた

嬉しさや幸福感よりも、育児への不安や心配で心がいっぱいになってしまった井上さん。産後の母体に起きた緊急事態を乗り越えたばかりということもあり、現状に気持ちが追いつかないまま入院生活を過ごします。

「入院中は気持ちがどんよりとしていました。先輩ママたちから、こんな幸せはないって感じると聞いていたのに、実際の私は……。『赤ちゃんとふたりで頑張ってお産に臨んだのに、産んでからは母である私のケアは誰もしてくれない』。そんなふうに思えて悲しくなってしまいました。言葉にはできないけれど、『私のつらさを誰かわかって』ってずっと思っていて。その半面、『みんなが幸せだと思うことを、どうして私は思えないの?』『こんな母親、最低だ』と自分を責める気持ちもあって、心が沈んでいましたね」

お見舞いに来てくれた方からの「今がいちばん幸せだね」という言葉に素直にうなずけずにいた井上さん。わが子は心の底からかわいい、だけど「こんなに弱い存在を、私はどうやって育てていけばいいの?」と、不安ばかりが頭をよぎっていた産後まもなく。そんな入院生活で心のよりどころとなったのは、看護師さんの存在だったといいます。

「看護師さんがいつも相談に乗ってくれていました。『どうしても眠いときや体が疲れているときは、こちらで赤ちゃんを預かりますからね』と優しく声をかけてくれて、それだけでも心が救われました。育児に関することも、抱っこの仕方から授乳まくらの使い方など、何から何まで教えてもらいました。私は実母が亡くなっていて、夫の両親も亡くなっているんです。退院後は自宅での育児が始まるので、入院中に看護師さんに聞けることは聞いておきたかったのもありました」

仕事を調整して1年間そばにいてくれた夫は、ただ気持ちを受けとめてくれた

5日間の入院を終え、母子ともに自宅へ。井上さんのご主人は映画監督で、撮影などが入ると長期間家に帰ることができないハードな仕事。そんなご主人から妊娠中に「産後は親に頼ることもできないから、なるべく僕がそばにいるようにする」と提案が。産後1年間は撮影を入れないようにスケジュールを調整してくれたそう。

「産後の1年間は、家でひたすら脚本を書く時期にあてられるように、スケジュールをととのえてくれました。それは本当に嬉しかったですね。どうしても外に出ないといけないときもありましたが、それ以外はずっとそばでサポートをしてくれました。家にいるとはいえ脚本は執筆しているので、家事も育児もお願いするわけにはいきませんでしたが、沐浴をしてくれたり子どもをあやしてくれたり、育児には積極的に参加してくれました。ほかにも私のぶんの食事を作ってくれたり、お風呂を洗うなどの家事も担ってくれて、ありがたかったですね」

妊娠中は一緒に両親学級に参加するなど、産後の母子の生活についても理解しようとしていたご主人。周りの先輩パパから育児の話を聞き、父親がすべきことをずっと考えていてくれていたそう。

「撮影に入るとなかなか家に帰れなくなるのですが、まわりの撮影スタッフのなかには、撮影期間を終えて久しぶりに家に帰ったら、自分の子どもに『知らない!』と泣かれてしまった人もいたらしく、『絶対にそれはイヤだ。自分の顔をしっかり娘に覚えさせるんだ』って育児も頑張ってくれました」

「産後はとくに夫の存在が大きかった」と語る井上さん。子どもと1日中ふたりきりではない安心感も、夫婦2人で初めの1年間を乗り越えられた大きな要因だといいます。

「私の愚痴や不安な気持ちをひたすら聞いてくれて、私のサンドバッグ状態だったと思います(笑)。どんなに理不尽なことを言っても一切反論せずに聞いてくれて。その1年間があったから今があると思うし、夫婦としての絆も深まったのかなと思っています」

産後すぐは予想外の気持ちに戸惑い、不安な毎日を送った井上さん。今妊娠中のママたちへはこんなメッセージを贈ってくれました。

「今、私の周囲にもプレママがいますが、『産後は楽しいことばかりだよ、幸せいっぱいだよ』なんて言葉を私はかけません。大変なことが多いですし、妊娠中とは変わって産後はただつらい日も少なくはありません。でもそれを超えるくらいのかわいさが子どもにはあります。その愛おしさは日に日に増していきますから、1日1日を大切にしてほしいなと思います」
(第3回へ続きます)
撮影/瀬津貴裕(biswa.) ヘア&メイク/シバタロウ(p-cott) スタイリング/岡田紗季(Linx) 取材・文/長澤幸代
ブラウス¥18,000+税/ソブ、パンツ¥28,000+税/ダブルスタンダードクロージング(ともにフィルム)  パンプス¥16,000+税/C'ast Vague(Dhyana.)  ピアス¥7,000+税/Jouete  ネックレス¥3,400+税/Myu by phoebe(Jewel addict 渋谷ヒカリエShinQs)  バングル¥8,500+税/CISOLASSE(ルイールコーポレーション)


PROFILE
井上和香さん
1980 年5月13日生まれ。2002年にデビューし、2003年「第41回ゴールデン・アロー賞、グラフ賞」を受賞。2004年より女優としての活動を開始し、ドラマを中心に、映画やCM、舞台など、数多くの作品に出演。2012年に映画監督の飯塚健氏と結婚、2015年7月に第一子となる女の子を出産。産後もドラマやバラエティなどで活躍を続ける。
公式ブログ公式インスタグラム
クリップ

あなたにおすすめ

MAMA's TRIP 近藤千尋さんと行く「クラブメッド バリ」 詳細はこちら
抽選で二名様に当たる!エルゴベビー「ベビーキャリア ADAPT(アダプト)」プレゼント 9月30日まで 詳細はこちら
注目コラム