妊産婦の自殺が10年で63人という事実。プレママにも知ってほしい「産後うつ」の原因

コラム
公開日:2016/08/08
更新日:2016/08/25
妊産婦の自殺が10年で63人という事実。プレママにも知ってほしい「産後うつ」の原因

「育児に自信が持てない」「赤ちゃんと2人きりで部屋にいるのがつらい」。程度の差はあるものの、多くのママが一度はそんな不安や孤独を感じています。
「産後うつ」と聞くと、自分には関係のない話のように感じるかもしれませんが、実は妊娠・出産期の死因として自殺が占める割合は高いのです。産後ママの心と体は、いったいどんな状態になるのでしょうか。助産師で産前産後ケアに関する研究をしている、文京学院大学 保健医療技術学部 准教授 市川香織先生のお話です。

一生のうち、最も体力・心理的に負担がかかるのは「妊娠・出産」

東京都監察医務院などの調査により、2005~14年の10年間、東京都23区における妊産婦の自殺が計63人(出産10万人に対して8.5人)という衝撃的な事実が報道されたのは今年の春。医療の進歩により出産の安全性は高まっているものの、メンタル的なケアがまだじゅうぶんにされていない、と市川先生は考えています。

「女性は一生のうち、健康上の大きな節目が3回あります。1回目は思春期、2回目が妊娠・出産、3回目が更年期です。これらはどれもホルモンバランスが大きく変わるときで、なおかつ環境の変化が訪れるのもこの時期。身体的、心理的にも負担がかかっているといえます。

なかでも一番変化が大きいのは妊娠・出産期で、涙が止まらない、イライラするといった症状が出やすくなります。ただ、周囲のサポートを受け、気分転換をしながら自然と症状が治まっていく人がほとんどなのですが、なかには『眠れない』『自分を傷つけたい』『私だけが不幸でみじめ』『育児する気力がわかない』と、うつの症状が現れる人もいます。

産後うつの症状が出るのは11人に1人(2013年・厚生労働省調べ)とされていますが、専門的なケアや治療を受けている人はごく一部で、多くは『かなり産後うつに近い』『このままいくと産後うつになる』というボーダーライン上にいます。周囲には元気そうに見えていても、ある条件が重なるとうつになるリスクが高まるママたちが、かなりいるのではないでしょうか」

里帰り後、自宅での育児が始まる産後1~3カ月のケアが重要

ある育児サイトで、産後1年ほどたった女性約500人に産後うつについて調査をしたところ、「産後うつだと診断された」と答えたのは全体の1.3%、「産後うつだと診断されてはいないが、自分でそうだったと思う時期がある」と答えたのは46.8%という結果になりました。

つまり約半数のママたちが、「自分はうつじゃないかと感じていた」ということになります。また、うつだった(と思われる)時期で1番多いのは産後1カ月ごろで、次いで産後2カ月、0カ月、3カ月と続き、いずれにしても産後3カ月までに集中していることも明らかになりました。

「妊娠中は医療施設からのケアやサポートが中心で、産後は自治体をはじめ地域のサポートが中心になりますが、退院してから新生児訪問が始まる産後1カ月過ぎまでには間があいてしまいますし、里帰り出産した場合は産後1~2カ月ごろに自宅での育児が始まります。母親自身なかなか外出ができず、育児不安も高まっていますから、この時期のサポートがとても大切です。

母親自身が枯渇してしまっていると、エネルギーを子どもに注ぐことはできません。まずは母親が安心できる環境があること、家族や専門家のサポートやケアを受けて、母親の心身を満たしてあげること。そこで初めて心と体が健康になり、育児に前向きになれるのです」

ホルモンバランスの大きな変化により、体とともに精神的にも不安定になりやすい産後。ママ自身も、頑張りすぎないことがとても大切です。では、家族など周囲はどのようなサポートをするといいのでしょう。次回へ続きます。

続きの記事は8月15日配信予定

お話/文京学院大学 保健医療技術学部 准教授・助産師 市川香織先生
千葉大学医学部附属病院、国保小見川総合病院、公益社団法人日本助産師会勤務などをへて現職。産前産後ケアの研究のほか、一般社団法人産前産後ケア推進協会の代表をつとめ、昨年立ち上げられた「3・3産後サポートプロジェクト」の発起人でもある。
3・3産後サポートプロジェクト http://33sango.jimdo.com/

取材・文/長澤幸代

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