【日本最高齢の助産師】坂本フジヱさん「陣痛もお産もこわいものじゃない」

コラム
公開日:2019/09/16
【日本最高齢の助産師】坂本フジヱさん「陣痛もお産もこわいものじゃない」

お産のつらさは陣痛のつらさ。和歌山県田辺市で94才の現役助産師として活躍する坂本フジヱさんに、陣痛の痛みを乗り切るコツを聞いてきました。「お産はこわいものじゃない」。そう語る坂本フジヱさんの、自然体のお産哲学とは。

痛ければ「痛い」と言って、好きなようにしれいればええの

「ごめんください」

カラカラと引き戸をあけると、土間からすぐに6畳ほどの小部屋が続いています。そこでのんびりお昼寝をしていたご老人が、ひょいと頭を上げました。

「おや、いらっしゃい」

近所の知り合いが訪ねてきたとでもいうような、ひょうひょうよした口ぶりのこのかたが、日本最高齢の助産師・坂本フジヱさん。気取らない人柄で、今もたくさんの妊婦さんに慕われ、頼りにされています。

「お産がこわい、というのは思い込みやねぇ。ときには困った事態が起きることもあるけれど、今の医学は昔とは違いますから、必要な手術や処置はきちんとできる。陣痛の痛み? それは赤ちゃんの言葉みたいなものだから、受け止めてあげるしかないわなぁ」

そう語る坂本さんは、「自分のお産のときは『痛いよ~、痛いよ~」って、うなってた」と笑います。

「痛ければ痛いと言って、すきなようにしていればええの。窓が壊れるんじゃないかと思うくらい大暴れしとったフィリピン人の妊婦さんもおったなぁ。まあ、あれが彼女のスタイルや」

お産に時間がかかるのには、赤ちゃんなりの理由があるはず

できるだけ居心地よく過ごし、あとは自然にまかせる。これが、坂本さんが考えるお産の極意。赤ちゃんは「もう生まれても大丈夫」と自信が持てたときに、生まれてくるのだと言います。

「たとえば、きていた陣痛が途中で止まるというのも、赤ちゃんにはそれなりの理由があるはずなの。ちょっと疲れたから一休みしようか、とかな。それを無理に薬で出そうとするのは、私はあまりよくないと思う」

とくどきいる、へその緒が首に巻いている子なんかもそうやで、と坂本さん。

「急いで出ると、キューッと締まってしまうからね。へその緒を、首が閉まらないように両手で抱え込んで生まれてきた子がおります。この子は時間がかかったねぇ」

どんな子も、生まれたいように生まれてくる。お母さんは、赤ちゃんのその気持ちに寄り添ってあげてほしい、と言います。

「赤ちゃんはけなげやで。産道は頭がやっと通るような狭さで、そこを進んでくるとき一瞬死ぬんや、と教えられたことがあります。その暗黒の世界を通り抜けて、光り輝く世界に出てくるの。そんな思いをしているのに『しんどかったなぁ』という顔の子はおらん。みんなスーッとしたいいお顔で出てくる。だから、なかなか生まれないなら、なんかわけがあるんやろうな」

セックス、妊娠、出産、育児。この4つは本能でやればええ

10代で働きながら助産師の資格をとった坂本さんは、これまでに4000人以上の赤ちゃんを取り上げてきました。昔と今とで、お産の様子は違いますか?

「今のお産のほうが、きゅうくつかもしれない。昔は炭焼きの帰りに道端で産んじゃった、なんていう豪傑もいてねぇ。医者がいないから、お産経験者がよってたかって助けたりして。そんな時代でも、お母さんも赤ちゃんもなかなか死なないもんやった(笑)」

だから大丈夫。赤ちゃんの生まれたいように産んであげてほしい。ゆっくり生まれたい子はゆっくりと、せっかちな子にはそのペースに遅れないように。助産師は「指導」するわけではなく、その人の出産のペースに合わせて少し手助けをする存在なのだと言います。

「とにかくみんな、頭で考えすぎや。セックス、妊娠、出産、子育て、この4つは本能でやればええ。『こっちのほうがいい』と思ったことは、たいてい正解です」

それから、できれば一人でがまんするお産じゃないといいね。一人で向き合うものだと思い詰めると、こわさが押し寄せてくるかもしれないから。

そう坂本さんが語っていると、引き戸が開いて赤ちゃんを連れたママが。

「先生、おる~? 近くに寄ったから、ちょっとお話ししにきてん」

助産師の日本最高年齢は、まだまだ記憶を伸ばしそうです。

関連リンク⇒⇒⇒出産3日前から不穏な空気。「陣痛らしきもの」が「陣痛」にならない苦行の末…【私の出産体験記】

坂本流・陣痛を乗り切るコツは

1.陣痛の痛みは病気の痛みとは違うと知る

陣痛は確かに痛い。でも、こわいものではない、と坂本さん。 それは「病気の痛み」ではないから。 

生命を奪おうとする痛みではなく、生命を生み出すための痛みだから、こわがる必要はないのです。

その痛みをたとえると? 「排便のとき、腸が収縮するように痛むことがありますね。あの感じです」。

身近な例にたとえられると、痛みに対する恐怖感が薄れていきますね。

2.痛みがきたら足でリズムをとってみる

陣痛は子宮が収縮しながら子宮口を少しずつ広げていくためにこ起こります。

 ただしそれは絶え間なく続いているのではなく、痛みが来ては引いていきます。 

「痛みが続くのは数十秒、長くても1分です。その間は、足でトン、トン、とリズムをとってみてください」。

自分のリズムだと10秒経過するのにトントンが8回、などと間隔をはかっておくといいですね。痛みが30秒続くとしたら、「トントンを24回すればおさまる」と見通しが立ちます。

3.肛門から腰にかけてをあたためる

妊娠生活の全体を通じて、冷えは大敵。体を冷やさないようにしましょう。

お産本番でもそれは同じ。体が冷えると筋肉がかたくなり、子宮口の開き方も悪くなりがちです。

また、肛門から腰にかけての部位をあたためると痛みが和らぎます。 手を当てたり、マッサージしたり。

坂本さんは「テルミー」というお灸の道具を使って、腰全体をあたためることもあります。

関連リンク⇒⇒⇒26時間54分ノンストップ! 陣痛と吐きけで意識もうろうの中、最後は……【私の出産体験記】

_______

坂本フジヱ1924年、和歌山県生まれ。小学校卒業後、大阪で住み込みの仕事のかたわら、看護師、助産師、保健師の資格を取得。現在は和歌山県田辺市で、日本最高齢の助産師として活躍しています。坂本助産所

撮影/佐山裕子(主婦の友社写真課) 出典:『安産プレモ』日本最高齢の助産師が語る「お産は、こわくない!」 ※情報は掲載時のものです

あなたにおすすめ

注目コラム